テレワーク、空いた時間でなにしてる?
【ロードスター復活計画その4】いよいよタイミングベルトに着手、しかしマツダスピード Bスペックの謎にハマる
ウォーターポンプもオルタネーターもパワステポンプも、外れるものを外しまくれ!!
2024年3月1日 12:12
9年前に車検を切り不動にしていたロードスターの復活計画も今回で4回目。長年放置したままのガソリンが腐っていないか?(第1回) とか、9年前に交換したままのクーラント(冷却水)が腐っていないか?(第2回) とか、13年前に買ったバッテリーはもうダメだろ?(第3回) とか、いろいろ課題はあったのだが、奇跡的にもここまで最悪な状態は免れている。いや、ほんと、ここまでは順調過ぎるぐらいなのかもしれない。
ということで、今回もタイミングベルト交換をしつつ、リフレッシュ計画を進めていきたい。
ちなみに前回の記事のコメントを見ていたところ、「記事が長い、その割に外れたのボルト1本」といったコメントが見られた。いや、もうおっしゃるとおり過ぎてなんも言えねー。我ながら「おい、ボルト1本かよ」とは思ったもの(苦笑)。
だけどDIYってそんなもんなんすよ。プロならバンバン進められるところも、DIYだとやれボルトが緩まない……、やれ狭くて手が入らない……と、まぁとにかく時間がかかる。
でもそういうところがDIYの楽しさなのかなと。何度も失敗しつつ苦労しつつで、ようやく部品を外したり、不具合を直したり。でもって、クルマ好きの仲間で集まったときに、あそこのボルト固いねーとか、電動インパクト買っちゃえよとか、ラスペネが良いぞとか、ボルト一本で話題が尽きず。
なので本稿ではそういうニヤニヤしちゃう部分を拾っていきたいし、読者の皆さまのリアクションも拾っていきたいと思っているので、やいのやいのとコメントいただければ幸いです。
エンジンヘッドカバーを外す! スラッジだらけだったらどうしよう……
前回までで、難所だったクランクボルト、そしてクランクプーリーを外すことができたので、次はタイミングベルトを覆っている部分、エンジン天面のヘッドカバー(カムカバー)や、エンジン前面のタイミングベルトカバーの類を外して行く。
ヘッドカバーを外すと普段は見られないエンジンの中(といってもカムの部分だけだけど)が見えるようになる。しかしこのロードスターで自分でエンジン本体を開けるのは初めて。開けたら悲惨な状況だったらどうしよう、などと不安も抱きつつ、いざご開帳。
どうだろう? まぁ16万kmにしてはキレイな方なんじゃないだろうか。スラッジも溜まってないしカムにも変なキズはなさそうでとりあえず一安心。
続いてタイミングベルトカバーを外す。これも難しことはないが、かなりオイルで汚れている。エンジンに向かって左側の汚れが酷いので、吸気側のカムシャフトのオイルシールからオイルが漏れていたんだと思う。クランク軸のあたりもオイル痕が酷いが、クランクシールから漏れているのか、カムシャフトからのオイルが垂れてきたものなのかは判断が付かない。この距離のロードスターならオイルが漏れているのは普通のことなので、どちらにしてもオイルシールは全交換するつもりだ。
今回こそタイミングベルトを外すぞ!! が、またトラブル発生
そしていよいよタイミングベルトの取り外しだ。
ここでちょっとタイミングベルトの働きについて説明しよう。
ロードスターに搭載されるレシプロエンジンの場合、ピストンの「下がって→上がって→下がって→上がって」の4つ動きで、それぞれ「吸気→圧縮→燃焼→排気」という工程を繰り返す。
ピストンが上がるという同じ動きでも、圧縮したり排気したりできるのは、圧縮の時は吸排気ポートが閉じていて、排気の時は排気ポートが開いているからだ。吸気と燃焼も同様。つまりピストンが上がったり下がったりするタイミングと吸気ポートや排気ポートが開いたり閉じたりするタイミングがピッタリあっていないとエンジンは調子よく回ることができない。
そしてそのタイミングをシンクロさせるのがタイミングベルトの役目だ。ピストンとつながるクランクに付くのがタイミングベルトプーリー、ポートを押すカムシャフトにつながるのがカムプーリー、カムプーリーは吸気用と排気用があるので、全部で3つのプーリーをタイミングベルトで繋いで同期させる。“プーリー”を日本語に訳すと「滑車」になるが、この3つのプーリーは歯車という方が近いだろう。タイミングベルトにもそれとかみ合う山があって滑らないようになっている。ちょうどベルトドライブの自転車のような感じだ(余談だが中にはタイミングベルトではなくタイミングチェーンを採用しているクルマもある)。
長々と説明したが、要はタイミングベルトを交換するときは、3つのプーリーとベルトの歯の位置関係が外す前とまったく同じになるように戻さなければいけないということ。歯の山が1つでもずれれば、エンジンは調子よく回らなくなる。
そのためには、まずタイミングベルトを外す前に印をつけておく必要がある。クランクを回して、1番シリンダーが圧縮上死点にくる位置にしてから、各プーリーと古いタイミングベルトに合いマークをつけておき、古いベルトを外したら、新しいベルトの同じ位置に合いマークを写して、元通りに戻すという手順になる。
1番シリンダーが圧縮上死点になっているかどうかは、各プーリーに刻まれた印の位置でわかるようになっている。タイミングベルトプーリーの切り欠きが12時の位置にきていて、且つ吸気側カムプーリーの「E」の印が4時、排気側カムプーリーの「I」の印が8時の位置に来ている状況。それが1番シリンダーが圧縮上死点にきていることを表わしているのだ。
のハズなのだが、ここで問題が発生する……。
合わない……。タイミングベルトプーリーと吸気側カムプーリーの「E」の位置は合うのだが、排気側の「I」が6時の位置になってしまう。なぜだ?
カムプーリーの位置が合わない!? なぜだ?
今まで普通に走れていたし、カムプーリーなんて普通はひと山ずれただけでも異常に気づけるはずだ。ネットでもいろいろ調べてみるがそんな話は出てこない。意味がわからん。
原因が分からず途方に暮れつつプーリーを眺めていたら、なんか排気側カムプーリーの8時の位置に、マジックペンで「I」と書かれてあったような形跡がうっすら見えてきた!! なんじゃこりゃ?
しかもよく見たらプーリーに付いた傷の様なものがある。むむ、これは「B-Spec」って書いてないか!?
B-SPEC、それはマツダスピードが作ったコンプリートエンジンの仕様のことで、このクルマはそのB-SPECエンジンなのだ(連載第2回参照)。
なるほど、なぞは全て解けた。
つまりこれ、スライド式のカムプーリーを使わず、ノーマルのプーリー加工でバルブタイミングを変えていたのだ。だから元々のプーリーにある「I」の印の位置はまったく無意味で、マジックペンで書かれた「I」の位置が正しいということ。そりゃ合わないわけだ。
先ほどタイミングベルトの働きの説明をしたが、ポートを開いたり閉じたりするタイミングというのは、エンジンの特性を左右する。ひと山ずれれば不調になると書いたが、逆に言えば最適なタイミングにできればエンジンの調子はよくなる。最適なバルブタイミングとは、エンジンの特性や回転数によっても変わってくるので、チューニングエンジンだと、カムプーリーとカムシャフトの取り付け角度を少しずらして、バルブタイミングを変えることがあるのだ。
2代目のNBロードスターの後期モデルからは、自動でバルブタイミングを変えられる可変バルブタイミングシステムが導入されているが、筆者のNAロードスターにはそんな機構はないので、任意で角度調整が可能なスライド式のカムプーリーなどを使って、より高回転型のバルブタイミングに変更するといったチューニングが行なわれている。そしてこのB-SPECでは、そうしたスライド式プーリーを使わず、ノーマルのプーリーを加工していたというわけだ。
ということで正しいプーリーの位置は分かったので、それぞれのプーリーとベルトにホワイトマーカーで合いマークをつけてからベルトを外す。新しいベルトにマーキングを写して、それがプーリーと合うように付け直せばいいわけだ。
ただし今回はオイルシール類やウォーターポンプなども交換するので、まだベルトは取り付けない。まだまだ分解は続く。
エンジンの中はサビてないか?
タイミングベルトを外したら、カムプーリー、タイミングベルトプーリー、テンショナーといった部品も全て外し、その裏側のパネルも外してウォーターポンプを取り外す。
ウォーターポンプを外せばエンジン内の水路の様子が見える。抜いたクーラントの見た目には問題なかったが、特にエンジン腰下が鉄製なので、サビが出てないかは気になるところ。
というところで、ウォータージャケット内をのぞいて見てみるが、問題はなさそうだ。外したウォーターポンプ側もサビはないし、そのほかの水路も見えるところは全て大丈夫。よかったよかった。
いざ清掃! クエン酸漬けでプーリーのサビを取る!!
外せるものを外したら、続いて掃除、掃除、掃除。
外した部品はもちろん、オイル漏れで汚れまくったエンジンをエンジンフォームクリーナーなどを使ってとにかくキレイにする。つなぎにゴム手袋にゴーグルにマスク、完全装備でクルマの下に潜り、シャカシャカシャカシャカ。手も疲れるしクリーナーが顔に被るしで大変だけどひたすらキレイに。
そしてサビらだけのプーリーは、試しにクエン酸漬けにしてみた。サビは酸で溶けるのでサンポール漬けにしたりするのだが、クエン酸漬けも効果は同じ。ただ、サンポール漬けよりは効果が弱いので、じっくり様子を見ながらやるには適している、と思う。
ダメなら新品交換のつもりで試してみたが、これがけっこう良い感じにいって、サビもキレイに落ちて再利用できそうな感じになった。ちなみにクエン酸漬けにした後は、重曹水に漬けてアルカリ性に戻しておく。酸性のままだとまたすぐにサビてしまうからだ。
ここまでバラしたら同時にいろいろリフレッシュしたい!!
ということで、まぁ大変ではあるが当初からの予定であるウォーターポンプの取り外しまでは順調に進んだ。しかしせっかくここまでバラしたので、同時に作業したほうが良い箇所は合わせてリフレッシュしていきたい。
まずはオルタネーター。10万km程度で寿命を迎えることもあるパーツなので、リビルト品に交換する。リビルト品というのは、中古のオルタネーターのブラシやベアリングなどをオーバーホールしたもので、新品を買うより安く手に入る。その代わり、外した古いオルタネーターを交換で送り返す必要がある。とはいえ今時はネット通販で買えるし、返送する伝票も付いてくるので、難しいことはない。
そしてパワステポンプは、高圧側のホースにオイルにじみがあるので、ホース類を交換する必要がある。加えてポンプのオーバーホールキットがあるので、外して分解することにした。
また、ISCV(アイドリング・スピード・コントロール・バルブ)につながるウォーターラインもかなり劣化が進んでいて、水漏れしている形跡がある。ラジエターホースやヒーターホースなどは10万kmの時に交換したが、ISCVへの水路と、そこからオイルクーラーにつながる水路は無交換のままだった。ゴム類は経年劣化で固くなるので、この際一式変えることにした。
ロードスターはカムシャフトの下にHLA(ハイドロ・ラッシュ・アジャスター)というバルブクリアランスを自動で調整する機構があるのだが、調べていたらこれも分解洗浄できるらしい。ここまで来ていれば、あとはカムシャフトを外すだけでHLAは外せるし、洗浄だけならお金もかからない。そしてなにより楽しそうじゃないか。
そしてもちろん、クランクシャフトのオイルシール、カムシャフトのオイルシール、クランク角センサーのオイルシールといった定番のオイルシールは全て交換だ。
といった具合で、タイミングベルトを戻す前にやりたいことはいろいろあるので、今回はここまで。続きは次回お届けしたい。
【ロードスター復活計画:記事一覧】
- その1:エンジンを掛けずに放置したクルマはどうなってる?
- その2:エンジン内部はサビてない? 9年も放置したクーラント(冷却水)を抜いてみる
- その3:13年前のバッテリーで動くのか!? 久しぶりのエンジン始動前にやっておくべきこと
- その4:いよいよタイミングベルトに着手、しかしマツダスピード Bスペックの謎にハマる
- その5:16万kmでエンジン開けたし、ついでにリフレッシュ! と思ったらこれが結構大変でした
- その6:初めてのタイベル交換、ついに完成!? DIYでエンジンはちゃんと元に戻せるのか?
- その7:新車から28年、真っ二つに割れたステアリングラックブーツを交換
- その8:ロードスター誕生から35年、不動となっているNA8Cのステアリングまわりをリフレッシュ
テレワークで余裕ができた時間を有効活用するため、または、変化がなくなりがちなテレワークの日々に新たな風を入れるため、INTERNET Watch編集部員やライター陣がやっていることをリレー形式で紹介していく「テレワーク、空いた時間でなにしてる?」。バックナンバーもぜひお楽しみください。