被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

騙されないように注意!

コロナ禍で通報増加、悪質なショッピングサイトの被害。コピー品が出回り正規メーカーに苦情が殺到するケースも

 悪質なショッピング詐欺の被害が拡大しています。日本サイバー犯罪対策センター(JC3)の調査によると、2022年上半期にセーファーインターネット協会からJC3へ共有された悪質なショッピングサイトなどの通報件数は1万2830件で、前年同期の6696件と比べて約91.6%増加しました。通報件数が増加した背景として、JC3では新型コロナウイルス感染症拡大の影響によりインターネットの利用が増えたことなどを挙げています。

 悪質なショッピングサイトを知った経緯について、通報元の56.9%が「インターネットの検索結果」と回答しています。次に多かったのが「メールに記述されていたURL」(16.2%)でした。また、詐欺サイトで支払った方法については、銀行振り込み(53.4%)が最も多く、次点で多かったのはクレジットカード決済(28.1%)でした。

 本連載でもショッピング詐欺については何度か触れているのですが、有名人も多数被害に遭っており、SNSや出演番組でその様子を語っています。

参考記事:
・元モーニング娘。の保田圭さん、子どものヴァイオリン購入でネット詐欺に遭ってしまう
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/dlis/1434532.html
・電動自転車が「9割引」で激安販売!? 会社概要もあるから安全なサイトでしょ!←ネット詐欺の被害に
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/dlis/1410272.html

 JC3のウェブサイトでは、ショッピング詐欺を回避するための方法として、以下の点について確認するよう呼び掛けています。

  • 当該URLや会社名をインターネットで調べ、同様の被害報告等がないか確認する
  • 会社概要において、事業者の氏名(名称)、住所、電話番号の記載を確認する
  • 商品購入前に架電して実在する会社か確認する

 これ以外にも注意すべきポイントはあります。商品の価格が極端に安い場合は、詐欺の可能性が高くなります。不自然な日本語表記は外国人が翻訳サイトを利用して作成しているかもしれません。特に、決済方法が銀行振り込みに限定されていたり、振り込み先が法人名義ではなく個人名義の口座である場合は要注意です。

格安で販売されているけど届いたのは粗悪なコピー品、正規メーカーに被害も

 ショッピング詐欺では注文した商品が届かないことで被害が発覚する場合が多いのですが、偽物を送りつけられてくるケースもあります。その場合、正規のメーカーに被害が及んでしまうことがあるのです。

 例えば、江戸硝子を手掛ける田島硝子もその被害に遭っています。1956年創業の老舗で、美しい江戸切子も扱っており、中でもグラス底に富士山がデザインされている「富士山グラス」が人気です。ロックグラスタイプだと税込5500円ほどなのですが、ネットで検索すると激安製品が多数見つかります。

田島硝子の「富士山グラス」。画像は田島硝子のホームページより

 「田島硝子」や「江戸硝子」を謳いながら、同社が撮影した画像や動画を盗用して、粗悪なコピー品を売りつけているのです。

 田島硝子でもホームページで注意を呼び掛けています。公開されている情報によると、SNS上で勝手に在庫一掃セールや「今なら50%オフ」など、大幅な値引きしているように見せて詐欺サイトに誘導する手口があるようです。

 本物の画像を盗用して掲載し、もっともらしい理由も付けて大幅値引きした価格が示されると、つい買いたくなってしまうこともあるでしょうが、先述したショッピング詐欺を回避する方法を思い出してください。「商品の価格が極端に安い」のは、典型的なショッピング詐欺のおそれがあります。ウェブサイト上の日本語や、決済方法なども確認してください。また、「田島硝子 詐欺」などで検索したら、田島硝子からの注意の呼び掛けも見つけられるはずです。

詐欺サイトのイメージ。画像は田島硝子のホームページより

 偽物を購入してしまった人から、田島硝子へ苦情が入ることもあるようです。そのブランドの商品を初めて買った(つもりの)人からすれば、正規の商品の質が悪いのか、粗悪なコピー品を売りつけられてしまったのか、判断できないのも無理はなく、苦情を言いたい気持ちも分からなくはありません。しかし、本来は詐欺の被害として、警察署や消費生活センターへ連絡すべき問題です。

 ただでさえ偽物が流通することでダメージを受けているのに、苦情の対応をしたり、謂れのない誹謗中傷をSNSに書かれたりしたら踏んだり蹴ったりです。見当違いの怒りをぶつけるのは絶対にやめましょう。間違った情報をSNSで拡散するのも、名誉毀損罪や侮辱罪になる可能性もあります。前述の通り、相談するなら警察もしくは消費生活センターにしましょう。

 皆でデジタルリテラシーを高め、きちんとしたショッピングサイトから購入するようになればネット詐欺は減っていきます。偽物を購入して詐欺師にお金を渡した上で正規メーカーを攻撃するようなことは絶対にしないようにしましょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと