テレワークグッズ・ミニレビュー
第97回
「ネット回線がないっ!」引っ越しのピンチを、Starlinkで乗り切った話
2024年5月17日 12:12
そもそも、引っ越す気などなかったのだ。
所帯じみた話になるが、家賃約10万円という(東京近郊では)格安の3LDK賃貸マンションで、20年間子育てをした。
子供たちも成長して家を出ていって、夫婦2人の生活になる。なんなら、もっと狭い場所に引っ越してもいいと思っていたが、狭くなっても家賃は同等か、むしろ上がるぐらい。だったら、このマンションに居座るか……と思っていた。
しかし、ある日、不動産屋でテラスハウスが目についた。築35年と古くてボロいが、屋内にクルマ1台と大型バイク、屋外クルマ1台を置ける広大な駐車場に惹かれた。「ここに住めば、ずっと夢だったビッグバイクを再び買える」そう思うとガマンできなくなった。
内見した。リビングダイニングは17畳。ベランダもあるし、畳3畳分ぐらいだが地面もあるので、これまたやりたかったガーデニングもできる。書斎(に使おうと思った部屋)には、前の住人が勝手に作ったらしい謎のロフトがあり、いろんなガジェットを収納しても快適に仕事ができそうだ。
狭いマンション住まいから一転して、古くてボロいとはいえ、趣味的生活を満喫できそうな広いテラスハウス。人生を畳みにかかるか、さらに広げるかを問われた気がした。こうなると、もうガマンはできない。
「引っ越すなら、来月から入ってもらわないと、ほかの人に回す」と言われて、年明けに怒濤の引っ越しと相成った。
引っ越しを決めてからの回線手配では遅いことも……
引っ越しを決めてから、いそいそとNURO光に連絡した。わが家は、NURO光を使っていたので、サービスもそのまま引っ越そうと思ったのだ。
セールスはいっぱい来るのに、どういう手続きをしたら引っ越せるのかがさっぱり分からない。何度も問い合わせた揚げ句分かったのは、「引っ越し手続きは(ほぼ)存在しない。解約して、新規に契約するのみ(正確には、再契約時の工事費無料のキャンペーンのみ適用)」ということと、「今から契約すると、工事は4カ月以内に99%終わる」ということだった。
ウェブサイトには誇らしげに「4カ月以内に99%終わる」と書いてあるが、それは下手をすると、4カ月間ネットに接続できないかもしれないということだ。
筆者は、編集者兼ライターとして自宅を仕事場としている。在宅勤務兼フリーランスと言う感じだ。ネットが繋がらなければ話にならない。
4カ月もネットが繋がらなければ、文字通りオマンマの食い上げである。
モバイルルーターでは家中の通信を賄えない
NURO光には、NUROモバイルというモバイルルーターの貸し出し割引サービスがあったので、それを申し込んだ。
しかし、このサービスには3日で10GBという制限があって、最初の3日で速度制限に引っ掛かって使えなくなった。
ビデオ会議もあるし、Apple TVなどでコンテンツを見たりもするから、自宅兼事務所の回線が3日で10GBなんてそりゃ無理というものだ。
iPhoneのテザリングも使ったが、あらゆるサービスをテザリングで利用したら、こちらもあっという間に使えなくなるのは明白。
そこで奥の手を使うことにした。
実は筆者、衛星を使ってネットに繋げる「Starlink(スターリンク)」を持っている。Starlinkの日本サービスが始まった時に、自腹で7万3000円払って購入し、レビュー記事を書いてそのまま契約を休眠して放置していたのだ。フリーランスライターとしては完全赤字案件だ(ネット記事の原稿料では、とてもではないが元は取れない)。
Starlink、復活!
マンション住まいでStarlinkを使ってみたが、ベランダにせり出すように縛りつけてみても、屋根が邪魔になって繋がらない時間が多い。光回線があれば、そちらを使うので、Starlinkの出番はない。1、2度キャンプに持っていって、田舎での高速接続を楽しんだりしたが、そこまで日常的に使うものではない。
というわけで、「元7万3000円の巨大な荷物」として、Starlinkは放置されていたのだ。
さっそく、引き出して、ベランダ側に置いてみた。が、屋根が邪魔になって接続状況はわるい。
そう、Starlinkは北側に開けた空が必要なのだった。
多くの日本家屋の場合、南に採光のいい庭やベランダ、リビングを持ってくると玄関は北側になる。新しいわが家もそうだったので、玄関先にStarlinkのアンテナを置いた。
「引っ越した途端に、玄関先にStarlinkアンテナを立てる」
ご近所から、さっそく怪しい家だと思われそうだが、止むを得ない。
ケーブルを繋ぎっぱなしにしなければならないのだが、開けっぱなしにできる開口部というのは意外とない。
いろいろと検討した揚げ句、玄関先からケーブルを引き回して、キッチンの小窓からケーブルを引き入れ、冷蔵庫の上にStarlinkのルーターを置くということになった。
ネットの使えるありがたみ
Starlinkのルーターから、普段使ってるLinksysのメッシュWi-Fiに接続した。すると、同じSSIDを使えるので、自宅で使っていたいろいろなネット機材が一気に繋がるようになった。
Mac、iPhone、iPad……などはもちろん、HomePod、Sonos、テレビ、Apple TV、uHoo、ScanSnap、Google Home、Amazon Echo……などが、全部一斉に使えるようになった。
ネットが使えないというのはこれほど不自由なのか……と驚いた数日間だった。
Starlinkは、スマホから契約を復活させると、簡単に再び使えるようになった。1年半前、最初に使った時は、1万2300円だった月額料金が6600円になっている。
接続速度約300Mbpsとまずます速い。ビパ! Starlink! ビバ! イーロン・マスク! 普段、TwitterをXにしてしまったことなどに対して、文句ばっかり言っている私だが、この日ばかりは神とイーロン・マスクに感謝した。
1カ月の通信量は552GB
そのちょうど1カ月後に、NURO光が回復するまで、Starlinkで生き抜いた。
スペック上の通信速度は十分なのに、時々なにか引っ掛かるように通信が滞るのが難点だったが、ともあれビデオ会議も行えたし、あらゆる仕事関係の通信も、Apple TVを通じてのいろいろなコンテンツ視聴も行えた。
1カ月の通信量は552GBだった。何をこんなにやりとりしているのかは謎だが、普通の在宅編集者の1カ月の通信量がこのぐらいだというのは、何かの参考になるかもしれない。これまた記事ネタにしようと購入したVision Pro(これまたまったく投資を回収できていないが)も、通信できなければ使いようがないので、Starlinkがあって本当に助かった。
ただ、ちょくちょく引っ掛かることを含め、StarlinkよりNURO光の方がだいぶ快適だ。
NURO光が繋がって、すべてのデバイスが、安定して高速接続できるようになったら、家はさらに快適になった。
引っ越しの時には、Starlinkがあると安心!?
今や、ネットはある意味、水や電気に匹敵するほど重要なインフラだ。
しかし、いまだに開通させたりするのはさほど簡単ではない。手間がかかる。また、どういう契約にするかで、速度も変わるし、それによって家の快適さも変わってくる。
筆者のように、仕事環境&住居環境である場合、引っ越しが決ったら、いや決まる前から、とにかくネット接続を維持する方法を考えるのが非常に重要だということを学んだ。
いっぽう、引っ越し期間中などの非常時に、Starlinkが非常に有用であることも分かった。光ファイバーが来ない田舎に住む必要が発生した時や、万が一の災害時にも役立つと思った。いつでもオン・オフできて、使ってる間だけ月額6600円というのはありがたい。少々かさばるが、この巨大な箱はこれからも置いておこうと思った。
なお、ガレージができたら買おうと思っていた大型バイクだが、引っ越しとVision Proの購入で、思ったより出費がかさみ、当分の間お預けとなってしまった。頑張って原稿を書いて、出費を埋め合わせねばならない。
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