テレワーク、空いた時間でなにしてる?
【一坪農園その2】猫の額のような小さな庭でも味わえる、大地の恵みを満喫
2024年7月19日 12:12
自宅での仕事が中心になって、30年におよぶマンション住まいから、賃貸とはいえ小さな庭のあるテラスハウスに引っ越し。家にいる時間が長くなると、少しでも広い方がいい。また、身体を動かすために、散歩、ランニングに加え、ガーデニングも始めてみた。わずか一坪ほどの土地だが、野菜を育て、それを食べるというのは、とても充実感のある営みだった。
一坪農園の世話が日々のルーチンになった
前回お話したように、ささやかなる庭に、一坪ほどの畑を開墾し、土を入れ、肥料を撒き、作物を植えた。
植えたのは、キュウリを2株。中ぐらいの玉のトマトと、プチトマトを1株ずつ。ナスを1株。パプリカを赤と黄色1株ずつ。シシトウを1株。枝豆を1株。そして、30cm四方のスペースに、スプラウトの種を蒔いた。その他、ベランダのプランターでは、妻がバジル、シソ、ネギ、ミント、ラズベリーなど、料理にすぐに使えるハーブ類を植えている。
筆者の日課は、朝起きて、畑をチェックし、多少の世話をし、水をやり、近所を散歩して、朝食を食べる……というルーチンで始まるようになった。
なんか、在宅で仕事するようになってから、どんどんヘルシーでナチュラルになっているようだが、そうでもしないと、書斎でPCに向かっているだけの生活になってしまうから、ということでもある。
思えば、通勤というのは、朝の運動でもあったし、気持ちの切り替えの時間でもあったのだ。在宅になって、朝起きてすぐにデスクに向かうようになると、明らかに運動不足になる。対して、通勤があれば少なくとも数千歩のウォーキングにはなっていたのである。
みなさんも、在宅勤務が続くようなら、健康を維持するために何らかの運動を生活に取り入れていただければと思う。
小さな苗を世話して、根付くのを待つ
苗を植えたのはゴールデンウィーク。以前の経験から学んでいたのは、野菜というのは想像以上に植える時期が大切だということだ。仕事が忙しいから、来週……などとやっていると、時期を逸してしまう。時期を逸した植物は、元気に生育せず、元気でない植物は虫に食われやすい。良いタイミングで植え、元気に育った野菜は、農薬に頼らずとも虫に食われにくいのである。
幸い、どの苗も上手く根付いたようで、毎日の世話が楽しくなる。
調べてみると、キュウリもトマトも、脇芽というのを取らないといけないらしい。枝ばっかりがたくさん分岐すると、実にエネルギーがいかず、葉がいっぱい茂ってしまうということのようだ。リクツはまだよく分からないが、本に載ってるとおりに脇芽を取る。
妻は「かわいそう」と言って、種を植えて芽が出た時に間引かなかったり、木々の切るべき枝を切らないので、結果的に植物全体としては大きく育てられなかったりする。
私も、まだまだあまり経験がないが、間引くことで他の芽が大きくなったり、主枝を切ることで脇芽が分岐して葉が密になったり、園芸本に書いてあることは、やってみると理に適ってると感じることが多い。
わずか1カ月で収穫が始まる夏野菜の楽しさ
毎日世話をして1カ月もすると、キュウリとトマトがすごい勢いで伸びてきた。こうなってみると、お互いをもう少し離して植えるべきだったと反省。だって、苗を買ってきた時は、まさかこんなに大きくなるとは知らなかったんだもの……。
トマトは、基本的に木のように自立するというか、支柱に巻き付きはしないので、ヒモで結わえてやる必要がある。たぶん、実がなると重いので、支柱がないと倒れてしまうと思う。
キュウリは、ツルで支柱に巻き付いていく。近くに植え過ぎたので、トマトにも巻き付いていき、旺盛な葉の成長が、トマトを覆っていってしまう。また、隣家の方に伸びていくという問題もあるので、適宜切らねばならない。
前述のように脇芽を取ったりしていたのだが、そのうちに、トマトとキュウリが絡まりあって、何がなんだか分からなくなってしまい、どれが脇芽なのかも分からなくなった。次回は、成長途中にもうちょっと整理できるように離して植えよう。これは反省点。
そうこうするうちに早くも実がなり始めた。わずか、1カ月ほどで、収穫にありつけるなんて、夏野菜は楽しい。ビギナーズラックというか、新たに畑にした土地なので、いわゆる連作障害的なトラブルがないというのも大きいようだ。
サンゴを飼っていた経験から推測すると、連作障害というのは、特定の栄養分や微量元素を植物が消費するのと、特定の植物に害をなす細菌や、病気が土地に蓄積するから起こることのように思う。これは、今後経験していくことになるのだろう。
地面と、日の光と、日々やる水が、結実する不思議さ
1カ月あまりで、キュウリ、プチトマト、ナス、パプリカの実がなり始めた。早い。
日々観察していると、キュウリは見る間に大きくなる。花の根本が膨らみ始めたかと思うと、翌日には小さなキュウリのカタチを成し、2日後には収穫できるサイズになる。何十年もキュウリを食べているが、キュウリがこんなに早く成長するとは思わなかった。
ナスの一番果は、早めに取ってしまった方がいいらしい。
一番果ができる季節は、まだ苗自体の成長にエネルギーを使った方が良いのだそうだ。だから、一番果を取って、苗の成長に養分を回すのだ。
最初に採れたキュウリと、ナスの一番果を食べた時は、なんだか感動した。
これまでずっと食べてきたものだが、自分で作った野菜となると格別だ。当然のことながら無農薬なのは分かっているし、地面と、太陽と、日々やっている水が、このようなカタチで文字通り「結実」することに、あらためて驚いた。
これらの野菜だって、多くの場合大量生産され、ガソリンを消費して我々の手元に届く。できることなら、多くの人が一坪農園を作って、最低限の簡単な野菜を自分で作れば、輸送に使われるCO2排出を少しは減らせるし、健康的なものを食べられるし、オフィスワーカーの人は気持ちの切り替えができるし、いいのではないだろうか? 特にテック系の仕事をしている人には、とてもいい気分転換になるし、思索の時間としても有用だと思う。
テックな日々を送っている人にこそ、家庭菜園を楽しんで欲しい
などと思っているうちに、キュウリの収穫量はどんどん増えてきた。
正確には数えてないが、WWDCの取材に行く直前の6月8日に最初の1本が採れて、次第に収穫量は増え、原稿執筆時点の7月中ごろまで毎日1~4本ぐらいのキュウリが採れている。植えた苗は2つでこれだけ採れれば、完全に苗の元は取れているといっていいだろう。毎日、朝ご飯に新鮮なキュウリが加わるのは素晴らしい。
6月の後半には、プチトマトやシシトウも採れるようになってきた。
7月中旬現在、わが家では、キュウリ、ナス、シシトウ、トマト、プチトマト、シソ、バジル、ミントが自給可能な状態にある。
ちなみに、えだ豆は実が膨らむの待ち、パプリカは実がなっているのだが、色づいていないので、色づくのを待っている。もうなり始めて3週間ぐらい経つのだが……パプリカが色づくのには時間がかかる……ということも学んだ。
Vision Proを使ったり、海外とオンライン会議したり……と、ともすれば現実感のない仕事をしているが、毎朝15分ほどだけでも、庭に降りて、野菜を収穫し、水をやり……と世話をする時間はとても楽しい。
野菜は日々成長し、昨日とは違う姿を見せてくれる。そして、食べれば、それは家族の血肉となり、我々を生かしてくれる。
わずか一坪の畑を、2カ月ほど運用しただけで言うのもなんだが、自分なりに畑で採った野菜を食べるのは非常に楽しい経験だし、大きな気分転換になる。もし、みなさんも、耕せる土地があったり、市民農園なりを借りられたりするならぜひチャレンジしてみて欲しい。ベランダにプランターを置くだけでも違うと思う(ただ、ベランダ菜園は乾燥しやすいので手間がかかる)。これまで、家庭菜園に挑戦してみたことのない人にこそお勧めだし、小さいお子さんがいらっしゃったりしたら良い食育にもなるのではないかと思う(わが家の子供たちは成人して家を出ている)。
テレワークで余裕ができた時間を有効活用するため、または、変化がなくなりがちなテレワークの日々に新たな風を入れるため、INTERNET Watch編集部員やライター陣がやっていることをリレー形式で紹介していく「テレワーク、空いた時間でなにしてる?」。バックナンバーもぜひお楽しみください。