清水理史の「イニシャルB」

「一線」を越えた自宅サーバー管理者のあなたへ。よく使うルーターやサーバーを集めたダッシュボードを「Dashy」で作る

自宅にあふれる管理画面をまとめておくことができるダッシュボード「Dashy」

 Wi-FiルーターやNAS、クラウドサービス、自宅サーバーなど、身の回りにウェブインターフェースの「管理画面」があふれていないだろうか?

 今回は、さまざまなウェブインターフェースをブックマークだけでは管理しきれなくなった、“一線を越えた”自宅サーバー管理者のために、パーソナルダッシュボードをNAS上に構築する方法を紹介する。

ウィジェットも使える「Dashy」を活用

 便利なクラウドサービスが増えたうえ、Wi-FiルーターやNASも高機能になり、小型PCで自宅サーバーにDockerで手軽にサーバーを構築できるようになった今、困ってしまうのが身の回りに溢れる「管理画面」の扱いだ。

 やれ「192.168.1.1」だの、同じIPでもポートが違う「192.168.1.1:8080」だの、ウェブブラウザーでアクセスしなければならない管理画面が、身の回りに多数存在する。

 一般的な家庭なら、ブラウザーのブックマークで対応できるが、増えてくるとブックマークで管理するのも大変になり、間違って別の管理画面を開いては閉じ、開いては閉じと、失敗を繰り返すことも珍しくない。ポート番号を忘れ、Dockerの設定を見直すなんて無駄な操作もしばしば発生する。

 というわけで、今回は、熱心な自宅サーバー管理者向けに、管理用のパーソナルダッシュボードをNASに構築する方法を紹介する。利用するのは、「Dashy」というオープンソースのダッシュボードツールだ。

▼Dashyのウェブサイト
Dashy

 自宅サーバー管理者向けなので、もちろんセルフホストするタイプのアプリで、Dockerで簡単に稼働させられる。

 Intel系だけでなくARM系でも利用可能なDockerイメージが提供されているので、Raspberry Piなどでも稼働可能だが、今回はDockerをサポートしているSynologyのNAS(DS716)にインストールしてみた。

 インストールは簡単だ。Dockerがインストールされた環境なら、上記ページの「Quick Start」でも紹介されているが、以下のようなコマンドを実行するだけで稼働させることができる。

docker run -d -p 8080:80 --name my-dashboard --restart=always   lissy93/dashy:latest

 今回利用したSynologyのNASの場合は、GUIからの操作になるため、いくつかのステップを踏む必要があるが、基本的には[レジストリ]から「lissy93/dashy」のイメージを検索してダウンロード後、イメージをダブルクリックしてコンテナを作成する。

「lissy93/dashy」のイメージをダウンロード

 設定は、最低限ならポート設定のみあればいいので、コンテナの80を、ローカルポート(NAS)の任意のポートに割り当てておけばいい。今回は「10090」に設定した。

設定はアクセスするためのポートのみと最小限で済ませた

 上記のサイトでは設定用の「conf.yml」ファイルをボリュームで割り当てているが、設定ファイル自体はGUI画面からもアクセスできるので必須ではない。このため、今回は「-v」の設定は外してある。

 これで、コンテナを稼働させれば、「http://NASのIP:設定したポート番号」でDashyにアクセスできる。

 「管理画面を管理するために管理画面を増やすのか?」などという批判も聞こえてきそうだが、自宅サーバー愛好家たるもの、そんなことを気にしてはいけない。

Dashyの初期画面

セクションを追加してアイテムを登録する

 Dashyにアクセスしたら、上部のテーマで好みのデザインを選択後、セクションとアイテムを追加していく。右上のアイコンから編集モードに切り替え、「Network」や「Server」などのセクションを作成し、その中にルーターやNASなどの管理画面のアドレスを登録していけばいい。

デザインを変更可能
カテゴリごとにセクションを追加し、そこに管理画面を登録していく

 Dashyでは、各アイテムにアイコンを設定可能になっているので、サービスごとにアイコンを設定しておくと分かりやすい。詳細は以下のドキュメントに詳しく解説されているが、ドキュメント中で紹介されている「fas fa-rocket」や「si-portainer」のような外部サービスで提供されているアイコンを参照したり、「favicon」でサイトのファビコンを設定したり、アイコン画像のURLを指定したりすることができる。

▼参考:利用できるアイコンの種類や使い方
Dashy Icons

アイコンの提供元としておすすめされている外部サービスの1つ「Simple Icons」。さまざまなサービスやデバイスのアイコンを参照できる

 また、リンク先のページの表示方法を選択可能になっており、「newtab」に加え、「modal」でDashyの画面内に子ウィンドウで表示したり、「workspace」でDashyのワークスペース画面として表示したりもできる。

 ただし、「modal」や「workspace」は、認証が必要なページは正常に表示できないので、管理画面のタイプによっては向いていない。基本的には「newtab」を選択しておくのが無難だ。

表示方法は「newtab」が無難。WorkspaceにするとDashy上から管理画面を操作できるが、認証が必要な画面は表示できない場合がある

ウィジェットを追加する

 Dashyの魅力は、単なるリンクボタンだけでなく、ウィジェットとしてさまざまな機能を追加できる点にある。

 残念ながら、現状のバージョンではウィジェットを追加するためには、手動で設定ファイルを変更する必要があるため、若干敷居が高いが、以下のドキュメントを参考にすれば何とかなるだろう。

▼参考:ウィジェットの使用について
Dashy Widgets

 上記ドキュメントはconf.ymlを編集する方法だが、書式をjsonに書き換えれば、Dashyの設定画面の「構成の編集」で設定ファイルを[コードモード]に切り替えることで、ブラウザーからウィジェットを追加することも可能だ。

 書式と位置に注意する必要があるが、例えば、時計であれば、以下のように新しく追加したセクションに挿入できる。

現状、ウィジェットを追加するには手動設定が必要

 このように、ドキュメントを参考にしながら、作ってみたのが以下のような画面だ。ルーターやサーバー、クラウドサービスなど、普段利用するサイトにここからまとめてアクセスできる。ウィジェットで時間や天気、ニュースも表示してみた。

 このほかNetDataを利用することで、サーバーのステータスなども表示できるので、さらに踏み込んだ管理ダッシュボードにしたい場合は、チャレンジしてみるといいだろう。

ウィジェットや自宅の管理画面を登録した完成画面

ホームラボに最適

 以上、パーソナルダッシュボードを簡単に作成できるDashyを取り上げた。自宅に管理すべき機器が増えてきたと感じているユーザーは試してみるといいだろう。シンプルに管理画面のIPアドレスとポートをメモする感覚で使うだけでも重宝する。ホームラボの世界に足を踏み入れる一歩としても、おすすめのアプリだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。