テレワーク、空いた時間でなにしてる?
【ロードスター復活計画その2】エンジン内部はサビてない? 9年も放置したクーラント(冷却水)を抜いてみる
ボルトが固くて外れない!! そんな時どうする?
2023年12月8日 12:36
9年前に車検を切ったロードスターの復活計画。つい間を空けてしまったら、すっかり季節が進んで寒い日が増えてきた。おかげで最近は朝のテレワーク前の時間の作業がおっくうでなかなか進まない。
ところで、皆さん愛車のタイヤの空気圧はチェックしているだろうか? 日に日に気温の下がるこの季節はタイヤの空気圧も下がりがち、っつーか確実に下がる。最近チェックしてない人は次回給油時にでもチェック&補充しておこう。ちなみに適正空気圧は通常、運転席のドアを開けたところに記載されている。
さて、前回はガソリンが腐っていないかをチェックすべくガソリンタンクの中を確認した。幸いなことに問題なさそうだったので、今回はタイミングベルト(以下タイベル)交換の模様をお伝えしたい。
ちなみにタイミングベルトとは、エンジンのクランク軸と、吸排気ポートの開閉を行なうカムシャフトとをつなぐベルトで、ピストンの上下にあわせて良いタイミングでポートを開くレシプロエンジンの作動には欠かせないもの。一般的には10万km程度で交換が推奨され、もしも切れれば、エンジンがかからないのはもちろん、エンジンブローにもつながるので、切れる前に交換が必須だ。
筆者のロードスターは5万km過ぎの時に一度交換していて、すでにそこから10万kmを超えているので、もう交換時期。といっても、手順を細かく説明してもロードスター乗り以外には役に立たないのと、やってることが多すぎてとても紹介しきれないのでサクサクと進めていきたい。
【ロードスター復活計画:記事一覧】
- その1:エンジンを掛けずに放置したクルマはどうなってる?
- その2:エンジン内部はサビてない? 9年も放置したクーラント(冷却水)を抜いてみる
- その3:13年前のバッテリーで動くのか!? 久しぶりのエンジン始動前にやっておくべきこと
- その4:いよいよタイミングベルトに着手、しかしマツダスピード Bスペックの謎にハマる
- その5:16万kmでエンジン開けたし、ついでにリフレッシュ! と思ったらこれが結構大変でした
- その6:初めてのタイベル交換、ついに完成!? DIYでエンジンはちゃんと元に戻せるのか?
- その7:新車から28年、真っ二つに割れたステアリングラックブーツを交換
- その8:ロードスター誕生から35年、不動となっているNA8Cのステアリングまわりをリフレッシュ
NAロードスターなのにハイオクを入れる理由
とか言いながら、いきなり話がそれるが、前回の記事を読んだ読者から、NA8Cはレギュラーガソリンだろ、という指摘を受けた。まさかそんなところに指摘が入るとは思わずサラッと流してしまったが、気になった人もいると思うので説明しておこう。
ロードスターに詳しい人だと、筆者のロードスターのエンジンルームの様子がちょっと違うことに気づくかもしれない。
実はこのロードスター、マツダスピードの「B-SPEC ステージ2」というコンプリートエンジン(チューニングエンジン)が載っていたりする。残念ながらエゴサしてもこれがB-SPECだと気づいてくれる人はいなかったので、ちょっとさみしかったりもしたのだが、まぁほとんど世に出回っていないので仕方がない。
でもって、このコンプリートエンジンというのが、4連スロットルにハイコンプピストン、ハイカムでECUも変わっていて、それでハイオク指定になっているのだ。
マツダスピードと言えば当時のマツダのワークス(モータースポーツ参戦などを担当するグループ会社)で、トヨタで言えばTRD、日産ならニスモ、スバルならSTIのようなもの。かのル・マン24時間で日本車として初の総合優勝を収めた「787B」もマツダスピードの仕事。その頃はマツダスピードの製品を扱う「スポーツファクトリー」の看板を掲げたディーラーが存在し、B-SPECもそこが面倒を見てくれる「ディーラーで買えるチューニングカー」という存在だった。
しかし、1999年7月にマツダスピードがマツダに吸収統合。おかげでその後はこのクルマの面倒をみてくれるるディーラーはなくなった。筆者は中古で買ったので、直接付き合いのあるディーラーもなく、いろいろと探して、元マツダスピードで技術部長だった田知本 守氏が立ち上げたドゥー・エンジニアリングに面倒を見てもらったりしていた。
とはいえいろいろとわかってくると、チューニングに使っているパーツは、OEM品や純正部品の流用がほとんど(4連スロットルはトヨタ レビン・トレノ(AE101)純正スロットルの流用だったり)。おかげでマツダスピードがなくなった今でも比較的部品は手に入りやすい。また、専用のパーツリストで部品の品番も分かるので、DIYでもなんとかなっている。
9年前のクーラント、大丈夫か?
さて話は戻ってタイベル交換だが、そのためには、ラジエターだのインテークマニホールドだのいろいろと外す必要がある。
中でも気がかりなのは、9年前に交換したままのクーラント(冷却水)の状態。最近のクルマに使われるスーパーロングライフクーラントは9年ぐらい持つようにできているが、ロードスターで使っているロングライフクーラントは2年で交換が推奨。クーラントはエンジンの冷却だけでなく、防さびなどの効果もあるので、定期的な交換が必須なのだ。
前回ラジエターキャップを外したところから見た限りではきれいな状態だったが、ずっとエンジンをかけていない状態なので、サビが下のほうに溜まっているとか、エンジン内部側がサビまくっている可能性も否定できない。
そんな不安を抱きつつクーラントを排出すると、めっちゃキレイ!! 全然にごりもなく鮮やかな青色だった。一般的なクーラントの色と違うのは、確かビリオンかHKSかのクーラントを入れたからだったと思う。9年前のことなので記憶は曖昧だが。
前回のガソリンタンクに続いてコレはラッキー、これならさほど手間なく直せるかも!
などと甘い期待を抱きつつ、ラジエターなどを外して行く。ラジエターの脱着やファンベルトの交換なんかはこれまでも何度もやっているのが難しくはない。ロードスターはエンジンが縦置きで、ターボやインタークーラーといった補機類もないので、手が入るスペースも多くてDIYはやりやすい。1分の1プラモデルなどと言われたりするのもよくわかる。
プーリーがヤバい!!
しかしやっぱりそんなに都合良くは行かなかった。いざファンベルトを外そうかと思ったところ、プーリー(ファンベルトの掛かる滑車のこと)がサビまくっていたのだ。エンジンを動かしていればこんなところがサビることはないのが、6年放置するとこんなになるのか!
筆者は長らくクルマ雑誌の編集者などをやってきたが、思い返してみれば、取材をするのは新車やショップのデモカーが中心。オーナー車や旧車の取材経験ももちろんあるが、取材するのは愛情を注ぎまくられたクルマばかりだった。
それなりに長く業界にいて、クルマのことは詳しいなどと思っていたが、長年放置されたクルマに関してはまるで無知だった。「たまにはエンジンをかけたほうがいい」なんていう一般論は知っているが、実際に放置したらどうなるのかは、今回初めて経験することばかり。だが、それはそれでおもしろい。
プーリーのサビなんてエンジン回していればすぐ取れるんじゃない? と楽観的にも思ったが、調べるとプーリーがサビた状態だとベルトがすぐに摩耗して切れやすくなるのだとか。しかも外してワイヤーブラシなんかで磨くと、真円じゃなくなるからそれもまたダメとか。知らなかったことばかりだ。
とりあえずオルタネーター(発電機)は16万km無交換なので、リビルト品に交換すればプーリーも新しくなるとして、パワステポンプ、エアコンのコンプレッサー、ウォーターポンプ、クランクのプーリーのサビをどうするか。クランクプーリーとか、新品は手に入るが結構な値段。他にもいろいろと要交換部品は出てくるはずなので、再利用できるものは再利用したいところだ。
課題が次々と見つかるものの、まずは全体像が見えないとどうにもならないので、作業は続けて、ファンベルトまでは外れた。タイミングベルトはファンベルトの奥、エンジンのフロント側のカバーを外したところにあるので、続いてプーリー関係を外さなければならない。そして今回のタイベル交換の最難関だったのが、このクランクプーリーのボルト外しだ。とにかく外れなくて困った。
DIYあるある、ボルトが固くて外れないときどうする?
ボルトやナットが固くて外れない、というのはDIYではよくある話。ということで、固いボルトを緩める方法を少し紹介したい。そんなの知っていると言う人は読み飛ばしてくだされ。
まずはヤバそうだなと思ったら「KURE 5-56」など潤滑油を吹く。単に力まかせだとボルトをなめたりねじ切ったりすることもあるので、面倒でも必須。マフラーなどの排気系は熱で錆びまくっていたりするので、作業する前日からたっぷり掛けて時間を掛けて浸透させる。
加えて、サビで固着していそうならハンマーでたたいて固着を剥がすのも有効。たたく前にガスバーナーであぶる、なんていう方法もある。
そこまでやったらレンチを掛けるわけだが、レンチの使い方にもコツがある。
一般的に固いのは最初だけなので、瞬間的に最大トルクを掛けるのがポイント。ただし足で蹴ったりすると、その瞬間に工具が外れてケガをしたり、ボルトをなめてしまったりするのでオススメできない。
まずはじわりとトルクを掛け、レンチとボルトがしっかりとかみ合って外れない状態を保持しながら、一気に力を掛けるイメージだ。
ただし、大きく力を掛けた瞬間に一気に緩む可能性があるので、そうなってもケガをしないような準備も重要。
緩んだ瞬間、勢い余って地面を殴ったり、あるいは後ろに倒れて尻もちをついたり。どれも筆者は経験済みだが、思いっきり力を掛けたときほどケガも大きくなりがちで、そのせいでしばらく作業ができなくなることもあるので、グローブをするなどの準備が重要だ。
スピンナーハンドルが最強すぎる!! だがしかし……
そして工具だが、サイズが合っているのは当然として、固くて緩まないボルトには、長い工具が有効だ。
たとえばレンチでも、100円ショップやホームセンターなどで売っている格安のものは短い。これがちゃんとした工具メーカーのレンチだと、それよりも長さがあるので、固いボルトを緩めるのは全然楽になる。
さらに“超ロング”と呼ばれる超長いレンチを使えば、固く締まったボルトも簡単に外せるようになる。そうすると、無理に力もかけないので、ケガも減るし疲れも減る。
長い工具といえば、スピンナーハンドル(別名ブレーカーバー)も超絶オススメだ。
ソケットをはめて使うラチェットレンチからラチェット機構を取り除いたようなもので、ラチェット機構がないからこそ、大きなトルクが掛けられる(逆にラチェットレンチで大トルクを掛けるとけっこう簡単に壊れる)。
一般的な3/8インチのソケットが使えるスピンナーハンドルだと、長いもので380~400mmほど。もちろん長いほど大トルクをかけられるものの、そうすると首の部分でねじ切れる可能性があるので、KTCやko-kenなど一流メーカーの製品を選ぶのがオススメ。これが1/2サイズだと、長さは600mmほどまであるが、もともと首の部分が太くて丈夫なので、こっちは一流メーカーじゃなくてもいい気がしている。
筆者は3本スピンナーハンドルを持っていて、一番のお気に入りはネプロスというKTCのブランドの20年以上前に買ったモデル。3/8インチとしては当時最長(400mm)あって、短いレンチだと気合いを入れないと緩まないようなボルトも、これがあれば余裕。
スピンナーハンドルは、先端の部分が180度お辞儀をするような形状になっていて、90度曲げた状態なら大きなトルクが掛けられるし、垂直にすれば、ドライバーのようにクルクルと早回しもできて、状況によってはラチェットレンチよりも勝手がいい。かなりの種類の工具を持っているが、そんな工具の中でも筆者がトップクラスにお気に入りなのが、このスピンナーハンドルだ。ラチェットやソケットを持っているなら、その次にぜひ購入することをオススメする。
クランクプーリーのボルトが外れなさすぎる!!
おっと、ついうっかりスピンナーハンドル愛を爆発させてしまったが、なんと今回はそんなスピンナーハンドルを持ってしても、クランクプーリーのボルトは外せなかった。
1/2インチで600mmという巨大なスピンナーハンドルを使ってみるも、ボルトは緩まずにクランクが回ってしまう始末。ギヤを5速に入れてサイドブレーキを精一杯ひいておいたものの、ブレーキローターがサビだらけで滑ってしまう。
フライホイールロックツールというものでフライホイールの回転止めをするのが理想だけどそんなものは持っていないし、ううむ、ひさしぶりにこれはお手上げ。電動インパクトレンチを使おうかと思ったが、筆者の持っているのは古くてデカいのでスペース的に入らず。かといって電動インパクトレンチを新調したところで絶対に緩むという保証もない。
ということで、できれば使いたくなかった最後の手段を使うことにした。
というのがセルモーターのパワーを使う方法だ。クランクボルトにソケットとスピンナーハンドルをつないで動かないように固定し、その状態でセルモーターを回すというもので、ネジの受け側であるクランクが回って緩む、というわけ。かなり乱暴なやり方なのでできれば避けたかったのだが、背に腹はかえられない。
ただ、そうはいってもそれも簡単ではない。そもそも6年動かしていないセルモーターは動くのか? バッテリーだって当然上がってるし、さらに、最後にエンジンを掛けたのは6年前(実家から移動してきたとき)というエンジンをいきなりクランキングするなんていうのは愚の骨頂。
ということでまずはずっとエンジンを動かしていなかったときの儀式が必要となるわけだ。ううむ、サクサク行こうと思ったが長くなりすぎたので続きは次回に……。
【ロードスター復活計画:記事一覧】
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