テレワーク、空いた時間でなにしてる?
初心者でも自転車で富士山に登れるだと!? 50歳を過ぎてからなぜか「富士ヒル」にはまってしまった理由【ぼっち・ざ・ろーど!その11】
第22回 Mt.富士ヒルクライムレポート【前編】
2026年6月12日 12:12
山梨の河口湖付近から富士山五合目までつながる有料道路「富士スバルライン」。片道およそ24kmで、通行料は軽自動車で往復2300円、普通車は往復2800円、他にも中型車や大型車などの料金が設定されているが、実は自転車の料金設定もあって往復280円。
自転車が走れる有料道路というのも珍しいが、標高2305mの富士山五合目まで登るための道に自転車の料金設定があるなんて、普通の人の感覚なら「ネタか?」というところだろう。
ところがどっこい、5月のGW過ぎにでも富士スバルライン五合目に行けば、多くの自転車乗りがいることに驚かされるだろう。
その理由が「Mt.富士ヒルクライム(通称富士ヒル)」だ。富士ヒルとは富士スバルラインを自転車で五合目まで目指すレースで、毎年6月頭に開催されるもの。その練習として、5月には多くのサイクリストが富士スバルラインを訪れるわけだ。
普通の人の感覚だと、自転車で富士山に登るなんて、一部のストイックなサイクリストの所業だと思われるだろうがそんなことはなくて、富士ヒルの参加者はおよそ9000人で、ヒルクライムレースとしては国内最大級の規模。というのも、富士スバルラインは平均勾配が5%程度と比較的ゆるく、かつ富士ヒルは制限時間も長いので、完走率は99%程度と、初心者にも参加しやすいヒルクライムレースと言われているのだ。
ちなみに勾配5%とは、1m進んだら5cm上るということ。バリアフリー法で定められているスロープの勾配が8.3%以下、公共施設であれば6.7%程度とされているので、5%というとそれよりもゆるやか。そう聞くと、なんか結構行けそうな気もしてくるだろう。実際、参加者には初心者、高齢者、女性も多くいて、速い人だと1時間ほどで登りきるが、中には4時間以上かけて登る人もいて、皆それぞれのペースで楽しめるレースとなっている。
運動が苦手なおっさんがなぜ富士山に登るのか?
そんな富士ヒルに筆者が挑んだ話をお届けしたいのだが、筆者は決して運動万能でもないしガチなサイクリストではない。むしろその真逆だ。
筆者は現在51歳、子供のころから運動は苦手で体育の成績はいつも「2」。身長だけはあったので、高校1年の時はできたばかりの友人から体育のバスケなどで同じチームに誘われることもあったが、実際にプレイするとあまりのポンコツっぷりに次からは誘われなくなった。そんなこともあって特にチームスポーツは大嫌いだ。
しかし40歳を過ぎたころから健康診断でいろいろ引っかかるようになってしまって、少しは運動をしなければと自転車趣味を始めた。ちょうど海沿いの地域に転居したこともあって、坂も少ないし自転車も苦じゃないだろうとクロスバイクを買ったのが最初だ。
中学・高校時代は、当時流行っていたマウンテンバイクで走り回っていたので、自転車は嫌いじゃなかった。とは言えわざわざ自転車で坂道を登ろうとは思わなかったし、わざわざチームに入ろうとも思わなかった。一人で平坦な道をゆるゆると走って、徐々に走れる距離が伸びることで十分満足していた。
転機は2年前の49歳の時、ゆるゆるとサイクリングは続けていたものの、テレワークで家にいる時間が長くなったせいだろう、体重が徐々に増え、ついに年末に受けた健康診断で糖尿病の診断をされてしまった。
放置すれば失明したり手足を失ったりするかもしれない。一度なったら根治することはなく、医者には薬を一生飲み続けることになるだろうと言われた。
当時、筆者の娘はまだ4歳。大学時代に親しかった同級生は、5歳の娘を残して癌で他界した。そのことを思い出して、「まだ死ねない」と強く思った。
とりあえず運動しなければと、正月早々から自転車で走りに出たが、イヤなことばかり考えてしまって、目的地も分からず漠然とサイクリングロードを走っていた。この先どこに行こうかと考えたとき、なぜか不意に、以前よくお世話になっていたロードスターのチューニングショップが近いことを思い出した。
「もう10年以上も会っていないし、正月だから店も開いていないだろう」と思ったものの、ほかに行くところも思いつかず、店に向かってみた。
