被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
それってネット詐欺ですよ!
Google検索結果のトップに紛れ込んだ「広告詐欺」に要注意、詐欺サイトで料理を注文して騙されたケースも
2023年3月31日 11:55
Googleの検索結果画面上部にあるスポンサー欄には、広告が表示されることがあります。入力したキーワードに関連するウェブサイトが表示され、クリックしやすくしているのです。しかし、ここにネット詐欺師が詐欺サイトを紛れ込ませることがあります。本連載でも、「えきねっと」を騙る詐欺サイトが載っていたケースを紹介しました(過去記事「Googleの検索結果トップにフィッシングサイト? 過去には『えきねっと』を装った偽サイトなど広告を悪用した手口」を参照)。アクセスするとアカウント情報やクレジットカード番号を盗まれてしまう可能性があります。最近は東京電力を騙る広告詐欺についても報告されています。
まだ日本では見かけない手口ですが、アメリカの作家であるCory Doctorowさんが、Google広告を悪用したネット詐欺の事例を報告していたので紹介します。
Doctorowさんは、近所にあるタイ料理レストラン「Kiin Thai Eatery」でテイクアウトするために、Google検索をしました。スポンサー欄にレストランへのリンクがあったのでアクセスし、注文しました。
すると、すぐに本物のKiin Thai Eateryから電話があり、「注文をキャンセルした」と言われました。詐欺師が利用しているクレジットカードを使って、Doctorowさんへの注文があったというのです。実は、最初にアクセスした詐欺サイトでは、全ての料金が15%上乗せされていたのです。詐欺サイトで注文を受け付けると、詐欺師は自分のクレジットカードでレストランに注文したようです。もし、誰も気が付かなければ、Doctorowさんはレストランでテイクアウトを受け取り、犯人は差額分を懐に入れることができます。
So there's a great Thai restaurant in my neighborhood called Kiin. Yesterday, I searched for their website to order some takeout. Here's the Google result.pic.twitter.com/JFCyvXV9be
— Cory Doctorow (@pluralistic@mamot.fr) (@doctorow)February 24, 2023
詐欺師はクレジットカードのアメリカンエクスプレスの商用アカウントを取得していましたが、自分の情報を入力してしまっては捕まってしまいます。詐欺師は無料でホームページを作成できるサービス「Wix」を使って詐欺サイトを作っていました。アメックスからの請求書には、その「Wix」の問い合わせ番号が記載されていました。詐欺師がどうやってアカウントを作ったのか不思議です。
そして、Google広告も問題です。レストランのオフィシャルホームページの上に、なぜ詐欺師の広告を表示するのでしょうか。クレジットカード会社もGoogleも詐欺被害を減らすために、きちんと審査すべきです。また、盗んだ個人情報も当然悪用することでしょう。今回の事例でも、詐欺師は複数回の請求をしてきたそうです。
Here's what that charge looks like on my Amex bill. See that phone number? (415) 639-9034 is the number for@Wix, who provides the scammers' website.pic.twitter.com/A7hwHd0u9F
— Cory Doctorow (@pluralistic@mamot.fr) (@doctorow)February 24, 2023
広告詐欺を回避するには、広告をクリックしないようにするしかありません。Googleで検索をしたときに、「スポンサー」と表示されているリンクが広告です。1つに限らず、複数並んでいることもありますし、検索結果の下に表示されることもあります。
ショッピング時など、ウェブサイトにログインしたりクレジットカードを入力する場合は、スポンサー枠からではなく、通常の検索結果からリンクを辿る方が安全です。
Googleだけでなく、FacebookやInstagramにも詐欺師が広告を出しています。例えば、有名人をダシにして、電子マネーや暗号通貨を購入するページに誘導するのです。(過去記事「Facebookに流れた怪しいネット詐欺広告に注意」を参照)
今月上旬、オリエンタルラジオの中田敦彦さんも、勝手に写真を流用され、関係のないLINEに登録するような広告を出されてしまい、YouTubeで注意喚起をしていました。ウェブページに記載されている情報が嘘か本当か判断するためのデジタルリテラシーに自信がないのであれば、SNS内の広告も、無暗に開かないようにした方がよいでしょう。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと