テレワーク、空いた時間でなにしてる?
【ロードスター復活計画その10】NA8Cロードスターのリアブレーキは何が違う? オーバーホールでバラバラにしてみた。
2025年3月7日 12:12
さて、だいぶ間が開いてしまったがロードスター復活計画の続編である。別の記事で書いたとおり、筆者の健康診断の結果が激ワルで、長らくロードスター復活計画が滞ってしまっているのだが、まだ記事にできていない部分はたくさんあるので、ダイエット計画連載と平行して進めていきたい。
【ロードスター復活計画:記事一覧】
- その1:エンジンを掛けずに放置したクルマはどうなってる?
- その2:エンジン内部はサビてない? 9年も放置したクーラント(冷却水)を抜いてみる
- その3:13年前のバッテリーで動くのか!? 久しぶりのエンジン始動前にやっておくべきこと
- その4:いよいよタイミングベルトに着手、しかしマツダスピード Bスペックの謎にハマる
- その5:16万kmでエンジン開けたし、ついでにリフレッシュ! と思ったらこれが結構大変でした
- その6:初めてのタイベル交換、ついに完成!? DIYでエンジンはちゃんと元に戻せるのか?
- その7:新車から28年、真っ二つに割れたステアリングラックブーツを交換
- その8:ロードスター誕生から35年、不動となっているNA8Cのステアリングまわりをリフレッシュ
- その9:16万km走り続けたNA8Cロードスターのブレーキをバラしたらサビまくりだった件
- その10:NA8Cロードスターのリアブレーキは何が違う? オーバーホールでバラバラにしてみた。
ということで前回に引き続きブレーキのオーバーホールだ。前回も書いたが、ブレーキの整備ミスは大事故に繋がるので、筆者としてもむやみにDIYを勧めるつもりはない。本稿もこれを読んだだけでマネできるような説明はしていない。DIYはあくまで自分の技量にあった範囲で楽しんでもらいたい。
ロードスターのリアキャリパーオーバーホールが大変な理由
さて今回はリアのブレーキキャリパーオーバーホールだが、前回のフロントキャリパーオーバーホールの記事でも、「フロントはカンタンだけどリアが大変」というコメントを多くいただいた。そう、ロードスターはリアキャリパーが面倒なのだ。
クルマの免許をお持ちの方ならご存じのとおり、クルマにはブレーキペダルを踏んで操作するフットブレーキと、駐車したときなどにクルマを動かなくするサイドブレーキ(パーキングブレーキ)がある。
そしてこのサイドブレーキは、一般的にはリアタイヤにのみ作動する。つまりリアブレーキにはフットブレーキとサイドブレーキの二つのブレーキ機構が付いているというわけ。
そしてもうひとつ、こちらもご存じの方が多いとは思うが、ブレーキの種類について。
一般的な乗用車のブレーキシステムは2種類、ディスクブレーキとドラムブレーキがある。ディスクブレーキはディスク状のブレーキローターの外周部をブレーキパッドで挟む構造。一方のドラムブレーキは、ドラムと呼ばれる、深皿とか鍋のようなものの内側から外側に向かってブレーキライナーを押し広げることで制動する。
今どきのクルマだと前輪はほぼすべてディスクブレーキが採用されているし、スポーツカーや高級車なら4輪ともディスクブレーキのクルマがほとんどだ。ロードスターも4輪にディスクブレーキが採用されている。というのも、その構造からディスクブレーキのほうが放熱性に優れ、またコントロール性も高いからだ。
一方で絶対的な制動力、ロックする能力はドラムブレーキのほうが高い。つまり、クルマを駐車するときに使うサイドブレーキとしては、ロックする能力が高いドラムブレーキが向いている。
そのため、4輪ディスクブレーキ車の場合、リアにはディスクブレーキとドラムブレーキの2つのブレーキが付いていることが多い。ブレーキローターの外周部をディスクブレーキキャリパーが挟み、ローターのセンター寄りは深皿状になっていて、その中にドラムブレーキが仕込まれる。フットブレーキはディスク、サイドブレーキはドラム、という使い分けをしている。こうすることで、走行中はディスクブレーキのコントロール性能を享受し、駐車の時はドラムブレーキの強い制動力を享受できるというわけだ。
