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えっ! 住民税ってそういうことだったの!? 住民税の通知書に書かれた数字のナゾ、まるっと解決します【2025年(令和7年)版】
2025年6月25日 06:55
サラリーマンの人は今月(6月)の給与明細と一緒に住民税の決定通知書を受け取るはずだ。個人事業主は住民税明細書と納付用紙(納税通知書)が自治体から郵送され、6月上旬には手元に届いているだろう。
受け取った通知書・明細書はお住まいの市区町村や、会社員か自営業かにより少し名称は異なるかもしれない。INTERNET Watch編集部の人(会社員=給与所得者)が住む東京都国立市は「給与所得等に係る市民税・都民税・森林環境税 特別徴収税額の決定・変更通知書」、筆者(個人事業主)が住民票を置く愛知県名古屋市は「令和7年度 市民税・県民税 課税明細書」と書かれている。
通知書・明細書には「所得割額」「均等割額」「調整控除額」など、なじみのない言葉や算出根拠の分からない金額が書かれている。昨年は超複雑で自治体でミスが発生するなどした“定額減税”があったが今年はなし。昨年から増税が始まった「森林環境税」は今年も来年もずっと継続される予定だ。
国に納める所得税の源泉徴収票は全国一律でフォーマットは共通、「源泉徴収票の見方」などで検索すると解説記事は多数見つけることができるが、住民税は自治体ごとにフォーマットに差異があり、現物を見せてもらうと形もサイズもさまざま。通知書の見方を掲載している自治体も少ない。「住民税の見方」などで検索しても自治体による違いに加え、所得税より複雑で分かりにくく、情報も少なめな印象だ。
この記事では、分かりにくい住民税の通知書の見方を解説する。最初にお伝えしておくと、“この記事はやたら長い”。目標は最後まで読まれた人はご自身の通知書に書かれた「市民税所得割」「県民税均等割」「調整控除」などが算出できて、納税額がピターッと合うことを目指している。「そこまで詳しく知る必要はない」「ふるさと納税の確認がしたい」という人は目次から必要そうな項をツマミ読みしていただきたい。
[目次]
- 住民税とは
- 住民税はいくら納める?〔住民税額の計算方法〕
-住民税は「所得税」から始まる
-住民税は「所得割額」+「均等割額」
-住民税の主役「所得割額」の計算式は所得税に似ている
-「調整控除」は住民税の分かりにくさの象徴=負の遺産
-「所得割」を源泉徴収票から計算してみよう
-「年収」と「所得」は、源泉徴収票も住民税通知書も同じ金額
-「所得控除」は所得税と住民税で控除額に差があり、要注意
-負の遺産、超~分かりにくい「調整控除額」を計算する
-市民税・県民税の「所得割額」を計算しよう
-県独自の超過課税で差がある「均等割額」
-「均等割額」の計算は簡単
-住民税は12分割して、100円未満の端数は6月に上乗せ - 「ふるさと納税」を確認する~実は複雑な計算が必要
- あなたの住民税・ふるさと納税の上限額をサクッと計算!〔住民税額シミュレーションツール〕
-「住民税額シミュレーションツール」で約半年前に納税額が分かる - 住民税はいつから納める? パートやアルバイトは?〔住民税の注意点〕
-住民税の納税時期、「普通徴収」と「特別徴収」
-住民税の「時間差攻撃」に注意
-住民税はいくらまで非課税? パートやアルバイトは注意しよう - 最後に
1.住民税とは
住民税とは地方税の1つで、1月1日に住民票のある住所地で課税される。住民税は都道府県民税と市町村民税(例えば東京都国立市の場合は都民税と市民税)に分かれているが、合算して納税し、後に分配されるため、納税者は県民税・市民税を意識することはなく、2つ合わせたものを住民税という。東京23区は特別区という扱いで都民税と特別区民税に分かれている。法人が事務所または事業所所在地に申告・納税する法人住民税もあるが、“住民税”というと“個人住民税”を表すことが一般的だ。
所得税は「国税」、住民税は「地方税」。消費税はどっち?
所得税は「国税」に分類され、国に納める税金。住民税は地方自治体に納める「地方税」。では、消費税はどっち? 消費税は、国税である「消費税」と地方税である「地方消費税」に分かれていて、10%の消費税の内訳は国税分の消費税が7.8%、地方消費税が2.2%で、合算して10%となっている。食品など軽減税率8%の内訳は、国税分が6.24%、地方消費税が1.76%となっている。
例えば観光地を訪れた観光客が税別10万円を消費すると消費税は1万円となる。地元自治体に入る消費税は2.2%の2200円だけ。7800円は国に持って行かれることになる。個人的にはこの比率を見直して、地方消費税分を増やすと、自治体の財政の健全化につながるような気がする。
2.住民税はいくら納める?〔住民税額の計算方法〕
住民税は「所得税」から始まる
会社勤めの人は昨年の10月下旬から12月上旬に年末調整の書類を出したはずだ。その際、家族構成や加入している生命保険などを記載したと思う。その情報を元に令和6年分の所得税が計算され、12月の給料で1年間の所得税の納税が完結する。
その所得税の明細を記載したものが源泉徴収票だ。源泉徴収票は社員に配られ、会社から税務署と各社員の居住地の市町村に送られる。受け取った各自治体は市町村民の住民税を計算して住民税の通知書を会社に送り、6月の給与明細と一緒に社員に配られる。これが一連の流れだ。
この流れを見ると、住民税は所得税がベースになっていることが分かる。住民税より所得税の方が少しだけ分かりやすい。加えて住民税の所得割の計算方法は所得税の計算方法に近い。なので、住民税だけ理解するよりは、所得税とセットで理解することをお勧めしたいし近道だと思う。お時間のある人は今年1月に掲載した『例年と違うよ! 定額減税が行われた令和6年分「源泉徴収票」の見方図解で説明』を一読いただきたい。
住民税は「所得割額」+「均等割額」
住民税は「所得割額」と「均等割額」を合算したものが納税額となる。所得割額はその計算方法が所得税に似ていて、所得が多い人ほど納税額も多くなる。多くの人は均等割額より所得割額が高額になるので、住民税の主役的な存在だ。均等割額は所得にかかわらず、同じ自治体に住む納税者であれば、所得が100万円の人も1000万円の人も同額を納税する。
さらに所得割額・均等割額は、都道府県民税と市町村民税に分けられる。具体的には、埼玉県さいたま市の人が納めるのは県民税と市民税、大阪府摂津市の人は府民税と市民税、岐阜県加茂郡白川町の人は県民税と町民税、東京都国立市の人は都民税と市民税、東京23区は特別区なので都民税と特別区民税となる。
この記事では、“都道府県民税””市町村民税”と毎回表記するのは長いので、基本は“県民税”と“市民税”(東京都国立市の事例では都民税と市民税)と表記したい。道民、府民、特別区民、町民、村民などと、適宜ご自身が居住する自治体に応じて読み替えていただきたい。
住民税の主役「所得割額」の計算式は所得税に似ている
住民税の主役と言える所得割額をサラリーマンの例で説明していこう。所得割額は以下の計算式で算出できる。住民税の所得割額は、その下の所得税の計算式と全体の流れはほぼ同じだ。


