テレワーク、空いた時間でなにしてる?
【ロードスター復活計画その6】初めてのタイベル交換、ついに完成!? DIYでエンジンはちゃんと元に戻せるのか?
2024年5月10日 12:17
9年前に車検を切って放置していたNAロードスターを復活させるべく、自宅の駐車場で始めたDIYリフレッシュ計画も、いよいよ6回目。
まずはタイミングベルトを交換しつつ、エンジンまわりのリフレッシュを進めてきた。前回までで補機類などのオーバーホールを終わらせ、今回はいよいよエンジンを元に戻していく。はたして素人のDIYで無事にエンジンはかかるのか? なお、バックナンバーが気になる方は下記の関連記事を参照いただきたい。
【ロードスター復活計画:記事一覧】
- その1:エンジンを掛けずに放置したクルマはどうなってる?
- その2:エンジン内部はサビてない? 9年も放置したクーラント(冷却水)を抜いてみる
- その3:13年前のバッテリーで動くのか!? 久しぶりのエンジン始動前にやっておくべきこと
- その4:いよいよタイミングベルトに着手、しかしマツダスピード Bスペックの謎にハマる
- その5:16万kmでエンジン開けたし、ついでにリフレッシュ! と思ったらこれが結構大変でした
- その6:初めてのタイベル交換、ついに完成!? DIYでエンジンはちゃんと元に戻せるのか?
- その7:新車から28年、真っ二つに割れたステアリングラックブーツを交換
- その8:ロードスター誕生から35年、不動となっているNA8Cのステアリングまわりをリフレッシュ
タイベル交換と一緒にやりたいウォーターポンプの交換
タイミングベルト交換の際には、ウォーターポンプも同時交換が鉄則。タイミングベルトの奥側にあるので、タイミングベルトを外したタイミングで交換しないと、またタイミングベルトを外すことになるからだ。
水漏れが起きないよう、エンジンシリンダー側の接触面をオイルストーンで磨いたら、新品ガスケットを挟んで、規定のトルクで締め付ける……のだが、うっかり写真を撮り忘れていた。ご容赦いただきたい。
同時にサーモカバーも新しいOリングを挟んで取り付ける。サーモパイプなどもすべて洗浄し、パイプの中もキレイにしてある。
ちなみに外す時と違って戻していく時には、ボルト1本ずつ締め付けトルクを管理する必要がある。DIYならトルクレンチに頼ったほうがいいと思う。
筆者がよく使っているのは、SK11のデジタルトルクレンチ「SDT3-060」とトーニチ(東日製作所)のプリセット形トルクレンチ「MTQL140N」の2つだ。エンジンまわりだとそこまで大きなトルクはいらないので、3~60Nmに対応するSK11を使い、足まわりなど、大きなトルクが必要な箇所ではトーニチを使っている。
指定トルクは何で調べるかというと、クルマの整備書に書かれている。整備書を見ると分かるが、指定トルクは●Nm~○Nmというように幅が持たせられていて、緩まないように上限値で締めたくなるが、筆者の場合はその上限と下限の真ん中ぐらいで設定することにしている。
というのも、再利用したボルトを上限値で締め込むと、最悪の場合、ボルトがねじ切れる可能性があるのだ。筆者は上限値で締めて足まわりのボルトをねじ切ったことがある。
それともう1つ、中央値にしている理由がある。と言うのも、筆者の場合、全てのボルトを2度締めしている。
ちょっと詳しい人だと、トルクレンチで2度締めは御法度、というのを聞いたことがあると思う。筆者も知ってはいるが、それでも2度締めするのは“締め忘れるよりはマシ”だからだ。
2度締め禁止の理由は、締めすぎ、オーバートルクになるためだ。ただしボルト(ネジ)というのは回転しなければ締め付けトルクが増えることはない。例えばネジピッチ(ネジの山と山の間隔)が1mmのネジを1回転させると、ネジを1mm引き延ばす分だけ締め付ける力が増える、というのがネジの原理。だから何回締め付けたかよりも、「カチ」とか「ピー」とか指定トルクの合図が出た角度からそれ以上回転させないことが重要。
加えて、指定トルクの中央値でトルクレンチを設定しておけば、もしも2度締めのせいで多少オーバートルクになったとしても、許容範囲内には収まるはず。それがトルクレンチの設定を中央値にしているもう1つの理由だ。
カムやクランクのオイルシールをハンマーでたたき入れる
続いて、これまたタイミングベルト交換の時に同時にやってしまったほうがいい、オイルシールの交換。
エンジンの中にはオイルが流れているが、それが漏れないよう各所にシールやガスケットと呼ばれるものが入っている。カムシャフトとクランクシャフトはエンジンの外まで伸びているので、その軸の周りにもオイルシールがある。当然カムシャフトもクランクシャフトも回転するから、ここのオイルシールは、より劣化しやすいし、オイル漏れの原因にもなりやすい。実際筆者のロードスターでもオイルが漏れた形跡があった。
