"ここ"がイチ押し! 旬モノ実験室
1万円以下の「Realtek RTL8159」搭載10Gbpsアダプター登場! 速度は? 低消費電力・低発熱はホントか?
2025年11月7日 06:30
2025年のComputexで話題になったRealtekの「RTL8159」を搭載した10Gbps対応USBネットワークアダプターが登場してきた。AliExpressでは、DIEWUとXikeStoreから製品が販売されており、いずれも1万円以下で購入できる。汎用的なUSB 3.2 Gen 2で利用できること、低消費電力であることなどが特徴だが、肝心の速度はどうなのか? DIEWUの製品で実際に検証してみた。
◆RTL8159搭載ネットワークアダプターのイチ押し!
安い! 熱くない! 多くの機器につながる! の三拍子!!!
(ただし実際の速度はインターフェース次第)
10Gbps環境が身近になる可能性
2025年のComputexで展示され、一部のマニアの間で話題になっていたRTL8159搭載のUSBネットワークアダプターが、いよいよ市場に投入される――。
と言っても、現状はAliExpressでの話で、国内メーカーや国内の家電量販店に並ぶのは、まだ先と考えられるが、これで10Gbps環境の「壁」が確実に一段低くなりそうだ。
現状、AliExpressで購入可能なのは、DIEWUとXikeStore(八丁でおなじみの)の2製品で、いずれも1万円以下で購入できる。
これらの製品の特徴は大きく3つある。
1. 汎用的なUSBポートで利用可能
ひとつは、汎用的なUSBポートに装着して利用できることだ。
これまでにもUSB Type-C接続に対応した10Gbps対応ネットワークアダプターは存在したが、利用するインターフェースはThunderbolt 3/4対応となるため、接続できるPCや機器が限られていた。
一方で、今回登場した製品は、USB 3.2 Gen 2(チップの仕様上は×2)対応となっており、Thunderbolt対応ではない汎用的なUSB Type-Cポートに接続できる。これにより、古いPCや低スペックのミニPCなどでも、本製品を利用可能となっている(詳細は後述するが実行速度がどうなるかは別の話)。
2. 価格が安い
もう1つは価格が安いことだ。前述したように、本製品は1万円以下で購入できる。現状、Amazon.co.jpで販売されている10Gbps対応のUSBネットワークアダプターは、安くても1万6000円前後、高いと5万円前後という製品さえある。
これに対して、AliExpressで購入可能なDIEWUのアダプターは販売店によって価格に差があるものの9900~1万3000円前後(筆者は2025年10月3日に1万1221円で購入)。XikeStoreの「SKN-U310GT」は9301~9418円と、さらに一段安くなっている(B2BのAlibaba.comなら大量購入かサンプル購入でさらに安い)。
▼DIEWUアダプター
AliExpress
▼XikeStore SKN-U310GT
AliExpress
3. 低消費電力(熱くなりにくい)
本製品は、スペック上の消費電力が1.95W、実測でも2.0W前後となっており、低消費電力で動作する。筆者の手元にあるThunderbolt 4/USB4接続のAQC113搭載アダプターはスペック上の消費電力が2.5Wとなっているものの、実測では3.9W前後と高くなっており、これと比べると、かなり消費電力が抑えられている。
| チップ | 消費電力(W) |
| AQC113(Thunderbolt) | 3.93 |
| RTL8159(USB 3.2 Gen 2) | 2.02 |
10Gbps対応のネットワークアダプターを外出先(つまりバッテリー駆動)で使うシーンはあまりないので、消費電力は気にしないという人もいるかもしれないが、これは発熱にも影響する。
以下は、RTL8159搭載アダプターと、AQC113搭載アダプターで、iPerf3実行時の製品の表面温度を比較したグラフだ。いずれも筐体で放熱するタイプの製品なので、本体が熱くなることに過剰に反応すべきではないが、それでもRTL8159搭載製品の方が温度が低くなっていることが分かる。
| チップ | 開始時 | 10分後 | 20分後 | 30分後 |
| AQC113(Thunderbolt) | 25.8 | 38.6 | 43.5 | 46.3 |
| RTL8159(USB 3.2 Gen 2) | 26.6 | 35.8 | 40.3 | 42.1 |
どうつながるかで速度は変わる
肝心のパフォーマンスだが、これは接続するインターフェース次第だ。
本製品で採用されているRTL8159は、USB 3.2 Gen 2×2、つまり10GbpsのUSB 3.2 Gen 2を2レーン利用する最大20Gbpsでの接続に対応している。
なので、USB 3.2 Gen 2×2なら有線LANの10Gbpsのフルスピード(双方向)で通信できるが、1レーンのUSB 3.2 Gen 2(10Gbps)では、フルスピードでの通信はできない。もちろん、さらに遅いUSB 3.2 Gen 1(5Gbps)、USB 2.0(480Mbps)でも接続できるが、当然、速度の上限はUSBの上限に依存する。
ざっと手元にある機器で試してみたところ、iPerf3で以下のような結果になった。USB 3.2 Gen 1は2.5Gbpsのアダプターより高速なので本製品を選ぶ価値はあるが、USB 2.0でつなぐのはさすがにもったいない。USB 3.2 Gen 2(10Gbps)なら実用的で、接続先の光ファイバーの実行速度を考えても、これなら妥当という感じがする。
| インターフェース | 上り | 下り |
| USB 2.0(480Mbps) | 344 | 364 |
| USB 3.2 Gen 1(5Gbps) | 3600 | 2700 |
