テレワーク、空いた時間でなにしてる?
【ロードスター復活計画その3】13年前のバッテリーで動くのか!? 久しぶりのエンジン始動前にやっておくべきこと
セルモーターのパワーでクランクボルト外しに挑戦!!
2024年1月26日 12:12
さて、9年前に車検を切り不動にしていたロードスターの復活計画。まずは状況を確認しつつタイミングベルト交換をやるつもりが、クランクボルトが外れずお手上げになったのが前回までの話。
そこで今回は、セルモーター(※エンジンを始動するためのモーター、スターターモーターとも言う)のパワーを使ってクランクボルトを緩めるという荒ワザに挑戦することにした。ただし、最後にエンジンを掛けたのは6年前ということで、おいそれとセルモーターを動かすわけにはいかない。
問題は3つ。まずは、16万km無交換のセルモーターが動くのか? こればっかりはやってみなきゃわからない。次に、セルモーターを動かすのには電気が必要。しかし現状はバッテリーは上がっている。最後は油膜切れ問題。6年も経つとエンジン内部のオイルは落ちきっているので、いきなりセルモーターを動かすと、油膜切れでエンジンのシリンダーにキズが付く可能性がある。
【ロードスター復活計画:記事一覧】
- その1:エンジンを掛けずに放置したクルマはどうなってる?
- その2:エンジン内部はサビてない? 9年も放置したクーラント(冷却水)を抜いてみる
- その3:13年前のバッテリーで動くのか!? 久しぶりのエンジン始動前にやっておくべきこと
- その4:いよいよタイミングベルトに着手、しかしマツダスピード Bスペックの謎にハマる
- その5:16万kmでエンジン開けたし、ついでにリフレッシュ! と思ったらこれが結構大変でした
- その6:初めてのタイベル交換、ついに完成!? DIYでエンジンはちゃんと元に戻せるのか?
- その7:新車から28年、真っ二つに割れたステアリングラックブーツを交換
- その8:ロードスター誕生から35年、不動となっているNA8Cのステアリングまわりをリフレッシュ
13年前のバッテリーを充電してみた
ということで最初にやるのはバッテリーだ。
ブースターケーブルでアテンザのバッテリーを繋げられれば簡単だが、駐車場のレイアウト上、ブースターケーブルの長さが足りない。
だったら新品バッテリーを買えよと思われるだろうが、ロードスターの場合、専用バッテリーが必要で、とにかく高価。今だと実売で2万5000円以上する。
もちろん最終的には新品に換えるつもりではある。しかし、筆者は子供のころからおもちゃに時計に分解しまくってきたので、分解するのには自信がある、が、「分解する」のと「直す」のは別ものなのだ。「オレに直せるのか?」という疑念は誰よりも自分が持っている。だからこそ、復活の目処が立つまでは、できるだけお金を掛けないで進めたいのだ。
とは言え今のバッテリーはいつ買ったのだったか? 気になって調べたところ、なんと13年も前だった。干支一周以上前、もちろん平成、筆者まだ30代。クルマに使われる液式バッテリーの一般的な寿命は3~5年。普通に考えれば充電して復活するわけがない。
だがしかし、もしかしたらいけるかも!? と思える理由があった。それは、筆者が使っているのが、「ODYSSEY(オデッセイ)バッテリー」という高性能な汎用バッテリーだったからだ。
ついさっき“ロードスターには専用バッテリーが必要”と書いたのに、なぜ汎用のバッテリーを使えているのかというと、このオデッセイバッテリーは、ドライバッテリーと呼ばれる特殊なバッテリーで、ガスを排出しないからだ。
ロードスターが専用バッテリーを必要とする理由は、ロードスターが、前後重量配分を理由にバッテリーをトランクに配置しているため。
一般的に、クルマに使われる液式バッテリーは、充電中に可燃性ガス(水素ガス)が発生する。エンジンルームなら走行風などで換気されるので問題にならないが、密閉されたトランクルームでは、可燃性ガスが充満してしまう。トランクのすぐ前にはガソリンタンクもあるので実に笑えない状況だ。そこで、専用バッテリーにはパイプを繋げられるようになっていて、パイプを介してガスを車外に排出できるようになっている。
一方のオデッセイバッテリーは、密閉されていて、ガスを外に出さない構造(過充電などで内圧が上がりすぎた場合のリリースバルブはある)。なので、トランクはもちろん、車内にも置くことができ、以前はツーリングカーレースマシンの助手席部分に置かれているのもよく目にした。
レースで使われるのには、ほかにも理由があって、クランキング性能が2倍でその分小容量化、軽量化が可能だし、最大6Gにも耐えられ、横置きもできるので低重心化にもなる。最近はレースシーンでもリチウムイオンバッテリーが主流のようだが、かつてはF1やWRC、さらに航空機でも使われた、けっこうスゴいバッテリーなのだ。
さらに普通の液式バッテリーでは柔らかすぎて使えない“純鉛”の電極を使っているので、ライフは2~3倍。実は今使っているオデッセイバッテリーは2個目で、その前に使っていたものも、何度もバッテリーを上げたことがあったのに、7年使ってまだ元気だった(さすがに7年も使ったので念のため換えた)。実売価格は記事執筆時で3万5000円程度と純正より高いが、7年も持つならならコスパはむしろいいとリピートしたのだ。
また、自己放電も少なく、通常のバッテリーだと6カ月ごとの補充電が必要なところ、2年間充電なしでも保存できるという。ロードスターを寝かせている間も、ときどきは充電したこともあったので、もしかしたら行けるかも? という期待があった。
といこうことで、専用のメンテナンス充電器で充電してみると、さすがに時間はかかったものの、なんか充電器の表示的には充電できた様子。実際に動かしてみるまでは安心できないものの、これにはおどろき! すごいなオデッセイ!!
9年ぶりにエンジンを動かす前の儀式
おかげでバッテリー問題は光が見えた。次は油膜切れ対策だ。
通常、セルモーターが動いてエンジンが回転すれば、オイルポンプも回って各所にオイルが送られる。ただ、油圧が十分にかかり、オイルが各所まで送り届けられるまでには多少の時間がかかるのだ。
通常の使い方であれば、前回のエンジンオイルがへばりついているのでさほど問題にならないが、6年も経つとオイルが落ちきっているので、いきなりエンジンを始動すると、初動でシリンダーに傷がついてしまう可能性がある。
その対策となるのが、プラグを外して、ピストンの上に直接オイルを垂らしてしまう方法。側面のピストンリングまでオイルが流れれば、とりあえずのシリンダー部分の油膜は確保できる。そういう方法があることは知っていたが、実際にやるのは初めてだ。
ただし燃焼室に残ったオイルは燃えることになるので、あまりたくさん入れすぎたくもない。車種によってはピストン天面が大きくへこんでいるものもあるが、筆者のロードスターに入っているハイコンプピストンは、トップが盛り上がったような形状だったはずなので、それほどたくさん入れなくても大丈夫なハズ、などと思いつつカンで入れる。あとはしばらく放置してオイルがピストンリングまで流れるのを待つ。今のような寒い時期なら、オイルを湯煎して温めてからやったほうが、流れやすくなるはずだ。
今回はエンジンを掛けるのが目的ではなく、セルで回転させるのが目的なので、プラグは外したままにした。そのほうが楽にエンジンが回るからだ。
ただし、プラグを外した状態でエンジンを回転させると、プラグホールから強く空気を吸ったり吐いたりするので、プラグホール周辺には吸い込まれそうなゴミなどがないように掃除しておく。ほこり対策にテープなどでフタをしてしまうと、テープ自体が吸い込まれるので注意。
最後に長いスピンナーハンドル(別名ブレーカーバー)に壊れてもいい6角のソケットをつけてクランクボルトにはめる。スピンナーハンドルの先はスタビなどにくくりつける人もいるようだが、筆者はスピンナーハンドルの柄に、パイプをつなぎ、地面に接地させた状態にした。本来ならNGな使い方だが、背に腹は代えられない。くれぐれもオススメできるやり方ではないことはご理解いただきたい。
準備は整った、クランクボルトは取れるのか!?
ということで準備は整った。あとはセルモーターが動いてくれることを祈るばかり。
できるだけバッテリーの負荷を減らすために空調のファンなどは全てオフにし、クラッチも切っていざ、キーを回す。
「クン……ッ」
おっ、反応あり!! とりあえずセルモーターは生きていたらしい。が、動かない。やっぱりバッテリーが弱ってるのか?
一度エンジンルームをチェックし、スピンナーハンドルが外れていないことを確認したら再度運転席に座って始動。
「クン……ッ」
ダメだ。再びエンジンルームをチェック。スピンナーハンドルは外れていないが緩んでもいない。
再び運転席で始動。
「クン……ッ」
やっぱりダメか、ならばもう一度
「クン……ッ」
バッテリーが弱ってるのかー、ダメかー? ええぃ、ダメ元でもう1回
「クン……っクォンっうぉんッウォン、カン、カラララララ……」
動いた? あれ? なんか金属音が!? やばい、スピンナーハンドルが折れたのか!?
慌ててエンジンルームをチェック。すると、スピンナーハンドルが外れていたが、折れている様子はない。「??」と思いつつ試しにクランクボルトに手を掛けると、あ、回った!! 見事ボルトが緩んでいました!!
うぉッ! 外れた!! やった!! やった!! ついにクランクボルトをとったどー!!
思わず1人でガッツポーズ。なんかスゴい大物を捕まえた気分だ。きっと昔マンモスを仕留めたときはこんな気分なんだろうなぁとか、このままクランクボルトをネックレスにして首からぶら下げようかとか、ボルト1本ですんごい達成感(笑)。これぞDIYの楽しさ。この興奮をだれかと共有したいけど、奥さんに言っても絶対わかんねーだろうな。
しかしよろこんだのもつかの間、外せたクランクプーリーはやっぱりサビが浮いている。ほかのプーリーも全体的にサビが。はてさてどうするか?
というところでまだまだ課題は多いが、長くなったので今回はここまで。記事1本で外れたボルト1本って、往年の少年マンガのようなペースになってしまっているが、次回こそはいよいよヘッドカバーも外して、タイミングベルトが外れるはずだ。
ただし最後にひとつだけ。
クーラントが古くなると金属を攻撃するってホント!?
前回の記事に対するコメントの中に、見た目がキレイでもクーラント(冷却水)は古くなると金属を攻撃する成分だけが残る、といった話があった。
筆者は初めて聞いた話だったのだが、気になる内容だったので、以前取材したことがある国内クーラントメーカーの開発部の人に聞いてみた。
ものすごく丁寧に説明してくれたのだが、ざっくりと要約すると、こうだ。
クーラントの劣化とは、つまり“酸化する”ということで、pH測定をはじめ、分析装置で測定すれば劣化具合が判るのだという。
クーラントの主成分であるEG(エチレングリコール)やPG(プロピレングリコール)が酸化すると、酸性物質になって、ラジエターやエンジン内部のサビの原因になってしまう。しかし、そうならないようにpH調整剤が含まれていて、長く使ってもアルカリ性を維持できるように設計されているのだそうだ。
EGやPGのほかに添加されているのが、サビの発生を抑える防サビ剤と、気泡によって冷却性能が落ちるのを抑える消泡剤の2つ。
サビを抑えるための防サビ剤も、年数が経てば酸化(消費)して、最終的にはサビが発生するようになるし、消泡剤も酸化すると泡切れが悪くなって冷却性能が悪化する。カー用品店などで売られているクーラント復活剤とは、これら防サビ剤と消泡剤を多く含んだものなのだと言う。
以上を踏まえて、前述のコメントに関しての見解はこうだ。
まず、色については、酸化が進めば脱色や変色があるので、新品と比較すれば、酸化したクーラントはくすんだり黒ずんでいくのが普通とのこと。
さらに古くなっても、金属を攻撃する成分が残るとか溜まるということはなく、おそらく「見た目がさほど変わらなくても防サビ性能がなくなってくることがある」といった話が大きくなったのではないか? とのことだった。
写真で見てもらった限りだが、筆者のケースだと、それほどくすんだり黒ずんだりするようには見えないが、一般的なJISクーラントの品質保証は通常走行で2年4万kmなので、交換は必須。メーカーとしても、見た目が変わらなくても品質保証はできないので、2年4万kmでの交換はマストだと念押しされた。
もちろん9年落ちのクーラントを再利用する気はないが、この記事を読んで「9年ぐらい大丈夫」とはくれぐれも思わないでいただきたい。エンジンを動かしてなくてもクーラントは劣化するので、いずれ復活させる気があるなら、定期的に交換しておくのがよいだろう。放置すればいずれサビが発生し、クーラントが泥水のようになってしまうかもしれない。
【ロードスター復活計画:記事一覧】
- その1:エンジンを掛けずに放置したクルマはどうなってる?
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