趣味のインターネット地図ウォッチ
INTERNET Watchの30年は、インターネット地図サービス進化の30年でもあった――本誌記事で振り返る
2026年3月25日 06:55
INTERNET Watchが創刊された1996年から2026年の今まで、インターネット上のサービスのなかで大きく進化したものの1つに地図サービスが挙げられる。特に「Google マップ(Google Maps)」が公開された2005年からは地図をとりまく環境は大きく変わり、INTERNET Watchの記事においても、この時期から地図に関する話題が格段に多くなっている。実際、そうした流れを受け、地図に特化した(地図好きに向けた)本連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」が翌2006年にスタートしている。
今年はINTERNET Watchの創刊30周年&地図連載の20周年というタイミングでもあるので、この機会に、地図に関連した過去の記事を紹介しながら、インターネット地図サービスの進化などを振り返ってみたい。
「Google マップ」登場による地図サービスの大きな変化
まずは2005年2月に、「Google マップ」のベータ版が公開されたときの記事。それまでの地図サービスは表示中のエリアから別のエリアに移動したい場合、上下左右の方向をクリックしながら切り替えて見ていたが、Google マップではAjaxという技術を使うことにより、PC用のインストール型の地図ソフトのようにマウスドラッグによってスクロールしたり、自由にズームを行ったりできることが特徴で、当時としてはかなり画期的だった。
当時の画面を見ると、トップページに複数の検索窓が並び、地点検索やルート検索などを行えるようになっている。ただし、ルート検索については、このころはまだナビゲーション機能が搭載されていなかった。
Google マップが登場して以降、ヤフーの「Yahoo!地図情報」でもマウスドラッグによるスクロール操作を取り入れるなど、他の地図サービスでも同様の操作スタイルが普及していった。
Google マップが提供開始されたこの年の6月、Googleは3D地図ソフト「Google Earth」もリリースした。同ソフトは世界の衛星画像データをインターネット経由で見られるソフトで、リリース当初はダウンロードが一時的に制限されるほど注目された。
ちなみに「趣味のインターネット地図ウォッチ」の連載を開始したのは2006年10月だが、その第1回では、国土地理院の触地図作成ソフトやGPSによる宝探し「ジオキャッシング」とともに、Google Earthのバージョン4ベータ版を紹介している。
スマホ時代となり、カーナビアプリが人気に
Google マップの登場後、ウェブ地図サービスの使い勝手は大きく向上し、Googleでも「ストリートビュー」を提供開始するなど、さまざまな機能強化が行われていった。
Google マップはスマートフォンの時代になっても地図アプリの定番として人気を集めたが、スマホアプリでは単に地図を見られるだけでなく、ナビゲーション機能が加わった。2009年10月、GoogleはAndroidアプリ「Google Maps Navigation」のベータ版をリリースしている。音声認識によって検索することが可能で、渋滞情報の表示も可能なアプリとなっている。
一方、iOSではかつてOSの標準地図アプリとしてGoogle マップが提供されていたが、2012年よりAppleの自社開発マップに切り替わったことを受けて、同年にGoogleからGoogle マップのiOS版アプリがリリースされた。このとき、同アプリにもナビゲーション機能が搭載されていた。
スマホ用のカーナビアプリはGoogle マップ以外にもさまざまなアプリが提供されたが、なかでも無料のカーナビアプリとして注目されたのが、2014年にヤフーが提供を開始した「Yahoo!カーナビ」だ。無料カーナビアプリとして初めてVICS渋滞情報に対応するとともに、Google マップにはない高速道路の入り口や分岐、ETCレーンなどのイラスト表示機能も搭載された。
このほか、ナビゲーション機能を搭載する地図アプリのなかでも、インクリメントP(現ジオテクノロジーズ)の「MapFan」は地図データを端末に丸ごとダウンロードしておけるということで印象深かった。同アプリは2010年3月にiOS版の「MapFan for iPhone」が発売。翌年の2011年3月に東日本大震災が発生したときは、被災地での支援活動に役立ててもらうために期間限定で無償提供され、オフラインでも地図を見られる(ナビゲーション機能はオンライン接続が必要)というメリットが活かされた。
その後、Android版もラインアップ。2016年の熊本地震のときにも同様に期間限定で無償で提供するなど、オフライン利用可能なことが特徴の同アプリならではの施策が大規模災害の発生時に展開された(なお、このMapFanのスマホアプリ版は2020年9月にサービスを終了したが、ウェブ版の「MapFan」は今も提供中だ)。
国土地理院によるウェブ地図サービス「地理院地図」
スマホ用の地図アプリやカーナビアプリが続々とリリースされ、進化していく一方で、国土地理院は2003年に「電子国土Web」としてウェブ地図サービスを提供開始。その後、「電子国土Web.NEXT」という名称を経て、2013年に「地理院地図」として提供開始した。
国土地理院は国の基本図として2010年に、それまで使ってきた2万5千分1地形図に代わる新たな基本図としてベクトル形式の地図データ「電子国土基本図」の試験公開を開始しており、この電子国土基本図のデータをウェブブラウザー上で表示するサービスが地理院地図だ。
国土地理院はさまざまな地図サービスに活用できるタイル状の地図データ「地理院タイル」も提供しており、官公庁や自治体のウェブサイトや登山アプリなどではよく使われている。例えば2016年掲載の本連載記事で紹介した登山に便利なアプリでも、多くのアプリが地理院タイルを使用している。
なお、国土地理院の地図整備についてレポートした記事もあるので参照してほしい。
フリーでオープンな地図データを作るプロジェクト「OpenStreetMap」
地図サービスを提供するうえで重要となるのが、地形や道路、建物、地点情報などを含む地図データだ。日本では国土地理院や民間の地図会社が地図データを整備しているが、オンライン百科事典「ウィキペディア」のように、特定の組織ではなく市民の力によって作られている地図データもある。フリーの地図情報を作成することを目的とした世界的プロジェクト「OpenStreetMap(OSM)」だ。
「趣味のインターネット地図ウォッチ」では、2008年にOSMの日本サイト「OpenStreetMap Japan」が開設されたことを報じている。当時の地図を見るとまだ情報量が少なかったことが見て取れるが、その後、2012年4月に横浜で行われたマッピングパーティー(OSMの愛好家によるコミュニティイベント)の様子をレポートしており、このころは情報がかなり充実し、さまざまな地図サービスに使われるようになった。その翌年は、伊豆大島で行われたハッカソン&マッピングパーティーもレポートしている。
このほか、2012年に東京で開催された国際カンファレンス「State of the Map 2012(SotM2012)」や、2017年に会津若松で開催された「State of the Map 2017(SotM2017)」などもレポートしたので、OSMに興味のある方は参照してほしい。
ゼンリンの「住宅地図」サービスと時空間データベースの進化
建物名称や居住者名を地図に表示した「住宅地図」。この住宅地図に関連したサービスとしては、2007年に法人向けの住宅地図配信サービス「ZNET TOWN Pro」が提供開始されたほか、コンビニのマルチコピー機で出力できる「ゼンリン住宅地図プリントサービス」も提供開始された。
その後、2013年に月額課金で全国の住宅地図が見放題となる「ゼンリン住宅地図スマートフォン」が提供開始。2014年にはタブレットにも対応した。このデジタル版の住宅地図は、ゼンリンデータコムが提供する地図・ナビゲーションアプリ「ゼンリン地図ナビ」でも利用可能なほか、2025年12月にゼンリンデータコムが提供開始した「都市変遷マップ」でも用いられている。
都市変遷マップは全国のランドマーク周辺の過去の地図と現在を比較できるウェブサイトで、ゼンリンがこれまで蓄積した地理空間情報を一元管理して顧客の要望に応じて最適なかたちで提供できる「時空間データベース」の活用事例を紹介するデモサイトとしての側面もある。
なお、「趣味のインターネット地図ウォッチ」では、ゼンリンの地図制作現場を取材したレポートも2015年に掲載しているので参照してほしい。この記事のなかで「ゼンリンでは現在、これら2つ(住宅地図用とカーナビ用)のデータベースの統合に着手しており、時系列の変化も追える新たなシステムの構築に取り組んでいる」という一文があるが、それから10年経って都市変遷マップという時空間データベースのデモサイトが公開されたことは感慨深い。
古い地図を見られるサービスもいろいろ登場
2010年代にスマホ用の地図アプリが次々とリリースされたが、江戸時代や明治時代など古い時代の地図を見られるアプリも登場した。なかでも人気なのが日本地図センターの「東京時層地図」。これは明治から現代までのさまざまな時代の地図を収録したアプリで、2010年にiPhone版が提供開始され、2013年にはiPad対応版も発売された。
昔の地図をそのまま表示するのではなく、新たに描き起こすことで現代の地図ときちんと重ね合わせられるようにした「タイムワープMAP」というプロジェクトや、現代のウェブ地図のデザインで再現した「れきちず」というサイトも登場した。れきちずは江戸時代の日本を現代風デザインで表した地図で、2024年には3D表示に対応し、2025年には全国版も公開された。
現代の地図サービスが今後どのように進化していくかも期待されるが、このような昔の地図に関連したサービスの今後も注目される。
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INTERNET Watchでは、2006年10月スタートの長寿連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」に加え、その派生シリーズとなる「地図と位置情報」および「地図とデザイン」という3つの地図専門連載を掲載中。ジオライターの片岡義明氏が、デジタル地図・位置情報関連の最新サービスや製品、測位技術の最新動向や位置情報技術の利活用事例、デジタル地図の図式や表現、グラフィックデザイン/UIデザインなどに関するトピックを逐次お届けしています。





















