テレワーク、空いた時間でなにしてる?

【ロードスター復活計画その5】16万kmでエンジン開けたし、ついでにリフレッシュ! と思ったらこれが結構大変でした

うまくできるか? オイルポンプの分解やHLA洗浄にも挑戦!!

いろいろ外してスカスカになったエンジンルーム、ついでにいろいろ手を加えたくなってくる

 9年前に車検を切ったままとなっていたNAロードスターを復活させようという計画。長年放置したままのガソリンは腐っていないか?(第1回)、9年前に交換したままのクーラント(冷却水)は腐っていないか?(第2回)、13年前に買ったバッテリーはもうダメだろ?(第3回)といろいろあったが、やっと、前回でタイミングベルトの取り外しまでたどり着いた。自宅の駐車場で、1人でどこまでできるのかという不安を抱きつつ作業してきたが、ここまでこれてまずは一安心だ。

 ということで、あとはタイミングベルトを戻せばよいのだが、ここまで1人でバラバラにできたという達成感と、折り返し地点まで来たという安心感からだろうか、なんかやけに楽しくなってきて、この機会にリフレッシュできるところを、もっといろいろやってみようという気になってきた。

 補機類もはずれてスカスカになったエンジンルームを眺めつつ、同時にやってしまったほうがいい作業を探す。もちろんあれもこれも新しくはしたいが予算にも限りはあるので、このバラバラの状態だからこそやりやすい箇所を考えた結果、水回りのホース類交換、オルタネーターやパワステポンプといった補機類、そしてカムシャフトの下側にあってなかなか外す機会のないHLA(ハイドロラッシュアジャスター)の洗浄をやってみることにした。

水回りのホースを全交換、が、Bスペックの思わぬトラップが……

 まずは水回りのホース類のリフレッシュだ。

 タイミングベルト交換では、同時にウォーターポンプを交換するのが定番だが、今回は水回りのホース類は全て交換することにした。ラジエターホースとヒーターホースは10万kmの時に交換しているのでまだまだ大丈夫そうではあるが、そうは言っても交換したのは15年ぐらい前の話。ゴム類は経年でも劣化するのだ。

 特にヒーターホースはエンジン後方につながるので、少し作業がしづらい。今回オイルシール交換のためにクランク角センサーを外したところ、普段はあまり見えないヒーターホースが丸見えになったので、どうせならやっちゃおうという気になった。

ヘッドカバーの後ろ側につくクランク角センサーを外すとヒーターホースが丸見えになる。普段だとここはのぞき込みながら手探りでの作業になるのだ
ヒーターホースは2本とも交換
ラジエターホースも全て交換。そこまで硬くなったりということはなかった
前回は交換しなかった金属製のパイプも一新した

 加えて、前回は交換しなかった細めのホース類、バイパスホースや、サーモハウジングからISCVにつながるホース、ISCVとオイルクーラーをつなぐホース、オイルクーラーとエンジンをつなぐホースも交換。これら細いホース類は無交換だったのでパイプに張り付いてしまっていてなかなか大変だった。

サーもハウジングなどから各所につながるウォーターラインも一新する
ISCVにつながるホースはかなり劣化して水漏れした形跡も

 特に苦労したのがオイルクーラーとエンジンをつなぐホースだ。NA8Cからは、オイルフィルターの根元に水冷のオイルクーラーが追加されていて、そこにウォーターラインがつながっているのだ。ただ、オイルクーラーの位置もインマニの下のとても作業しにくい場所にあるし、エンジン側もエンジン後方の狭いすき間にあって、古いホースを外すのも新しいホースをつけるのもかなり大変だった。

 インマニを外せばもっとカンタンに作業できたかもしれないが、筆者のロードスターはマツダスピードのBスペック仕様なので、4連スロットルに変わっていて、外すのも結構大変だし、外したら外したで既に廃番のガスケットの代わりをどうするかといった問題もあって、外さずにやりたかったのだ。

オルタネーターを外したことで見えやすくなったオイルクーラー。手前のホースはカンタンに外せたが、奥のホースを外すのがメチャ大変
ホースはインマニの下でこんな感じでエンジン後方につながっている
エンジン後方もかなりスペースが狭い。イグニッションコイルを外して少しでもスペースを確保
上からのぞき見たところ。クランプがうまく外れず力技で破壊、その後、ホースを抜くのも一苦労だった

 実はBスペックという点ではもうひとつ大変なことがあった。

 4連スロットルになっているため、ISCV(アイドルスピードコントロールバルブ)という部品(通常はスロットルとくっついているパーツで、スロットルをバイパスして吸気を通すことができる装置。寒いときやエアコンを入れたときなどにバルブを開いて、アイドリングの回転数を上げる)を移設しているのだが、その移設したISCVとインマニを繋ぐホースも他車種用の部品を流用してあるのだ。

分かりにくいが写真中央のテープが巻いてあるのがISCVとインマニを繋ぐホース。純正には存在しない部品だ

 ホース自体は当時の資料で品番が分かったので注文できたのだが、届いたホースは古いホースとは長さからして違った。要は長さを短くしたり、他のパーツと干渉してダメージを受けないように補強したりしてあるのだ。

