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1万円以下の「Realtek RTL8159」搭載10Gbpsアダプター登場! 速度は? 低消費電力・低発熱はホントか?

RTL8159を搭載した10Gbps対応USBネットワークアダプター

 2025年のComputexで話題になったRealtekの「RTL8159」を搭載した10Gbps対応USBネットワークアダプターが登場してきた。AliExpressでは、DIEWUとXikeStoreから製品が販売されており、いずれも1万円以下で購入できる。汎用的なUSB 3.2 Gen 2で利用できること、低消費電力であることなどが特徴だが、肝心の速度はどうなのか? DIEWUの製品で実際に検証してみた。

◆RTL8159搭載ネットワークアダプターのイチ押し!
安い! 熱くない! 多くの機器につながる! の三拍子!!!
(ただし実際の速度はインターフェース次第)

10Gbps環境が身近になる可能性

 2025年のComputexで展示され、一部のマニアの間で話題になっていたRTL8159搭載のUSBネットワークアダプターが、いよいよ市場に投入される――。

左側の小さなチップがRealtek RTL8159

 と言っても、現状はAliExpressでの話で、国内メーカーや国内の家電量販店に並ぶのは、まだ先と考えられるが、これで10Gbps環境の「壁」が確実に一段低くなりそうだ。

 現状、AliExpressで購入可能なのは、DIEWUとXikeStore(八丁でおなじみの)の2製品で、いずれも1万円以下で購入できる。

正面
LAN端子側
USB端子側

 これらの製品の特徴は大きく3つある。

1. 汎用的なUSBポートで利用可能

 ひとつは、汎用的なUSBポートに装着して利用できることだ。

 これまでにもUSB Type-C接続に対応した10Gbps対応ネットワークアダプターは存在したが、利用するインターフェースはThunderbolt 3/4対応となるため、接続できるPCや機器が限られていた。

 一方で、今回登場した製品は、USB 3.2 Gen 2(チップの仕様上は×2)対応となっており、Thunderbolt対応ではない汎用的なUSB Type-Cポートに接続できる。これにより、古いPCや低スペックのミニPCなどでも、本製品を利用可能となっている(詳細は後述するが実行速度がどうなるかは別の話)。

Type-Cでの接続だが、USB 3.2 Gen 2×2で接続可能

2. 価格が安い

 もう1つは価格が安いことだ。前述したように、本製品は1万円以下で購入できる。現状、Amazon.co.jpで販売されている10Gbps対応のUSBネットワークアダプターは、安くても1万6000円前後、高いと5万円前後という製品さえある。

 これに対して、AliExpressで購入可能なDIEWUのアダプターは販売店によって価格に差があるものの9900~1万3000円前後(筆者は2025年10月3日に1万1221円で購入)。XikeStoreの「SKN-U310GT」は9301~9418円と、さらに一段安くなっている(B2BのAlibaba.comなら大量購入かサンプル購入でさらに安い)。

▼DIEWUアダプター
AliExpress

▼XikeStore SKN-U310GT
AliExpress

3. 低消費電力(熱くなりにくい)

 本製品は、スペック上の消費電力が1.95W、実測でも2.0W前後となっており、低消費電力で動作する。筆者の手元にあるThunderbolt 4/USB4接続のAQC113搭載アダプターはスペック上の消費電力が2.5Wとなっているものの、実測では3.9W前後と高くなっており、これと比べると、かなり消費電力が抑えられている。

消費電力の比較
チップ消費電力(W)
AQC113(Thunderbolt)3.93
RTL8159(USB 3.2 Gen 2)2.02
Thunderbolt4/USB4接続のAQC113搭載アダプターは3.9W
RTL8159搭載アダプターは2W前後

 10Gbps対応のネットワークアダプターを外出先(つまりバッテリー駆動)で使うシーンはあまりないので、消費電力は気にしないという人もいるかもしれないが、これは発熱にも影響する。

 以下は、RTL8159搭載アダプターと、AQC113搭載アダプターで、iPerf3実行時の製品の表面温度を比較したグラフだ。いずれも筐体で放熱するタイプの製品なので、本体が熱くなることに過剰に反応すべきではないが、それでもRTL8159搭載製品の方が温度が低くなっていることが分かる。

動作温度の比較
チップ開始時10分後20分後30分後
AQC113(Thunderbolt)25.838.643.546.3
RTL8159(USB 3.2 Gen 2)26.635.840.342.1

どうつながるかで速度は変わる

 肝心のパフォーマンスだが、これは接続するインターフェース次第だ。

 本製品で採用されているRTL8159は、USB 3.2 Gen 2×2、つまり10GbpsのUSB 3.2 Gen 2を2レーン利用する最大20Gbpsでの接続に対応している。

 なので、USB 3.2 Gen 2×2なら有線LANの10Gbpsのフルスピード(双方向)で通信できるが、1レーンのUSB 3.2 Gen 2(10Gbps)では、フルスピードでの通信はできない。もちろん、さらに遅いUSB 3.2 Gen 1(5Gbps)、USB 2.0(480Mbps)でも接続できるが、当然、速度の上限はUSBの上限に依存する。

 ざっと手元にある機器で試してみたところ、iPerf3で以下のような結果になった。USB 3.2 Gen 1は2.5Gbpsのアダプターより高速なので本製品を選ぶ価値はあるが、USB 2.0でつなぐのはさすがにもったいない。USB 3.2 Gen 2(10Gbps)なら実用的で、接続先の光ファイバーの実行速度を考えても、これなら妥当という感じがする。

iPerf3速度
インターフェース上り下り
USB 2.0(480Mbps)344364
USB 3.2 Gen 1(5Gbps)36002700
USB 3.2 Gen 2(10Gbps)67605290

