清水理史の「イニシャルB」

【夏休み特別企画】半日でできる! 格安ミニPCを使った「宅内」パーソナルストレージ

ミニPCでNextcloudの宅内パーソナルストレージ実験環境を作る

 手元に余っているミニPCやセールなどで格安で販売されているミニPCを使って、宅内パーソナルストレージを作ってみてはどうだろうか?

 「宅内」のみに限れば、Nextcloudを使って短時間かつ簡単に、ファイル同期やチャット、タスク管理などが可能なオールインワンのサーバーを構築できる。今回の構成は簡易設定なので、実用的というよりは、あくまでも実験用という感じだが、ほぼUbuntuのインストールで済むので、長期休暇の暇つぶしに楽しんでみてはどうだろうか?

型落ちのミニPCで遊ぼう

 N100ブームのときに購入したミニPCが手元に余っていないだろうか? 今回は、そんなミニPCを、休暇のヒマつぶしに活用しようという企画だ。

 似たような構成は、7月末に掲載した本連載の「M.2スロット×6搭載のミニPC「Beelink ME mini」で、1台5役の自宅クラウドを作ってみた」でも紹介した。こちらは、筆者も普段から実際に使っているが、さすがにここまでやろうとすると、費用も時間も手間もかかるので、今回は半日程度で、誰でもサクッと、低コストで作れる実験環境を紹介する。

 具体的には、ミニPCに「Nextcloud」をインストールして、ファイル同期やチャット、タスク管理など、多彩な機能を体験することをゴールに設定したい。

 Nextcloudは、古くからあるオープンソースのサーバーソフトウェアだ。公式サイトで「on premise content collaboration platform」と紹介されている通り、非常に多くの機能を提供しているのが特徴で、例えば次のような機能を利用できる。

  • Nextcloud Files:ウェブベースまたはアプリでのファイルの保存や共有、同期
  • Nextcloud Talk:テキストチャット、ビデオ/オーディオ会議
  • Nextcloud Groupware:カレンダー、連絡先、メール、タスク管理
  • Nextcloud Office:LibreOfficeベースのオンラインOfficeスイート

▼Nextcloud
Download and install

 OneDriveやGoogleドライブをイメージしてもらうのが最も近いが、豊富に用意されているアプリを追加することで、用途や好みによって機能を拡張できるのも魅力のひとつとなっている。

 昨今は、市販のNASもパーソナルストレージ的な傾向が強く、最近話題になったUGEENのNASyncシリーズなども標準ではSMBが無効になっており、ウェブベースでのファイル管理やアプリによる同期が主流になっている。そんなこともあり、一周回って、Nextcloudが再注目されつつある状況だ。

GMKtec Nucbox G3で「宅内」用に構成する

 ということで、今回は、NextcloudをミニPCにインストールする。利用したミニPCは、筆者が2023年に購入したGMKtecのNucbox G3だ。当時1万8000円前後で購入したもので、CPUはN100、メモリは8GB、SSDは256GBという構成だった。

今回インストールしたGMKtecのNucbox G3

 今回は、このPCのメモリを16GBに増やし、SSDも1TB(M.2 SATA)に交換して、Nextcloudをインストールすることにした。

 ただし、今回の構成ではアクセス環境は宅内のみとする。外出先からアクセスできるようにするには、ドメインの取得、証明書の取得、リバースプロキシの構成(環境によってはポートの解放も)などが必要になるので、ちょっとハードルが高い(詳細は前掲の過去記事を参照)。

 とりあえずNextcloudを体験してみることをおすすめしたいので、内部からのみアクセス可能な状態でセットアップする。これなら、長期休みの半日を使って、手軽に楽しむことができるはずだ。

1. 準備

 まずは、準備から紹介する。Nextcloudのインストールといっても、コマンド一発で済むので、基本的にはUbuntuのインストールと言い換えてもいい。メディアを用意してインストールするだけと簡単だ。

1-1. Ubuntu Server 24.04をダウンロードする

 公式サイトからUbuntu Server 24.04 LTSをダウンロードする。UbuntuはDesktop版とServer版が用意されているので、今回は後者を利用する。バージョンは24.04 LTSを選択した。

▼Ubuntu Serverのダウンロード
Get Ubuntu Server

Ubuntu Server 24.04 LTSをダウンロード

1-2. メディアを作成する

 ダウンロードしたUbuntuのISOファイルをUSBメモリに書き込む。今回はRufusを利用した。全て標準設定で書き込めばいい。

▼窓の杜からRufusをダウンロード
「Rufus」ブート可能なISOイメージファイルをもとにブータブルUSBメモリを簡単に作成(窓の杜)

今回はRufusを使ってインストール。標準設定のままでOK
書き込みモードも標準の「ISOイメージモード」でOK

2. Ubuntuのインストール

 メディアが用意できたらUbuntuをインストールする。今回は、インストール先のPCでWi-Fiが使えたので、Wi-Fiでネットワークに接続する構成にする。サーバーなので、本来は有線を選択したいところだが、今回は実用性よりも、楽しく遊ぶことが目的なので、Wi-Fiで構成する方法を紹介する。

