INTERNET Watch 30周年記念インタビュー
未来に向けてさらに重要性を増す通信インフラ、関西でユーザーと向き合い、社会の“あたらしい”を起動し続ける~オプテージ
2026年8月7日 07:00
株式会社オプテージは関西電力グループの通信会社であり、1988年4月設立の関西通信設備サービス株式会社がルーツとなる。2001年6月に株式会社ケイ・オプティコムとして、関西エリアで光回線サービス「eo光」(イオひかり)の提供を開始。2014年には全国向けにMVNO(格安SIM)サービス「mineo」(マイネオ)を開始した。現社名となったのは2019年4月。
今回は、同社で「eo光」を担当する髙富崇宏氏(コンシューマ事業推進本部 副本部長)、赤田佳介氏(コンシューマ事業戦略部長)のお二人に、同サービスのこれまでとこれからについて伺った(聞き手:本誌編集長 山田貞幸 構成:編集部 写真:清水良太郎)。
INTERNET Watchは、2026年2月に30周年を迎えた。激しい変化が続き「今」を追いかけるだけで精一杯となりがちなインターネット業界周辺だが、本企画では主要プレイヤー各社に「これまでの最大の転機」と「今後30年先までの見通しや想像するイメージ、あるいは夢」を伺いながら、読者の皆様とインターネットの未来像を共有することを目指す。
最大の転機は「ネット+電話+テレビ」セット提供モデルの確立
——「eo光」は今年で25周年となりますが、これまでの「最大の転機」といえば何になるか、お聞かせください。
髙富氏:立ち上げの頃には、一部の先進ユーザー向けと見られていたFTTH(Fiber To The Home:光ファイバーによるインターネット接続サービス)を、誰もが使う生活インフラにできた、という感慨があります。が、ここまでの歩みは順風満帆と言えるものではありませんでした。
2005年には大規模設備障害が発生し、お客さまに多大なご迷惑をおかけした経験もあります。そのたびに「事故を起こさない」「起きても最小限にとどめ、早期復旧する」を通信事業者の使命として向き合い、設備やサービスの改善を続けてきました。
2005年12月3日に設備障害が発生し、光回線と「eo光電話」がつながりにくい状況となった。当時の本誌記事によれば「電話サービスが最大146,000ユーザー、インターネット接続サービスが最大23,000ユーザー」に影響した。12月8日に「障害発生原因と対策の実施について」というレポートが公開されている。
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赤田氏:2001年6月の「eo光ネット」に続いて、2003年11月に「eo光テレビ」、2004年9月に「eo光電話」を立ち上げ、eo光はインターネット接続だけでない、「ネット+電話+テレビ」の3点を光回線で提供するモデルになりました。
当時はこれを「トリプルプレー」と呼んでいました。光ファイバーをインターネットのための設備としてだけでなく、生活インフラとして提供したいと、私たちは考えていたのです。
——2000年代前半は、テレビはまだアナログ地上波が主流で、携帯電話は普及していてもスマートフォンはまだでしたし、固定電話(加入電話)のない家は考えられませんでしたね。インターネットの認知が今ほどではない中で、電話やテレビは訴求として分かりやすかった、というところもあったでしょうか。
髙富氏:そうですね。加えて、2004年8月に月額料金を6300円から4900円へ、大幅に引き下げました。
「eo光電話」の開始はこの翌月で9月1日からの提供でしたが、光回線を利用した電話サービスとしては国内で初めて、従来の固定電話と同じ番号が使えるサービスだったため、電話番号を変えずにNTTから移行できました。また、「eo光テレビ」は地上波テレビよりも安定し、高画質で楽しむことができました。
NTTの電話とADSLによるインターネット接続サービスを合わせた額より安く、さらにテレビも高い品質で視聴できるということで、私たちの想定を大きく上回る、大きな反響をいただきました。
これが関西のブロードバンド市場に大きなインパクトを与え、光回線の事業者間の競争が活発化して、光ブロードバンドの普及において関西が全国をリードするようになりました。
「ネット+電話+テレビ」のトリプルプレーに、戦略的な料金設定も高く評価いただいて、この提供モデルを確立できたことが、最大の転機と言えると思います。
私たちは、当時の活発な市場を形成する一翼を担えたことを誇りに思っています。そして、その後もサービス品質を磨き、設備や運用品質を磨き続けてきました。また、お客さまひとりひとりと丁寧に向き合い、サービスの改善とサポートを追求してきた結果、その積み重ねが、お客さま満足度19年連続No.1という評価につながっていると考えています。
BroadBand Watchでは、この値下げが実施される直前である2004年5月に、「関西圏のFTTHサービスプライスリーダー、ケイ・オプティコム社長に聞く」として、当時の田邉忠夫社長に料金戦略を中心にインタビューした記事を公開していた。
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「RBB TODAYブロードバンドアワード」において、2007~2025年の19年間、キャリア部門 エリア別総合(近畿)の最優秀賞を受賞している。そのほかの満足度調査においても同様に、高い評価を得ている。
顧客満足度調査受賞履歴(オプテージ)
バックボーンから家のWi-Fiルーターまで、一気通貫で提供できることを強みに
——続いての質問に移ります。この先1~3年ぐらいの間にお考えの新サービスや新しい取り組みについて、お聞かせください。
髙富氏:新しいことではありませんが、最重要事項と考えているのが「これまで培ってきた通信品質や信頼に、さらに磨きをかけること」です。「eo光」の開始当初と比べて、動画やSNSなどインターネットのサービスが増えたことで使われ方は多様化し、コンテンツも、接続する機器も増えています。ご家庭の中でインターネットを利用される方も、小さなお子様からお年寄りまでと増えていると思います。
