被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
騙されないように注意!
これから日本に上陸するかも! アメリカで3億ドル以上の被害を出している「不動産詐欺」
2022年4月8日 17:09
2022年3月22日、米連邦捜査局(FBI)のインターネット犯罪苦情センター(IC3)が「Internet Crime Report 2021」を発表しました。このレポートによると、被害金額の上位5番目には「不動産/賃貸物件」詐欺が入っています。日本ではあまり耳にしないネット詐欺ですが、将来、日本でも拡がる可能性がありそうです。そこで今回は、不動産詐欺の手口をご紹介します。
2021年にアメリカでは不動産詐欺の被害額が約3億5000万ドル(約428億円)となっています。報告件数は1万1578件で15位なので、1件当たりの被害金額が大きいことが分かります。日本のネット詐欺ではあまり聞かない詐欺ですが、アメリカでは当たり前に起きているのです。
アメリカでは不動産を売買する際、直接お金をやり取りするのではなく、エスクローサービスを仲介するのが一般的です。エスクローとは売買の時に中立的な第三者が仲介し、安全に取引できるようにしてくれる仕組みのことです。
この仕組みを逆手に取った詐欺が起きています。まずは、被害者が利用する融資会社の偽サイトを作り、そこでエスクローサービスのメールアドレスなどの連絡先を掲載します。融資会社指定のエスクローサービスであれば引っ掛かる可能性が高まるからです。そして、メールのやり取りが始まれば、エスクローサービスの会社や不動産仲介業者、販売主などを装い、入金の指示をするのです。
もちろん、入金先は詐欺師の口座なので、物件は手に入りませんし、お金も戻って来ません。入金されると、詐欺師は海外口座からすぐに資金を引き出し、行方をくらませるので、お金を取り戻せる可能性はほとんどありません。
第三者に送金する前には、慎重に確認することが重要です。特に、初めてのエスクローサービスの会社を使う場合は、徹底的に本物であることを調べましょう。どういう認定を取得しているのかチェックしたり、口コミを検索しましょう。また、不動産仲介業者や契約書に載っている電話番号に全て電話し、その取引と振り込み先が正当なものであるかどうか確認します。
定評のあるエスクローサービスを使えば安心できます。詐欺師が特定のエスクローサービスを指定している場合は要注意です。特に聞いたことがないエスクローサービスは詐欺に引っ掛かる可能性が出てきます。
賃貸物件で虚偽の広告を載せて騙す手口も
住宅ローンの支払いが滞ると法的な手続きに則り、差し押さえが行われます。当然、このような状況をネット詐欺師は見逃しません。差し押さえ前の公開記録を元に、政府や政府機関を装って「差し押さえを回避できる」と声をかけるのです。そのためには、ある程度の手数料が必要だとして金銭を奪うのです。
もちろん、そんな手続きはなく、支払ってしまえば詐欺師の儲けになるだけです。被害者はさらに苦しい状況に追い込まれてしまうことでしょう。
また、賃貸物件の場合は、SNSや物件サイト、掲示板に虚偽の広告を載せて被害者を釣り上げます。格安の家賃を提示しているので、物件を逃したくない被害者は、急いで連絡をして、言われるままに物件を見るための前払い金などを支払ってしまうのです。他にも、保証金や申請料、前家賃として金銭を要求してくることもあります。契約書を送ってくることもありますが、中身はでたらめです。
また、内見したいことを伝えると、「今、海外にいるので外から自由に見てくれ」と言ってきます。実際に賃貸物件として出されている物件の内部や外観の写真を物件サイトから見つけて悪用していることもあるため、メールだけで契約を進めるのではなく、内見まで確実にできることを確認する必要があります。
日本ではまだ不動産契約は気軽に行うものではないので、こうしたネット詐欺が広まるまでには時間がかかりそうです。しかし、この手の詐欺から身を守るために事例をあらかじめ把握しておきましょう。物件を見るために前払いを要求されたり、提示された家賃が相場よりも安すぎるなら疑うようにしましょう。そして、メールだけで契約を進めるのもNGです。物件所有者とも代理人とも顔を合わせずに契約するのは避けましょう。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
「被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー」の注目記事
- みちょぱ、団長安田、ゴリけん…タレントが相次いで詐欺被害を告白、その手口とは
- チェーンメールで有名だった「神の手雲」が15年ぶりにLINEで回ってきた
- マイナポイント第2弾に便乗、「獲得したポイント2万円分が失効する」という詐欺メールが拡散中
- 注文した覚えはないのに? Amazonから代引き商品が送りつけられる詐欺に注意
- キャッシュカード&暗証番号を渡さなくても口座のお金が盗まれることも。自称「警察」から口座開設を求められたら要注意
- 「電話料金の未納があります」、フィリピンからNTTファイナンスをかたる怪しい国際電話がかかってきた
- Facebookで明石家さんまさん、大坂なおみさんなど著名人の写真を悪用したネット詐欺が横行中
- URLが本物そっくりな詐欺サイトに注意! 「ホモグラフ攻撃」などの手法を知っておこう
- ノブコブ吉村さんも遭遇、「PCのカメラからシャッター音! 何か撮影された!?」と驚かせる手口とは?
- SMSで不在通知が届いてもURLはクリック禁止! 偽宅配詐欺に要注意
- そのほかの詐欺事例など、この連載の記事一覧はこちら
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。
※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと