イベントレポート

CEATEC 2024

過去を見られる「都市変遷マップ」、音波によるcm級の屋内測位、人流×生成AIで「アイデアを出せる」システムも

LBMA Japanブースでは位置情報データ活用に関連する22社が展示

LBMA Japanのブース

 10月15日~18日に幕張メッセで開催された「CEATEC 2024」では、位置情報データを活用したビジネスに関連する85社が加盟する一般社団法人LBMA Japan(Location Business&Marketing Association Japan)が出展し、加盟企業22社が各社のソリューションやサービスを展示した。

 入口には位置情報ビジネス業界の現在の状況がわかる「位置情報ビジネス&マーケティング カオスマップ2024」が掲示され、LBMA Japanスタッフが来場者のニーズを聞き最適な企業を案内するコンシェルジュサービスも提供された。

入口には「位置情報ビジネス&マーケティング カオスマップ2024」が掲示

全国各地の地図を過去に遡れる「都市変遷マップ」を提供開始予定

 数多くの展示ブースの中で注目されたのが、株式会社ゼンリンデータコムが11月中に提供開始を予定している「都市変遷マップ」。

 全国133カ所のランドマーク周辺の過去の地図と現在を比較できるウェブサイトで、無料で利用可能となる予定だという。遡れるのは1995年までで、住宅地図と同様にビル名やアパート・マンション名などが詳細に記載された地図を閲覧できる。展示ブースでは現在「東京スカイツリータウン」がある場所の過去の地図が表示されていた。

東京スカイツリータウン周辺の過去の地図
全国133カ所の過去の地図を閲覧可能

 同社は過去の地図データと詳細な建物情報を分析可能な「都市環境分析プラットフォーム」を法人向けに提供しており、約30年分の過去地図と最新の地図を比較して街並みの変遷を分析できる。全国約4000万棟の建物について変化した部分を可視化し、建物1棟ごとに構造や築年数などの詳細情報を確認することが可能だ。また、ヒートマップやアイコンで年代別に建物件数の統計値を視覚化することも可能で、全国の小売店や飲食店数の推移を把握できる。

都市環境分析プラットフォーム

 同プラットフォームを活用することで、建物情報と過去の工事図面をあわせて可視化して上物構造物と埋設物の位置関係を調べたり、過去地図やジャンルごとの建物情報と現在を比較することで業界トレンドを把握し、都市計画の立案や商圏分析に活用したりすることができる。

AIを活用した人流データ分析サービス

 人流データ分析サービスで注目されたのが、株式会社ナイトレイの「CITY INSIGHT Copilot」。同サービスは人流データと生成AIをかけあわせたサービスで、2023年12月にクローズドベータテストを開始し、2024年7月に正式提供を開始した。

 同サービスはSlackアプリ上で動作し、ユーザーはSlack上で対話型UIを通じてサービスを利用できる。

 ChatGPTなどの一般的な対話型AIサービスではアクセスできない有料の人流データにアクセスし、AIを活用することで短時間で膨大な数のアイディアを出すことが可能。観光分析やまちづくり、スマートシティ、MaaSプロジェクト、防災などさまざまな分野において課題発掘や戦略立案、データ収集・集計などの時間を節約し業務を効率化できる。

AIを活用した人流データ分析サービス「CITY INSIGHT Copilot」

 一方、株式会社ゴーガは2023年に提供開始した、Google Maps Platformを活用した位置情報ビッグデータ活用プラットフォーム「GOGA GIS」の活用事例を紹介していた。

 同サービスは、「モバイル空間統計」や「KDDI Location Data」、「全国うごき統計」などさまざまな位置情報ビッグデータを搭載したマップ上に自社保有データを重ね合わせることが可能なサービスで、自社に関連する様々なビジネスデータと位置情報ビッグデータをシームレスに閲覧・比較できる。

 活用事例としては、株式会社石垣が提供するポンプ施設や脱水機、ろ過器の稼働状況や周辺状況をリアルタイムで監視できるクラウドサービスや、大手生命保険会社が営業職員の外回り営業に使う営業支援マップを開発した成果などを紹介していた。

「GOGA GIS」の活用事例を紹介

超音波で高精度な屋内測位ができるZEROKEY、センチメートル級

 屋内測位技術で興味深かったのが、株式会社ネクスティ エレクトロニクスが取り扱う屋内測位システム「ZEROKEY」。

 カナダのZeroKey社のシステムで、独自の超音波技術を活用してGPSと類似したシステムを超音波で構築することにより、屋内においてセンチメートル級の高精度測位を実現する。また、独自のキャリブレーション技術により、機器の設置やシステム調整も短期間で行える。

 同社の展示ブースでは玩具のプラレールの上にZEROKEYのデバイスを取り付けて走らせ、リアルタイムに位置を表示するデモを行っていた。ZEROKEYのデバイスは箱型からボタン型、腕時計型など多彩な形状のものが用意されている。デバイスには超音波のユニットだけでなくIMU(慣性計測装置)も搭載されており、静止時に測位誤差で揺れ動いてしまうこともなく、狭いプラレールのレイアウト上を走る列車の位置が正確に表示されていた。

プラレールの上にデバイスを取り付けて走行
ZEROKEYのデバイス

 株式会社竹中工務店のブースでは、赤外線センサーによる人流計測装置を設置。

 展示ブース上部に据え付けられた複数のセンサーで人の動きを捉えることにより、タグやスマートフォンなどのデバイスを持たない人の動きも捉えられる。同社はこの赤外線センサーをはじめさまざまな計測技術を活用することにより施設内での人流を計測し、シミュレーションを行える「人流ソリューション」を提供しており、オフィスや商業施設、駅などの施設において動線の分析やイベントの効果検証などに役立てることができる。

赤外線センサーによる人流計測装置
展示ブースを訪れた人の動きを可視化

 川崎重工業株式会社は、2024年5月に名称変更した屋内位置情報サービス「mapxus Driven by Kawasaki」を紹介。

 Wi-Fi測位による屋内測位サービスで、すでにWi-Fi環境があればショッピングモールや空港、病院などさまざまな施設においてインタラクティブな屋内ナビゲーションを提供できる。「三井ショッピングパークアプリ」や成田国際空港の公式ウェブサイトなどの採用実績を持つ。展示ブースでは、CEATECの会場となっている幕張メッセの屋内地図をスマートフォン上に表示し、現在地を確認できるデモを実施していた。

展示ブース周辺の屋内マップに現在地を表示

 株式会社サトーは、UWBやBluetoothによる屋内測位を活用したRTLS(リアルタイムロケーションシステム)について紹介。

 同社はもともとバーコードやQRコード、RFID(ICタグ)などを利用した自動認識ソリューションを提供する企業で、自動認識の方法のひとつとして測位技術を捉えており、バーコードやQRコードで解決できない課題を測位技術で補うなど、顧客の課題に応じて両方の技術を組み合わせた提案が可能な点が強みとなっている。

UWBによる屋内測位

 屋内外問わずWi-Fiを活用して人流計測を行える「Wi-Fiパケットセンサー」について紹介していたのは国際航業株式会社。

 Wi-Fiパケットセンサーはスマートフォンなどが発するWi-Fi信号に含まれる端末情報を個人が特定できないように匿名化・暗号化処理を行った上でカウントするもので、駅周辺など特定地域の人流をモニタリングできる。今回の展示では、板橋区高島平に設置したセンサーで計測中の人流データを地図上に可視化し、駅ごとの滞在時間や来訪者数、回遊エリア数、このエリアを訪れる前にいたエリア、このエリアに来たあとに移動したエリアなどの情報をグラフで表示した。

Wi-Fiパケットセンサーで得た人流データの分析結果

位置情報データのプロバイダーやデジタルツイン関連の事業者も出展

 特定エリアの人流計測だけでなく、広範囲の人流データや交通データの提供事業者の出展も見られた。

 リアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」を提供する株式会社unerryのブースでは、CEATECの会場である幕張メッセを訪れる人の流れを地図上に可視化した。幕張メッセに車で訪れた人の回遊状況を分析した結果、近隣の商業施設に回遊しているケースが見られたという。同社はGPSとビーコン技術の組み合わせによる膨大な人流ビッグデータを活用した販促支援サービスやOMOマーケティング、リアル行動データ可視化・分析などのサービスを展開している。

幕張メッセを訪れた人の流れを可視化

 日野自動車グループの一員である日野コンピューターシステム株式会社は、同社が提供する「日野コネクティッドデータサービス」を展示した。

 日野自動車のトラックやバスには車載通信機が標準装備されており、車両の位置情報をはじめ燃料消費量やワイパーの作動状況、自動ブレーキの作動状況などのデータを収集している。この交通データは車両設計の改善に活用するとともに、運送事業者などにも提供しており、道路事業の効果検証や運送事業のDX化、災害時の物流影響分析、水素ステーションの需要予測などさまざまな分野に活用できる。

日野自動車のトラックやバスの交通データを提供

 人流データだけでなく、それらのデータを可視化・分析する上でのベースとなるデジタルツイン関連の展示も見られた。

 株式会社キャドセンターのブースでは、同社が提供している3D都市モデル「REAL 3DMAP」を展示。この3D都市モデルはビジュアル面にこだわり、シンボリックなランドマークや建造物がリアルに描かれており、昼景だけなく夜景も再現できる。

 このほかPLATEAUの3D都市モデルを活用してVRでリアルな水害シーンを体験できる「玉名市非難シミュレーションVR」や、防災ARアプリ「ARハザードスコープ」、VR歴史ツアー「PEACE PARK TOUR VR」など、同社のさまざまなビジュアライゼーションの取り組みを紹介していた。

都市をリアルに再現した「REAL 3DMAP」