被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

ネット詐欺に要注意!

FBIが注意を呼び掛け、2022年は投資詐欺やサポート詐欺が猛威を振るう結果に。60代以上の被害総額は2倍近く増加

 2023年3月、米連邦捜査局(FBI)のインターネット犯罪苦情センター(IC3)がインターネット犯罪の統計「Internet Crime Report 2022」を公開しました。IC3はさまざまなオンライン詐欺やサイバー犯罪の苦情を受け付けている団体で、これまでに730万件以上の情報が提出されています。

 昨年発表された2021年の統計では、苦情件数は84万7376件で、被害総額は69億ドルでした。2022年の統計では、クレーム数は80万944件と微減しましたが、被害総額は103億ドルと大幅に増えています。

前回の統計と比べて、被害者は少し減りましたが、被害金額は増大しました

 被害金額の多いネット詐欺ランキングでは、1位が投資詐欺(33億1174万2206ドル)、2位がビジネスメール詐欺(27億4235万4049ドル)、3位がサポート詐欺(8億655万1993ドル)、4位が個人情報漏えい(7億4243万8136ドル)、5位がロマンス詐欺(7億3588万2192ドル)でした。

 2021年と比べると、2位だった投資詐欺は被害額が倍以上になり、今年は1位になりました。世界的な不景気の中、少しでもお金を稼ごうという心理をネット詐欺に突かれたと見られます。

 サポート詐欺の順位が6位から3位になり、被害金額も倍以上に増えています。日本でも昨年はサポート詐欺が流行っており、やはりグローバルの流れに沿った状況だったようです。

 前回1位だった、ビジネスメール詐欺は2位に下がりました。とは言え、被害金額は前年と比べて増加しています。被害者数は9位なので、企業をターゲットにするネット詐欺は1件当たりの被害金額が大きいことが分かります。一方、ロマンス詐欺やランサムウェアの被害は発生件数、被害総額共に減少しました。

ネット詐欺の被害金額ランキングです

 2022年に猛威を振るったネット詐欺のトレンドも紹介されていました。ビジネスメール詐欺は、企業をターゲットにして資金移動を行わせる詐欺です。以前は、メールにハッキングしたり、不正な送金要求を行うといった手口でしたが、最近は金融機関が投資家に代わって有価証券の保管・管理を行うカストディアル口座を暗号通貨の交換に利用したり、被害者に直接暗号通貨を送金させたりして、資金を素早く分散し、追跡されにくくする手口も増えています。また、通常の銀行口座ではなく、被害者の投資用口座を狙うケースも増加しているそうです。

2022年の暗号通貨投資詐欺の手口の例

 投資詐欺の中でも、暗号通貨を利用した手口の被害が2021年は9億700万ドルから2022年は25億7000万ドルと、183%も増加しています。多くの被害者、損失をカバーするために多額の借金を背負っているそうです。

 レポートでは次の手口が確認されたことを報告しています。

1.分散型金融の一種である流動性マイニングという手法に誘い、最終的に被害者の資金を丸ごと盗みます。
2.SNSアカウントをハッキングしてなりすましたうえ、その友人をターゲットに、偽の暗号通貨投資を勧誘します。
3.有名人になりすまし、被害者と親密になり、暗号通貨を投資する方法を教え、暗号通貨詐欺に誘導します。
4.不動産業者に接触し、高価な不動産の購入契約後、巨額の暗号通貨口座を管理していることを伝え、偽の投資に勧誘します。
5.偽の投資会社が出す求人に応募した人に、投資詐欺を持ち掛け、可能な限りのお金を盗み出します。

投資詐欺のほとんどは暗号通貨詐欺の手口が占めています

年代別の苦情件数では30代が最多

 年代別に寄せられた苦情件数を見ると、30代が最も多く、60代以上、40代と続きます。20歳以下は少ないものの、20代から被害者が多くなっています。しかし、20代の被害金額は比較的小さいのが特徴です。やはり年齢が上がるごとに、被害総額も増えています。特に、60代以上の被害総額が31億ドルと前年の16.8億ドルと比べても2倍近く増えています。ネット詐欺師も騙し取る金額を増やそうと努力していることが分かります。

20代のみ昨年と比べて被害件数、被害金額ともに減少しましたが、そのほかは増加傾向にあります

 本連載では、今回紹介した全ての手口を詳しく解説しています。事例を知っていれば、詐欺の被害に遭う可能性を大きく減らせます。ぜひ、転ばぬ先の杖として、ご一読ください。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと