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住民税が高い/安い自治体はどこ? 差額はいくら?【2025年版 最新ランキング】
全47都道府県+4市を比較してみた
2025年6月27日 11:55
勘違いしている人がいる住民税の地域差。正しい情報を伝えるため2022年から掲載している住民税ランキングの記事。今年も徹底的に調べて正確な情報をお届けしたい。
住民税は住む自治体によって差がある。ただし、差があると言っても多くの自治体でわずかな差しかなく、引っ越してメリットがあるほどの差ではない。ところが都市伝説的に「愛知県豊田市はトヨタがあるから住民税が安い」「○○競輪があるから住民税が安い」「自分の住む〇〇市は住民税が高い(らしい)」などと思っている人は少なくない。若い人は住民税の話をすることはまれなので、40代、50代、60代……と年輩の人ほど(飲んだ席で知人から聞いて?)住民税の都市伝説を信じている人が多い。今回も「2025年版 最新ランキング」として、住む自治体によって住民税がどれくらい高いのか、安いのか、加えて住民サービスが充実している(かもしれない)自治体はどこなのかを「2025年版 最新ランキング」としてお知らせしよう。
住民税が高い/安いランキング1位の自治体は?「課税所得200万円の人」で比べてみた
住民税の課税所得(課税標準額)が200万円の人の年間の住民税額をランキングで見てみよう。47都道府県に、住民税の高い「兵庫県豊岡市」「神奈川県横浜市」「兵庫県神戸市」、住民税の安い「愛知県名古屋市」を加えた51自治体を住民税が高い順に並べてみた。4市以外は都道府県内の自治体の住民税は同じとなっている。
住民税の課税所得(課税標準額)が200万円の人の年間の住民税額をランキングで見てみよう。47都道府県に、住民税の高い「兵庫県豊岡市」「神奈川県横浜市」「兵庫県神戸市」、住民税の安い「愛知県名古屋市」を加えた51自治体を住民税が高い順に並べてみた。4市以外は都道府県内の自治体の住民税は同じとなっている。
※事例の課税所得200万円というのは、サラリーマン独身(扶養家族なし)、生命保険未加入で社会保険(厚生年金+健康保険+雇用保険)を65万円とすると、年収は440万円ほどとなる。なお、表の住民税額には森林環境税は含まれているが、家族構成(人的控除)で決まる調整控除(-2500円~)はどこに住んでも一律なので含まれていない。
住民税高いランキング1位は兵庫県豊岡市、2位は横浜市、3位タイは宮城県と神戸市、以下、5位タイは岩手県、岐阜県など6県が並んでいる。
表の「差額」は、住民税を増税していない(=標準課税の)東京都(を含む41位タイの10都道県)を基準とした場合の差を表している。東京都に比べ兵庫県豊岡市は2800円、横浜市は1700円、宮城県と神戸市は1200円高い。サラリーマンの住民税は12分割して毎月天引きされるので、宮城県や神戸市に住むと東京都より住民税が月額100円高くなる。
一方、住民税が安いのは名古屋市。一昨年まで減税を行っていた大阪府田尻町が標準課税に移行したため、住民税の減税を行っている自治体は名古屋市だけとなった。
住民税の差=ほとんどが都道府県の「均等割」の差
住民税の自治体ごとの差は、ほとんどが各都道府県の均等割の差によるものだ。
※住民税の計算方法について詳しく知りたい人、ご自身の住民税を計算してみたい人は、関連記事『えっ! 住民税ってそういうことだったの!? 住民税の通知書に書かれた数字のナゾ、まるっと解決します【2025年(令和7年)版】』を参照していただきたい。
均等割は、都道府県民税の額が1000円になっている10都道県は増税がなく、残りの37府県は府県独自の増税が行われている。このような自治体独自の増税を「超過課税」と呼ぶ。市区町村で均等割の増税を行っているのは横浜市(横浜みどり税 900円)、神戸市(認知症対策 神戸モデル 400円)の2つの市だけだ。均等割の減税を行っているのは名古屋市のみ。200円の減税で市民税が2800円となっている。
超過課税を行っている37府県の増税額は、宮城県の1200円(みやぎ環境税)が最高額。大阪府の300円(大阪府森林環境税)が最少額。愛知、鳥取、広島、福岡などの500円が20県と半数以上を占めている。
