テレワーク、空いた時間でなにしてる?

【一坪農園その3】初心者でもカンタン……!? そうは問屋が卸さない。豊作から一転、害虫や病気との戦い

 在宅勤務の気分転換にと、超狭小な庭で始めた畑(第1回参照)。最初は、驚くほど順調だったのだが、そうは問屋が卸さない。最初の豊作はビギナーズラックだったのだろうか?(第2回参照) 途中から、だんだん貧弱な実が増え、カメムシの食害と戦い、酷暑にダメージを受け……。なかなか、菜園とは難しいものだと思い知らされた。

在宅勤務をしているなら、ぜひ野菜を植えて欲しい

 基本的には、メール、Slack、Facebookメッセンジャーで仕事の依頼や、取材のお誘いをいただき、取材して、それをオンラインで公開したり、納品したりする毎日。意図的に行動しないと、1日に数十歩しか歩かないし、空を見上げる余裕もなくなってしまう。

 そこで、在宅勤務になってからは意図的に、ランニングし、ウォーキングするように心がけている。そこに、この春からは家庭菜園が加わった。

 菜園といっても、わずか一坪ほどの小さな土地なので、最初に耕して畝を立てたあとは、さほどの肉体労働は発生しない。それでも、毎日朝のランニング前に、出来た実を収穫し、水をやり、時に肥料を与える……という作業が加わったし、何より土に触り、植物の成長を観察するというのは、一日中PCの画面を見ている生活では大きな気分転換になる。

 なんというか、植物は日々少しずつ違うし、成長し、変化する。そういうところに、デバイスとは違う面白みを感じる。そして、ただの土から生えたものの実や葉が我々の食べ物になるのだ。故郷にいた頃には当たり前に思えたことも、東京近郊に暮らす筆者の目にはとても新鮮に映った。

初夏の我が一坪菜園。みっしりと葉が生え、元気に育っている

 たとえ、地面がなくても野菜を育てることはできる。もし、あなたが在宅勤務の日々を送っているなら、ぜひひとつプランターを買ってきてみていただきたい。マンションのベランダでだってできる野菜はいろいろある。自信がない方にオススメなのがバジルだ。バジルはそう簡単に枯れないので、水さえ適切に与えていれば育てられるはず。ベビースプラウトもオススメだ。ベビースプラウトとは、水菜や、ブロッコリーなどの野菜の新芽などのこと。タネを蒔いて1週間ほどで食べられるので、害虫などの心配もない。

 バジルとベビースプラウトがあれば、ピザトーストに風味を加えられるし、ちょっとしたサラダもできる。自分で育てたのだから無農薬であることが分かっている。そうした、自分で作った野菜を口にするのは、ちょっと楽しい。

6月末から7月にかけてはキュウリばかり食べていた

 そんな、ベランダ菜園の延長で始めた一坪菜園だが、前回レポートしたとおり、想像以上に豊作となった。

 植えたのは5月のゴールデンウィークなのだが、6月のWWDCの頃(つまり6月10日頃)には、最初の収穫があった。収穫できたのはキュウリとナスである。

 特にキュウリは、驚くほど採れた。

 2株植えただけなのだが、すぐに1日2本採れるようになり、それが3本、4本と増えて行った。最盛期には毎日3~4本、時には5本も採れたから、朝食はキュウリを2本。昼食の添え物にもキュウリが付いて、夜は豚肉とキュウリの炒めたもの……というありさまになった。

7月初旬の収穫。まだキュウリも元気だし、トマトも採れた

 それでも、自分が作った野菜だと思うと、無駄にはできないし、美味しい。これも無農薬であることが分かっているし、スーパーで買ったモノよりも旨味が深い(ような気がする)。今年の夏はすこぶる暑かったが、水分の多い夏野菜は身体の温度を下げてくれるような感じがした。

 トマトもまずまず収穫できた。しかし、こちらには、すぐに問題が発生し始めた。

カメムシとの戦いの日々

 最初の収穫ぐらいまでは良かったのだが、順調に赤くなり始めると、美味しそうな実に限ってプツリと小さな黒い穴が空くようになった。そして、その穴を中心にダメになっていくようになった。せっかく採れた実なのに、そういう実が次第に増えて行った。

 よーく観察してみると、トマトの実に止まっているカメムシを見つけた。カメムシの食害らしい。

こちらはパプリカだが、虫が止まってるのにお気付きだろうか? 虫が苦手な人は写真を拡大しないでいただきたい
こちらもパプリカだが、見事にかじられている。残念無念

 そこでホームセンターに行って、カメムシに効くという薬を買ってきた。お店のスタッフの方も「環境へのダメージが少なく、人体への害もまったくない、多くの人が使っている安全な薬です」と教えてくれた。

 しかし、ネットで検索してみると、「その薬は有害だ」と書いているサイトがいくつも見つかった。カメムシだけでなく、多くの虫にもダメージを与えてしまうし、花の受粉を手伝うミツバチにも悪影響を与え、繁殖できなくしてしまう可能性があるとのことだった。もちろん、そのサイトにエビデンスがあるのかどうか、筆者には分からなかったが、数km圏内のミツバチにダメージを与えると書いてあったので、不安になって使わないことにした。たかが私の家庭菜園ごときで、周囲の環境に悪影響を与えるワケにはいかない。

木酢液と割り箸で、カメムシと戦う

 調べてみると、薬品を使えないのなら、あとはナチュラルな手段と人海戦術しかない。

 まず、木酢液や、竹酢液を買ってきて、噴霧器で噴霧するようにした。木酢液や、竹酢液とは、それらを燻した時に出る煙の成分を冷却して得られた燻臭のする水溶液のこと。自然由来の成分なので、環境に与える影響はないはずだ。最初は、小さな霧吹きを使っていたのだが、野菜全体に噴霧しようとすると毎日握力がバカになるほど噴霧しなければならない。そこで、2週間ほどして、限界になって噴霧器を買った。

竹酢液と噴霧器。特に噴霧器は、初めて使ったのだが非常に便利だった

 この噴霧器、上のポンピングロッドを数十回ポンプすると中の圧力が高くなり、連続的に噴霧することができる。こんなことならもっと早く買えば良かったのに……と思うほど、便利なアイテムだった。

 しかし、ナチュラルな手段だと、やはり効果はほどほど。

 あとは手間をかけるしかない。毎朝、水やりの前に、割り箸でカメムシを掴まえる日々が始まった。うっかり手で触るとご存知のように臭い匂いを発して匂いが取れなくなる。だから、難しくとも割り箸で戦うしかないのだ。

 毎日やっていると、だんだんコツが分かってきた。

 カメムシは割と不器用で、箸でつまむのに失敗してもすぐに飛び立つワケではない。むしろ、ポロリと落っこちる。落っこちたのを掴まえようとしていると逃げられてしまう。だから、洗剤を入れたペットボトルを下に構えてから箸で掴もうとする。掴めればラッキー、掴めなくてもペットボトルに落ちる。

洗剤を入れたペットボトルと割り箸を持って、毎日カメムシと戦う

 しかし、木酢液/竹酢液も、箸で駆除する作戦も、絶大な効果を上げる……というわけにはいかず、結局のところトマトはけっこう食害に遭った。

 仕方なく、トマトはあるていど大きくなったら、青いまま収穫し、リビングで熟すのを待つことにした。

盛夏に、急激に元気がなくなっていった

 パプリカの成長はゆっくりだった。最初の実は赤くなるまで1カ月ほどかかった。

 こちらは、トマトと違って収穫してからは熟さないと聞いたので、そのまま木においておいたが、多くがカメムシたちの餌食になってしまった。なかなか難しい。

 枝豆はもっと残念なことになった。

 なかなか大きくは実らないので、ずっと待っていたのだが、ある日突然、全部、一粒もなくなってしまった。これはその速度からいっても、虫などではなく、鳥か、動物かが、ひと株分、全部召し上がってしまったようだ。自宅で採れた枝豆でビールを飲むのを楽しみにしていたのに、残念なことだ。

 ナスもあまり実らなかった。これは横に植えたキュウリやトマトの勢いに負けたのかもしれない。葉の色も良くないし、株も大きくならなかった。

残念ながら数少ないナスも虫に食われた

 今年の夏は暑かった。あれほど大量に採れたキュウリも、夏の盛りにはだんだん採れなくなってきた。表面に妙な模様があったり、曲がっていたり、一部が細く、途中から膨らんだようなカタチになったりして、あまり美味しくなくなっていった。

季節を外れてくると、徐々にひねくれたキュウリになっていく。そういうものなのか?

 地面の養分のバランスが悪くなったのか、夏があまりに暑過ぎたのか? 7月の終わりには、キュウリの株は枯れたようになっており、それに覆われていたトマトの株も勢いを失っていた。

 野菜なのだからシーズンがあって、そんなものかもしれないが、もっと肥料を工夫するとか、遮光ネットをかけて太陽を遮ったら、もうしばらくキュウリやトマトを楽しめたのかもしれない。もっとも、あまりに暑過ぎて、筆者自身が世話をする気力を失っていたのだが。

夏の終わりの菜園。冒頭の写真に比べて、キュウリやトマトが枯れつつあるのがお分かりいただけると思う

大量に採れるシシトウ

 他の野菜がほぼ全滅となっていく中で、ひとつ元気なのがシシトウだった。

「ひと株で100本採れる!」というキャッチフレーズの付いた苗を買った。まさか、それは大げさな……と思っていたが、実際にはおそらく300本ぐらい採れたのではなかろうか? シシトウに関しては害虫も付かなかったし、大量に採れたしで実に良かった。

 原稿執筆時点の8月の後半になってもまだ採れ続けている。食べられそうなサイズになると採っていたので、緑色のままのこともあるし、赤くなっていることもあったが、味はあまり変わらなかった。緑のシシトウが、1~2日で真っ赤になるのは面白い。

 辛いタイプではなかったので食べやすい。軽く炙ってかつお節をふり、醤油をたらして食べると日本酒のあてに最高だ。それだけでは食べ切れなかったので、バターで炒めて食べたりもした。

シシトウはふんだんに採れたので、美味しくいただいた

 来年は、キュウリとシシトウは絶対に植えようと思った。

季節の移り変わりを知れるのも家庭菜園の面白味

 いくら茂った元気な野菜でも、季節が来ると、スッと元気がなくなるのも興味深い。

 おそらく、地中から養分と筆者が毎朝やった水を吸い上げ、太陽光で光合成して、さまざまな実を実らせてくれたのだと思うが、はじめての家庭菜園は意外と簡単だった。

 一番重要なポイントは、適切なタイミングに植えるということだったように思う。デジタルな日々を送っていると、季節というものに鈍感になるが、日照量が増える、気温が上がる……というタイミングはピンポイントで、最適なタイミングに植えると成長も早いし、元気がいいと虫にも食われにくいように思う。

 もちろん、もっと上手に……を考えるとキリがないのだろうが、庭で採れた野菜を日々の食卓の足しにする……という第二の目的は達成できた。

お盆の帰省前に、なってる野菜をすべて収穫した。1週間して戻ってきたら、シシトウはまだなっていたが、パプリカはだいぶ虫に食われていた

 第一目的は、もちろん在宅勤務の生活に、新しいインスピレーションを与えてくれる体験をすることだ。デジタルデバイスばかりの生活の中では、土と植物、思い通りにいかない害虫と触れ合うことだってとても楽しい。

 秋が来る前に、トマトやキュウリの苗を抜いて、9月になったら、秋の野菜を植えようと思っている。白菜などの時間を要する葉物は、上手く巻かせたり、虫に食われないようにするのが難しそうだから、大根や、ジャガイモなどの根菜を中心にしようと思っている。ホウレンソウや春菊も好きだから植えられたらいいのだが……難しいのだろうか? もうちょっと調べて、そのあたりの意思決定をしようと思っている。

 また、機会がいただけるようなら、レポートしたいと思う。

テレワークで余裕ができた時間を有効活用するため、または、変化がなくなりがちなテレワークの日々に新たな風を入れるため、INTERNET Watch編集部員やライター陣がやっていることをリレー形式で紹介していく「テレワーク、空いた時間でなにしてる?」。バックナンバーもぜひお楽しみください。