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保育料、国保、ふるさと納税のために「今すぐ住民税額を知りたい」を可能にするサービスが便利
全国190自治体の「住民税額シミュレーションサイト」一覧
2024年3月29日 06:55
3歳未満の保育料、国民健康保険など、住民税によって支払額が決まるものは多数ある。サラリーマンは6月の給与明細と一緒に受け取る「住民税の決定通知書」、個人事業主は5月末ごろに郵送される「住民税 課税明細書」に詳細が記載されているが、SNSを見ると「保育料がいくらになるか、住民税を早く知りたい」「ふるさと納税の結果を確認したい」など、住民税の明細を早く知りたい人がいるようだ。これから紹介する、各自治体が提供している「住民税額シミュレーション」を利用すれば、ご自身の源泉徴収票や確定申告書の内容をもとに、すぐに住民税を試算することができる。
[目次]
住民税が影響する制度は50以上もある
長野県塩尻市の「住民税や所得が影響する制度等の一覧」というサイトを見ると、国民健康保険、医療費の自己負担限度額、保育料、市営住宅等の入居、結婚新生活支援事業など、自治体窓口のものが55項目、長野県・国関係のものを含めると70項目ほど住民税や所得が影響する制度が掲載されている。中には介護用品券の支給、高齢者世帯タクシー利用料金助成事業など自治体独自のものと思われる項目もあり、自治体により差はあるが、住民税の影響を受ける制度は多数あるようだ。
コラム:保育料を比較してみた
試しに同じ年収で、筆者が住民票を置く名古屋市、オフィスのある川崎市に札幌市を加えて、住民税と保育料を比較してみた。まずは住民税。条件は年収500万円、社会保険料60万円、配偶者控除、3歳未満1人、新生命保険10万円。
住民税は多くの自治体で大きな差はないが、標準税率の札幌市、県民税が高い川崎市、市民税が安い名古屋市の比較なので、課税所得は同じ217万2000円だが、市民税・県民税に若干の差がある。
3歳未満の保育料は3都市とも市民税の所得割で決まる。札幌市・川崎市の市民税所得割17万1700円、名古屋市の市民税所得割16万5200円の保育標準時間の保育料は以下のとおりだ(※令和6年の保育料が公表前なので、住民税、保育料とも令和5年で計算)。
札幌市:45,870円
川崎市:41,200円
名古屋市:34,900円
この事例では名古屋市と札幌市で1万円以上の差となっている。住民税の年額の差に比べ、月額1万円の差は大きい。ただし、保育料の体系が札幌市は10段階、川崎市は25段階、名古屋市は16段階となっていて、課税所得によって順位は異なる。
190の自治体が「住民税額シミュレーションサイト」公開
住民税の計算はそこそこ面倒くさい。上記の住民税の計算は、3都市が公開している住民税額シミュレーションサイトを利用したのでサクッと算出することができた。筆者が確認できた住民税額シミュレーションサイトは190の自治体が公開している。昨年調べたときは180自治体だったので、1年で10自治体増えている。
自分の住む自治体に「住民税額シミュレーションサイト」がないときは
全国の自治体は、総務省のサイトによると1718。特別区(=東京23区)を加えると1741となる。今回、数百の自治体のサイトを力技で調べ、筆者が確認できた住民税額シミュレーションを導入済みの自治体は190。導入率は1741分の190=10.9%となった。ぶっちゃけ自分の住む自治体に「住民税額シミュレーション」がない人の方が多い。特に青森県、秋田県、山梨県、徳島県、愛媛県、高知県、宮崎県、鹿児島県の8県は、県内に導入自治体が1つもない。どうする。
住民税の地域差はそれほど多くはない。詳しくは、関連記事『住民税が高い/安い自治体はどこ? 差額はいくら?【2023年版 最新ランキング】全47都道府県+5市町を比較してみた』を参照していただきたいが、一部を除き都道府県内はどの市町村でも住民税は同じだ。
例えば北海道で住民税額シミュレーションを導入しているのは札幌市のみだが、道内で住民税を納めている人は函館市でも夕張市でも美瑛町でも住民税に差はない。札幌市以外の道内178自治体に住む人は札幌市のシミュレーションサイトを利用させていただこう。
さらに言うと全国47都道府県のうち、北海道、青森県、埼玉県、千葉県、東京都、新潟県、福井県、徳島県、香川県、沖縄県の10道府県は独自の増税を行っていないので、この10道府県にお住まいの人は札幌市でも千葉市でも東京都千代田区でも那覇市でも税額試算の結果は同じとなる。県内に導入自治体のない青森県と徳島県の人は、税額が同じ10道府県に含まれるので、その中の導入自治体のサイトを利用させていただこう。
秋田県は「秋田県水と緑の森づくり税」として800円を県独自に増税している。秋田県と同額の県民税に800円の増税をしているのは滋賀県と兵庫県。秋田県の人は滋賀県、兵庫県のサイトで住民税の試算は可能だ。ただし、兵庫県の神戸市と豊岡市は市独自の増税を行っているので、試算結果は両市の市民以外の人には当てはまらない。
愛媛県は森林環境税として700円を県独自に増税している。愛媛県と同額の県民税に700円を増税しているのは栃木県と群馬県。愛媛県の人は栃木県、群馬県のサイトの試算結果が参考になるはずだ。
山梨県、高知県、宮崎県、鹿児島県の4県は500円を県独自に増税している。同額の県民税に500円を増税している県は16県と多い。富山県、石川県、長野県、愛知県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県の16県のうち、愛知県の名古屋市は市独自の減税を行っているので利用不可。それ以外の自治体のシミュレーションサイトが利用できる。
念のためにお伝えすると、横浜市、名古屋市、兵庫県の神戸市と豊岡市は同じ県内であっても、市独自の増税・減税を行っているので、他の自治体に住む人は試算結果が参考にならない。
また、神奈川県は全国で唯一、住民税の税率が他の46都道府県より0.025%高い。さらに横浜市は「横浜みどり税」として900円を市独自に増税している。自分が住む自治体に住民税額シミュレーションがない神奈川県民は、横浜市以外のサイトを利用させていただこう。
「住民税額シミュレーション」は4社がサービスを提供
確認できた190自治体の住民税額シミュレーションサービスを提供しているのは4社。サンネット株式会社が92自治体、株式会社インテックが83自治体、株式会社茨城計算センターが10自治体、キステム株式会社が5自治体にサービス提供を行っている。未導入の自治体の関係者は参考にしていただきたい。また、全国1741自治体の動向を確認することは難しいので、お住まいの自治体で新たに導入されたときはこの記事に対してX(旧Twitter)などで情報をお寄せいただきたい。