被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
だまされないように注意!
FBIが警鐘、2023年のネット詐欺被害は125億ドルに。投資詐欺やビジネスメール詐欺など巧妙化する手口に要注意!
2024年3月29日 11:50
2024年3月、米連邦捜査局(FBI)のインターネット犯罪苦情センター(IC3)が発表した「Internet Crime Report 2023」によると、米国においてネット詐欺やサイバー犯罪への苦情が2022年から引き続き高水準を記録しています。
2023年の報告書では、苦情件数は88万418件に上り、被害総額は125億ドル以上に達しました。2022年の80万944件と比較して、苦情の数は10%増加し、被害総額は2022年の103億ドルから22%も増加しています。
1位は投資詐欺で暗号通貨関連の詐欺が多い結果に
被害金額の多いネット詐欺のランキングは、1位が投資詐欺(45億7027万5683ドル)、2位がビジネスメール詐欺(29億4683万270ドル)、3位が技術サポート詐欺(9億2451万2658ドル)、4位が個人情報流出(7億4421万9879ドル)、5位はロマンス詐欺(6億5254万4805ドル)でした。
2022年とランキングに変化はありませんが、注目すべきは、投資詐欺の被害が前年から38%も増加している点です。また、投資詐欺のうち暗号通貨に関連する詐欺が39億6000万ドルとその大部分を占めたことです。ハイリターンを提示して投資家を誘い込み、巨額の資金を騙し取る傾向があります。3位の技術サポート詐欺は高齢者を主なターゲットに、不安を煽った手法が確認されており、前年調査から被害額が増加しています。
企業・組織を狙うビジネスメール詐欺の手口
ビジネスメール詐欺は企業や組織を狙った悪質なサイバー犯罪です。IC3への苦情件数は2万1489件で、被害金額は29億ドルを超え、2022年(27億4235万4049ドル)より約7.5%増加しました。
最近では暗号通貨取引所や第三者決済機関の口座を悪用するケースが増えています。不正に得た資金をすばやく分散させることができるので、捜査機関の追跡を困難にしています。
ビジネスメール詐欺による被害を防ぐには、追加の対策として、二要素認証や多要素認証の活用、メール以外のコミュニケーション手段などを導入するよう呼び掛けています。
高額の被害を受けているのは60代以降の高齢者
IC3が受理した苦情件数を被害者の年代別に見ると、60歳以上(10万1068件)が最も多く、次いで30代(8万8138件)、40代(8万4052件)と続きます。20歳未満からの報告件数は1万8174件と比較的少ないものの、20代から上の年代では、幅広い年代で被害が発生しています。
なお、20代の被害総額は3億6070万ドルですが、30代以上の世代と比べると少ない結果になりました。一方で60歳以上の被害総額は34億ドルに上り、高齢者がサイバー犯罪者の主要なターゲットになっています。
「RAT」による被害拡大の阻止
IC3は、金融機関との連携を効率化し、不正な送金者の資金を凍結する活動など行う、Recovery Asset Team(RAT)を2018年に設立しました。2023年のレポートでは、3008件の事件で計約7億5805万ドルの被害事例に対処したとのことです。その結果、ネット詐欺被害で送金された資金のうち、約5億3839万ドルの資金が凍結されました。
個別の事例では、2023年3月にニューヨークの重要インフラ建設プロジェクト事業関連で5000万ドルの被害が出たビジネスメール詐欺に対処しました。RATの介入により、約4490万ドルが凍結され、その後の追跡でさらに100万ドル以上の資金を凍結しました。
また、コネチカット州の事例では、個人が不動産取引に関連して、ビジネスメール詐欺の被害に遭い、42万6000ドルを失いかけましたが、RATの活躍により、ほぼ全額が回収できたそうです。
ネット詐欺やサイバー犯罪の被害は拡大傾向にあり、被害額も大きくなっています。本連載で個別の事例を学び、未知のネット詐欺に遭遇した場合でも被害に遭わないよう、デジタルリテラシーを向上させましょう。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
「被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー」の注目記事
- みちょぱ、団長安田、ゴリけん…タレントが相次いで詐欺被害を告白、その手口とは
- チェーンメールで有名だった「神の手雲」が15年ぶりにLINEで回ってきた
- マイナポイント第2弾に便乗、「獲得したポイント2万円分が失効する」という詐欺メールが拡散中
- 注文した覚えはないのに? Amazonから代引き商品が送りつけられる詐欺に注意
- キャッシュカード&暗証番号を渡さなくても口座のお金が盗まれることも。自称「警察」から口座開設を求められたら要注意
- 「電話料金の未納があります」、フィリピンからNTTファイナンスをかたる怪しい国際電話がかかってきた
- Facebookで明石家さんまさん、大坂なおみさんなど著名人の写真を悪用したネット詐欺が横行中
- URLが本物そっくりな詐欺サイトに注意! 「ホモグラフ攻撃」などの手法を知っておこう
- ノブコブ吉村さんも遭遇、「PCのカメラからシャッター音! 何か撮影された!?」と驚かせる手口とは?
- SMSで不在通知が届いてもURLはクリック禁止! 偽宅配詐欺に要注意
- そのほかの詐欺事例など、この連載の記事一覧はこちら
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。
※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと