地図と位置情報
人々はなぜ「ジオ展」に集うのか――内閣府も初出展、地図と地理空間情報の展示会イベントが今年も大いに盛り上がった
2026年5月13日 06:00

地図・位置情報の関連企業や団体が集結する展示会「ジオ展2026」が4月28日に都内で開催された。その模様をレポートする。
過去最多となる72の企業・団体が出展、1805人が来場
ジオ展は地理空間情報に関連したビジネスを手掛ける企業や大学の研究室、業界団体、学会、NPO、大学・社会人のサークルなど幅広い団体が集うイベントで、今年で11回目の開催。地図データや地図開発プラットフォーム、航空測量、GIS(地理情報システム)、人流データ分析、デジタルツイン、アプリ、紙媒体の地図など、多種多様な分野における最新の製品やサービス、研究成果、趣味の創作物などが展示されるため、地理空間情報の最新の情報やトレンドを把握できる機会となっている。それと同時に、この分野の求人情報も掲示され、人材採用の場としても活用されている。
昨年の「ジオ展2025」では過去最高となる65の企業・団体が出展し、1713人(出展者を含む)が来場したが、今年はそれを上回る72の企業・団体が出展し、来場者は1787人(同)。メディア関係者も合わせると1805人となり、過去最多を達成した。

内閣府の「みちびき」ブースや、Tellusが初出展
ジオ展には毎年参加するおなじみの企業や団体が数多くある一方で、初めて出展する企業・団体も少なくない。
内閣府宇宙開発戦略推進事務局による準天頂衛星「みちびき」のブースも初出展者の1つだ。みちびきは、米国の衛星測位システムであるGPSの補完機能に加えて、高精度測位を実現するSLAS(サブメーター級測位補強サービス)やCLAS(センチメーター級測位補強サービス)も提供している。みちびきのブースでは、これらに対応した受信機や腕時計型端末を紹介していた。
また、同じく初出展となるレフィクシア株式会社は、iPhoneに装着することで高精度測位が可能となる端末「LRTK Phone」を展示。この端末はみちびきにも対応しており、LiDAR(レーザースキャナー)を搭載したiPhoneと組み合わせることで高精度座標付きの点群スキャンを実現できる。
このほか宇宙関連の企業として、株式会社Tellusも初出展した。Tellusは日本発の衛星データプラットフォームを提供しており、国内外の政府衛星・商用衛星のデータにさまざまな地上データを組み合わせて解析したり、アプリケーションを開発したりすることができる。
アドソル日進株式会社の研究開発組織である「AI研究所」と、東京大学の中須賀真一教授が共同で結成した非営利の「チームSpace Data Lab」もジオ展に初出展。同チームは、中立で開かれた立場から宇宙衛星データ活用の最初の一歩を支援することを目的としており、自治体向けのセミナーなども行っている。

生成AIに関連したサービスも多数
宇宙関連のほかに注目されたのが、生成AIに関連したサービスだ。
今年が初出展となるTomTomのブースでは、世界各地の走行データに基づいて都市ごとの渋滞レベルや移動時間、平均速度を指数化した分析データ「TomTom Traffic Index」に加えて、位置情報を活用したAIアプリケーションを実現できる「TomTom MCP Server」を紹介。ルート検索や住所検索、交通情報の通知、マップ画像の生成などを自然言語で操作することが可能となる。TomTomの長尾淳史氏によると、ジオ展に出展した理由は「日本市場にTomTomを知っていただきたかった」とのこと。実際に来場者と話したところ、「皆さん、GISや地図データに対する感度が高くて熱量も多く、TomTomが地図データの会社であることを知っていて、そのうえでどのように使えるか思い浮かぶ方が多い」と手応えを感じていた。
生成AI関連としてはこのほかに、国土交通省が2025年に公開した「地理空間MCP Server(MLIT DATA PLATFORM MCP Server)」のデモを展示していた。地理空間MCP Serverは、不動産の価格情報や防災情報、都市計画情報など不動産に関する情報を閲覧できる「不動産情報ライブラリ」のAPIで提供するデータを活用できるMCPサーバーで、自然言語により地理空間情報を取得・活用することが可能となる。
ジオテクノロジーズグループの株式会社Geoloniaのブースでは、この日に発表したばかりの新プロダクト「GeonicDB」を紹介。GeonicDBは自治体・行政向けの次世代データ連携基盤(都市OS)で、スマートシティの国際標準であるオープンソースのプラットフォーム「FIWARE」との完全互換性を保ちつつ、低コスト運用や生成AIとのネイティブ連携を実現している。これにより追加開発ゼロでの生成AI活用が可能となり、防災やインフラ監視、観光、環境モニタリングなどさまざまな用途に活用できる。
デジタルツインや防災関連の企業・団体も
デジタルツイン関連では、三栄ハイテックス株式会社がProject PLATEAUの3D都市モデルと人流データを組み合わせた「群衆デジタルツインシミュレーション」の技術を紹介。1000人超の人流を3D上で可視化することにより、群衆内で動くロボットの動作検証を行える。同社がジオ展に出展するのは初めてのことで、スタッフは「これまで参加した展示会の中では最も盛況」と来場者の多さに驚いていた。
自動車の位置情報ビッグデータを統計処理した「Traffic Vision プローブデータ&サービス」を提供する住友電工システムソリューション株式会社も今回がジオ展に初出展となる。これまでは物流系の展示会に参加することが多かったという同社が今回ジオ展に出展した理由は、「新しい業種のお客様との出会いが欲しかった」とのこと。
防災関連では、国立研究開発法人防災科学技術研究所も初出展。災害情報を重ね合わせて情報を共有できる「防災クロスビュー(bosaiXview)」や、防災に関する研究開発を行っている社会防災研究領域総合防災情報センターの取り組みなどを紹介した。同センターの副センター長を務める花島誠人氏は、ジオ展に出展した理由として「われわれの取り組みを知っていただきたいというのもありますが、ジオに強い人材に来ていただきたいという思いもありました」と、人材獲得にも期待を寄せていた。「(防災科研は)いろいろな領域の方に来ていただいて、情報を使って災害対応を支援することで救えなかった命を一人でも少なくしようと取り組んでいるので、そのような志を持つ方にはぜひ来ていただきたいと思います」と語った。
自治体や官公庁、企業などさまざまな分野にGISを提供する株式会社インフォマティクスは初出展ではないが、2018年以来となる出展。同社のブースでは、地図の作成・編集から高度な空間解析や業務アプリケーション開発までを1つのシステムで完結できるオールインワン型GIS「SIS」を紹介。販売開始から30年で累計3万7000以上の導入事例があるという。
イベントを振り返って――「ジオ展実行委員会」幹事会社4社によるコメント
ジオ展2026は、アドソル日進株式会社、東京カートグラフィック株式会社、マップボックス・ジャパン合同会社、株式会社MIERUNEの4社からなるジオ展実行委員会が主催している。昨年に引き続き大盛況となった同イベントについて、幹事会社4社は以下のようにコメントしている。
アドソル日進株式会社
本年も展示会を無事に盛況のうちに終えることができ、主催企業の1社として大変うれしく思っております。
ご出展いただいた企業の皆様、ならびにご来場いただいた多くのお客様に、心より御礼申し上げます。会期中は、出展社様とご来場の皆様との間で、活発な交流や情報収集、ご相談の機会が数多く生まれたのではないかと感じております。本展示会は、GISを日常的にご利用されている方はもちろん、GISにご興味をお持ちの方であればどなたでも参加できる場として、真のコミュニティ形成を目指してまいりました。今後も、皆様とともに発展し続ける場でありたいと考えております。
当社におきましても、ジオ展への出展および実行委員会への参加を通じて、お客様からのご相談が増えただけでなく、「GISに携わりたい」という動機で入社を希望される方が増加するなど、大きな成果を実感しております。今後とも、参加者・出展社・実行委員会というそれぞれの立場を越えて、関係者全員で力を合わせ、ジオ展をさらに魅力的な展示会へと育てていければ幸いです。
(GIS・イノベーション事業部 ソリューション部 プリンシパル 山口虎之介氏)

東京カートグラフィック株式会社
今回のジオ展は、これまでの一般参加とは異なり、初めて幹事企業として関わらせていただいた点で、自分たちにとって非常に大きな意味のある機会となりました。単に出展するだけでなく、イベント全体の運営や成り立ちにも意識を向けるようになり、これまでとは違った視点でジオ展を捉えることができたと感じています。
出展内容としては、施設等の維持管理・調査を行うためのクラウドシステムを紹介しました。実際に多くの来場者の方にブースへ足を運んでいただき、具体的な運用イメージや導入に関するご質問をいただく場面も多くありました。単なる興味にとどまらず、「現場でどう使えるか」という視点で対話ができたことは大きな収穫であり、ニーズの手応えを直接感じることができました。
また、他の出展者との交流も非常に有意義でした。ジオ展は企業規模や業種の垣根を越えて多様なプレイヤーが集まる場であり、それぞれの取り組みや技術に触れることで、自社の立ち位置や今後の方向性について改めて考えるきっかけにもなりました。年々その規模や影響力が高まっており、業界全体にとって欠かせないイベントへと成長していることを実感しています。そうした中で、自分たちが幹事企業としてその一端を担えたことは非常に光栄であると同時に、責任の大きさも感じました。この経験を通じて得た気づきやつながりを、今後の事業や取り組みにしっかりと活かしていきたいと考えています。
今後も継続してジオ展に関わりながら、イベント自体の発展に貢献していくとともに、より多くの方に価値を届けられるような発信や提案を続けていきたいと思います。
(取締役 事業推進本部 本部長 菊地勇氏)

マップボックス・ジャパン合同会社
今年のジオ展では、ご来場者様の層にうれしい変化を感じました。昨年までは地図・測量業界の関係者様が中心でしたが、今年は具体的なビジネス課題や明確な目的を持った「事業会社」の方々のご来場が非常に増えたという印象を抱いております。地図・位置情報業界全体の社会的な認知度が着実に向上し、実際のビジネス現場での活用が本格化していることを直接肌で感じられたことが、今回参加して最も良かった点です。
位置情報技術は、皆様のビジネス課題を解決するための強力なツールになり得ます。現在、業務で地図を利用されているかどうかにかかわらず、ぜひお気軽に抱えている課題を出展企業へ投げかけてみてください。また、私たちもジオ展を今後さらに有意義な場へと進化させていきたいと考えております。ご期待に沿えなかった点や改善へのご要望などがございましたら、ぜひ忌憚のないご意見をお寄せいただけますと幸いです。
(ストラテジックアカウントマネージャー 寺田和弘氏)

株式会社MIERUNE
昨年から引き続き、会場の熱量は終日途切れることがありませんでした。位置情報をテーマにしたイベントとして、これほど多様な方々が集まる場は貴重で、ジオ業界の広がりと盛り上がりを改めて実感しました。来場者層は「久しぶりに再会する顔ぶれ」と「初めて位置情報に触れる方」のバランスが良く、同窓会のような温かさと新しい風が同居する空気感は、ジオ展ならではだと感じました。
弊社では、2026年2月に発表したQGIS向けクラウドサービス「Kumoy」を中心に出展しました。ブースでは、すでにKumoyをお使いいただいているユーザーの方が、ご自身で作成したマップ画面を見せながら楽しそうに語ってくださる場面もあり、何よりうれしい瞬間でした。同じ領域で活動する企業同士でも、ジオ展の場ではフラットに語り合えるという独特の文化は、他の展示会では見られない業界全体の財産です。私たちが大切にしているオープンな雰囲気も、ブースでの会話を通じて伝えられたのではないかと思います。
懇親会では学生の方からインターンの相談をいただくなど、次世代やキャリアを考える方々との接点も生まれました。こうした出会いが、業界全体の人の流れにつながっていけばと感じています。幹事企業の1社として、このイベントを続ける意味を改めて確信しました。今後もジオ展に関わることで、業界の発展と交流の促進に寄与し続けたいと考えています。私自身、20年以上この業界に身を置いてきましたが、ジオ展が毎年拡大していく様子を目にするたび、新しい発見があります。次回以降に向けては、これまで接点のなかった分野・業種にもさらに広げていくことで、思いがけない交流が生まれるのではと考えています。
(代表取締役CEO 桐本靖規氏)

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INTERNET Watchでは、2006年10月スタートの長寿連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」に加え、その派生シリーズとなる「地図と位置情報」および「地図とデザイン」という3つの地図専門連載を掲載中。ジオライターの片岡義明氏が、デジタル地図・位置情報関連の最新サービスや製品、測位技術の最新動向や位置情報技術の利活用事例、デジタル地図の図式や表現、グラフィックデザイン/UIデザインなどに関するトピックを逐次お届けしています。
