まずカムシャフトについては、2本とも前側でカムプーリーにつながるため、エンジン前方にそれぞれオイルシールがある。それとは別に、後方にも1本(NA8Cの場合は排気側カムシャフト)の後ろにクランク角センサーというのがつながるため、そのセンサーにもオイルシールがある。
クランクシャフトについては、前側はクランクプーリーにつながるし、後ろ側はクラッチを介してトランスミッションへとつながるので、前後2箇所にオイルシールがある。ただ、後ろ側はトランスミッションやクラッチを外さないと交換ができないので、現時点では着手できない。
なので、今交換すべきは4つのオイルシールだ。そのうちクランク角センサーのオイルシールはただのOリングで、クランク角センサーをエンジンから抜き取ればカンタンに交換できる。
クランク角センサーを外してみると、丸い断面だったハズのOリングはすっかり四角くっぽくなって、弾性もなくなっていた。そしてわずかだがオイル漏れの形跡も。ということで新品のOリングにシリコングリスを塗って装着。
ちなみにクランク角センサーは取り付けの角度が変えられるようになっていて、その角度でプラグの点火時期を調整する役割りがある。逆に元の角度で戻さないと点火時期がずれてしまうので、外す前にマーキングしておく必要がある。
あとはカムシャフトとクランクシャフトのオイルシールの交換。これらは溝に埋まっている形なので、古いオイルシールを外すだけでも大変だ。
やり方はいろいろあるが、下手にこじってエンジン側にキズを付けるとオイル漏れの原因になるので、ストレートツールズの「シールプーラー シャフトタイプ」という専用工具を買っておいた。
たかがこれだけのためだけに工具を買うのはもったいないと思われるかもしれないが、こういった地味なところでシールが外れず何時間も苦労したり、キズを付けて後悔したりするぐらいなら、数千円の工具は安いものだ。実際、この工具はめちゃくちゃ便利で、ものの数分で外すことができた。
外した溝をキレイにしたら、新しいオイルシールを取り付け。これまたちょっとやっかいで、ハンマーでコツコツたたいて打ち込む必要がある。
ボルトを締め付けるような作業は、正しい工具を正しく使えば失敗することはあまりないが、ハンマーでたたき入れる、みたいな作業はなんとも曖昧で自信がない。
しかもオイルシールを痛めないようにパイプなどを挟んで打ち込むのだが、整備書を見ると「適当な径のパイプ」と書いてある……。適当ってなんだよっっ、と思いつつ、ホームセンターでオイルシールに合いそうなサイズのパイプを物色して、水道管などに使われる塩ビパイプをいくつか購入。結局「TSソケット 30」というのがカムシールもクランクシールも使いやすかった。
タイミングベルトの取り付け
ウォーターポンプやオイルシールの交換が終わったら、そのほかの部品も戻していく。サビや汚れを落としたカムプーリーやタイミングベルトプーリーを取り付け、新しいアイドラープーリー、テンショナープーリー、テンショナースプリング、そしてタイミングベルトを取り付ける。ベルトを掛けるときは、古いベルトから写したマーキングの位置と、カムプーリー、タイミングベルトプーリーの印がそれぞれ合うようにはめる。
このベルトの位置合わせで苦労する、といった声も見受けられたが。まずは、クランクプーリーからベルトを掛けて、そこから時計回りに、テンショナープーリー→IN側カムプーリー→EX側カムプーリーと位置を合わせて、最後にガイドプーリーに滑り込ませるようにするとカンタンに取り付けることができた。なにを隠そう、整備書にそうやれと書いてあったのだ。
ベルトやプーリーへのマーキングは、必要ないと思う人もいるだろう。たしかにカムシャフトの角度もクランクシャフトの角度も分かっているので、理論上はマーキングしなくても問題なく作業できる、はずではある。ただ、実際にひと山ずれてやり直しになったケースも見たことがあるので、DIYならなおのこと、惜しむ手間ではないと思う。
ベルトを掛けたらクランクを2回転回して、そのときにカムプーリーの角度が最初の位置になっていることを確認(ベルトの合いマークはずれていてもOK)。問題無ければさらにクランクを1回転と6分の5回転させて、指定の位置に合わせたら、テンショナープーリーでテンションを掛けた状態で固定すればOK。これでタイミングベルトの装着は完了だ。
ヘッドカバーをきれいに洗浄
ヘッドカバーやベルトカバーを戻していくが、その前にヘッドカバーなども洗浄する。ヘッドカバー洗浄するのは結構カンタンで、「サンエス K-1」という万能洗剤につけ置きすればびっくりするぐらいキレイになる。
ただし、ヘッドカバーがすっぽり入る大きさの容器が必要。かといって大きすぎると、それだけ洗浄液をたくさん用意する必要があるので、ちょうどいいサイズがほしい。でもって見つけたのが、システムコンテナBOX #22というサイズだ。これがNA8Cのヘッドカバーを入れるのにはちょうどいいサイズで、価格も手ごろだった。