| USB 3.2 Gen 2(10Gbps) | 6760 | 5290 |
さて、肝心のUSB 3.2 Gen 2×2はどうかということになるのだが、結果から言うと、現状、筆者の手元にある機材では正確に計測できていない(と思われる)。
以下は、ASUS Zenbook S14(Core Ultra 5 226V/RAM16GB/SSD 512GB)を利用してRTL8159搭載アダプター(USB 3.2 Gen 2接続)とAQC113搭載アダプター(Thunderbolt 3/4対応)の速度を比較したものだ。いずれもThunderbolt 4対応ポートに接続して計測している。
| チップ(カッコ内がインターフェース) | 上り | 下り |
| AQC113(Thunderbolt) | 9300 | 9270 |
| RTL8159(USB 3.2 Gen 2×2?) | 7780 | 5010 |
Thunderbolt接続のAQC113搭載アダプターは、iPerf3で9Gbpsオーバーと10Gbpsの実力をかっちり実現できている。一方、今回使用したRTL8159(DIEWU)のアダプターは上りは7.7Gbps前後とまあまあだが、下りが5Gbps止まりとなっている。この結果を考えると、USB 3.2 Gen 2(10Gbps)と大差なく、×2ではなく、1レーンしか使われてない気がする。
そこで、USB解析の強い味方「USB Device Tree View」を利用して接続状況を確認してみた。
▼USB Device Tree Viewer
Uwe Sieber's Homepage
どちらも同じThunderbolt 4対応のUSB Type-Cポートに接続しているが、接続先のコントローラーが異なる点に注目してほしい。AQC113は「USB4ホストルーター」に接続され、Thunderbolt 3の40Gbpsで接続されているが、RTL8159は「Intel USB 3.20 eXtensible Host Controller」に接続されている。
つまり、接続先のコントローラーが異なるわけだ。USB4(Thunderbolt 4)は下位互換性を持っているが、前掲の画面のように結局USB 3.2 Gen 2世代のデバイスは、別のコントローラーに接続されるので、この接続先のコントローラーがUSB 3.2 Gen 2×2に対応していないと20Gbpsで接続できないことになる。
で、肝心のRTL8159がどのようにつながっているのかというと、上記の画面の右側の赤枠部分に注目してほしいが、「Device Connection Speed」の項目は、一応、「SuperSpeedPlus 20Gbps」となっている。
もう少し詳細な情報を見ると、以下のように「RX.LaneCount」や「TX.LaneCount」も「0x01(2 Lanes)」となっており、20GbpsのUSB 3.2 Gen 2×2で接続されているように見える。
しかしながら、前述したiPerf3の速度では、20Gbpsで接続されているとは思えない実行速度となっており、実質的に10Gbpsで接続されているのではないかと考えられる。
最新ドライバーやパラメーター設定で若干の改善は見られるが……
最後に、ドライバーとアダプターのパラメーターの設定変更も試してみた。
本製品は、Windows標準のドライバーで動作可能なためつなぐだけで認識するが、このドライバーは日付が2015年と古い。以下のサイトから最新のドライバーをダウンロードできるので、こちらも試してみた(2025年11月3日時点での最新は1159.19.20.603)。
▼Realtek USB FE / GbE / 2.5GbE / 5G / 10G Family Controller Software
Realtek
また、ネットワークアダプターは、バッファを増やすことで速度が向上する場合があるので(あまり上げ過ぎると遅延が増えたり、通信が途切れたりする場合もあるので要注意)、PC-USBデバイス間の通信サイズとなるReceive URBs、Transfer URBsを最大の64、受信バッファと送信バッファも最大の256に変更して計測してみた。
| ドライバー | 上り | 下り |
| 標準ドライバー | 7780 | 5010 |
| Realtekドライバー(1159.19.20.603) | 8030 | 5160 |
| Realtekドライバー+設定変更 | 8430 | 5790 |
いずれも改善は見られるが、さほど大きくない。特に下り(サーバー→PC方向)の速度が遅いのが改善されるわけではないので、効果はあまり期待しない方がいい。特にパラメーターに関しては不安定になるケースもあるので、やるならドライバーの更新のみにしておくことをおすすめする。
実用上問題ないが安定感は枯れたAQC113が上
以上、注目のRTL8159を採用した10Gbps対応USBネットワークアダプターをテストしてみたが、万人におすすめできるとは言い難い。一般的なPCの場合、USB 3.2 Gen 2(10Gbps)で接続されることが多いと思うので、10Gbps環境の速度を生かせるとは限らない。PCにThunderbolt対応ポートがあるなら、すでに実績があるThunderbolt接続のAQC113の方がパフォーマンスは有利と言える。
もちろん、AQC113より消費電力は低いし、価格も安いので、5Gbps以上出ればOKとか、10Gbps光回線の実行速度をまかなえればよし、とするなら、いい選択だと思う。ただし、それにしても今買うのは、さすがに時期尚早と言える。個人的には、国内で販売するメーカーが取り扱うようになってから検討しても遅くないと思う。
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