特集
「未成年のSNS規制」は最適解か? TikTokが推進する“安心”のための取り組み
ByteDanceが「透明性・説明責任情報公開センター」を日本メディアに公開
2026年3月26日 06:30
TikTokを運営するByteDanceは2月下旬、シンガポールにある「透明性・説明責任情報公開センター」を日本のメディアに公開し、コンテンツ審査や日本における透明性に対する取り組みを紹介しました。
コンテンツ審査や偽・誤情報、未成年者への取り組みを積極的に行う
TikTokは2016年にサービスを開始し、2017年に日本にも展開。若年層を中心に爆発的に広がり、現在も絶大な人気を誇っています。日本のユーザー数は2025年11月時点で、4200万人を超えているといいます。
とはいえ、ほかのSNSと比べると最近のものだし、未だに使うには不安を持っている……という人も少なからずいるでしょう。筆者もかつてはその1人で、同世代(20代中盤)の友人と比べて”TikTokデビュー”をするのはかなり遅く、昨年使い始めたばかりでした。
TikTokに限らず、近年のSNSには問題を指摘する声が多くなっており、若者の利用を規制する動きも出ています。豪州では2025年12月に16歳未満のSNS利用を原則禁止とする法律が施行され、欧州のスペインやフランスなどでも、同様の動きがあります。TikTokの場合、SNSの中でも特に中毒性が高い印象を持たれやすいショート動画のプラットフォームであることも、ネガティブな印象を強める要因だといえるでしょう。
こうした規制の要因となる代表的な問題としては、サービス内で流行する過度な「xxチャレンジ動画」を撮影しようとしたユーザーによる重大事故が挙げられます。例えば、2021年には気を失うまで首を締め続ける「失神チャレンジ」を行った12歳の少年の死亡が確認されたほか、2024年には助走をつけてスーパーマンの体勢で飛び込み、複数人が腕で受け止めて再び放り出す「スーパーマンチャレンジ」でケガをする人が続出しました。こうした事故の多くは、未成年者が「もしチャレンジに失敗したら命を落とす可能性もある」といったリスクを予測しにくいことが要因だとされています。
また、AIが偽の画像、音声、動画を生成する技術「ディープフェイク」問題もしばしば指摘されています。なかでも、生成・加工された未成年の性的画像が多く流通している現状に対し、「ディープフェイクであろうと虐待は虐待だ」として、2026年2月にはユニセフが子どもの性的画像問題への警鐘を鳴らしています。
次から次へと動画が再生されて、やめどきが分からなくなり、長時間視聴してしまいがちなことも、ショート動画プラットフォームの問題として指摘されます。これらの課題は、未成年のユーザーに関しては本人だけの問題にするのも無理があり、家族や社会も向き合うことが求められています。その結果、先述したような国としての法的規制に踏み切る事例も出てきている状況です。
こうした中、TikTokでは、2025年には未成年者の利用状況を保護者が見守れる「ペアレンタルコントロール」機能の強化(ネットワーク機器などのペアレンタルコントロール機能は、親が一方的に子どもの利用を規制する機能という印象が強いですが、TikTokの場合は後述するように、親子で話し合ってルールを決める、という趣旨のものとなっています)や、ユーザーが視聴時間を簡単に確認できること、アプリ内で視聴を一旦ストップさせる通知を行うなどの「時間とウェルビーイング」機能を実装しています。
このように、近年のTikTokの未成年者に対する取り組みは、未成年のユーザーを尊重し、視聴するコンテンツを親子で決めることなどを通して、自律できるよう判断力を養う仕組みを提供して、「安全にかつ長期的に利用してもらう」ことを意識していると感じられました。
今回、TikTokからの打診を受け、「透明性・説明責任情報公開センター」の取材を行いました。メディアに対し、TikTokがどのようなポリシーを持ってコンテンツ審査を行っているのかや、未成年者に対する取り組みについて説明がありました。
