テレワーク、空いた時間でなにしてる?

【ロードスター復活計画その8】ロードスター誕生から35年、不動となっているNA8Cのステアリングまわりをリフレッシュ

今年9月でロードスター誕生から35周年。写真はロードスター30周年記念ミーティングのもの

 かれこれ10年前に車検を切ってから不動にしていたロードスターの復活計画。テレワーク中心になってできた、以前であれば通勤電車に揺られていた時間やお昼休みなどに、ちょこちょこと作業を進めているが、かなりマイペースでやっているので、実際に車検を取れるのはあとどれぐらいかかるだろう。

 ところで、実はこの9月で初代ロードスターが国内で発売されてから35周年になるそうだ。マツダのサイトでは「ROADSTER 35周年記念ロゴ」のデータが配布されている。

ロードスター35周年記念ロゴはマツダの専用サイトからダウンロードできる

 かつて1960年代は、MGA、ロータス エラン、日本でもダットサン フェアレディやホンダ S800など、オープン2シーターは人気のカテゴリーだった。しかし時代の流れとともに人気が落ち込み、初代ユーノス ロードスターが登場する1980年代には、世界中の自動車メーカーが「オープン2シーターは売れない」と評価していた。そんな時代に、日本の小さな自動車メーカーであるマツダが、ユーノス ロードスターを発売したのだ。

 おそらく当時の他のメーカーは無謀な挑戦とみたことだろう。しかしそんな予想を裏切って、ロードスターは爆発的に売れてしまう。なにしろあまりに売れたので、他のメーカーもこぞって追従したのだ。BMW Z3、ローバー MGF、フィアット バルケッタ、ロータス エラン、メルセデスベンツ SLK、ポルシェ ボクスターなどなど。世界の名だたるメーカーがマツダの後を追ったのだから痛快だ。

 しかもそのロードスターが35年経った今も販売されている。初代ロードスターに乗り続けている人も少なくない。もう20万kmどころか30万km以上走っている人も多く、おかげでいまだに部品も出るし、さらにはマツダが復刻パーツなども出してくれている。さらに距離を走った場合の不具合やその対策の情報も充実していて、とても助かっている。このロードスター復活計画も、ほかの車種だったならもっと苦労していたかもしれない。

一度は廃番になった部品もマツダが復刻してくれている

 ということで話をもどそう。筆者のNAロードスター(NA8Cと呼ばれる1800ccのモデル)は、エンジンまわりのリフレッシュが終わったところで、続いてステアリングラックまわりのリフレッシュを始めている。前回は真っ二つに割れたステアリングラックブーツを新品に交換したが、今回はその続きとして、タイロッドエンドやアッパーアーム、ロアアームのボールジョイントのブーツを新品に交換する。

古いブーツを外してボールジョイントをグリスアップ

 まずはタイロッドエンドと同様にアッパーとロアのボールジョイントを外す。といっても簡単には外れないので、も前回と同様にタイロッドエンドプーラーと石頭ハンマーを使って外す。いつ外れるか分からない上に、外れたときにめちゃくちゃデカい音がするのはタイロッドエンドと同じ。ノミの心臓の筆者には辛い作業だが、やらなければ先には進めない。いやだなーと思いつつ作業を進める。

アッパーとロアのボールジョイントもしっかりはまっているので、タイロッドエンドプーラーを使って外す。外れる瞬間にめちゃくちゃデカい音がするので心臓にわるい

 といっても、ハンマーの重さ頼りで外すようにしたことで、ある程度外れるタイミング(デカい音のするタイミング)への心の準備ができるので、だいぶ心臓には優しく作業することができた。筆者同様にタイロッドエンド外しが苦手という方は、タイロッドエンドプーラーのボルトを締め込む力で外すのではなく、ハンマーで叩く力で外すようにするのがオススメだ。詳細は前回の記事を参照してほしい。

 ボールジョイントが外れたら、交換するゴムブーツを外す。車種によって違うが、NAロードスターのボールジョイントブーツは、バンドなどは使われずにはまっているだけなので、マイナスドライバーなどを使ってこじって外す。筆者が使っているのはタガネドライバーという工具で、貫通タイプ(柄の部分をハンマーで殴れるようにしたもの)のドライバーの先端をタガネ風にしたもの。貫通マイナスドライバーでも代用できるが、先端がとがっている分、こういう作業には使いやすい。

 タガネドライバーを当てて、コツコツ叩けば古いブーツが外れる。タイロッドエンドブーツ以外に破れは見られなかったが、時間の問題だろう。

アッパー、ロアともボールジョイントが外れた状態
こちらが外れたナックルと呼ばれるパーツ
タガネドライバーをコツコツ叩いてブーツを外す
こんな風に外れる

 ブーツを外したら、せっかくなので古いグリスを拭い取って新しいグリスにしたい。このとき、ボールジョイントにガタが出ていないかも確認。筆者の場合、右側のタイロッドエンドブーツだけブーツの破れがあったが、中からグリスが飛び出した様子はなく、おそらく不動にしてからか、あるいは不動にする直前に破れた模様。おかげで中のグリスが漏れ出たり、中で錆びたりといったことは無かった。

 古いグリスを取り除くと言ってもパーツクリーナーなどは使わない。というのもボールジョイントの奥のグリスまで新品に変えるのは困難なので、見える範囲のグリスを拭い取ったら、新しいグリスを塗ってグリグリと動かし、できる範囲で新しいグリスになったら良しとした。