鳥取県は令和6年から全国で始まった住民税の増税(=森林環境税)を考慮して、令和5年から税額500円はそのまま、県独自の「森林環境税」を新たな「豊かな森づくり協働税」に名称変更した。真面目に取り組んでいる感があり好ましい。同様に国の森林環境税と同じ名称の超過課税を行っている自治体のうち、大阪府と福岡県は令和7年から「大阪府森林環境税」「福岡県森林環境税」と名称変更を行っている。
住民税(所得割)の税率を上げている自治体は神奈川県と兵庫県豊岡市の2つ
均等割を増税している府県は37と半数を超えているが、住民税の所得割の税率を上げている(増税)のは神奈川県(+0.025%)と兵庫県豊岡市(+0.1%)の2つの自治体だけだ。都道府県民税、市町村民税の合計税率は通常10%だが、神奈川県民は10.025%、豊岡市民は10.1%となる。例えば課税所得(課税標準額)が100万円、200万円、400万円のそれぞれの所得割部分の増税額は、神奈川県民は250円、500円、1000円、豊岡市民は1000円、2000円、4000円と所得額に応じて増えていく。
住民税が安い自治体は名古屋市のみ
名古屋市は市民税の均等割が-200円だが、愛知県の県民税が+500円なので東京都より300円増税となる。所得割の税率は名古屋市が-0.3%で7.7%。県民税の税率が2%なので計9.7%となる。名古屋市の課税所得(課税標準額)が100万円、200万円、400万円の所得割部分の納税額は、-3000円、-6000円、-1万2000円と所得額に応じて減税される。この減税額はそこそこ魅力的だと感じられる。
河村たかし市長時代にスタートした名古屋市の市民税の減税。市民税6%、県民税4%のときに市民税の6%の税率を5%(=0.3%)減税し5.7%となった。政令指定都市の税率が市民税8%、県民税2%に移行し、現在の税率は市民税7.7%(=-0.3%)、県民税2%となった。河村たかし氏が2024年に衆議院議員となり、空席となった名古屋市長に当選したのは河村たかし氏が推薦した広沢一郎氏。広沢一郎氏の選挙公約の1つが「市民税減税5%→10%」。実現すれば現在7.7%の税率が7.5%となる。ちなみに河村たかし市長から継承した政策の1つは、2830万円の市長報酬を800万円に減額する条例案で、市議会で可決・成立している。
住民税の地域差はネタとしては面白いが、ほとんどの地域で大差はない。一人歩きする住民税の都市伝説を少しでも訂正するため、来年以降も正しい情報をお伝えしよう。そして今回も最後にお願いをしたい。筆者は執筆した記事に対するコメントを全て読ませていただいて参考にしている。住民税に関しては全国1700を超える自治体の情報を調べることは困難なので、読者の中に「自分の住む町は税金安いよ」「住民サービスが充実している」などの情報をお持ちの人は、X(旧Twitter)などでコメントを寄せていただけると幸いだ。
住民税が高い自治体・安い自治体はどこなのか、差額はいくらなのか――47都道府県などをランキングにして比較した2022年8月初出の記事をアップデートし、今回、その一部を紹介した。このほか、「都道府県民税」と「市町村税」、「均等割」と「所得割」の内訳なども詳しく比較しているほか、自治体指定ゴミ袋の価格差や無料健康診断といった“住民サービスのコスト差”についても考察。自治体の主要財政指標である「財政力指数」のランキングも掲載している。同記事を未読の方はもちろん、すでに読んだことのある方もあらためて記事全編を読んでいただければ幸いだ。
[目次]
- 住民税が高い/安いランキング1位の自治体は?
「課税所得200万円の人」で比べてみた - 住民税の計算方法――
「都道府県民税」「市町村民税」と「均等割」「所得割」の内訳 - 住民税の差=ほとんどが都道府県の「均等割」の差
-住民税(所得割)の税率を上げている自治体は神奈川県と兵庫県豊岡市の2つ
-住民税が安い自治体は名古屋市のみ - 課税所得ごとに「住民税が高い自治体」をランキング
神奈川県民は高所得者ほど順位が上昇!? - 住民税の差額を指定ゴミ袋の差額が上回ることも
- 住民税が安い「名古屋市」の市民として
- 住民税の一番高い「兵庫県豊岡市」とは
- 裕福な自治体はどこ?
- コラム
-夕張市の税率は?
※「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。関連記事インデックス『サラリーマンと個人事業主の“税金の話”まとめ』よりご参照ください。