趣味のインターネット地図ウォッチ
海上保安庁、マインクラフト用「海底地形ワールドデータ」無償公開
深海底まで擬似探検できて実に楽しい
2026年6月3日 06:55
海上保安庁は5月12日、日本周辺の海底地形データをもとに作成した「マインクラフト(Minecraft)」用のワールドデータを公開した。同庁のウェブサイトよりJava版または統合版のワールドデータを無料でダウンロードできる。
利用にあたっては、ワールドデータのほかにマインクラフトのゲームソフト本体が必要。PC版のマインクラフトのほか、PS4/PS5やNintendo Switch用のマインクラフトでも利用できる(※PS4/PS5やNintendo Switchの場合は、データをインポートするためのPCの統合版ソフト環境と有料の「Minecraft Realms」および各ゲーム機専用の有料オンラインサービスへの加入も必要)。
このワールドデータは、海上保安庁や関係機関が調査した日本周辺の海底地形データをもとに作成されたもので、色合いはワールドデータ作成ツールにより着色されている。直方体のブロックによって再現された海底を探索すると、ところどころに山や谷のような地形が確認できて実に楽しい。
このマインクラフト用ワールドデータの担当者である海上保安庁の濱崎翔五氏(海洋情報部企画課活用推進係)に話を伺った。
濱崎氏によると、海上保安庁では航海の安全や海洋権益の確保、防災などさまざまな目的のために日本周辺の海底の地形を調査しており、調査などで得られた海底地形のデータは船の航海安全に欠かせない海の地図である「海図」などに活用されているという。この海底地形データをもとにマインクラフト用ワールドデータを提供開始した理由について、濱崎氏は以下のように語った。
「今般、小中学生をはじめ、より多くの国民の皆様に『日本の海』をもっと身近に体験していただくために、人気を博しているゲーム『マインクラフト』で遊ぶためのデータを作成いたしました。また、海底地形のワールドデータ公開をきっかけに、海上保安庁の仕事に“海を調べる”というものがあること、それは“海洋情報部”という組織が担っていることを知っていただき、1人でも多くの方が海洋情報部で働きたいと思ってもらえればと期待しております。」(濱崎氏)
ソースとなる海底地形データの大半は、音響測深機で取得されたデータだという。海上保安庁では、海洋調査を行う「測量船」と呼ばれる特殊な船を有しており、その船底に装備した「マルチビーム音響測深機(送受波器から海底に向けて音波を扇状に発振し、反射した音波を受振・解析する観測機器)」により広範囲に海底地形を把握できる。
今回作成したワールドデータは日本の沿岸だけでなく、世界最深部である「チャレンジャー海淵」や東京から南方約930kmにある火山島「西之島」なども表現するために、範囲を北緯5~50度、東経121~158度と広めに作成されている。これだけ範囲が広いとデータ容量も膨大になるため、快適に遊んでもらえるように1ブロックは縦横約1km、高さは数百mとすることでデータ容量の軽減を図ったという(Java版が214MB、統合版が226MB)。
濱崎氏はこのデータの活用方法について、「通常では交通手段のない島の周辺や、生身では見ることのできない深海底などもゲーム内で気軽に疑似探検することができます。ぜひダウンロードしていただき、この安全なマリンレジャーをお楽しみください!」とコメントしている。
なお、今回のデータは複製・公衆送信等、商用利用も含めて自由に利用できるが、公開されたデータをそのまま利用する場合は「海上保安庁海洋情報部」など出典を明記する必要がある。また、公開したデータを編集・加工する場合は出典とは別に編集・加工等を行ったことの記載が必要で、編集・加工した情報をあたかも海上保安庁が作成したかのようなかたちで公表・利用することは禁止されている。
濱崎氏によると、海上保安庁の公式Xでデータ公開について5月14日に投稿したところ、5月25日現在で196万回表示、2.2万の“いいね”の反響があったという。投稿へのコメントには「子どもと楽しみたい」「遊びながら日本周辺の地形を学べることはすばらしい」といった好意的なコメントが多く寄せられた。同庁では、今回公開したワールドデータの利用状況を見ながら、今後も同庁の取り組みの周知を図っていく方針だ。
“地図好き”なら読んでおきたい、片岡義明氏の地図・位置情報界隈オススメ記事
- INTERNET Watchの30年は、インターネット地図サービス進化の30年でもあった――本誌記事で振り返る
- 人々はなぜ「ジオ展」に集うのか――地図と地理空間情報の展示会イベントが今年も大いに盛り上がった
- 「東京終電マップ」など、新しい地図表現を追究する「Map Museum 2026」の受賞作品発表
- 3次元人流データで「2次元の分析精度が上がる」。“階層分離”技術として明確に
- 「地籍調査」がなかなか進まない!? 各地の自治体ではどう取り組んでいるのか? ~「G空間EXPO」
- 世界中の交通機関の“動き”、3Dマップ上に可視化。公共交通の運行を愛でるアプリ「GTFS box」で時間が溶けます
- カーナビ用マップでは情報が足りない! (自動運転ではなく)安全運転のために必要な道路地図データ「SD Map+」開発中
- カーナビの歴史を振り返るイベント開催。これからのナビはどう進化する? 最短ルート至上主義からの脱却が課題?
- 「赤色立体地図で見る日本百名山」をアジア航測が公開。3Dマップで地形の凹凸を一目で把握
- 「登記所備付地図」の電子データを法務省が無償公開→有志による「変換ツール」や「地番を調べられる地図サイト」など続々登場
- 違う意味で“伊能忠敬界隈”なんです、私達。
- まるで現代の伊能忠敬――その極みにはAIもまだ辿り着けてない!? 地図データ整備の最前線を盛岡で見た
- 「一億総伊能化」を掲げる 青山学院大学・古橋大地教授の授業がレジリエントだった。
- 大学の「地理学科」ってどんなところ? “駒澤地理”の中の人に聞いてみた
- 高校の「地理総合」必修化で、地理教員の有志らがGoogleスライドで教材を共有
- 「れきちず」が話題、開発者の@chizutodesignさんが“地図とデザイン”の魅力を語る
- スマホ位置情報の精度が向上、“高さ”特定可能に。日本で10月より「垂直測位サービス」
- スマホの「北」は「真北」「磁北」どっち? 8月11日「山の日」を前に考えてみよう
INTERNET Watchでは、2006年10月スタートの長寿連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」に加え、その派生シリーズとなる「地図と位置情報」および「地図とデザイン」という3つの地図専門連載を掲載中。ジオライターの片岡義明氏が、デジタル地図・位置情報関連の最新サービスや製品、測位技術の最新動向や位置情報技術の利活用事例、デジタル地図の図式や表現、グラフィックデザイン/UIデザインなどに関するトピックを逐次お届けしています。