人間とAIの2段階モデリング体制、削除コンテンツの89%はAIが処理
「透明性・説明責任情報公開センター」は、世界各国のメディアや専門家などに対し、コンテンツ審査がどのように行われているのか、招待者に審査を体験してもらいながら、仕組みを説明する施設です。シンガポール、アイルランドのダブリン、アメリカのワシントンおよびロサンゼルスの、世界4カ所に設置されています。まずは、コンテンツ公開前に審査を行う「コンテンツモデレーション」について説明を受けました。
TikTokでは、アップロードされた全てのコンテンツに対し、以下のポリシーを設けています。そして、ユーザーがアップロードしたコンテンツは、ポリシーに違反していないかの審査を行う「コンテンツモデレーション」をクリアして初めて公開される、という流れです。ポリシーに違反したコンテンツは公開停止されるほか、表現によっては特定の年齢層への非表示、「おすすめ」フィードへの配信停止といった対応が取られます。
- 未成年者の安全とウェルビーイング:年齢制限、身体的・精神的・発達上の危害を及ぼすもの
- 安全性と礼節:暴力やヘイトスピーチ、虐待、ハラスメントなど
- 精神的健康と⾏動の健康:自殺や自傷行為、危険な行為、身体への影響など
- 慎重に扱うべきテーマと成⼈向けテーマ:性的行動、動物虐待など
- 誠実性と信頼性:誤情報、AI生成コンテンツなど
- 規制対象品と商業活動:詐欺、規制対象商品およびサービスなど
- プライバシーとセキュリティ:個人情報、プラットフォームの安全性
日々膨大なコンテンツが日々アップロードされているため、全てを人力で審査することは困難です。そのため、コンテンツモデレーションは、AIで自動審査を行う「機械モニタリング」と、人の目で審査を行う「人的モニタリング」の2段階で構成されています。
まず、機械モニタリングでは、映っている内容や動作をAIで審査します。AIには「酒」「タバコ」「刃物」といった視聴可能年齢を制限するアイテムのほか、タバコを吸っている動作などの特定のモーションを学習させており、各項目がコンテンツに含まれている確信度を算出します。例えば、酒瓶と思われるアイテムが映っており、「95%の確信度でお酒が含まれている」という結果だった場合、飲酒が含まれるコンテンツとしてラベリングされ、ユーザーの年齢によって配信を制限します(お酒の映像自体はポリシー違反ではありませんが、各国の法律に基づいて、飲酒が許可されない年齢のユーザーの視聴には適さない、のように判断されます)。
ポリシーに違反しているコンテンツのうち、9割以上が公開前に削除されています。それ以外では、公開後にユーザーの報告を受けるなどして再度モニタリングを行い、削除することがあります。直近3カ月のコンテンツ投稿削除数は約2億500万件で、このうちAIによる削除は約89%。導入直後は60%程度でしたが、徐々に精度が上がり、AIが対応できる割合が上がっているそうです。
このように、AIによって効率的にラベル付けや削除が行えるようになっているものの、誤情報やハラスメント、性的描写といった各国特有の文脈を理解する必要のあるコンテンツの判断などはAIの苦手とする分野だそうです。また、AIがポリシーに違反している可能性を検知しても、確信度が80〜90%程度にとどまることもあります。このようなAIが判断しきれなかったコンテンツは、人的モニタリングに回されます。
そして、人的モニタリングでは、人間のモデレーターが目視によって、酒・タバコなどが映っていないか、未成年に不適切な内容でないか、といった点を判断し、結果に基づいてタグ付けなどを行います。
モデレーターの人数は具体的には明らかにされませんでしたが、「数千人規模」とのこと。このうち日本語が理解できる人は約2.4%だそうです。大量のコンテンツに対し、まずはAIが対応して、AIに判断しきれなかったコンテンツについては人間が判断するという、相互の強みをいかしたモデレーション体制です。
「おすすめ」フィードも極端な最適化はせず、4割は無関係な内容を混ぜる
続いて、レコメンド機能が過度に最適化されることで、偏った情報ばかりをユーザーが受け取ってしまう「フィルターバブル」問題への対策について、説明がありました。
