趣味のインターネット地図ウォッチ

第82回:発売予定の「MapFan for iPhone」を使ってみました


MapFan for iPhone

 インクリメントPの地図ソフト「MapFan」のiPhone用アプリ「MapFan for iPhone」が近く発売される。iPhoneのローカルに地図データをまるごとインストールして使えるアプリケーションで、オフラインでも地図を閲覧できるのが特徴だ。今回は、ひと足早くその使い心地をレポートしよう。

 「MapFan for iPhone」の特徴は、Google Mapsのように使用するたびに地図データをインターネット経由でダウンロードするのではなく、iPhoneのローカルに地図データをまるごとインストールできる点だ。これによりオフライン環境でもGPSを使った現在地表示が可能となる。いちいち地図データをダウンロードする必要がないため、スクロールや縮尺変更も軽快に行えるのが売りだ。

 もちろんローカルに地図データを置くため、空きメモリー容量は約2GBと大量に必要だが、通信環境に左右されないため、例えば携帯電話が圏外になってしまうような林道や登山でも使用できる。以前からノートPCのハードディスクに地図ソフトをインストールして使っていたユーザーなどは、スタンドアローン環境で使えるこのスタイルのほうがむしろなじみ深いだろう。iPhoneで3G回線のデータ通信の使用を最小限に抑えて、できるだけWi-Fiで済ませたいという人にも最適と言える。また、地図の閲覧だけならiPod touch上でも使えるという利点もある。

 ただしすべての機能がスタンドアローンで使えるわけではなく、ルート検索やスポット紹介のコンテンツなどを利用するにはインターネットに接続しなければならない。ちなみにルート検索機能を使うと、カーナビや自転車用ナビ、歩行者用ナビとして使える。

 価格は税込2300円で、オンライン接続が必要なサービスについては購入時から1年までと限定されているが、地図を閲覧するだけなら継続料は不要でその後も利用できる。対応機種は、iPhone 3G/3GSおよびiPod touch(iPhone OS 3.0以降)。

iPhone向け地図の定番「Google Maps」と地図画面を比較

 iPhone用の地図アプリとしては、Google Mapsが定番だ。そこで、まずはGoogle Mapsの地図画面をいくつか紹介。あわせて、同じ場所のMapFan for iPhoneでの地図画面を見ていこう。


新宿・都庁舎(Google Maps)新宿・都庁舎(MapFan)

渋谷109(Google Maps)渋谷109(MapFan)

 並べて比べてみると、どちらか片方にしか載っていない情報がけっこう多い。例えばGoogle Mapsの方は建物の3D画像やファーストフード、コンビニなどの情報が豊富だが、MapFanにはこのような情報は載っていない。

 その代わり、MapFanのほうは新宿の「ふれあい通り」や「水の橋」、渋谷の「文化村通り」や「センター街」など、通りや橋の名が充実している。Google Mapsにもこのような情報が全くないわけではないが、MapFanに比べると少ない。このあたりは、MapFanの方がカーナビとして使うことを意識していると思われる。

 地下鉄の出口は両方とも載っているが、MapFanの方が表記は目立つように記載されている。Google Mapsの方は地下街の形状が描かれているが、MapFanには載っていない。

 次に、最も縮尺を大きくしたときの大きさを比べてみた。縮尺についてはMapFanの方がひと回り大きく拡大できるようだ。


銀座四丁目交差点(Google Maps)銀座四丁目交差点(MapFan)

 東北自動車道の宇都宮ICを見ると、MapFanの方が高速道路のICが目立つように表記されており、すばやく情報が把握できるように工夫されている。また、引き線で「徳次郎」という交差点名が入っているのも、ドライブ中に確認するときには便利だろう。筑波山については、Google Mapsには等高線が表記されているのに対して、MapFanには等高線はないが標高が入っている。


宇都宮IC(Google Maps)宇都宮IC(MapFan)

筑波山(Google Maps)筑波山(MapFan)

ピンチイン/アウトでの縮尺変更はもちろん、地図のグルグル回転が可能

 操作性についてはMapFanもGoogle Masp同様、ピンチイン/アウトでの縮尺変更が可能だ。これに加えて、MapFanならではの機能として地図の回転機能も搭載されている。これは2本の指の間を広げて画面に触れて回転させると、矢印が現れて地図が回転するというものだ。矢印が表示されれば、あとは指1本だけでグルグルと回転させることが可能で、これまでにない操作性を味わえる。地図が回転しても文字の向きは変わらないので、視認性も良好だ。

 次はMapFanのスポット検索を見てみよう。スポット検索は、周辺検索、キーワード検索、住所検索、駅名検索に加えて、テレビで紹介された人気の店の情報を調べられる「TVスポット検索」が用意されている。ランキングページや特集ページからおすすめのスポットを探せるほか、画面左上の「TV」ボタンをタッチすると、収録されている店のアイコンが地図上に表示される。飲食店だけでなく、ゲームショップや電器店なども含まれており、中には“メイド美容室”の情報などユニークな情報もある。


地図の回転スポット検索の選択画面

「おすすめTVスポット」のランキングページ左上の「TV」ボタンをタッチすると地図上にアイコンが表示される

アイコンをタッチすると詳細情報を表示周辺検索のジャンルは7種類を用意

ナビ機能では音声案内も、渋滞情報に非対応なのが残念

 最後にナビゲーション機能を使ってみた。

 ルート検索は出発地と目的地、立寄地などを指定するだけで簡単に検索できる。検索結果は有料道を利用する場合と利用しない場合の2パターンに加えて、自転車および徒歩向けのルートも表示される。

 ナビゲーション画面では、地図の右側に交差点や分岐点のリストが並び、タッチすると該当する地図画面を表示する。また、画面上には常に矢印形の吹き出しで目的地までの距離が表示される。

 交差点の案内は2Dだけのシンプルな表示だが、レーン案内も表示されるのでわかりやすい。音声ガイドも聞き取りやすく、簡易カーナビとして十分使えると思う。ただし渋滞情報に非対応なのは残念だ。インクリメントPが発売しているモバイルPC向けのナビソフト「MapFan Navii」は、有料ではあるがインターネットで渋滞情報を取得することが可能なので、iPhone版にも同様の機能を盛り込んでほしいと思う。


ルート検索結果交差点の案内表示

高速道路の案内表示「MapFan for iPhone」の起動画面

 全体的に見れば、この内容で2300円というのは個人的にはかなりお得だと思うし、iPhoneユーザーはわずかな金額でiPhoneをPND(小型カーナビ)として使えることになる。もちろんカーナビ専用機に比べれば劣る面はあるが、街歩きにも使えるし、メモリー残量に余裕のあるiPhoneユーザーなら試しに買ってみる価値は十分にあると思う。

 長年PCに地図ソフトをインストールして使ってきたユーザーにとっては、ローカルに地図データがあるというのは絶対的な安心を感じるので、このようなiPhone用地図アプリが登場したのはとてもうれしい。あとは地図データの更新サービスや、渋滞情報への対応など、今後の進化を期待したい。

他プラットフォーム用MapFan製品とのスペック比較

 ナビゲーション機能を搭載したMapFanシリーズとしては現在、「MapFan for iPhone」のほか、携帯電話(iモード、Yahoo!ケータイ)用の「MapFan ナビークル」、ネットブック/ノートPC用の「MapFan Navii」がある。地図ソフト好きとしては気になる、各製品のスペックの違いをまとめた。

MapFan製品名for iPhoneナビークルNavii
地図表示
現在地表示[*1]
屋内現在地表示[*2][*2]×
地図の移動スムースフリースクロールフリースクロールフリースクロール
地図の拡大・縮小無段階スムース15段階の縮尺13段階の縮尺
ピンチイン/アウト操作××
地図の回転[*3]
ヨコ画面対応×[*4]
地図の配色(設定)×
検索
スポット名検索[*5]
住所検索[*5][*5]
住所件数約47万件約47万件約3600万件
駅検索[*5][*5]
駅件数約1.2万件約1.2万件約2.8万件
電話番号(法人)検索××
フリーワード検索約750万件約750万件約671万件
周辺情報検索
駐車場満空×
登録・履歴
地点の登録・履歴表示
ルートの登録・履歴表示××
ナビゲーション
ルート探索(クルマ)
ルート探索(簡易徒歩/自転車)[*6]×
別条件で探索
立寄地指定
ルート案内
ルートスキップ
ヘディングアップ
ノースアップ
目的地までの情報(距離/到着予測時刻)
矢印ナビ×[*6]×
ハイウェイモード[*7]×
オートリルート[*8]
渋滞情報[*9]×
ウォークモード[*10]×
デモ走行[*11]×
走行軌跡表示[*12]×
自宅へ帰る[*13]×
出発地変更
ETC割引料金計算表示×
その他
特集(テレビでみ~た)の検索・表示
ここです!メール(地図付きメール)×
天気予報×

[*1]GPS測位情報を利用して現在地の地図を表示
[*2]基地局測位
[*3]任意回転も可能
[*4]約16:10
[*5]オフラインにも対応
[*6]徒歩アプリで実装
[*7]高速道路のサービスエリア/パーキングエリアの施設情報や分岐情報を見やすく表示
[*8]ルートから外れた道を走行した時に自動でリルート(再探索)を行う
[*9]全国の渋滞情報を取得。表示あり/なしの選択や、一般道のみ/有料道のみ表示の選択が可能
[*10]クルマを降りてから最終目的地までの歩行ルートを案内
[*11]検索したルートを音声案内付きでシミュレート可能
[*12]GPS測位中は一定距離間隔で走行軌跡を表示。表示/非表示は設定メニューから選択可能
[*13]自宅を登録すれば、一発で自宅までのルート探索が可能


関連情報



2010/3/25 06:00


碓氷 貫
フリーライター/編集者。Eコマースや地図サービス、データベース、コンテンツなど、Webサイトの価値を高めるさまざまなサービスをテーマに活動している。地図やハンディGPSを片手に街や山を徘徊する一方で、通販サイトでお買い得品をチェックすることにも余念がない。