被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

騙されないように気を付けよう!

ネットバンキングを使っていないのに勝手にネット送金される詐欺に注意!

電話で情報を聞き出し、ネットバンキングに不正アクセスする事例が多発しています

 2月10日、岩手県の60代女性のところに、自治体職員を名乗る男から電話がありました。過払いの保険金があるので返還するというのです。お金をもらえるならありがたい、とか、過払い金でお金が戻るようなCMをよく見るといった理由で、警戒していなければ信じてしまう人もいるでしょう。しかし、これは詐欺の手口なので注意しましょう。

 詐欺師は銀行の口座番号や暗証番号を聞き出します。そして、その情報を使い、女性の銀行口座でネットバンキングの登録手続きを行います。最終的な本人確認をクリアするためには、再度女性に連絡し、認証用のフリーダイヤルに自宅の固定電話から自分で電話させました。

 これで犯人は女性の銀行口座に登録したネットバンキングサービスに不正ログインできるようになります。そして、14~15日にかけて数十回の送金を行いました。

 岩手県警によると他にも同じような電話がかけられており、被害が出ているそうです。

 ネットバンキングから不正に預金を引き出す犯罪は、犯人が銀行やATMに直接行かずに済むので狙われがちです。2019年には1872件、合計25億2100万円の被害が出ています。

 多くは、フィッシング詐欺や、ウイルスに感染することでネットバンキングのIDとパスワードを盗み出す手口なのですが、今回はアカウントを登録するところから犯人が行っています。これはとても巧妙な詐欺です。

 自分はインターネットなどに詳しくないからネットバンキングはやらない、と登録せずに銀行を利用している方はたくさんいます。それなのに、保険金還付を理由に情報を詐取され、勝手に登録されてしまってはたまりません。

 なぜこのようなことが起きるのでしょうか? ある銀行の手続きを例に、ネットバンキングの登録手順を見てみましょう。まず、オンラインで申し込みますが、ここで必要なのは支店番号と口座番号、そしてキャッシュカードの暗証番号です。次のステップでログインIDやパスワード、メールアドレスなどを登録しますが、これは犯人が自分で登録できます。

 銀行は、不審なアクセスを発見した場合などは追加で認証を行うことがあります。「あなたの出生地はどこですか?」などの質問が行われ、不正アクセスをはじくのです。しかし。今回は犯人が登録しているので、事前に登録していた質問の答えも分かっています。

 実際に振り込む際も、スマホの端末の種類やメールアドレス、パスワード、追加認証、登録電話番号などの入力を行いますが、これら全ては登録時に犯人が設定したものなので、本人確認になりません。電話番号認証を行う際には、被害者に電話をかけさせるというわけです。

 つまり、犯人は最初の電話で口座情報を聞き出し、2回目の電話で電話番号認証用の電話番号に連絡させるだけでよいのです。

 対策として、まず、自治体や銀行などの金融機関が電話で暗証番号を聞くことは絶対にないことを把握しておきましょう。口座番号を聞き出すこともないでしょう。過払い金が返還されるなどと言われても、この時点で詐欺だ、と判断して下さい。電話を切った後で、もし本当だったらどうしようと思ったのなら、そのときに自分から自治体や銀行に連絡して相談しましょう。そうすれば、詐欺であることを確認できます。

 パスワードや暗証番号などの重要情報は人に教えない。何かお金が絡んだ話の場合は、自分からその組織・企業などに連絡して事実を確かめる、というのが基本です。ネットを使っていなくてもネットバンキング詐欺被害に遭う可能性はあります。本連載で個別の事例を学び、未知のネット詐欺に遭遇した場合でも被害に遭わないデジタルリテラシーを身に付けましょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

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※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
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