被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
それってネット詐欺ですよ!
「振り込みの受付が完了しました」と連絡が来た
2018年6月8日 06:00
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
ある日、有名銀行から「振り込みの受付が完了しました」というメールが来る。確かに自分が使っている銀行だし、先週手続きしたが、連絡が来るのが遅いし、そもそも金額が違う。もしかして、何かの不正アクセスか?と思ったら、メールにWord文書の添付ファイルが付いている。口座に不正アクセスされていて、貯金を勝手にどこかに送金されてはたまらない。あわててWord文書を開くと、ちょっと変な日本語だが画像をダブルクリックするように書いてある。そして……。
その銀行を使っていない人には一発で分かるが、これはネット詐欺だ。あれ?と思わせて、添付ファイルを開かせるのが目的だ。以前は、Office文書のマクロ機能を使ったウイルスが主流だったが、現在は埋め込んであるスクリプトを実行させて、ウイルスをダウンロードさせるようにする仕組みだ。
怪しいファイルを開かないなんて当たり前、と思っている人はいつか引っかかることだろう。この手の詐欺メールは無数のパターンがあるのだ。筆者のところには毎日何百通も詐欺メールが届くが、時々開いてしまいそうになることがある。
「請求書です。ご確認ください」とか、「振込口座を教えてください」「注文内容の確認」「佐藤です」「写真をお送りします。チェックお願いします」「宅急便お届けのお知らせ」といったさまざまなパターンがある。佐藤さんと連続でメールでやりとりしている途中だと、なかなか気が付きにくい。メールアドレスもそれっぽい文字列のものを付けていることが多いためだ。さらに筆者は、請求書を出すだけでなく受け取ることもあるので、請求書関連のメールが来ると本当に判断に困る。ネット詐欺をしている人にとっては、迷惑メールを何百万通も送り、そのパターンで1人でもばっちりはまる人がいればいいのだ。もしいない場合は、文面を変えて次々と送信すればいいだけ。別に仕入れがあるわけでもないし、すぐに逮捕されるわけでもない。
万一、引っかかり、ファイルを実行してしまい、警告画面が開くのによく読まずに進めてしまうと、ネット経由でウイルスに感染してしまう。対応策としては、まずセキュリティソフトをきちんと運用しておくこと。例えば、「スキャンデータです」というメールに添付されていたWordをコピーしようとすると、きちんとWindows Defenderが検出、排除してくれる。
何度かわざと感染したこともあるのだが、いきなりシステムが壊れたりすることはなかった。調査した結果、仮想通貨やネット銀行からお金を不正に引き出そうとするウイルスが多いようだ。国内で、大きな被害はまだ出ていないが、注意しておいたほうがいい。
シチュエーションや差出人、文面などで99%は違和感を感じることができる。しかし、残り1%で運悪く完全に勘違いしてしまう内容が来ると、引っかかってしまう可能性は非常に高い。この手のメールは多いので、慣れてしまえば被害に遭いにくくなる。詐欺の手法を知ることが、最も効果のある対策方法とも言えるだろう。
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DLIS(デジタルリテラシー向上機構)
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援する団体で、現在、NPO法人の申請中です。今後は、媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行う予定となっています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。