十数年ぶりの記憶を頼りに走っているとショップのカンバンを発見。しかも見れば正月だというのにシャッターが開いている。
「S崎さんいますか?」と声をかけると、中から、昔よりだいぶ白髪が増えたS崎さんが現れて怪訝そうな顔でこちらを見る。クルマのチューニングショップにロードバイク乗りが来るのだからそれもそうだろう。が、少し間があって、「瀬戸くん? ずいぶんひさしぶりじゃん、太ったね~」と明るい表情になると、「待っててよ」と言って再び店の奥に。なにかと思ったらなんとロードバイク用のスタンドを持ってきた。
クルマのショップでロードバイクのスタンドが出てくることに驚かされたが、理由を聞くとS崎さんも今ロードバイクをやっているのだという。
なんという偶然だろう。聞けばかなりの距離を走ることもあって、早朝から自転車で出発して、一日中走って、夜になったら輪行(自転車を電車に乗せて移動すること)して帰ってくるようなことをしているんだとか。
そこで病気の話をすると、「100kmぐらいなら毎週末でも走れるよ、瀬戸君の家からなら三浦半島を1周すればちょうどそれぐらいだよ」と、細かいルートまで教えてくれた。筆者より一回りぐらい年上のS崎さんが走れるなら自分でもできるはず、と、翌週末には三浦半島に走りに行った。
それまでの病気に対する漠然とした不安だけしかない状態から、毎週末100km走る、この道を走れば100kmになる、という具体的な形ができたことで、気持ち的にも前向きになれた。
最初は辛かった100kmもすっかり余裕になって、徐々に距離を伸ばしたが、距離が伸びると帰りの時間がどんどん遅くなる。そこで短い距離でも消費カロリーを上げるために山に登ろうと考えた。我が家から西を目指せばそこには箱根がある。
ネットで調べたところ、箱根でも国道1号線を使ったコースは、“初心者向き”といった記事が見つかった。
ところで、サイクリストの言う「初心者向き」は簡単に信じてはいけない。これまで何度も経験しているが、思い出せばこのときもそうだった。初心者向きと書かれていた国道1号線で登る箱根は、当時の筆者にとって、それはそれはきついものだった。
だが、休みながら登ればなんとかなる、と自分に言い聞かせて、何度も休憩を入れながら芦ノ湖まで登った。初めて芦ノ湖まで登った日は、登り切ったところで天気が急変して、土砂降りの中を帰ってくることになったのだが、それでも芦ノ湖まで登ったという達成感がとにかくうれしくて、雨のなか喜々として帰路についた。
そこからは何度も箱根を登った。少しずつ途中休憩の回数を減らしていき、いよいよ足をつかずに走破。それまでの距離が伸びていくのとはまた違う自分の成長が楽しかった。そしてこの頃には、体重も大幅に減って、血糖値の数値も改善、休薬できるまでになっていた。
ただ、我が家から往復100km程度だとそれ以上の山はなく、その先のステップが見つけられないでいた。
50歳で初めてのレース、2025年にぼっちで「富士ヒル」参戦
そういう意味では絶好のタイミングだったのかもしれない。
昨年の4月ごろ、僚誌e-bike Watchから富士ヒルに参加してみないかと声をかけられた。富士ヒルにはe-bike部門がないのでほかに出る人がいないらしい(詳細は昨年の記事参照)。
それまでずっとぼっちで走ってきた筆者にとって、レースに出るなんて考えもしなかったが、地元の友達で唯一のロードバイク乗り(彼は別の競技で世界一になったこともある生粋のアスリート)に富士ヒルについて聞いたところ、市民マラソンみたいなノリで初心者でも参加しやすいレースだよと言われた。
筆者はここでもまた「初心者でも参加しやすい」という言葉にノセられて、参加することを決めるのである。
冒頭で、富士ヒルは完走率99%、勾配も平均5%とゆるやかと説明した。確かにその説明にウソはない。だが、そこにはいくつも足りない言葉がある。
まず標高。筆者がいつも登っていた箱根の芦ノ湖、そこよりもさらに高い標高1000m付近がスタート地点で、そこからさらに1200mも登る。となると、とにかく空気が薄いのだ。
そして確かに初心者の参加者も多くいるが、ベテランも大勢いる。だから走っているとどんどん抜かされる。70代ぐらいの年配の方や小柄な女性、ミニベロ(小径車)まで、どんどん抜かされる。だから初めて練習で走ったときは、自分の無力さ、遅さを思い知らされて、富士ヒル参加を決めたことを本当に後悔したものだ。
だが、何度も試走を重ねたことで、徐々にタイムを短縮。それと練習では抜かれてばかりだったが、本番では自分より遅い人もいて追い抜くこともできて、昨年の初参加の富士ヒルでは、1時間55分という、練習時のタイムを大幅に更新した良い結果を残すことができた(関連記事参照)。
この時点で、もうすっかり富士ヒルの虜になった。「来年も絶対に出たい!!」 まさかずっとぼっちでマイペースでやってきた筆者が、ヒルクライムレースにこんなに前のめりになるとは、自分でもまったく想像していなかった。
今年初の試走で人生初のトレインを体験する
あれから1年、また富士ヒルの開催が近づいてきた。そして今年も、PIECLEXさんの枠で出走させていただけることになったので、週末ごとに試走を始めた。
昨年のタイムは1時間55分29秒。そして今年の目標は1時間45分00秒にした(エントリー時に目標タイムを設定する必要がある)。
特になにか根拠があるわけではないが、昨年の練習時のタイムから本番では17分もタイム短縮できたので、10分ぐらいなら短縮できるんじゃない? という漠然としたものだ。実のところ内心では、もっと短縮できるんじゃないかと思っていた。だから、これで1時間40分ぐらいまで行けたら、来年はブロンズ(1時間30分切り)を目指そう、なんていう甘い考えを持っていた。
富士スバルラインは、いつでも五合目まで登れるわけではない。冬の間は途中で封鎖されていて、毎年GWごろになると、五合目まで行けるようになる。ただ、今年は春先の気温が高かったせいか、4月末には全線開通していた。
昨年は試走をするたびにタイムアップできたし、高い標高にも身体がなじんだ気がしたので、全線開通したのを知ってすぐ、4月末には最初の試走に行った。
昨年初めて試走したときは、とにかく空気の薄さに慣れず苦しくて仕方がなかった。なので今年も1本目は身体を慣れさせるものと割り切って走り出す。
が、これが思いのほか良いペースで走れる。「あれ? 全然平気かも」とか思っていたのだが、三合目まで来たところで雲の中に入ったのだろう、深い霧に包まれる。と同時にこの霧が体温をどんどんうばっていく。体感としては4℃は下回っているんじゃないだろうか、まるで冷蔵庫の中にいるように寒くて、身体がこわばって力が入らない。これではダメだと途中で止まって、下山時のために持ってきた防寒着を着たがそれでも寒い。
だが四合目あたりに来ると雲の上に抜けたようで青空が広がっている。飛行機で雲の上まで抜けたことはあるが、自転車で雲の上まで来たというのはちょっと感動だ。
それとこの日は1ついいことがあった。富士スバルラインはほとんどずっと上り坂なのだが、五合目手前に長いフラット区間がある。当然そこでスピードを上げられればタイム短縮になるから重要なポイントだ。
それと自転車というのは、複数台で並んで走ると、空力的に有利になってスピードが出しやすくなるというのがあるので、レース中はチームメイトなどと1列になって走ることがある(トレインとか呼ばれる)。ただ、いつもぼっちで走ってきた筆者はそんなのやったこともなかったし、去年の富士ヒルで初めてその存在を知ったぐらいだ。
この日、そのフラット区間に入る直前の坂で、おそらく大学の自転車部っぽい若者に抜かれた。さすがに速いなと思いつつ、フラット区間に入ったところで筆者も加速する。体重が重く坂が苦手な筆者にとって、このフラット区間はタイム短縮に重要なポイントだ。
するとさっき抜いていった若者がペースを上げずに走っているではないか。勝手な想像だが、もしかしたらスバルラインが初めてで、このフラット区間が長いことを知らないのかもしれない。
そんなことを考えながら彼を抜き去った。するとどうだろう、さすがというか、それに即座に反応するように彼も加速、筆者の後ろにピタっとくっついてきた。
おぉぉっっ! これがトレインっていうやつか!! いつもぼっちの筆者にとっては初めての経験だ!!
彼が後ろにつくと同時に、まるで追い風になったかのように足が軽くなった。なんかいつもより速く走れてる気がする! トレインで後続が楽なのは分かるが、前の人も楽になるのか?
実際のところ、それがトレインによる空力的な効果だったのか、はたまた人生初のトレインに筆者が舞い上がっていただけなのかは、よく分からなかったが、「速えぇ~!!」と興奮つつペダルをクルクルと漕いだ。ただ、彼のほうがさらに速く、途中で彼が先行。逆にこちらがついていくべきなのだが、力不足でちぎられてしまった。とは言えこれはすごくいい経験ができた(後日友人に聞いたところ、トレインは後続のほうが恩恵は大きいが先行にも空力的な効果はあるらしい)。
この日のタイムは、料金所過ぎからの計測で2時間14分28秒。昨年の練習でのベストタイムが2時間12分だったので、条件の悪さを踏まえればまずまずだろう。
そして富士山五合目は寒い。正確な気温は不明だが、体感的には4℃ぐらいじゃないかと思う。もちろん下山用の防寒着はもってきていたのだが、うっかり冬用のグローブを忘れてしまった。下山し始めるとまるで冷蔵庫の中にいるように寒く、すぐに指先の感覚がなくなってきた。濃い霧で速度は出せないし、でもブレーキを握る指先の感覚も怪しい。これは危険と大沢駐車場の自動販売機であったかいコーヒーを購入し、カイロ替わりとして、時々停車しては手を温めつつ下山した。ちなみに五合目は缶ジュースが1本300円ぐらいするが、少し下った大沢駐車場では普通の価格で買うことができる。
走る前の食事は大事!!
5月2日、GW最初の土曜日に再び試走へ。この日は天気がよく、霧の心配もない。これなら良いタイムが出そうだと意気揚々と登り始めた。
が、なぜか力が出ない。「空気が薄いのか?」とも思ったが、先週は大丈夫だった。先週より気温は高いのに汗も出ない。正確には汗が出るほど頑張れていない、とにかく力が出ない。なにが起きているのか分からないものの、なんとか登り切った結果は2時間22分04秒。前回よりも遅い。
なんでこんなに力が出なかったのか? いろいろ考えたが、おそらく原因は空腹だ。GWの連休初日で渋滞が予想されたので、この日は早朝から出発したのだ。その分朝ご飯も早朝に食べたきりで、登り始めたのが11時ごろ。お昼にはまだ早いとそのまま登ってしまったのが原因だったと思う。途中で補給食はとったものの長くは続かなかった。まさか走る前の食事がここまで影響するとは思わなかった。
続いてGW終盤の5月5日にも再び試走。前回の反省を踏まえてお昼を食べたあと、午後から登り始めた。するとタイムは2時間4分45秒。昨年のレースでのタイムにはまだまだ及ばないが、練習走行としては最速のタイムとなった。
翌週末の5月10日、この日も天気には恵まれた。食事も万全で挑むとタイムは2時間1分03秒。前回よりタイム更新はしたが、まだ2時間が切れない。
あくまで一般論だが、富士ヒル本番は大勢が同時に走るので、全体的に大きな追い風となって、一人で走っているときより好タイムが出やすい。
とは言え1時間45分を目指すなら、練習でも最低でも2時間切り、できれば去年の記録を切っておきたいところだ。昨年は試走ごとにどんどんタイムが短縮できたが、今年はその幅が狭い。この調子で本当に1時間45分なんて出せるんだろうか? 10分短縮は思った以上に高い目標だったのかもしれない、と気がつき始める。
目安は速度ではなくパワーで見る! 初めての伴走でいろいろ教えてもらった
5月17日、この日はロードバイク乗りの地元の友人と初めて一緒に行くことになった。彼のほうが圧倒的に速いので、登り始めたら一人でいくつもりだったのだが、なんと彼が伴走してくれることになった。加えて、ヒルクライムの走り方、というかペースの作り方を初めてちゃんと教えてもらった。
これまで筆者は平均時速ばかりを見ていた。24kmを2時間以内で走るには平均12km/h以上が必要で、だから走行中もサイクルコンピューター(サイコン)の速度、そして平均速度を見ながら走っていた。
だけどそうではなくて、パワーを見て走るのがいいそうだ。筆者も片足だけだがパワーメーター(ペダルを漕ぐ力がどれくらいかを測定できる装置)は着けている。ただ、その数字は常に上がったり下がったりしていて、まぁいつもよりパワーが出てるかなーとかぐらいにしか見ていなかった。
だが、スピードは風向きや勾配によっても変わるので、そうではなく平均パワーを目標に合わせていくのがいいらしい。その目標パワーは体重の何倍かで決まるそうで、たとえば富士ヒルで2時間で走りたいなら、平均で体重の2倍のパワー、つまり筆者は75kgなので、その2倍、150Wで走れば2時間で走れるのだという。
とりあえず後ろについて走ってというので、ペースを合わせて後方を走る。
体重の2倍のパワー、これが走り始めてみるとけっこう簡単。実際には筆者のサイコンでは168Wぐらいの表示になっていたが、「え、こんなのでいいの?」というのが走り始めの感想だった。
だけどそれも数km走って行くと、ずっとそのパワーで走り続けるのは、言うほど簡単ではないことに気がつく。とは言えまだ会話をしながら走るぐらいの余裕があった。
富士ヒルは序盤きつめの勾配が続いて、一合目下駐車場を過ぎると、少し勾配がゆるやかになる。勾配がゆるくなったときにそのままのペースで走っていると、パワーメーターの数字はどんどん小さくなる。そう、急勾配だと自然とパワーメーターの数値は上がるし、平坦になれば下がる。だからこれまでパワーメーターを見てもよく分からんと思ってきたわけだ。
だが、坂がゆるくなると同時に、「ギア上げてー」と声がかかって、言われるままに変速、そして加速。パワーメーターをそれまでと同じように168Wぐらいにしようと思えば、ペダルの回転が上がるし、あわせてギアも上げれば、速度も上がる。
そしてまた勾配がきつくなったら、「ギア下げてー」と言われて軽いギアに。すると速度も落ちる。正直なところ、平均速度を見ていると、「これで本当に2時間とかいける?」と思う速度だったが、この日はとにかく言われるまま、パワーを一定に走ることだけを考えて走った。
そして一合目、二合目と走るごとに、「もう4分の1走ったよ」「もう3分の1走ったよ」と声をかけてくれる。友人いわく、24km走ると思わず、小分けに考えた方がモチベーションが保てるという。
最初は余裕とさえ思った150Wだが、ちょうど中間地点となる三合目を過ぎたあたりからかなりきつくなってきた。息も上がって会話をするのが辛いが、なんとか遅れないように踏ん張る。それを察したのか「返事がきつければ返事しなくてもいいから」と声をかけてくれるが、それに返事をするのもきつい。
ゴールまであと7kmほどの大沢駐車場まで来ると、もうかなり限界だ。パワーメーターを見ても140Wとか、あきらかにパワーが出ていない。本当にきつくて、友人との距離が開いても詰める余裕がない。その様子に気がついたのか「最後の3kmはフラットだから実質あと4kmだよ」と声をかけてくる。いやいや、最後に激坂あるじゃん、と心の中で思うが、言い返す余裕がない。
そして奥庭駐車場を過ぎるとゴール前の長いフラット区間。体重の重い筆者にとっては、勾配のほとんどないこの区間が一番のタイム稼ぎどころだ。
ここで頑張れば2時間切れるかもしれないと全力で走る。おそらく友人はパワーで合わせてくれているのだろうが、フラットな区間ならもっと出せる。「行けるー! もっと上げれるー!」とペースアップを要求。最後は「じゃぁ先行して、出せるだけ出して!」との合図で先頭に出る。すると後ろから「トンネル3つ目までフラットだよー、行けるよー!!」とかけ声。走ったことがある人なら分かるだろうが、「3つ目のトンネルはもう坂だよッッ!!」と心の中で叫ぶ。
なんとか3つ目のトンネル手前まで先頭を行くが、坂がきつくなってきて失速。ゴールまであと500mの最後の激坂だが、フラット区間で頑張ってもう力が残っていない。友人が先頭を変わって「ギリギリ2時間切れる」と発破をかけられたが、もう出し切っていて全然力が出ない。友人の背中がどんどん離れていくが追いかける余裕はなく、惰性のままに、なんとかゴール。
料金所過ぎからの計測では1時間59分42秒でなんとか2時間切り。ただし本番は料金所より前から計測開始するので、本番なら2時間は切れていないだろう。
ただ、いつも漠然と頑張らなきゃと思っていたのが、パワーという指標を持てたのは大きな収穫だった。それと同時に、これは結構自分の限界かも、とも感じてしまった。
いつも一人で走っていると、ずっとモチベーションをキープし続けられてはいなくて、途中で漫然と走っているタイミングがある。だが、今回は友人にずっと引っ張ってもらったことで、ずっと緊張感を持って走ることができたし、かなり出し切れた感がある。その上で出せた出力の平均が150Wで2時間なのだとすると、1時間45分は本当に厳しいかもしれない。
パワーをどうやってタイムにつなげるか?
