被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
それってネット詐欺ですよ!
「1億円あげますので受け取ってください」というメールが来た
2018年6月1日 06:00
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
ある日、メールやSNSのメッセージで「1億円あげますので受け取ってください」という連絡が来る。金額は3000万円のこともあるし、100億円のこともある。ストーリーもさまざまだ。
「社会にいいことをしたいという善意からの提案です」とか「余命がほとんどなく家族もいないので、遺産を受け取って欲しい」といった内容。手が込んでいるものだと、タックスヘイブンにプールしてある企業の利益に調査が伸びそうなので、一度○億を送り、その後、半分だけ指定の口座に入金してほしい、残りは手数料で受け取ってくれ、といったストーリーになっている。
そして、以降のやり取りは、情報の漏えいを防ぐために、あるサイトで行いましょう、とURLが記載されている。開いてみると、有料のチャットサイト。ポイントを支払えば、メッセージの送受信をできる仕組みだ。
数億通もばらまくこの手のメッセージのうち、ごく一部の人は、とりあえず返信してみようと考える。たぶんあり得ないだろうが、話半分でももしかしたら、と思う。数百円の手数料を支払って半信半疑で返信するが、思いのほか真面目な長文の返信が来る。さらに返信すると、送金までの手順を説明される。数億もの現金をそのまま振り込むことができないという、本物の一般常識を使ったやり取りが始まる。その連絡をするためのポイントが数千円、数万円と課金されていく。もちろん、ユーザーも警戒はしている。もし、前金を要求されるようなことがあれば、詐欺なので撤退しようと、肝に銘じているのだ。
話は佳境に入り、相手は1円も要求してこない。これはもしかしたら、と期待度が少し上がる。チャットサービスの利用料金もかなりかさんでくるが、入金される金額と比べればはした金だ。
お分かりだろうか。このチャットサービスが詐欺の主体なのだ。もちろん、謎の大金持ちなど存在しない。しかし、ある程度課金して話が進んでしまうと、心理的にもう引き返せなくなってしまうのだ。とてもひどいネット詐欺だと言える。
ほかにもパターンがあり、有料のチャットサービスに引っ掛からなそうなら数千円分のAmazonギフトカードで相互確認を取りたいなどと言って、小金を詐取することもある。逆に、王道と言えるが、来週1億振り込むから、銀行を安心させるために明日500万円の保証金を振り込んでくれ、とメッセージが来ることもある。
こちらの対策は、「あり得ないことはあり得ない」と心を強く持つこと。そして、引っかかってしまったら、最初の段階で誰かに相談すること。もちろん、相手は「情報が漏えいしたらこの話は終わり」と予防線を張ってくるが、怪しいと思ったら信頼できる人に相談するようにしてほしい。
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DLIS(デジタルリテラシー向上機構)
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援する団体で、現在、NPO法人の申請中です。今後は、媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行う予定となっています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。