 そこで古いホースに付いていた補強のプレートなどを移植するため外してみたところ、なんとホースの中にも何かが入ってた。そこでホースを切り開いてみたところ、中から出てきたのはステンレスパイプ。負圧でホースがつぶれるのを防ぐためなのか、あるいは形を真っ直ぐにしたかったからなのかは不明だが、いずれにしてもこのステンレスパイプを新しいホースに入れ直さなければならない。しかし、ホースの内径が約16mmなのに対してステンレスパイプの直径が約19mm、ゴムホースが多少伸びるとは言え、その作業がめちゃくちゃ大変だった。

 プロショップの知り合いなどにも相談し、ホースを温めるといいとの情報を得てなんとか完成。ちなみに筆者は滑りをよくするためにシリコンオイルを使ったのだが、後から聞いた話だとエタノールが滑りがよくなっていいらしい。とは言え、めちゃくちゃ大変だったので、できればもうやりたくない。

写真上がISCVと4連スロットルを繋ぐホース、下が品番から取り寄せた部品。カットしてつかっているようだ
テープを剥がすと、ゴムホースが二重になったうえに塩ビの補強がつけられる。オルタネーターのステーに干渉するので、それを保護するためのようだ
外側のゴムホースを抜く……、がさらに中に何かが入っている!
ホースをカットしてみると中からステンレスパイプが出てきた。負圧でつぶれないようにするためのものか?
新しいホースにステンレスパイプを挿入する。16mmの内径に19mmのパイプを入れるとか無茶言うぜ
熱々にしたホットタオルでホースを温めつつ全体重で押し込む。毎晩仕事を終えてから少しずつねじ込むこと3日
最後はサイズのちょうどあうソケットとエクステンションをゲタにして奥までねじ込んで完成。もう二度とやりなくない作業だ

パワステポンプを分解してオーバーホールしてみる

 補機類も、オルタネーターとパワステポンプまわりをリフレッシュした。本当はエアコンもリフレッシュしたいところだが、ガスを回収する術がないので今回は保留に。

 オルタネーターはリビルト品に交換した。リビルト品とは、中古品のベアリングやブラシなど消耗部品を交換したもので、新品を買うより安く済む。ただし、代わりに外したプーリーを送り返す必要がある。

オルタネーターはリビルト品に交換。ネットショップで2万円弱で購入。外したオルタネーターを返送するための配送伝票も付いてきた

 パワステポンプについては、高圧側のホースにオイルにじみがあったので、配管類は新品に交換する。ポンプ自体からはオイル漏れはなさそうだったが、調べたところ純正部品でオーバーホールキットが出ていたので、予防としてオーバーホールに挑戦してみることにした。

 パワステポンプを取り外して本体を分解してみると、中はキレイなものだった。常にオイルが満ちているし、それほど熱も圧もかからないので、そもそもあまりダメージの累積する部品ではないのだろう。汚れやキズもほとんど無かった。

 オーバーホールキットに含まれるのはオイルシール類。古いシールもダメになっているというほどではなかったが、新品と比べれば明らかにつぶれているし柔軟性も減っていたので、変えておいて損はないだろう。ただ、似たようなサイズのOリングがあるので、まずは一度全部バラバラにして、すべてのオイルシールのサイズを照らし合わせてから交換したほうがいいと思う。

 それと、27mmというクルマではなかなか使わないサイズのボルトが1つある。外すだけならモンキーレンチでも良いが、締め付けトルクはキチンと管理したいのでソケットを新たに購入した。

パワステポンプとオーバーホールキット。オーバーホールキットと言ってもすべてオイルシールだ
ということで分解。中は結構きれい。パワステフルードを最後に換えたのがいつか覚えていないが、オイル自体もキレイそう
さらに分解していく。古いオイルシールもそこまで硬化はしていない様子
側面の19mmと27mmのボルトも外す。27mmのソケットなんて持ってないのでAmazonでポチ
全部バラバラにしたらパーツクリーナーで洗浄
外した古いオイルシール。ほとんどサイズの変わらないものがあるので、交換時に間違えないよう注意

 また、パワステホースの交換でもフレアナットレンチというちょっと特殊な工具が必要になる。フレアナットレンチとは、配管の同軸上にあるナットを締めるためのもの。真ん中に配管があるので、メガネレンチの一部が切れたような形になっている。

 ブレーキラインなどで必要になる工具だが、パワステホースで使うのは22mmと17mmという、フレアナットレンチとしてはレアなサイズ。

 加えて締め付けトルクも管理したいので、クローフットレンチというものを購入した。これはフレアナットレンチと同じような形状ながら、ラチェットハンドルなどにつけられるもの。なので、トルクレンチに繋げばトルク管理もできるというわけ。