そうは言っても練習するしかない。5月23日、この日は本番に向けてタイヤを替えてきた。そう以前紹介したミシュランのヒルクライム用タイヤ「POWER TIME TRIAL」だ。ただしこの日は天気が悪く気温も低くコンディションが良いとは言えなかった。
今回は友人はいないので、パワーメーターの数字を見ながら走る。
前回の反省点として、標高が上がる後半になるほどパワーダウンしてしまうということ。アスリートの友人にとっては2倍のパワーで走り続けることは難しくないかもしれないが、2倍がギリギリの筆者にとっては、疲労もたまり空気も薄くなった終盤まで同じパワーでキープするのは難しい。だとすると序盤は2倍以上のパワーを目指して、後半のパワーダウンに備える必要がある。だから序盤はできるだけ200Wに入るぐらいのペースで走り、後半はパワーが落ちるのは仕方がないとしつつも平均値を下げすぎないように走る、という作戦にした。
結果として平均のパワーは171Wまで上げることができたが、タイムは1時間57分17秒。パワーが上げられた割にはタイムが縮んでいない。もちろん天候などの条件もあるので一概には言えないが、平均パワーを上げることばかり考えた結果、坂がゆるくなったときにペースが上げられなかった気がする。前回は友人がペースを作ってくれたので、坂がゆるくなったときにもっと加速していて全体的に緩急があったが、今回は勾配のきついところでパワーを使って疲れてしまって、ゆるいところで速度が出せなかった気がする。おなじパワーを上げるのでも、勾配のきついところよりゆるやかところのほうが車速の伸び幅は大きい。単に平均パワーを上げることだけを考えるのではなく、ゆるい坂の区間でよりたくさんパワー(速度)を出す走り方をしないといけないのだろう。
それを踏まえた5月30日、この日は夏日で気温も高く、晴天に恵まれた。これなら下山のウェアも少なくて済むから軽量化にもなるし好条件だ。
パワーメーターを気にしつつ、坂の緩急にも意識を持って走った。するとこの日の平均パワーは170W、前回より1W下回ったが、タイムは1時間55分35秒と2分近く更新した。ただしまだ昨年のレース本番のベストタイムには届かない。いくらレース本番は追い風があるとは言えここから10分以上短縮するためには、もっとパワーを上げて走らないとダメだろう。
1時間45分で走るために必要なパワーが足りない!! どうする? オレ
そして6月1日、この日は友人が走りに行くというので、有休を取って最後の試走に行くことに。ただし、前回走ってから中1日ということもあって、まだ疲れが取れ切っていなかったようだ。走り始めるとすぐに太ももが痛くなって、これは全然ダメ。友人には先に行ってもらって一人もくもくと走ることにした。
足の痛みに心が折れそうになったが、今日はタイムはいい、でもこれが筋肉になると思って走る。走って行くと、徐々に足の痛みも取れてきた。そして序盤ペースを落としていた分、最後のフラット区間ではしっかりと踏めて、過去最高の区間タイムを記録した。結果は平均パワー158Wで2時間1分43秒。正直もっと全然遅いと思っていたが、足が痛い割には良いタイムが出た。
友人はというと、今回は体重の2.5倍のパワーで走ってちょうど1時間45分だったと言う。体重75kgの筆者だと187.5Wという計算。これまでの最大平均パワーは171Wだから、なんと、さらに10%も出力アップしないといけない計算だ。ヤバい、目標の1時間45分は今の筆者には厳しいのかもしれない……。
筆者の心境を察したのか、最後に富士ヒル当日の食事の取り方やアップの仕方も教えてくれた。
筆者が去年はレース直前に朝マックを食べたと言ったら、あきれられた(苦笑)。当日の朝食は油ものはさけて、食物繊維もさけて、消化されやすいおにぎり(海苔のないもの)などを遅くとも本番の2時間前までに食べておくのがいいそうだ。
2時間前だとレース前におなかがすきそうだが、レースの少し前に食べるなら羊羹とかお団子などの消化のしやすいもの。レース中はジェルなどすぐに吸収されるものを食べるのがいいという。また、本番前にはアップをして心拍数を一度上げておくことで、レースが楽になるなんてことも教えてもらった。
筆者にとって朝マックは元気の源だと信じてきたのだが、目標タイムのためには仕方がない。当日はおにぎりにすることにしよう。今から追い込んでも本番に疲れを残すだけなので、後は本番までにしっかり回復させることだけだ。
というわけでいよいよレース本番を迎えたわけだが、ずいぶん長くなってしまったのでレースの模様は次週にお届けしたい。