そのため、通信回線に対しては、さらに大容量・高品質が求められるようになっています。「eo光」では数年前より10Gbpsのサービスを主として展開しており、他社に先駆けて10Gbps対応エリアを広げてきました。おかげさまで、新規のお申込みの9割以上が10Gbpsのサービスをお申込みいただくようになっており、お客さま全体でいえば2割以上の方に10Gbps回線をお使いいただいています。
また、若年ファミリー層向けにオンライン限定の「eo光シンプルプラン」の提供を開始するなど、より料金を押さえて10Gbps回線をお使いいただけるサービスの開発にも取り組んでいます。これらによって、関西エリアは全国的にも10Gbps回線の普及が進んでいると自負しています。
赤田氏:これからのインターネットを考えるうえで、AIによる変化は避けて通れませんが、AIの利用拡大により、通信量は今後も増え続けると見込まれます。
「eo光」の強みに、お客さまの宅内からバックボーンまで、すべての環境を自社で保有し、提供していることがあります。バックボーンの強化も当然ながら、多くの機器を接続し、利用されている現在では、Wi-Fiルーターも自社の製品を提供していて、それが扱いやすく、安全で、もちろん高性能でもあることが、通信の体験品質を高めるうえで重要な鍵になると思います。
オンライン申し込み専用で、選択できるコース(回線の速度)は10Gbpsのみ、携帯電話とのセット割はmineo、サポートはオンラインのみ(ウェブ・チャット)など、サービス内容をシンプル化し、より低料金で提供するプラン
eo光シンプルプラン
——AIサービスが普及すると、通信の内容が変化すると思います。従来であれば、通信は主にサービス提供者(のサーバー)とユーザーの間で行われますが、AIエージェントに「Amazonのサーバーに保存したデータを、世界の最新ニュースを参考に分析してGoogleのサーバーにレポートとしてまとめて」といった指示をする場合、ユーザーとAIエージェントとの間の通信量はさほど大きくなくても、多くのサーバー間で通信が行われることになります。
そのような通信の変化は、現在でも実感されているものでしょうか?
髙富氏:現時点の、個人のお客さまがスマートフォンなどで生成AIを利用されている状況では、ご家庭の通信トラフィックへの影響は限定的です。一方で、AIの普及に伴い、クラウドサービス間やデータセンター間でやり取りされるデータや通信は今後さらに増加すると考えています。
そのため、私たちは事業者同士をつなぐ接続基盤の強化にも力を入れて取り組んでいます。
このような取り組みの一環として、同社では2026年1月に「コネクティビティデータセンター」の曽根崎データセンター(OC1:Osaka Connectivity1)の稼働を開始した。
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通信インフラは暮らしと社会の「変化を支える基盤」に
——さらに先、5~10年後に予想される環境の変化と、それについて考えていらっしゃる対応について、お聞かせください。
髙富氏:10年後というスケールで言いますと、当社では今年5月に「長期ビジョン2035」を発表していて、そこで、2035年のありたい姿を「社会の“あたらしい”を起動しつづけるグローバルネットワークソリューションカンパニーへ」と定めました。
これまでにないスピードで世界が変わり続ける中、通信インフラは、暮らしと社会の「変革を支える基盤」へと進化しています。通信インフラを支える事業者として、社会の変化に応じて日々アップデートしながら、お客さまと共に未来へ踏み出し、後押しし、牽引する存在でありたい。という想いを込めました。また、「人と社会をつなぐデジタルインフラで未来の暮らしを支え、一人ひとりに寄り添うサービスを提供する。」ことを、暮らしにおける提供価値としています。
AIやデジタルサービスが高度化・複雑化しても、お客さまにとって重要なのは複雑な技術そのものではなく、高度なサービスを「安心して使えること」です。私たちは、お客さまが技術を意識することなく、安心してサービスをご利用いただける環境を提供し続けることが、AI時代における通信事業者の役割だと考えています。
赤田氏:5~10年先に考えられるもっとも大きな変化は、AIやIoT機器が、暮らしや社会のあらゆる場面に浸透していくことだと思います。その一方で、通信インフラそのものの存在は、利用者からは意識されなくなっていくでしょう。
だからこそ、通信事業者の役割は、これまで以上に重要になります。高速さや安定性、そしてセキュリティによる信頼性により、「安心して任せられる」存在であり続けることを目指しています。
2026年5月に公開された、オプテージの2035年に向けたビジョン。「社会の“あたらしい”を起動しつづけるグローバルネットワークソリューションカンパニーへ」を、2035年のありたい姿として示している。
会話やエンタメの手段は変わっても、サービス基盤は光ファイバー
——続きまして、30年後の2056年ごろに、インターネットや世界がどのように変わり、ユーザーとどのような関係を築いていたいとお考えか、お聞かせください。
赤田氏:30年後の世界を正確に予測することは難しいですが、通信技術がどれだけ進化しても、私たちが果たすべき役割は変わらないと思います。そして、これから30年の間にさまざまな新しい通信手段が登場しても、ネットワークの基盤は光ファイバーで、その重要性は変わらないでしょう。
ただ、AIが進化し、人とAIだけでなくAI同士も自然につながり、通信するような世界になれば、お客さまに安心してサービスご利用いただける環境を提供し続けることに加え、AIにとっても信頼できる通信インフラである、という役目が加わるかもしれません。
髙富氏:私たちは、関西電力グループとして、自社で通信回線を敷設し、通信設備を提供してきました。関西においては、NTTと並ぶ存在であり、社会を支える通信ネットワークを安定的に提供し、守り続ける使命があります。
その時に、私たちオプテージが目指すのは、それらの変化に柔軟に適応し、新たな価値をお客さまに提供し続けると共に、お客さまから「安心して任せられる」と感じていただける存在であり続けることです。
——はじめに伺った「ネット+電話+テレビ」のセットで言うと、ネット回線は今後も欠かせないインフラであり続けるとして、電話とテレビの位置づけは、2026年の現在でかなり変わりました。この先30年を考えるとき、電話やテレビが他の何かに変わる、というイメージはありますでしょうか?
赤田氏:会話の手段とか、ニュースやエンタメコンテンツを楽しむ手段とかいったものがどう変化するか、ということになると思いますが、具体的にこう、というものは難しいですね。ただ、こんなふうにも考えられます。
もしも30年前に、今のような生成AIが存在していたとしても、当時のデジタルインフラ上で使うことは難しかったでしょう。今なら通信回線やサーバーが進化し、みんなが活用して、輝く存在となっています。どのようなサービスも、支えているのは通信インフラで、私たちとしては通信インフラをしっかりと作っていくことがやはり大事な使命で、足元がしっかりしていれば、未知の会話ツールや未知のエンタメツールが新しく登場したときにも、すぐに対応し、お客さまに提供できるでしょう。
髙富氏:例えば将来は、フィジカルAIのロボットが家庭のセキュリティを守るだけでなく、電話やテレビの役割も担っているかもしれません。ただ、電話やテレビという形は変わったとしても、人と人がつながることや、エンターテインメントを楽しむことの本質は変わらないのではないでしょうか。
そして、それらはすべてインターネットにつながることで実現されるものであり、その基盤となる通信インフラの重要性は、これからも変わらないと考えています。
——そうですね。極端に言えば全てがAIロボットのポケットから出てくるようなものになるとしても、会話やエンタメがなくなるとは考えられないですね。
関西は「本物」が育つ環境
——最後にもう1つ伺えればと思います。関西でサービスを提供する、関西のユーザーと向き合うということに、ほかの地域にはない特別さを感じることはありますか?
先ほど「お客さまから『安心して任せられる』と感じていただく」と伺いましたが、こうした言葉は、よそではあまり聞いた記憶がありません。今、まさに通信サービスは「当たり前」の存在となり、ユーザーはトラブルが起きたときでもないと通信サービスの存在を意識しないし、事業者も、意識されなくて当然だと思って、淡々と「当たり前」を維持している、といった印象です。
実際には皆さん「安心して任せる」「安心して任せていただく」と思いつつ、言葉にはされないだけかもしれませんが、だとしても、こうした場で言葉にされることは、常に意識されていることの現れでしょうし、関西というエリアに限定したサービスを提供しているオプテージならでは、と言える面もあるように思われます。
髙富氏:関西の位置づけのような話でいえば、関西には、首都圏のバックアップのような役割があるとは考えられますね。法人向けでは特に。
地域のサービスとして25年続けていて思うのは、関西のお客さまは「いいものはいい」「安かったらさらにいい!」と、非常にご意見がハッキリしている、ということです。一方で「アカンものはアカン」ということで、障害が発生したときなどの反響も大きく、お叱りをいただきます。
10Gbpsのサービスも、はじめは「そんなに速いのが要るの?」といったお声が多くありましたが、価値を理解していただいてからは、すぐに取り入れていただけました。
そのような環境で、しっかりと評価していただけるサービスを作り、サポートも強化してやってきました。関西のお客さまは、ひとたび信頼関係を築くことができたら、長くお付き合いいただける、ということも特徴かなと思います。
赤田氏:髙富が言った、いいものはいい、悪いものは悪い、とハッキリご評価いただけるということは、評価に耐えられる「本物」が育つ環境だ、とも言えるのではないかと思います。私たちとしては、「本物」を求めるお客さまに向き合い続けていきたいですね。
また、本物が育つ環境は関西だ、東京じゃなくて大阪だ、と感じていただけるような素地も、この地域にはあるのではないかと思っています。本物が育つ環境を求めて関西に住みたい、と思っていただける環境を、「eo光」で作っていきます。
——ありがとうございました。