2-1. ミニPCをブートする

 ミニPCにUSBメディアを装着し、電源を入れる。今回のPCでは、「F7」キーでブートメニューを表示できるので、メニューからUSBメディアを指定してブートする。

USBメディアでブート

2-2. 言語とキーボードの設定を行う

 Ubuntuのインストールの最初の設定は言語とキーボードになる。言語は、「English」で、キーボードレイアウトで「Japanese」を選択しておく。

日本語キーボードを選択

2-3. インストールタイプを選択する

 インストールタイプは標準の「Ubuntu Server」のままインストールする。

標準設定のままでOK

2-4. ネットワーク(Wi-Fi)設定を行う

 ネットワーク設定では、前述したようにWi-Fiを選択する。「wlp1s0」がWi-Fiのアダプターなので、これを選択し、「Edit Wi-Fi」から接続先のSSIDを選択し、パスワードを入力する。

wlp1s0がWi-Fiアダプター。検出されない場合は有線で接続
SSIDを選択し、パスワードを入力する

 接続できたら、IPアドレスを固定する。「Edit IPv4」を選択し、以下のように設定する。

  • Subnet:ネットワークのアドレス。ルーターのアドレスが192.168.1.1なら「192.168.1.0/24」、192.168.0.1なら「192.168.0.0/24」のように設定する
  • Address:このサーバーに割り当てるIPアドレス。末尾の値を固定で割り当てる
  • Gateway:通常はルーターのアドレス。一般的には192.168.1.1か192.168.0.1
  • Name Servers:DNSサーバーのアドレス。一般的にはルーターのアドレスを指定
IPアドレスを固定で設定する

2-5. プロキシとミラーを確認する

 インターネット接続にプロキシサーバーを使う場合は設定。家庭では存在しないのでそのまま次に進める。ミラーサーバーの接続テストが実施されるのでしばらく待ってから次に進める。

プロキシはなし
ミラーの確認。しばらく待って「passed tests」と表示されたら進める

2-6. ストレージの設定を行う

 インストール先のストレージを選択する。今回はSSDが1台のみなので、そこを選択。標準設定のまま、全てのディスク領域を利用する。

SSDの全領域を使う

 ボリュームの構成画面では、ルートのボリュームを拡張しておく。標準ではSSDの領域の一部しか使われないので、容量を増やしておく。

「/(ルート)」の容量が100GBなので、編集する
今回は928.457Gまで使えるが、700GBに設定しておいた

2-7. ホスト名とユーザーアカウントを設定する

 サーバーのホスト名とUbuntuの管理用のアカウントを作成する。

2-8. Ubuntu ProとSSHの設定を行う

 10年間のセキュリティアップデートとパッチを適用可能なUbuntu Proの選択は、標準設定のままスキップする。SSHはリモート管理に必要なのでインストールしておく。ただし、セキュリティホールになる可能性があるので注意。できれば証明書ベースの認証のみにしておきたい。

Ubuntu Proはスキップ
SSHサーバーはインストールしておく

2-9. パッケージをインストールする

 最後にUbuntuと一緒にインストールするパッケージを選択できる。一覧に「nextcloud」があるので、これにチェックを付けると、自動的にNextcloudがインストールされるが、今回は手動でインストールするのでチェックを外す。結果的に同じなので、チェックを付けてもいい。チェックした場合は以降の手順は不要。

nextcloudをインストールできる

2-10. Ubuntuにログインする

 インストールが完了したら、プロンプトが表示されるので、インストール時に指定したアカウントとパスワードでログインする。

ログインする

2-11. Nextcloudをインストールする

 ログイン後、「sudo snap install nextcloud」コマンドでNextcloudをインストールする。インストールが完了すればサーバー側での作業は完了だ。

SnapでNextcloudをインストール

3. 初期設定

 インストールが完了したら、ネットワーク上の別のPCから、ウェブブラウザーでNextcloudに接続する。

 インストール時に固定で設定したIPアドレスを指定して、「http://192.168.50.173」のようにHTTPでアクセスする。今回は宅内のみでの利用になるうえ、とりあえずNextcloudを動かして体験することが目的なので、このあたりの設定は省略する。HTTPSでアクセスするには設定が必要なので、興味がある人はsnapパッケージのWikiを参照してほしい。

▼Nextcloud snapパッケージWiki
Install Nextcloud snap

 初期設定は、アカウントの作成とアプリのインストールのみなので簡単だ。アプリは基本的に全て選択してインストールすることをおすすめする。

管理者アカウントを作成
アプリは全てインストールしておく

あくまで楽しむためのもので、実用性は高くない

 後はNextcloudの使い方になるのだが、非常に多機能なアプリなのでここでは解説を省略する。直感的に使える製品なので、いろいろ楽しんでみてほしい。

 筆者が試した限りでは、PCからの操作に関しては特に問題ない印象だ。標準のアプリに加えて、いくつかアプリを追加してみたが問題なく動作している。また、デスクトップアプリをインストールして同期もしてみたが問題なく実行できた。

 ただ、iOS向けのアプリでドキュメントを組み込みのOfficeアプリで開けなかったり、写真の自動アップロードでサブフォルダーを指定すると失敗したりする状況が見られた。HTTPS化をしないと、一部の動作が不安定なのかもしれない。

 とりあえず、今回の例では、最低限動かすことはできるが、実際に運用するとなると課題は多くありそうだ。外出先からの利用もできたほうがいいが、そうなると結構難易度は高くなる。場合によっては、snapではなく、以前紹介したDocker ComposeでNextcloud AIOを稼働させた方が楽かもしれない。

 このあたりは、検証の余地がありそうなので、休暇の時間に余裕がある人は、いろいろ試してみるといいだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中