サンエス K-1はお湯で使う方がいいらしいが、駐車場ではそんなにたくさんのお湯は用意できないので、家にある鍋を集めてお湯を沸かしたら、足りない分は水道水でまかなって、ぬるま湯程度にはなった。あとはつけ置きして2時間ほどしたらブラシで磨けばキレイになる。表面にはうっすらアルミのサビが浮いていたが、その辺りもすっかりキレイになった。
洗剤分をキレイに流してよく乾かしたら、新しいガスケットを付けてエンジンに付ける。今どきのクルマはこのゴムのガスケットだけで大丈夫らしいが、NAロードスターの場合、主に角の部分に液体ガスケットを塗る必要がある。
ヘッドカバーが付くとすっかり見慣れたエンジンの風景だが、ヘッドカバーもキレイになって気持ちがいい。
せっかくヘッドカバーを外したらバフがけしてピカピカにしたい気持ちもあったが、実は前のロードスターで挑戦したことがあって、途中で挫折したので、もうやらない。鋳物のざらざらした肌を消すのは、かなり大変なのだ。
曲がったラジエターのフィンを直す
あとはリビルトのオルタネーターや、前回オーバーホールしたパワステポンプなどを戻して、ファンベルトを取り付ける。
そしてサーモスタットも新品にし、ラジエターやホース類を戻せば完了だ。
せっかくなのでラジエターもキレイにした。特に外側のフィンの部分。長年使っていると結構つぶれてしまっているところがあるのだ。でもってこのフィンを修正するための工具を買ってちまちまと直してみた。
使ったのはケイバのメタペンという工具。実はレース現場ですばやくラジエターフィンを修正するために作られたという工具なのだ。
このメタペンと先のとがったピックツールを使ってちまちまと修正。なかなかキレイに直すのは難しかったが、空気の流れと言う意味ではよくできたんじゃないかと思う。
ラジエターを戻したら冷却水を入れ、パワステフルードを入れ、エンジンオイルも入れ替える。手元を調べて余っているネジもない。いろいろな部品を外す前に撮ったiPhoneの写真とも見比べて、配線のレイアウトなども問題ない。久しぶりに大物のDIYをやったが、メモ代わりにiPhoneで撮っておけるのはめちゃくちゃ便利だ。
ついにエンジン始動!! ホントにかかるのか?
そして携行缶で新しいガソリンを入れ、充電しておいたバッテリーをつないだらいよいよ6年ぶりのエンジン始動だ。
セルがまわるのは確認済みだが、燃料がちゃんと吹くのか? 火花がちゃんと飛ぶのか? 燃料ポンプがダメかもしれないし、インジェクターが詰まっているかもしれない、コイルがダメになっている可能性だってある。内心は不安でいっぱいで神頼みしたい気分である。
エンジンが掛かってくれれば記念すべき1発目だ。せっかくなのでクルマ好きの娘と一緒にエンジンを掛けてみることにした。娘が免許を取る頃にはキーを回してエンジンを掛けるクルマなんてもうないだろうし。
できるだけ負荷を減らすため、エアコンなど電装系は全てオフ、ギアはニュートラル、クラッチを切りスロットルは全開。その状態でキーを回すとセルがまわった! 13年前のオデッセイバッテリー(関連記事参照)だが、ちゃんとまわってくれている。
が、エンジンはかからない。
ただし何年も掛けていなかったのだから、ここまでは想定の範囲内だ。
しばらく回しては少し休め、再度キーを回すのを何度繰り返しただろうか。最初はセルモーターの音だけだったのが、エンジンの音に変化が! そのままセルを回し続けると、その数秒後、ついにエンジンが始動した。最初は苦しそうだったが、スロットルを開けていたこともあって一気にエンジンがふけ上がる。
うっほー、いい音! 親しいライターさんに教えてもらったインテグラル神戸のマフラーの乾いたいい音!! 最高すぎる!! とかよろこんだのは筆者だけで、今時の静かなクルマしか知らない娘はその音に泣きそうになっていた。
といっても、違法なレベルの音量ではない、と思う。ちゃんと測定しないと分からないが、音量も以前と同じ程度の印象なので、たぶんマフラーはダメになっていないと思う。
ということで、そのままラジエターのエア抜きをして、ようやくエンジンまわりのリフレッシュ編については、ひとまず完成と相成りました。
長年不動にしていて、どこが壊れていてもおかしくない状況だっただけに、いろいろ不安だったものの、結果的には大きなトラブルもなく再始動までこぎ着けてひと安心。(実際にはその後ちょこちょこトラブルが出てますがその話は後日)。
ただし、エンジン以外にもリフレッシュしなきゃ行けないところは山積み。ロードスター復活計画はまだまだ続きます……。まぁ楽しいんですけどね。
【ロードスター復活計画:記事一覧】
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- その8:ロードスター誕生から35年、不動となっているNA8Cのステアリングまわりをリフレッシュ
テレワークで余裕ができた時間を有効活用するため、または、変化がなくなりがちなテレワークの日々に新たな風を入れるため、INTERNET Watch編集部員やライター陣がやっていることをリレー形式で紹介していく「テレワーク、空いた時間でなにしてる?」。バックナンバーもぜひお楽しみください。