テレワーク、空いた時間でなにしてる?
【ぼっち・ざ・ろーど!その1】ぼっちなロードバイク乗り、Mt.富士ヒルクライムでレースに初挑戦
2025年6月6日 12:00
もともとダイエットのためにと始めた自転車趣味だったが、これが意外なほどに楽しめていて、飽きっぽい筆者でもすでに8年以上も続けられている。最初はクロスバイクから始め、走れる距離もどんどん伸びていって、今では100km超え。なにやらすっかりロードバイク乗りらしくなってしまった。
とはいえメンテナンスも自分でやるし、親しいショップもなければ一緒に走る仲間もおらず、いつも「ぼっち」で走っている。唯一地元の小学校時代の友達がロードバイクをやっているが、彼はチームにも入って、各所のレースに出まくっているガチ勢。対して筆者はマイペースで走っていたいので、ずっとぼっちでやってきた。いや、決して友達が作れなかったのではないですよ。
だが、そんな筆者に、Mt.富士ヒルクライムレース(以下富士ヒル)に出ないか、というお声がかかった。
声を掛けてきたのは僚誌e-bike Watch編集部。実は筆者がe-bike Watch立ち上げ当時のメンバーだったこともあって、お声がかかったのだ。特に富士ヒルにはe-bike部門がないので、メーカーからお誘いを受けたものの参加者がいないようだ。
先に書いたとおり、筆者はぼっちでのんびりやってきた。だからこれまでもレースなんて縁がなかったし、出る気もなかった。だからすぐに断わろうと思った。のだが、ふと先の友人も出るのかも、と思って連絡してみた。
すると彼も参戦するとのことで、聞けば富士ヒルはレースといっても市民マラソンのようなノリで、初心者でも参加しやすいものだという。芦ノ湖まで登れるなら全然大丈夫、とりあえず2時間切りを目標に走ってみたら、などと言われ、すっかり筆者でもやれそうな気になってしまった。
筆者の性格からして、この機会を逃せば、今後一生レースに出る機会もなさそうだし、これもなにかの縁だろうと、参加してみることにした。
ちなみに富士ヒル、実はめちゃくちゃ人気のあるレースだそうで、出たくても出られない人も多いのだとか。ただ今回は大会スポンサーであるピエクレックスさんの枠で出させてもらえたもの。最初はやや渋々な気持ちもあったが、レースを終えた今となっては、出させてもらって本当にありがたかったと思っている。
2時間切るには平均12km/h以上で走らなきゃならないことに気がつく
さて、まずはエントリーするのだが、初参加者はこのとき目標のタイムを入力するよう求められる。最初は友人に言われるまま2時間にしようと思ったのだが、冷静に考えると無理な気がしてきた。
富士ヒルはこれまで走ってきたどの峠より高くて長い。タイム計測区間だけで獲得標高は1255m、距離は24km。つまりアベレージ12km/hで走らないと2時間は切れない計算。これまでヤビツ峠(漫画イニシャルDにも登場した神奈川の峠。サイクリストにはヒルクライムスポットとして有名)などを走ったときのデータを見返すと、アベレージはおおむね10km/h。平均勾配はやや緩いとはいえ、距離も標高も倍の富士ヒルを、アベレージ12km/h以上で走り続けられるとはとうてい思えない。
おおう、危ない危ない。根っからアスリート気質の友人のおだてに乗せられるところだった。
ということでアベレージ10km/hで走る計算で、目標タイムは2時間24分にした。これでも決して楽な目標とは思えないが、いつもヤビツ峠まで自走で30km走ってから登るのに対して、今回は麓まではクルマ移動。頑張れは行けるタイムだと思った。
箱根の椿ラインでトレーニング開始!!
誘いを受けて参戦を決めたのは4月初旬。富士ヒルまですでに2カ月を切っている。YouTubeで調べると富士ヒル関連の動画が山のように出てきて、それを見ていると皆さん半年ぐらい前から富士ヒルに向けてトレーニングをしているとか。なんですとっ!!
例の友人にアドバイスを求めたところ、近所だと箱根の椿ラインが富士ヒルに近い勾配だと教えてもらったので、さっそく椿ラインに練習に向かう。
椿ラインのゴールは大観山で、いつも登っている芦ノ湖よりさらに高い。ただし、国道1号線よりは勾配が緩いので、初回でもなんとか足つきしないで走破できた。小田原の実家に自転車を置かせてもらい、そこからは毎週末椿ラインでトレーニング。
どこから計測するのかにもよるが、信号がなく一般的に計測される区間としては、距離15.85km、獲得標高875m。ちょうど富士ヒルを3分の2にしたぐらいの峠だ。クルマの交通量は少なくて、走りやすい。
とはいえ、自分史上もっとも高い山だ。登り切るだけでもヘロヘロで、計測結果を見てみると、初回はアベレージ9.6km/h、2回目は9.4km/h、3回目は9.5km/hとなかなか10km/hを超えられない。そして4回目で10.7km/h。どうにか10km/hを超えることができた。ただ、これの1.5倍の距離と標高を登り切れるのだろうか。
5月の連休ごろになると、スバルラインは5合目(富士ヒルゴール地点)まで走れるようになるらしい。それで天気予報を見ていると、見事に毎週末が雨の予報。ヤバい、練習できないかも、と焦ったが、5月11日が天気が良さそうなので、ここで山梨に練習に行くことにした。
それとココで新兵器を投入。それがサイクルキャリアだ。筆者の愛車はセダン。前後輪とも外せばなんとか積めなくはないが、移動後に変速の調子が悪くなったり、ブレーキの調整が必要だったりと、毎回結構大変だ。特に山を登っている最中に変速がうまくいかなくなると本当に大変なので、思い切ってルーフキャリアを導入。タイヤを外さずに自転車を積載できるようにしたわけだ。これは本当に大正解で、富士ヒル決勝まで大活躍した(サイクルキャリア選びについてはいろいろと調べたのでまた次の機会に掘り下げたい)。
初めての富士、空気が薄くてつらい!!
ということで初めてのスバルラインでの練習走行。
天気は快晴!! この日は妻と娘も連れてきて、2人には路線バスで5合目を目指してもらってそこで合流することにした。
家族をバスが出る駅に降ろし、筆者はレーススタート地点となる富士北麓公園の駐車場に行くと、いるいる、ロードバイク乗りだらけ。しかもみんなグループで来ていて、同じチームのジャージを着ている人達が、和気藹々とやっている。そうか、ロードバイクってチームスポーツなんだ。
ぼっちな筆者は話し相手もいないので黙々と準備を進める。といってもサイクルキャリアのおかげで、準備はあっという間だ。ウエアを着たらそそくさと出発する。
スバルライン入口にたどり着くと、ここでもチームの人達が集まって打ち合わせをしているようだ。普段はぼっちで走っている身としては、こんなにロードバイク乗りが大勢、しかもチームの人がいる中で走るのはだいぶ気後れしてしまうが、走るしかない。
するとちょうど緑色のチームジャージを着た一団が少し先にいた。といってもチーム内でも初心者、上級者がいるようで、いくつかのグループに分かれている様子。
序盤、やや急な、7%ほどの坂道が続く。といってもヤビツの序盤は10%なので、これぐらいは余裕、とペースを上げた。するとすぐに先の緑色チームのたぶん一番初心者だと思われる2人組に追いついた。さっきまで気後れしていたが、大丈夫、オレの方が速い、と前に出た。
が、気がつくとその2人が後ろにピッタリ付いてくるじゃあないか!
「ヤバい! あおられてる!!(汗)」
実のところロードバイクだと、前の人にくっついて走るのは、定石らしいのだが、いつもぼっちで走っている筆者はそんなこととはつゆ知らず「あおられてる」と思ってしまった。
さらに言うと、富士ヒルの序盤の急坂は頑張らないのが鉄則らしい。その分、あとの勾配が緩いところで頑張るのがポイントなのだとか。つまり件の2人は、序盤あえてゆっくり走っていて、そこにいいペースメーカーが来たので、その後ろに付いた、というのが本当のところなのだと思う。
だが筆者はそんなことは知らず、「ええい、あおってくるとはこしゃくな、振り切ってやる!!」と、頑張るべきではない序盤に無駄に頑張ってしまった。が、そんな体力は続かず、結局一合目下駐車場であえなく撃沈。2人の後塵を拝することとなる。いや、ホントはここで2人について走るのがセオリーなんだろうが、すでにヘトヘトになってその余裕もなかった。
ここからはもう悲惨だ。どんどん抜かれる。女性にも抜かれる、おそらく70代と思われるシニアにも抜かれる。ミニベロにも抜かれる。折りたたみ自転車にも抜かれる。富士ヒルが初心者向けとか言ったの誰だよ。そして一合目に着く頃にはもう帰りたくなっていた。
「おれ、なんで富士ヒルに出るなんて言っちゃったんだろう」
椿ラインで練習したから三合目か四合目ぐらいまでは問題なく走れると思ったのに、全然勝手が違う。やけに苦しい。そうか、空気が薄いんだ。どう考えてもアベレージ10km/hなんかじゃ走れない。2時間24分なんて無理だ。
正直、このときは本当にイヤになった。なんでわざわざ山梨まで来て自分の遅さを知らなきゃならんのか。「やっぱりぼっちで走っているほうがよかった」「来るんじゃなかった」と、本気でそう思った。
でも娘がゴールで待っている。とりあえずタイムはいいから登り切ろう。そう思って頑張って、なんとか足つきしないでゴール。時間としては走り始めてから2時間40分ぐらい。計測区間内だけだと2時間30分ほど。できるだけ頑張ったが、目標の2時間24分には届かなかった。
いや、きつい。こんなにきついのは初めてだ。
だけど登り切ると、達成感も半端ない。走っている途中は抜かれまくって心が折れたけど、登り切った途端、さっきまでのもう辞めたいと思った気持ちがウソのように消えて、過去最高の獲得標高、足つきなしで登れた達成感がうれしかった。
また登りたい。そう思ってしまうのがヒルクライムの面白さであり恐ろしさだ。
2回目の練習、ペダルがクルクル回せない
そして次の日曜日、前日まで雨の予報だったのが一変した。予報では翌週末は雨の予報で、練習できるのは今日が最後かも。慌てて準備をして再び山梨を目指した。
前回の失敗を踏まえて、いろいろと勉強をしてきた。序盤は飛ばさない。所々で緩やかになるところがあるので、そこで頑張る。これで前回よりタイムアップできれば目標の2時間24分は切れるハズ。
ということで2回目のスバルライン。序盤は控えめで走る。それと不思議と前回よりも空気の薄さを感じない。カラダが順応しているのかもしれない。
ただ、やっぱり今回も抜かれまくる。が、もうそれは慣れた。そして少しでも緩やかになったら踏もう、と思ってはいるのだがなかなかうまく行かない。ゆっくり走っていても疲れるものは疲れる、なかなかそこで加速ができない。
抜かれながら様子を見ていると、みんな足をクルクル回せている。対して筆者はギーコ、ギーコ、という感じ。
ロードバイクでは引き足も使ってクルクル回すのがいいと言われている。筆者も平坦であればそれなりにクルクル回せていると思っている。だが、坂が続くとそれができなくなる。とにかくひと踏み、ひと踏み、階段を上るように漕ぐのが精一杯。おかげでスピードは上がらないし、坂がやや緩くなったとて余裕がなくてペースが上げられない。
ただ、それでも前回よりはペースアップして、なんとか目標の2時間24分を切るぐらいで走ることができた。
補給食と坂道の登り方を調べる
2回の試走を終えて、いくつか対策を考えた。まず補給食だ。
ロードバイクは走っているとエネルギーを消費するので、走っている途中に補給食をとる。筆者の場合、これまでだとおなかがすいたらどこかのお店に入ればよかったので、補給食は「カロリーメイト」と「えいようかん」を念のために携帯しているぐらいだった。
前回の試走時に、途中でこのカロリーメイトを食べてみたのだが、息が上がっている上に喉が渇いている状況でカロリーメイトを食べるのはかなり苦しかった。むせそうになるし、慌てて水分を補給するも、なかなか喉を通らない。レース中、しかもヒルクライム中に固形物を採るのは難しいらしい。
ただ、カロリーメイトを食べたあとは再び頑張れたので、やっぱり補給食は重要らしい。そこで、Amazonで調べて「SAURUS 完走PACK」というジェルタイプの補給食を買ってみた。レース中に飲む2種類が2個ずつ入っていたので、一度練習時に試してみたい。
それと坂道でもクルクルペダルが回せるように走り方も勉強した。YouTubeでは富士ヒルに向けて坂道の登り方をいろいろな方が紹介していたので、それを見る。やっぱり引き足は大事、前荷重、上半身の力を抜いて肩甲骨が動くような走り方がいいとか、とりあえず知識だけは大きくなった。
本番前の最後の練習! 一気に10分もタイム短縮!!