 ちなみに、クローフットレンチとトルクレンチを組み合わせて使う場合は、力点と作用点の位置関係が変わってしまうので、その分を計算してプリセットトルクを設定する必要がある。要はトルクレンチのグリップ部の中心(力点)とラチェット差し込み部の中心(作用点)までの距離と、同じくグリップ中心からクローフットレンチのボルトがかかる部分の中心までの距離の比率を計算して、その分設定トルクを小さくする。例えば前者が9cm、後者が10cmで、指定トルクが10Nmなら、プリセット値は9Nmという具合だ。

 そんな具合で、オイル漏れの跡があった高圧側のホースと、同時にリターン側の低圧ホースも全て新品に交換。リターン側のホースは少し作業しにくい場所にあるが、今回はラジエターホース交換と同時に作業したのでやりやすかった。

オイルにじみのあるパワステホースも交換
スチール製のパイプがつながっているのが高圧側のホース。同時にリターンホースも注文した
パワステにつながる高圧ホース。こちらは17mmだがメガネレンチやソケットは使えない
クローフットレンチ。ラチェットレンチやトルクレンチを繋げて使うことができる
オイルリザーバータンクも外して洗浄
リターンホースも交換。ラジエターホースの下にあるので、ラジエターホースを外したタイミングが作業しやすい

HLAを分解洗浄してみたくなった

 最後はカムシャフトの下側にあるHLAの分解洗浄だ。もともと予定していなかったが、ネットでいろいろと調べていたらやり方を見つけてしまった。別にHLAに不具合を感じていたわけではないが、むしろやってみたいという欲望が勝ってしまった。

 HLAはメーカーとしては分解洗浄できないとしている部分なので、あくまで自己責任だ。まぁDIYでここまでバラバラにしている時点ですべて自己責任なので、言わずもがなだが。

 HLAとはカムとバルブの間のクリアランスを自動で調整してくれる部品だ。構造としては、HLAそのものがカムに押されて動くピストンのようなものなのだが、その内側に小さい子ピストン、そのまた内側に孫ピストンが入っていて、中身はオイルで満たされている。子ピストンと孫ピストンの間にはチェックバルブとスプリングが入っていて、伸びやすく縮みにくい構造になっているので、バルブクリアランスを常にゼロに保つことができる。HLAに不具合があってこの調整がうまくいかなくなると、クリアランスが広がってしまって、カチカチといったタペット音の原因になる。

 まずはカムシャフトを外す。といっても外し方にも作法があって、整備書にしたがって順番に少しずつボルトを緩めていく。

 カムシャフトが外れたらHLAを引き抜く。外れない場所はマグネットを使って引っ張り出した。外したHLAやキャップボルトは、後で元の位置の戻せるように、100円ショップで買った小分け容器に順番が分かるように入れておく。

カムシャフトのボルトは、一番奥の右、左、一番手前の左、右、奥から2番目の右、左……という順で数回に分けて緩める、締めるときはその逆
カムの下にある円柱状のものがHLAだ。マグネットを使えばカンタンに引き抜ける

 次にHLAをペンチなどで引っ張って分解。開けてみると中から真っ黒のオイルが出てくる。おそらく内部のオイルが積極的に循環する仕組みではないので、継ぎ足し継ぎ足しの秘伝のタレ状態になっているはずだ。とはいえスラッジのようなものもなく、パーツクリーナーで簡単にキレイになる程度だった。

 洗浄したら、今度はエンジンオイルの中に漬けた状態で、中にエアが入らないように組み立てる。ちゃんとエアが抜けていれば、指で押したぐらいではつぶれなくなる。もしつぶれてしまうようなら、組み立てで失敗しているか、不具合があるということ。筆者の場合はどれもカチカチで問題なさそうだった。

 あとはHLAを元どおりの位置に戻して、カムシャフトを取り付ける。このときカムシャフトのジャーナル面やカム面にはオイルを塗布。また、カムシャフトのオイルシールは後で新品に打ち替えるので外しておく。キャップボルトの締め付けは、外すときと逆の順番で、数回に分けて均等に締め付ける。規定トルクでカムを取り付ければOK。

外したHLA。上の部分がカムと接触する部分
裏側。中央の出っ張り(子ピストン)がバルブを押す
分解したところ。3つのピストンが交互に合わさったような構造
孫ピストンにはチェックバルブがある。ここも分解できるがそのままでもキレイにできた
洗浄したらエンジンオイルの中で空気が残らないように組み立てる。オイルを湯煎して柔らかくすることでエアを抜けやすくして作業した
組み立てた後。エアが入らないように組み付けまでオイル漬けにしておく

 ちなみこの状態だとHLAの中はオイルが満タン状態なのでエンジンは掛けられない。一晩ぐらい放置すると中のオイルが適度に抜けて、バルブクリアランスがちょうどよくなる。

 ということで、ついでにできるいろいろリフレッシュはできたので、次回はいよいよタイミングベルトを装着してエンジン始動までもっていきたい。はてさて次回こそエンジンはかかるのやら……。

テレワークで余裕ができた時間を有効活用するため、または、変化がなくなりがちなテレワークの日々に新たな風を入れるため、INTERNET Watch編集部員やライター陣がやっていることをリレー形式で紹介していく「テレワーク、空いた時間でなにしてる?」。バックナンバーもぜひお楽しみください。