 新しいグリスはある程度こんもりと盛りつける。あまり盛りすぎると取りつけた時にブーツからあふれてしまうので、度合いが難しいが、古いグリスの量を参考にほどほどに盛りつけた。

これはタイロッドエンド。ブーツはひび割れていたがグリスの漏れはなかった
ブーツを外すと古いグリスがべっとり。これをウエスで拭い取る
グリスを拭き取った状態。ボールジョイントにガタが出ているようなら新品に変える必要がある
新しいグリスを盛りつけて、グリグリ動かして中にできるだけグリスが入るように
こちらはアッパーのボールジョイント、グリスを新品に
こちらはロア側。ブーツがはまる部分はグリスが付かないようにしておく

新しいブーツを真っ直ぐキレイにはめるには……

 そしてここからが今回の山場で、新しいブーツをはめる作業。

 まずブーツだが、純正品ではなく、ミヤコ自動車工業のものを使った。ミヤコ自動車工業はこうしたボールジョイントのブーツやブレーキ周りのオーバーホールキットなどを出しているメーカーで、純正よりも安く手に入る。かといって低品質ということはなく、自動車メーカーにも部品供給している企業なので、安心して使うことができる。ただし自動車メーカーを問わず製品をラインアップしているため、サイズ間違いには注意したい。その点、NAロードスター用は一式まとめてAmazonで売っているので分かりやすい。今回はそれを買うことにした。

 タイロッドエンドブーツやボールジョイントブーツには2種類あって、ブーツをかぶせてからバンドで締めつけて固定するタイプと、ただ圧入するだけのカシメタイプがある。ロードスターはというと後者のカシメタイプ。ただし、圧入というぐらいで、手ではまるほど生やさしいものではない。

 中にはプライヤーなどではめ込んでしまう人もいるが、失敗すればブーツが破れたり、斜めにはまってしまう。ゴムのブーツをキズをつけずに、かつ真っ直ぐきれいにはめるというのは、簡単そうで結構難易度が高いのだ。

 世の中には専用のアダプターのようなものも売られてはいるのだが、業務用なので結構お高め。DIYで買うようなものではない。なので、無難なのはサイズの合う塩ビパイプを使って、万力などで締め込む方法だ。ただし、なかなかちょうど良いサイズの塩ビパイプが見つからないのが難点。

 筆者も合いそうなサイズのパイプをいくつか買ってきて、さらに内側を削ってサイズ調整をするなどした。

 それと手持ちでは大きい万力がなかったので、L型クランプを使って締め込む。

新しいブーツ。内側にうすくグリスを塗っておいた
サイズの合う塩ビパイプをカラーとして使う
L型クランプを使って締め込んでいく
ブーツが全周に渡ってしっかりはまればOK
こちらはアッパー側をはめているところ
これはタイロッドエンド。クランプを噛ませるためにパイプをいろいろ組み合わせている

 これでアッパーとロアのボールジョイントブーツは問題無くはめられたのだが、タイロッドエンドブーツだけがカシメ部分が斜めになってしまってうまくつけられなかった。締め込むだけなので、どうして失敗するのか原因が分からず、また同じブーツを買って失敗してもなんなので、今度は純正品を注文しなおして再チャレンジするとうまくいった。

タイロッドエンドブーツが斜めになってしまった
仕方がないので純正ブーツを買って再挑戦。今度はうまくはまった

 一応筆者のケースだが、使った塩ビパイプは、タイロッドエンドブーツが「バルブソケット TS-VS40」のネジを切ってある側。アッパーのボールジョイントブーツが「異径ソケット TS-S25×20」の太い方、ロア側のポールジョイントブーツは、「ネジ式掃除口 CO40」のメス側を加工したもの。ただし、メーカーによって多少サイズが違う可能性もあるので、あくまで参考まで。それと、場合によっては単独では長さがたりないので、複数を組み合わせて使っている。詳しくは写真を見て欲しい。

用意した塩ビパイプ。タイロッドエンドに「バルブソケット TS-VS40」、アッパーには「異径ソケット TS-S25×20」
異径ソケット TS-S25×20の太い方の内側を少しだけ削って広くした
ロア側は、「ネジ式掃除口 CO40」のメス側を加工したもの
内側のネジ山などを削り落としてサイズを調整した

キャッスルナットを新品に変えて元に戻せば完成

 ということでグリスアップし、ブーツも交換し終えたら、あとは元に戻していく。タイロッドエンドについては、前回外すときに数えておいた回数を元に、同じ回数だけ回して、外す前と同じ位置になるようにして固定する。

 また、ボールジョイントを固定するキャッスルナットとピンは新品を用意した。再利用することもできるかもしれないが、タイロッドエンドリムーバーで外すときにゆがむ可能性があるので、新品を用意しておくのがオススメだ。

 あとはナックルにアッパー、ロア、タイロッドエンドのジョイントを繋いで、キャッスルナットをトルクレンチで締め込む。そして割ピンを挿したらステアリングラックまわりの作業は終了だ。本当はサスペンションも同時に交換したかったのだが、駐車場の左に寄せすぎて左リアに作業スペースが取れず。一度動かせるようにして場所を変えてから作業することにしたい。

タイロッドエンドを元の位置に戻し、ナックルを固定すれば終了。キャッスルナットと割ピンは新品にしてある

テレワークで余裕ができた時間を有効活用するため、または、変化がなくなりがちなテレワークの日々に新たな風を入れるため、INTERNET Watch編集部員やライター陣がやっていることをリレー形式で紹介していく「テレワーク、空いた時間でなにしてる?」。バックナンバーもぜひお楽しみください。