インタビュー

「セキュリティの仕事」ってどんなことをしている? どうしたら就ける? 学生たちへ、現場の“リアルな声”届けたい

「Internet Week 2025」でオンライン講演。30歳以下の学生は参加無料

 インターネット社会を支える「セキュリティの仕事」とは、どんなことをしているのか? そうした職に就くにはどうしたらいいのか? 実際にセキュリティの現場で活躍している人が自身のキャリアや経験、考え方などを語るオンライン講演が、「Internet Week 2025」内のプログラムとして11月20日に行われる。

 同プログラムの企画担当で、ファシリテーターも務める予定の三谷公美さん(JANOG/さくらインターネット株式会社 情報システム統括室)に、その意図や背景を伺った。

「Internet Week」は、一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が主催する、インターネットの技術や最新動向を語るイベント。29回目となる今年は「挑戦×経験×世代 ~フルスタックで"不確実"の先へ」をテーマに開催される。

11月18日~20日が「オンラインWeek」としてオンライン配信、11月25日~27日が「カンファレンスWeek」としてKFC Hall & Rooms(東京都墨田区横網1-6-1)でのリアル開催となっており、基本料金1万6500円で全てのプログラムに参加可能(懇親会を除く)。参加申し込みは、同イベントの公式サイトで受け付けている。

なお、30歳以下の学生は基本料金が無料。また、今年初めてInternet Weekに参加する人を対象に、オンラインWeekの全プログラムとカンファレンスWeekの1つのプログラムに参加できる、4950円のお試し料金も設定されている。

――このプログラムを企画した背景や狙いを教えてください。

 セキュリティ分野の仕事には多様なキャリアパスが存在しますが、その実像を学生や若手の方々が知る機会は限られています。傍から見ると難しく見えたり、そもそも見えにくかったりするのではないかと思います。実際、学生さんや若手の方で、セキュリティに興味を持って「自分もこういう世界で働いてみたい」と思っても、どこから手をつけたらいいのか分からない、という声も伺いました。

 本プログラムは、実際に現場で活躍する方々のリアルな経験を共有し、キャリア形成のヒントを提供することを目的として企画しました。2022年の初回以降、登壇者がセキュリティの分野に携わるに至った背景や経緯を、対話を通じて共有し、そのリアルな声を届ける形式で継続しています。

 2023年、2024年に行った過去回はJPNICのYouTubeチャンネルで公開されています。色褪せない内容ですし、雰囲気も分かると思いますので、ぜひご覧ください。

「セキュリティの仕事、どんなことをしているの?どうしたらなれるの?」2023

「セキュリティの仕事、どんなことをしているの?どうしたらなれるの?」2024

――実際に「セキュリティのお仕事をしてみたい」という声を聞いたのがきっかけだったんですね。

 そうですね。次世代育成などで若い人たちと話す機会があり、その中で「どうやってそういう仕事に就いたのか?」と聞かれることが多いです。

 例えば、「セキュリティ・キャンプミニ」に参加した学生が「次は何をすればいいですか?」と相談してくることもあります。

 そこで、いろんな方の生い立ちや経歴を見て、若手の方たちの興味の幅を広げられる機会が増えればと思っています。

 そういう話を聞くことで、「こんな人がいるんだ」「この人はこういう経験をしてきたんだ」と知って、自分なりに腑に落ちる部分があればいいなと思います。

――講演者を選ぶ際に重視された点は?

 登壇者には、企業等の実務者のみならず、警察、教育、研究、はては芸人など、異なる立場からセキュリティに関わる方々をお招きしています。多様な視点を通じて「セキュリティの仕事」の広がりと、各々がそこに辿り着いた多様な道筋を感じてもらえればと考えています。また、専門性だけでなく、自身の思いや価値観を率直に語ってくださる方を重視しています。

――プログラムの見どころを教えてください。

 登壇者がそれぞれの現場で感じる「やりがい」や「課題」を率直に語る点が特徴です。講演形式だけではなく、対話によるリアルな会話を引き出す構成にもしています。登壇者同士で意見を交わすことから、新たな気づきにつながるようなことがあればいいなと考えています。

――今年のInternet Weekのテーマ「挑戦×経験×世代 ~フルスタックで“不確実”の先へ」との関係は?

 「フルスタック」という言葉は通常、エンジニアリングの文脈で使われますが、今回は「挑戦」「経験」「世代」というキーワードが重なって、より広い意味を持っていると感じています。

 また、「世代間のつながり」という観点でテーマと共鳴していて、経験豊富な先輩たちが複数集まり、それぞれの半生を共有することで、新しい発見や挑戦が生まれるといいなと思っています。技術面だけでなく、人・文化・価値観や考え方といった面でも“フルスタック”なつながりが生まれればいいですね。

――どのような方に聞いていただきたいですか?

 セキュリティ分野に関心を持つ学生・若手社会人の方々はもちろん、業界に携わる中堅・マネジメント層の方々にもご参加いただきたい内容です。若い世代とのコミュニケーションのヒントにもなるでしょうし、いろんな人のキャリアを聞くことで新しい気づきが得られると思います。キャリアや組織づくりを考えるきっかけにもなるのではないでしょうか。また、専門知識がなくても理解しやすい構成にしています。

――普段、セキュリティの業務を担当していない場合でも、どういう方がセキュリティに関わっているかを知るのは大事ですよね。

 そう思います。今は多くの組織に、セキュリティを担う人が必ずいます。そういう方たちがどういった視点で物事を捉えているかを知ることで、きっと見えてくることがあると思います。そうした部分も楽しんでもらえればと思います。

――プログラムを通じて、どんな対話や変化が生まれることを期待されていますか?

 登壇者の経験や考え方を通じて、参加者自身が「自分ならどうするか、何をするか」を考えるきっかけとなればと考えています。セキュリティは専門技術であると同時に、社会のあらゆる場面に関わっており、信頼を支える仕事です。人と社会をつなぐ“現場のリアル”を共有し、見てくださる皆さんが少しでも“自分ごと”として捉えてくれたらうれしいです。

 学生や若手の方は特に、やらなければいけないことに追われて、自分が本当にやりたいことを見失ってしまうこともあると思います。

 このプログラムを通して、そうした“好きなこと”“やりたいこと”を思い出すきっかけになればうれしいです。

――自分の興味を思い出すというのは、日々に忙殺されていると確かに忘れがちかもしれません。

 これまで登壇された方も、「子どものころから好きなことをずっとやってきた」という話をされることが多いんです。みんなそれぞれ好きなことが違っていて、それが今の仕事につながっている。

 そういう話を聞くと、「自分の好きなことも間違っていないんだ」と思えるんじゃないでしょうか。回り道だと思わず、自分の興味を大切にしてほしいです。

――最後に、参加を検討されている方へのメッセージをお願いします。

 セキュリティの仕事に少しでも関心のある方なら、どなたでも大歓迎です。

 肩の力を抜いて、気軽に見てください。難しい話ではなく、登壇者の生き方や考え方に触れられるプログラムです。業界の第一線で活躍する方々の率直な言葉に触れることで、新たな視点や可能性を見つけていただけると思います。ぜひ“リアルな声”を聞いてください。

――ありがとうございました。

INTERNET Watchでこれまで掲載したInternet Week関連記事のバックナンバー(2009年以降)は、下記ページにまとめている。