そしてレース前の最後の週末。この日も予報は雨だったが、これまた直前に変わって、雨は昼すぎから、という予報になった。ならばレース本番と同じ早朝から行ってみようと思い、朝5時に起きて山梨に向かった。
このときには、すでにレース当日のスタート時間が発表されていて、筆者は一番最後の第7ウェーブ(富士ヒルは参加者が8000人程度と多いので、スタート時間も7つのグループに分けられる)で、8時40分~9時10分スタート。ということで、本番と同じその時間帯に走り始めてみた。
今回も序盤は控えめに。とはいえ、あまり控えめにしすぎても遅くなるだけだし、なかなか加減が分からない。ただ、コースにも少しずつ慣れてきて、坂が緩いところではペースを上げる余裕が出てきた。
コースもだいぶ覚えて、とりあえず一合目までは無理をしない。そこからは緩い坂ではペースアップする。四合目を過ぎてゴール直前にフラットでスピードを上げられる区間があるから、そこでスピードを上げまくるとタイムを削れる。でもゴール前に最後の急坂があるから、その分は取っておかないとせっかくのタイムが台無しになる。ということを頭に入れて走る。
今回は中間地点、12kmまで行ったら補給食をとることにした。ジェルタイプの補給食は初めて使うが、事前に調べて、テープを使って開けやすく、かつゴミが落ちないように工夫をしてきた。
そしていよいよ12km。坂が少し緩やかになったタイミングで補給食をとる。
が、うまく行かない。吸っても出てこないので握りつぶして中身を押し出すのだが、片手で、しかもグローブを付けていることもあって、なかなかうまく出せず、うわー、下の方のが出てこない、とかやっていたら無駄に時間を使ってしまった。しかも手に付いたゼリーがベトベトして大変。うーん、これも練習が必要か。
とはいえ補給食をとったことで、後半もだれることなく走りきることができた。終盤のフラットのエリアでも力が出せて30km/h以上で走ることができ、結果、タイムは2時間12分ほど。
やった! 本番では荷物も軽くなるし、これなら2時間24分どころか2時間10分を切れるかもしれない。ちなみにYouTubeで見つけたのだが、ロードバイク乗りとして有名な安田大サーカスの団長が、富士ヒル初参加したときのタイムが2時間10分。練習なしのぶっつけ本番でもこのタイムで走れるのだから大したものだが、それでも団長を超えられるというのはうれしいじゃないか! と言うわけで非公式ながら2時間10分が目標タイムとなった。あとは補給食をどうするか考えたい。
と書いていたら結構長くなってしまったので、今回はここまで。次回レース本番の様子をお伝えする。なんと驚きの結末が待っているぞ!!
テレワークで余裕ができた時間を有効活用するため、または、変化がなくなりがちなテレワークの日々に新たな風を入れるため、INTERNET Watch編集部員やライター陣がやっていることをリレー形式で紹介していく「テレワーク、空いた時間でなにしてる?」。バックナンバーもぜひお楽しみください。