TikTokにも、ユーザーの「いいね」やコンテンツ視聴時間といったアクティビティを分析し、最適なコンテンツを配信するレコメンド機能「おすすめ」フィードが実装されています。TikTokの「おすすめ」フィードでは、フィルターバブル化を防ぐため、フィードへ流すコンテンツ10本のうち6本はユーザーに最適化されたもの、残りの4本はユーザーの興味外のコンテンツや国内外で流行しているコンテンツを流すような仕組みを構築しているとのことです。
似たような投稿が連続して表示されないよう抑制する機能も備えており、ユーザーから「このコンテンツには興味がない」というフィードバックを受け取って反映する機能や、「おすすめ」フィードの内容が好みでなくなったときに設定をリセットできる機能も実装されています。
このように、ユーザーの好みを反映したコンテンツを提供するようにしている一方で、あえて100%好みのコンテンツばかりになるような最適化はせず、フィルターバブル化を防いでいるとのことです。
偽・誤情報への対策として、信頼性の高い発信源への誘導も
続いて、TikTok Trust & Safety 北東アジアパートナーシップマネージャーの梁秀瑛(ヤン・スヨン)氏による、日本における情報透明化による取り組みについての説明がありました。
近年のSNSでは、ユーザーが一見しただけでは見抜くのが難しい偽・誤情報も流通しています。TikTokでは、明確なポリシー違反ではないものの、人的モニタリングでも真偽を判断しきれなかったコンテンツは、「信憑性が未確認」といったラベルが付けられ、ユーザーの「おすすめ」フィードには配信しないなどの対応がされます。また、世界20のファクトチェック機関と連携し、新たに発生した偽・誤情報のファクトチェックを依頼しフィードバックを受けているとのことです。
さまざまな情報が交錯する選挙期間中においては、コンテンツに含まれている情報の真偽をユーザー自身もチェックし、信頼性の高い情報源が発信している情報に基づいた判断ができるよう、選挙に関するキーワードを検索すると信頼できる情報を確認する旨のメッセージと、「選挙ドットコム」などの信頼できる情報源に遷移するバナーを表示しました。
政治家をモデルにしたAI作成のディープフェイクは、コンテンツ自体の真偽の判断が難しい偽・誤情報の類と言えます。また、コロナ禍以降作成されるようになった、元動画の一部を抜粋する「切り抜き動画」の中には、前後をカットして発言の文脈が分からないようにされるものもあります。その発言自体は真(実際に本人が発言したもの)であっても、発言者の真意が分かりにくくされているという意味で、悪質な誘導を目的としたものも含まれます。
TikTokでは、政治的なコンテンツへの扱いについて、「言論の自由の観点において、公人のイメージをもとにしたユーモアコンテンツは基本的には許容している」としつつも、公人が発言していない内容をあたかも発言しているかのように見せた内容など、ポリシーに違反する可能性のあるコンテンツについては、適宜審査を行っているというスタンスをとっています。しかしながら、現状、ユーザー自身で信頼性の高い情報源も参照し、どのように受け取るか判断する必要があります。
未成年者を守る「ペアレンタルコントロール」にも注力
記事冒頭で紹介したポリシーには、「未成年者の安全とウェルビーイング」が含まれています。TikTokが特に力を入れているのが、未成年のユーザーが適切なコンテンツを視聴するための機能の実装です。
TikTokでは未成年者が安全に利用できるよう、保護者が見守れる「ペアレンタルコントロール」機能の強化を行っています。この機能は、視聴時間の制限、視聴できるコンテンツの制限といった内容を、親子で話し合いながら調整できるものです。2025年末に藤本美貴さん・庄司智春さん夫妻が同機能を設定する様子のテレビCMを見かけた読者もいることでしょう。
