被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

だまされないように注意!

チェーンメールで有名だった「神の手雲」が15年ぶりにLINEで回ってきた

 先日、筆者の身内からLINEで画像が送られてきました。手の形をした雲が写っており、「不思議な雲だね。子どもにも見せてあげて」とのこと。画像はSNSのメッセージからのキャプチャーのようで、画像の上には「幸せになって欲しい人に贈ると、受け取った人は幸せになり、願いが叶うそうです!」と書いてあります。

 また、その文章によると、これは友人や家族が沖縄で撮影した「神の手」と呼ばれるもので、数年に一度しか現れないレアな光景だというのです。最後には、「送る相手が多いのは良い事だそうです!!」とありました。

身内から送られてきた「神の手雲」の画像です

  これはチェーンメールのLINE版(チェーンLINE)です。チェーンメールとは、受け取った人に同様の手紙を複数人に出すよう促し、連鎖(チェーン)させていくことを目的としたいたずらで、インターネットがない時代には、「この手紙と同じ文面を友人7人に送らないとあなたに不幸が訪れる」という、「不幸の手紙」が有名でした。

 不幸の手紙を送るのは良心がとがめますが、「幸福を分けてあげよう」のような文面によって人の親切心を利用し、結局同じチェーンメールをさせるのが「幸福の手紙」です。インターネットが普及してからはメールを使った同様のものが話題になり、多くの人が手口を知ることで沈静化し、また皆が忘れた頃に、ときにはSNSなどに媒体を変えて流行る、ということを繰り返しています。

 ちなみに、手の形をしたこの「神の手雲」は日本では2007年ごろに出回ったいたずら画像で、筆者は15年ぶりに受け取りました。もちろん合成した画像です。当時はよく出回っていましたが、すぐに見なくなりました。しかし、ここ数年復活しているようで、2021年には芸能人もInstagramに投稿したことが問題になり、注意喚起の報道が行われていました。

 「願いが叶う」のような話は、受け取る人によってはうれしい内容ではありますが、特に根拠のない話であり、拡散させることで多くの人の時間をうばうことにもなります。基本的には画像を拡散させるだけのいたずらですが、中には伝播力を利用してフィッシングサイトに誘導したり、LINEに誘導し、何らかの詐欺商材を購入させるようなケースもあるようです。自分がネット詐欺を手助けした場合、被害者は当然転送してきた人に不満を抱くことでしょう。被害が起きてしまっては目も当てられないので、届いても転送してはいけないのです。また、実際に詐欺被害が起きなかったとしても、自分がいかにデジタルリテラシーが低いのかを暴露してしまうことになります。

 スピリチュアルな画像だけでなく、他にも、怖い話だったり、スベらない話といったパターンもあります。特に、災害が発生した時など、多くの人が関心を寄せている事柄に関して同様のものが出回ることもあります。例えば、東日本大震災の時には、「コスモ石油の爆発により有害物質が雲などに付着し、雨などといっしょに降る」といったチェーンメールが出回り、コスモ石油がウェブサイトでこの内容を否定しました。また、電力節約や寄付の呼び掛けをうたうチェーンメールも出回りました。

 チェーンメールやチェーンLINEを受け取ったら、拡散せず、削除するようにしましょう。もちろん、そのメールに返信したり、記載されているリンクを開いてはいけません。

 情報をシェアしたり、転送する際は必ず、その内容を検索してみてください。有名なチェーンメールやチェーンLINEであればすぐに分かるはずです。本当にその情報が真実かどうか裏を取りましょう。デマを拡散することで、企業や特定の人物を誹謗中傷することに繋がることもあります。

 本連載で個別の事例を学び、未知のネット詐欺に遭遇した場合でも被害に遭わないよう、デジタルリテラシーを身に付け、引っ掛かって人に迷惑をかけないようにしましょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

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※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと