清水理史の「イニシャルB」

冬休みに「初めての自宅サーバー作り」を、1.8万円で買ったN100ミニPCにCasaOSをセットアップ

GMKtec G3を簡単に自宅サーバーにする

 今年の冬休みは、自宅サーバーでも作ってみてはどうだろうか? ハードウェアはN100搭載の低価格ミニPC、ソフトウェアはCasaOSを使えば、誰でも簡単にサーバーを構築できる。今回は、GMKtecのG3を利用して、ファイルサーバーとマイクラサーバーを構築する方法を紹介する。

2万円以下でGMKtec G3を調達

 「自宅サーバーを作ってみたい……」。そう考えている人に向けて、今回は、なるべく安く、簡単にできる自宅サーバーの作り方を紹介する。

 用意するのは、最近人気のミニPCだ。

 サーバーというと、高性能なCPUや大容量のメモリ、複数台のストレージが必要に思われるかもしれないが、自宅で趣味として動かす簡単なサーバーであれば、CPUパワーもほとんどいらないし、ストレージも最近は信頼性が高くなっているうえ、一時的な共有やバックアップ先と割り切れば256GB~1TB程度の一般的な容量のSSDで十分。メモリも8〜16GBあれば問題ない。

 とりあえず自宅サーバーがどんなものか体験するには、ミニPCはなかなかいい教材と言える。

 というわけで、今回調達したのは、Amazon.co.jpで7000円ほどのクーポンが提供されていたときに実売1万8760円で購入した、GMKtecのG3というミニPCだ。2023年11月20日時点では、実売2万4000円前後となっている。

N100搭載のミニPC。クーポンの割引があるタイミングで購入したため2万円以下で購入できた
正面
背面

 CPUはN100で、DDR4 8GBのメモリと256GBのSSD(M.2 NVMe)を搭載しており、ネットワークはWi-Fi 6と2.5Gbps有線LANに対応。OSは標準でWindows 11 Proを搭載している(とりあえず1度起動してファームウェアとライセンスの紐づけすることをおすすめする)。

 内部には、2242サイズながらM.2 SATAも用意されているうえ、Amazon.co.jpのクチコミによると32GBメモリモジュールも認識するようなので、自宅サーバーとしては、なかなか素性のいいモデルと言える。

 せっかくなら、「メモリとSATAを追加してProxmoxで」と言いたいところだが、今回は、初めて自宅サーバーを作る人向けの記事なので、これらは次回以降に紹介することにする。

内部の様子

CasaOSで「自分専用サーバー」を作る

 今回利用するOSは、CasaOSにする。GUIベースで操作できる簡易的なサーバー用OSで、簡易ファイルサーバーやDockerベースのアプリなどを簡単に稼働できる環境となる。

ファイル共有やDockerを利用したアプリなどを簡単に扱えるCasaOS

 イメージとしては、SynologyやQNAPなどのNAS向けOSに近いが、決定的に違うのは、シングルユーザーでの利用を想定したパーソナルクラウドOSであるという点だ。

 複数ユーザーでのファイル共有などは想定されておらず(つまり、ユーザー管理やアクセス権設定などはない)、あくまでも用途は「自分専用サーバー」となる。むしろ、小型のミニPCで作る自宅サーバーにはうってつけだ。

▼CasaOS公式サイト
CasaOS

 OSと言っても、専用のOSで動作するわけではなく、UbuntuやDebianなどのベースとなるLinux上で動作する。このため、Linuxをインストールしてから、CasaOSをインストールするという流れになる。

STEP 1:Ubuntu Desktopをダウンロードする

 利用するOSはUbuntu 22.04.3 LTSにする。

 Serverを利用したいところだが、はじめての人でも簡単に構築できるようにするために、今回はDesktop版を利用する。Desktop版を利用することで、ミニPC内蔵のWi-Fiを簡単に有効化できるので、無線で動作するサーバーに仕上げることができる。

 まずは、Windows PCで、以下のサイトから、Ubuntu Desktop 22.04.3 LTSをダウンロードしておこう。

▼Ubuntu Desktopのダウンロードページ
Download Ubuntu Desktop

今回はUbuntu Desktopをダウンロードする

STEP 2:Ubuntuインストール用のUSBメモリを作成する

 ダウンロードできたら、ファイルをインストール用USBメモリに書き込む。

 削除してもいいUSBメモリを1本用意し、ツールを使ってイメージを書き込む。イメージの書き込みにはRaspberry Pi Imagerを利用した。Raspberry Pi Imagerは、出どころがはっきりしているツールで、しかも汎用的に使えるのでインストールしておくと重宝する。