特徴的なものとしては、子どもがコンテンツを投稿すると保護者に通知で知らせることや、特定の時間帯にTikTokの利用を制限する「休憩タイム」機能、トピックごとに「おすすめ」フィードの表示の増減を決める「トピックを管理」機能があります。これは成人アカウントでも設定できるものですが、ペアレンタルコントロール機能により、各家庭の状況や考え方に応じ、子どものアカウントに対して設定が可能です。
また、子どもがフォローしているアカウントやフォロワー、ブロックしたアカウントなども保護者が確認できる機能があり、子どものTikTok上での交友関係について理解できます。このように、ペアレンタルコントロールを通し、子どものデジタルリテラシー向上のために家庭内での対話をするきっかけづくりを提供しています。
このほか、ゲーム感覚でデジタル習慣を身に付けられる「ウェルビーイングミッション」として、夜間のTikTok利用を控えるために瞑想を行うことや、1日のスクリーンタイムの時間を確認するよう促します。なお、この機能も成人アカウントで利用可能です。
現在、TikTokでは13歳未満の未成年者の利用を制限していますが、自己申告制のため、年齢を偽ることが可能です。このため、アカウントが作成されても、ほかのユーザーからの申告で停止処置を行うことがあります。「いいね」「コメント」や興味のあるコンテンツなどユーザーの振る舞いによって年齢を推測し、年齢を偽っていると判断した場合もアカウントを停止することもあります。
これにより、直近期間(2025年7〜9月)では、世界で2200万以上のアカウントが削除されてます。なお、16歳未満のアカウントに関してはデフォルトで非公開アカウントに設定されDM(ダイレクトメール)機能が使えず、18歳未満はライブ配信やギフト送信ができないというように、年齢ごとに機能制限を設けています。
昨今、TikTokをはじめとしたSNSは、特に未成年者利用に対する規制をより強く受けるようになりました。冒頭で述べた、豪州における16歳未満のSNS利用を禁止する法律についても取材中に話題になりましたが、TikTokは「各国の法律を順守していく」とコメントしています。
「自律」と「見守り」の両立
取材を通して、SNSにまつわる諸問題に対し、TikTokは「野放しにせず」向き合っているという強いアピールを感じました。
冒頭でも言及したSNS規制について、大人の視点で見ると、命にかかわる危険な動画を見る機会をゼロにすることや、悪意のある大人との接触を防ぐといった安全面や依存になるほどの中毒性の高さから、「規制しよう」といった流れが大きくなっていくのは自然なことだと思います。
一方、規制を受ける側(子ども)からすると、使い慣れたSNSが突然禁止されるというインパクトはかなり大きいはずです。
私自身の話をすると、中学生からSNS(Instagramや当時のTwitter)を利用していたのですが、自分の生活環境の外側にいる有名人やクリエイター自身が発信している情報を見れるという「これまで知らなかった世界が見れる」「面白い世界がグッと身近になる」といった感覚がありました。一方、これは私の“黒歴史”の類ですが、ちょっとしたおふざけで描いたイラストを投稿した際には、それなりの数の悪口を言わたこともありましたが、親切なアドバイスをいただいたこともありました。現実世界では交わらない遠くの人と(良し悪しはあれど)交流できるという、SNSならではの思い出があります。
私のようにときどき失敗することもあれど、「新しく面白い情報を得られる」「自らコンテンツを作り、手軽に発信できる」というSNSだからこその体験はあるはずです。こうした体験を通して、少しずつネットリテラシーを身につけていき、SNSと程よく付き合う土台をつくっていく、というのはあってもいいのではと感じます。
少なくともTikTokでは、子どもの自律的な利用を促しつつ見守れるペアレンタルコントロール機能を実装しています。今指摘されているSNS利用の問題を全て解決できる魔法ようなものではないかもしれませんが、親にとっては十分な情報を把握して見守ることができ、子どもにとってはSNSを過度に規制されず楽しめる機能として、試してみる価値のある機能と言えると思います。