それに対してロードスターの場合は、リアにドラムブレーキを持っていない。その代わりブレーキキャリパーに、サイドブレーキワイヤーの繋がるところがあって、フットブレーキを踏んで油圧が伝わったときも、サイドブレーキレバーでワイヤー引いたときも、リアキャリパーが作動してリアディスクローターを挟める仕組みになっている。
おかげでロードスターのサイドブレーキは効きが悪い。特にリアローターの小さかった初代ロードスター(NA6CE)は恐ろしいほどにサイドブレーキの効きが甘く、筆者の乗っていた初代NA6CEでも、斜面のパーキングスペースに駐車したら、クルマを降りた途端にスルスルと動き出してしまったことがある。そのときは幸い屋根を開けっぱなしだったので、全力で追いかけて車内にダイブして止めることができたが、あの時は本当に生きた心地がしなかった。それ以来、斜面の駐車ではギアを入れておくのが習慣になった。
と、話がそれたが、これがフロントキャリパーに比べて、ロードスターのリアキャリパーのオーバーホールが面倒な理由だ。
ブレーキを外す……、が、こぼれるオイルに固いネジと結構たいへん……
というわけでリアキャリパーを外す前に、まずはサイドブレーキワイヤーを外すところから始める。
サイドブレーキワイヤーの外し方はいくつかあるが、今回はステーの根本から外すことにした。
ワイヤーステーのボルトの横にもうひとつボルトがあるが、このボルトはサイドブレーキ調整ボルトのフタになるもので、固着していると面倒なので、キャリパーを外す前に緩めるだけはしておいたほうがいい。
あわせて油圧ホースを繋ぐバンジョーボルトも取り外しておく。これもかなり固く締まっていたので、キャリパーを外す前に緩める方がいい。実は最初キャリパーを外してしまったのだが、固くて緩まなかったので、再度キャリパーをボディに固定してから、長いスピンナーハンドルを使って緩めることにした。今回はあとでホースも新品に交換する。
ホースを外せば当然ブレーキフルードがこぼれてくるので、下にトレーなどを置いて作業する。ちなみにブレーキフルードは塗装を傷めるので、ボディなどに付いてしまった場合はよく水で流しておきたい。
キャリパーとブラケットは上下2本のピンで串刺しになっているが、フロントと違って緩めるのは下側のピンのみ。下側のピンを抜いたら、ガバッとキャリパーを持ち上げて、本体ごとスライドさせて上側のピンを抜くとキャリパーが外れる。
リアキャリパーは10万kmぐらいの時に新品に交換しているので、フロントキャリパーより問題は少ないだろうと思っていたが、なぜか左リアのキャリパーがやけにやれている印象があった。
そして不思議なことに、スライドピンも右と左で違っていて、左側のピンだけ、色が黒く、摩耗も激しい。長さも径もまったく同じだし、部品の品番も同じはずなのに、なぜ種類が異なるのかは不明だし、なぜかこっちだけやけにボロボロなのも謎だ。そのまま戻しても問題になるほどではなかったが、気持ちの問題でピンは新品にすることに。すると届いたものは黒くもなく右側の金色ともちょっと違う色のピンだった。おそらく表面処理の違いなのだと思うが、型番が同じでも微妙に変わっているらしい。
そしてもうひとつ問題が見つかって、ディスクブレーキの場合、ブレーキを掛けていないときにパッドを引きずらないように、パッドを開くためのスプリングが付いているのだが、左リアキャリパーでそのスプリングの1つがなくなっていた。
このスプリングがなくても別に大きな問題になるものでもないのだが、しかし入手しようと思うとこれがちょっとやっかいな部品なのだ。というのもこれだけでは部品として出てこず、ノーマルブレーキパッドを買うと付いてくるものなのだ。つまりスプリング1つのためにブレーキパッドを買う必要がある。以前もなくなっていて、そのときはわざわざノーマルパッドを買ったのだが、2度目となるとイヤになる。
調べてみると、このスプリングをなくしたという声は多くて、筆者も2度目だし、構造上ハズれやすいのかもしれない。最近はこのM字スプリングだけで販売しているお店もあったが、ただのバネなので自作することにした。Amazonで1mmのステンレス線を買って、純正のM字スプリングを参考にくねくねと曲げ、最後に気持ちの問題で焼き入れして完成。基本的にはなくても問題のない部品だが、テレワークを終えた後のデスクでも作れるし、微調整しながら純正品の形に寄せていく作業はなかなか面白かった。
これぞDIYの醍醐味、納得するまで磨きまくる!!
ということで外したキャリパーのオーバーホールだ。
まずはピストンを外すのだが、サイドブレーキ機構も持ったリアキャリパーは、裏側にサイドブレーキの当たり具合を調整するネジが付いていて、それをクルクルと回していくとピストンが飛び出してくる。一般的なキャリパーだとエアーなどでピストンを押し出す必要があって、エアコンプレッサーなどを持っていないとそこが難関になるのだが、こちらは六角レンチで済むのでこの点はカンタンだ。
外したピストンはそれなりに汚れていたが、丁寧に磨いたらキレイになった。ヘアライン程度の傷はあるが、これぐらいであればピストンは再利用できる。
キャリパーのフチのサビが気になるが、ブーツより外側なので、こちらも機能的には問題ない。
とはいえ汚れもサビもスゴいので、ワイヤーブラシや電動ドリルにワイヤーブラシのカップをつけて磨きまくる。別にいくらキレイにしたからといって性能が上がるわけではないが、ブレーキダストとサビで汚かったキャリパーが徐々にキレイになっていく様が楽しくて、ついつい無心になって磨いてしまう。
外側がキレイになったら、内側もキレイにする。フロントキャリパーの場合は、ピストンを抜いたところのオイルシールとダストブーツ、あとはスライドピンのゴムブーツの交換ぐらいだったが、リアに関しては、ピストンを抜いた奥にサイドブレーキ機構があるので、そこも分解しないとならない。
そのためにはシリンダー内側にあるスナップリングを外す必要があるのだが、これがなかなかに外れず、今回の一番の難所だった。
まず、先の曲がったスナップリングプライヤーが必要になる。これは事前に調べてKTCの曲型ロングスナップリングプライヤーを買っておいた。ただ、それでもなかなかうまく行かず、スナップリングに引っかかるものの、先端しか引っかからないので、力を掛けると滑って外れてしまう。
これが本当に苦痛だった。近眼+老眼で眼鏡を書けても外しても近くが見えづらくなっている上に、ようやく穴にプライヤーが刺さっても抜けてしまう。というのをいったい何回繰り返したのか。ひたすら根気よく頑張ってようやく外せた。
こうしてバラバラにした部品をまたキレイにしていく。
リアもフロントと同様、ミヤコのオーバーホールキットを使った。
特に左リアのサイドブレーキのレバー部分のシールがなぜかやけにボロボロになっていた。ここのシールがダメになると、水が浸入して中がサビたりするらしいが、幸いそこまでには至っていなかった。それ以外もどこかのシールがだめになってオイル漏れをしたり、固着したりということはなく、オーバーホールキットの部品交換だけで問題なく終わった。とはいえ、交換して6万km程度の割にはくたびれていた印象で、リアに関しては10万kmといわず5~6万kmに1度ぐらいはオーバーホールしたほうがいいのかもしれない。
組み立てる前にリアキャリパーも耐熱塗料で塗装。そしてシール類をすべて交換し、各所グリスアップしながら組み立て。スナップリングは新品に交換したものの、やっぱりはめるときもうまく溝に入ってくれずに苦労した。
が、スナップリング以外の部分は、パーツ点数はやや多いもののそれほど困ることもなくオーバーホールすることができた。
ということで今回はここまで。次回はマスターシリンダーオーバーホールとブレーキホースの交換ぐらいまで行きたい。
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