 さて、肝心のUSB 3.2 Gen 2×2はどうかということになるのだが、結果から言うと、現状、筆者の手元にある機材では正確に計測できていない(と思われる)。

 以下は、ASUS Zenbook S14(Core Ultra 5 226V/RAM16GB/SSD 512GB)を利用してRTL8159搭載アダプター(USB 3.2 Gen 2接続)とAQC113搭載アダプター(Thunderbolt 3/4対応)の速度を比較したものだ。いずれもThunderbolt 4対応ポートに接続して計測している。

インターフェースによる速度比較
チップ(カッコ内がインターフェース)上り下り
AQC113(Thunderbolt)93009270
RTL8159(USB 3.2 Gen 2×2?)77805010

 Thunderbolt接続のAQC113搭載アダプターは、iPerf3で9Gbpsオーバーと10Gbpsの実力をかっちり実現できている。一方、今回使用したRTL8159(DIEWU)のアダプターは上りは7.7Gbps前後とまあまあだが、下りが5Gbps止まりとなっている。この結果を考えると、USB 3.2 Gen 2(10Gbps)と大差なく、×2ではなく、1レーンしか使われてない気がする。

 そこで、USB解析の強い味方「USB Device Tree View」を利用して接続状況を確認してみた。

▼USB Device Tree Viewer
Uwe Sieber's Homepage

AQC113の接続状況
RTL8159の接続状況

 どちらも同じThunderbolt 4対応のUSB Type-Cポートに接続しているが、接続先のコントローラーが異なる点に注目してほしい。AQC113は「USB4ホストルーター」に接続され、Thunderbolt 3の40Gbpsで接続されているが、RTL8159は「Intel USB 3.20 eXtensible Host Controller」に接続されている。

 つまり、接続先のコントローラーが異なるわけだ。USB4(Thunderbolt 4)は下位互換性を持っているが、前掲の画面のように結局USB 3.2 Gen 2世代のデバイスは、別のコントローラーに接続されるので、この接続先のコントローラーがUSB 3.2 Gen 2×2に対応していないと20Gbpsで接続できないことになる。

 で、肝心のRTL8159がどのようにつながっているのかというと、上記の画面の右側の赤枠部分に注目してほしいが、「Device Connection Speed」の項目は、一応、「SuperSpeedPlus 20Gbps」となっている。

 もう少し詳細な情報を見ると、以下のように「RX.LaneCount」や「TX.LaneCount」も「0x01(2 Lanes)」となっており、20GbpsのUSB 3.2 Gen 2×2で接続されているように見える。

 しかしながら、前述したiPerf3の速度では、20Gbpsで接続されているとは思えない実行速度となっており、実質的に10Gbpsで接続されているのではないかと考えられる。

レーン数が2になっているので、USB 3.2 Gen 2×2の20Gbpsでつながっているように見えるが、速度的にはUSB 3.2 Gen 2の10Gbpsとしか思えない

最新ドライバーやパラメーター設定で若干の改善は見られるが……

 最後に、ドライバーとアダプターのパラメーターの設定変更も試してみた。

 本製品は、Windows標準のドライバーで動作可能なためつなぐだけで認識するが、このドライバーは日付が2015年と古い。以下のサイトから最新のドライバーをダウンロードできるので、こちらも試してみた(2025年11月3日時点での最新は1159.19.20.603)。

▼Realtek USB FE / GbE / 2.5GbE / 5G / 10G Family Controller Software
Realtek

 また、ネットワークアダプターは、バッファを増やすことで速度が向上する場合があるので(あまり上げ過ぎると遅延が増えたり、通信が途切れたりする場合もあるので要注意)、PC-USBデバイス間の通信サイズとなるReceive URBs、Transfer URBsを最大の64、受信バッファと送信バッファも最大の256に変更して計測してみた。

ドライバー/設定変更による速度比較
ドライバー上り下り
標準ドライバー77805010
Realtekドライバー(1159.19.20.603)80305160
Realtekドライバー+設定変更84305790

 いずれも改善は見られるが、さほど大きくない。特に下り(サーバー→PC方向)の速度が遅いのが改善されるわけではないので、効果はあまり期待しない方がいい。特にパラメーターに関しては不安定になるケースもあるので、やるならドライバーの更新のみにしておくことをおすすめする。

実用上問題ないが安定感は枯れたAQC113が上

 以上、注目のRTL8159を採用した10Gbps対応USBネットワークアダプターをテストしてみたが、万人におすすめできるとは言い難い。一般的なPCの場合、USB 3.2 Gen 2(10Gbps)で接続されることが多いと思うので、10Gbps環境の速度を生かせるとは限らない。PCにThunderbolt対応ポートがあるなら、すでに実績があるThunderbolt接続のAQC113の方がパフォーマンスは有利と言える。

 もちろん、AQC113より消費電力は低いし、価格も安いので、5Gbps以上出ればOKとか、10Gbps光回線の実行速度をまかなえればよし、とするなら、いい選択だと思う。ただし、それにしても今買うのは、さすがに時期尚早と言える。個人的には、国内で販売するメーカーが取り扱うようになってから検討しても遅くないと思う。

「"ここ"がイチ押し! 旬モノ実験室」は、今気になるハードウェアやソフトウェアをピックアップして、その製品の「イチ押しのポイント」に注目し、魅力をレポートします。バックナンバーはこちら

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中