テレワーク、空いた時間でなにしてる?
【ファミコン救出大作戦その3】最長40年放置された100本超のレトロゲームは清掃必須。接点復活剤があれば大丈夫?
2024年5月24日 12:12
100本超のレトロゲームを救出しに、数年ぶりに実家へ
遠方の実家に放置されたファミコンなどのレトロゲームを、自宅に持ち帰ることなく、レトロゲーム互換機「レトロフリーク」にコピーして持ち帰る作戦。何とか本体を手に入れ、試しに中古ゲームを買ってきたところ、汚れのせいか挿すだけでも大変。対策を用意した上で、いよいよ実家へ……というのが、第1回と第2回までのあらすじ。
今回は本体購入から半年以上経った2024年の正月、ようやく実家に帰省できた際のレトロゲームのコピー作業についてお話しする。
「レトロフリーク」では、ゲームのデータをmicroSDカードにコピーする機能を「インストール」と呼んでいる。コピーという表現は違法行為を想像させるため、別の用語に置き換えたのではないかと思うが、本連載では分かりやすさを重視してコピーと表記している。なお本機能の利用には、元のゲームを手放さないことなど、法的な問題をクリアするための条件がある。詳しくは連載第1回をご覧いただきたい。
いつまでも実家に置いておけると思うな
筆者の実家は田舎だけあってとにかく広く、部屋は余るほどあるので、子供の頃に筆者が使っていた部屋の一角にゲームソフトを含む自分のものを置いたままにしていた。要るものがあればそのうち取りに行ける、と安心していたのだ。20年以上も。
そしてコロナ禍を挟んで数年ぶりに帰省し、筆者の部屋に足を踏み入れると、そこは猫の遊び場と化していた。かなり前から半ば飼い猫の部屋になってはいたのだが、今回は隅から隅まで100%猫部屋化している。新しい猫を迎えたことで模様替えされたらしく、筆者の私物は何ひとつ残っていない。
「猫に6畳間を丸ごと与えるとはぜいたくな!」などと言える立場ではないことは理解しているので、母におずおずと筆者の私物の行方を尋ねると、衣装ケースに詰め込んで押し入れに入れたそう。確認してみると、大型の衣装ケース3箱分ほどに大量のゲームソフトやゲーム機が詰め込まれていた。
さらに一部は「猫が爪とぎして箱がボロボロになったものは、去年の正月に小屋へ持っていった」とのこと。小屋といっても一応屋根がある程度で、風が強ければ雨も入るような場所に丸1年置かれたものを、泣きながら回収・清掃することになった。なお記憶にあるのに見つからないゲームソフトが何十本もあったが、長年放置していた筆者が悪いので諦めた。
ともかく保存状態は予想より悪かった。猫部屋に置かれたことでホコリや猫の毛だらけになっていたのもあるし、実家のある滋賀県は琵琶湖があるため湿度が極めて高く、染みついたような汚れが目立つ。
ただ衣装ケースに入れておいてくれたおかげで、一目で見て「これはクルマに載せきれない量だ」と分かったのはよかった。仮に自宅に持ち帰ると言って、笑顔で「いいよ」と言ってくれる妻がいるとは思えず、ある意味諦めがついたし、それを見越して「レトロフリーク」を準備する動きができた自分を褒めていいと思う。
なお今回作業している時は、本稿の執筆予定がなかったため、写真がほとんどない点はご容赦いただきたい。
接点復活剤で拭くだけで何とかなるのか?
何はともあれ、「レトロフリーク」にゲームをコピーする作業だ。手順は以下のとおり。
- ゲームソフトの端子部を接点復活剤で拭く
- 「レトロフリーク」に挿入し、データをコピーする
これをゲームの本数分だけ繰り返す。紛失したソフトを除いても軽く100本以上あるわけだが、前回のテストで使ったスーパーファミコン用ソフトでさえ読み込み困難だったことを思うと、より古いファミコン用ソフトが順調に読めるとは思えない。しかも元気いっぱいな小学生男児の相手をしながら空き時間での作業になるので、数日がかりになるのは覚悟して行った。
使用する接点復活剤は何でもいいと思うが、端子部の清掃に使用する量は微量なので、たとえ100本あっても少量で足りる。筆者はエーゼットというブランドの接点復活剤で、30mlの小さいものを入手した。プラスチックがある場所にも使えると書いてあるので、ゲームソフトに使用しても問題ないはずだ。
これを綿棒の先を湿らせる程度につけて、端子部をなでるように拭いていく。よくある接点復活剤はスプレータイプなのだが、綿棒の先に少量つけるのが難しいので、チューブから出るような形の方が使いやすい。ホームセンターを探せば何かしらあると思うが、筆者は通販で購入した。綿棒はごく一般的なもので構わない。
実際にファミコンのカートリッジを拭いてみると、あっという間に綿棒が真っ黒になっていく。汚れが落ちないようになるまで拭こうとすると、綿棒1本で足りないものも多い。ただし目的は完璧に清掃することではなく、1回でいいから正しく読み取ることなので、ある程度汚れが落ちればよしとした。
接点復活剤をつけた綿棒で拭いたら、次は何もつけていない綿棒で再度拭く。残っている接点復活剤を拭き取るイメージだ。接点復活剤は主に油と溶剤でできており、端子部には錆止め効果も期待できるのだが、プラスチックや基板部分には不必要。プラスチックに使える接点復活剤を選んではいるが、塗り残しは少ないに越したことはない。
スプレータイプの接点復活剤を端子部に吹き付けてやれば簡単と思うかもしれないが、これは厳禁。内部の基板にまでしみ込んでしまうと、通電性のある接点復活剤が余計な場所をショートさせ、故障の原因になりかねない。あくまでも表に出ている端子部の表面だけを拭くつもりでやるのがいい。
清掃が終わったら、いよいよ「レトロフリーク」に挿入する。40年物のファミコンのカートリッジをおそるおそる入れてみる……見事にエラー。やはり古いものはそう簡単にはいかないようだ。
うまくいくかどうかは物による。汚れがひどいものは相当拭いても黒い汚れが浮き出てくるし、拭いてから挿入してもエラーで読み取れないものもある。そういう時は再び綿棒で拭き直し、ゆっくり挿入したりして、何度か繰り返すことで読み込みに成功するということも多かった。
中には何度やっても全然読み込んでくれず、ひたすらエラーを吐き続けるソフトもあった。諦めたらそこで終了、そのゲームは二度と遊べない可能性が高い。そう思うと意地でも何とかしたいと思い、拭いては挿し、拭いては挿しを繰り返した。中には数十回やってもダメで、1日置いてからまた何度も試すとうまくいったものもあった。接点復活剤が端子になじんだのだろうか? 筆者にも理由は分からない。
この作業でよかったと感じた点は、接点復活剤が潤滑油の役目を果たしたことだ。最初に自宅で試した「トルネコの大冒険」の時は、清掃なしで挿入したためか、挿入する際にものすごく固かった。しかし清掃後のものは当時のファミコンなどと同様、あるいはそれ以上に滑らかに挿入できた。これなら「レトロフリーク」の端子部を破損する心配はない。
逆によくなかった点も接点復活剤の扱い。少量を綿棒につけて拭き取ってはいたが、何十本と拭いて抜き挿ししていると、「レトロフリーク」の端子側に接点復活剤がどんどん移っていってしまうのが心配。少量ならむしろ望ましいのだが、つけすぎになってしまっては困る。
また汚れがひどいソフトについては、いきなり接点復活剤で拭くより、無水エタノールで清掃した方がよかった。無水エタノールは純度の高いエタノールで、油汚れを落とす力が強い。また消毒用エタノールとは異なり水分をほぼ含まないので、機械の清掃に使っても水分による錆びの原因を作らないというメリットがある。
筆者が考える理想的な作業は、先に無水エタノールでひどい汚れを落とした後、ごく微量の接点復活剤で端子部を保護する。いきなり接点復活剤で拭いてしまうと、どうしても使用量が増えてしまうので、問題を起こす可能性が高まる。今回は極力少量で拭き取るよう注意していたので問題はなかったが、先に無水エタノールで清掃し、挿入してもエラーが出る時には改めて接点復活剤を使うのがいい。
ちなみに無水エタノールはドラッグストアで販売されているが、筆者が上の問題に気づいてから買いに行くと、500mlサイズしか置いていなかった。そんなに大量には要らないので、こちらもあらかじめ少量のものを探しておくのがいい。
30年以上前のセーブデータが生きているかも?
綿棒に接点復活剤をつけ、端子部に突っ込んで拭いていくという地道な作業を、心を無にしてやっていく。
都会の喧騒から離れ、空気の澄んだ静かな冬にこういうのも悪くないな……などと思う間もなく「おとーちゃんできた? これどんなゲーム? ぼくもそうじしたい!」と大騒ぎする我が息子。そこは織り込み済みで断続的に進行し、全て終わるのにやはり3日かかった。
100本近くあるファミコン用ソフトのうち、2本だけは最後までどうしてもエラーが出てしまった(ちなみに「マッピー」と「早打ちスーパー囲碁」)が、それ以外は無事。またスーパーファミコンやPCエンジン、メガドライブ、ゲームボーイなどのソフトは全て問題なくコピーできた。
作業の中で意外だったのは、ファミコンのバッテリーバックアップ対応ソフト。これは文字通り、カートリッジ内に電池が入っており、微量の電気を流し続けることでバックアップメモリを保持するという仕組みだ。これを採用したゲームソフトはいずれも発売から30年以上が経過しているため、電池を使い切っており、データは消滅しているはずだ。。
……と思っていたのだが、意外にもデータが残っているものが半分ほどあった。「レトロフリーク」はセーブデータも読み込めるので、昔プレイした時のデータが結構残っているのを確認できた。ゲームによっては3つあったセーブデータのうち1つだけ残っているということもあり、ギリギリ救出できたという感じだ。
なお「レトロフリーク」は、対応する全てのゲーム機用のソフトをコピーして動作できるわけではない。例えばゲームボーイアドバンスの「まわるメイド イン ワリオ」は、内蔵のジャイロセンサーが使えないのでプレイできない。
逆に「ファミリーベーシック」はキーボードを接続すれば動作するらしい。ソフトとキーボードがともに現存していたのだが、試す時間がなく、キーボードを持ち帰るわけにもいかず。今時BASICは流行らないと思うが、マリオを呼び出したりできるので、息子のプログラミング学習教材にすれば興味を持つかもしれない。
ともかくできるだけのことはやり終え、100本以上のゲームが入った「レトロフリーク」を手に、自宅へ戻ることとなった。あとは懐かしのゲームを遊び倒すだけだが、時間的余裕が少ない筆者でも楽しめる方法も用意されているので、詳しくは次回お伝えしたい。
テレワークで余裕ができた時間を有効活用するため、または、変化がなくなりがちなテレワークの日々に新たな風を入れるため、INTERNET Watch編集部員やライター陣がやっていることをリレー形式で紹介していく「テレワーク、空いた時間でなにしてる?」。バックナンバーもぜひお楽しみください。