▼Raspberry Pi Imagerのダウンロード
Raspberry Pi OS

Raspberry Pi Imagerを使ってインストール用USBメモリを作成する

STEP 3:ミニPCにUbuntuをインストールする

 USBメモリをミニPCに装着し、電源をオン。起動時に「Del」キーなどを押してUEFIを呼び出し、USBメモリから起動する。

 今回のGMKtek G3の場合は、「Save & Quit」画面からブートオーダーを一時的に変更してUSBメモリから起動した。

 インストーラーが起動したら、言語やキーボードレイアウトの選択、インストール先の選択、ユーザーの作成など、画面の指示に従ってインストールしておこう。

 なお、インストール方法は「最小インストール」でかまわない。

Ubuntuをインストールする。最小インストールでかまわない

STEP 4:Wi-Fiに接続する

 今回は、Wi-Fiを利用してネットワークに接続する。インストール時にWi-Fiに接続するか、インストール後にUbuntu Desktopの右上のネットワークアイコンを利用して、Wi-Fiに接続しておく。これにより、CasaOSにもWi-Fiで接続できるようになる。

Ubuntu Desktopを利用すればWi-Fi接続が簡単。今回はインストール後に接続した

STEP 5:コマンドを実行してCasaOSをインストールする

 ターミナルを起動し、以下のコマンドを入力する。

wget -qO- https://get.casaos.io | sudo bash
インストール用のコマンド一発で自動インストールできる

 なお、今回はCasaOSを利用したが、現在ベータテストが行われている上位OSとなるZimaOSも存在する。

 CasaOSの機能に加えて、リモートアクセス機能や自動バックアップ機能が搭載されていることもあるが、ベータ版なので、不具合がある可能性もあるので、今回はCasaOSを利用している。興味のある人はZimaOSも試してみるといいだろう。

▼ZimaOS(ベータ版)のダウンロード
GitHub - IceWhaleTech/zimaos-rauc

STEP 6:初期設定を行いファイル共有を設定する

 CasaOSのインストールが完了したら、アクセス先のアドレスが表示されるので、ネットワーク上のPCからウェブブラウザーで、このアドレスにアクセスすればいい。

 アドレスがわからなくなった場合は、ターミナルで「ip a」と入力してアドレスを確認することができる。

インストール完了。表示されたアドレスでアクセスできる
「ip a」コマンドでもIPアドレスを確認できる

 初期設定画面が表示されたら、アカウントを作成すれば設定は完了だ。この状態で、「Files」をクリックすれば、ウェブブラウザーから自分のファイルをアップロードして保管することができる。

パーソナルクラウドとしてブラウザー経由で自分のファイルを保存できる

 NASのようにファイル共有したい場合は、「Files」の「Data」で新しいフォルダーを作成し、オプションとして用意されている「Shared」にチェックを付ける。または、既存のフォルダーを右クリックして「Share」を選択すればいい。

 これでネットワーク上のほかのPCで、エクスプローラーのアドレスバーに「\IPアドレス」と入力、設定したアカウントでアクセスすれば、共有したフォルダーにアクセスできる。

共有用のフォルダーを新規に作成
ネットワーク上のPCから「\IPアドレス」でアクセスできる

 前述したように、CasaOSはパーソナルクラウドという位置づけとなっており、複数ユーザーでの利用は基本的に想定していない。このため、共有したフォルダーはLAN上の誰でもアクセスできる設定となる。

 一時的なデータ移行や、家族での共有、バックアップ用などの割り切りが必要だ。

マイクラサーバーを稼働させる

 続いて、アプリの使い方を紹介する。例として取り上げるのは、Minecraft(マインクラフト)のサーバーだ。

 CasaOSでは、「App Store」からさまざまなアプリをインストールできるようになっている。自分でDockerイメージを指定してアプリとして稼働させることもできるが、あらかじめ用意されているアプリをインストールするのが簡単だ。

さまざまなアプリをインストールできる

 たとえば、マイクラのサーバーなどは、非常に簡単に立ち上げることができる。

 アプリの一覧から「Crafty」をインストールし、Craftyの設定画面で起動するマイクラのエディション(JavaかBed-rockか)やサーバーのタイプ(バニラかModedか)、バージョンなどを選択するだけで、簡単にマイクラサーバーを起動できる。

 自宅に、誰でも、いつでも入れるマイクラサーバーを建てておき、冬休みの間、家族と自由に遊ぶというのもよさそうだ。

 もちろん、外部からアクセスするにはポートを開放するなど、いろいろな障壁があるが、とりあえず家庭内LANで、家族が楽しむサーバーなら、すぐに稼働できる。

Craftyを使って簡単にマイクラサーバーを立てられる

物足りなく感じたら「自宅サーバー沼」の第一歩

 以上、今回は実売2万円以下で購入したGMKtec G3を、なるべく簡単に自宅サーバーにする方法を解説した。

 正直、長期的な利用には向いていないし、機能的にも物足りなさを感じるかもしれないが、その「物足りなさ」が、自宅サーバーへの道の入り口と言える。

 きっと、「ベータ版のZimaOSにしてみようか」とか、「手動でDockerコンテナを動かしてみようか」とか、「メモリが足りないから増設してみようか」などと思うようになるはずだ。ぜひ、いろいろ自分で試行錯誤してみてほしい。

 個人的にも、最終目標はGMKtec G3のハードウェアを強化してProxmoxで利用することなので、上級編として、あらためてその方法も紹介したいと思う。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。