所得割額と所得税の計算式の①行目[給与の収入金額-給与所得控除=給与所得]は同じだ。②行目の[給与所得-各種所得控除=課税所得]も式はほぼ同じだが、各種所得控除の金額が住民税(所得割額)と所得税で異なっている。令和7年(2025年)の住民税は令和6年(2024年)分の所得から算出するので、令和6年の所得税との控除額の違いを見てみよう。

表を見ると、住民税の控除額は所得税より少ない。控除額が少ない=課税所得(課税標準額)が増える=所得税より(税率が同じなら)納税額が増えるということだ。代表的な控除を見ると、基礎控除は5万円少なく、扶養控除の一般は5万円、特定(ほぼ大学生)は18万円少ない。扶養控除は、所得税も年齢と控除額の関係が複雑だ。その複雑な所得税の扶養控除に対し、住民税は差額が5万円、10万円、13万円、18万円と輪を掛けて複雑になっているので、言葉で説明するより図を見ていただいた方が少し分かりやすいだろう。

所得割額と所得税の計算式の③行目[課税所得×税率(10%)=所得割]の税率は、一部例外な自治体はあるが基本は10%。所得税のように課税所得に応じて5%、10%、20%……と累進することはない。所得税より分かりにくい住民税で、唯一分かりやすいのが税率かもしれない。

いつも所得税より住民税が高いんだけど
所得税は、課税所得が195万円以下であれば税率が5%。所得税と住民税は控除額の差で課税所得は同じにならないが、課税所得が195万円以下の人は税率が10%の住民税の納税額が多くなる。毎月天引きされる住民税が所得税より高い人は税率の差と理解しよう。所得が増えると、累進課税の所得税の納税額が住民税を上回ることになる。
ほぼ一律10%の税率の内訳は、市民税が6%、県民税は4%が基本。ごく一部に例外があり、都道府県では神奈川県が全国で唯一、税率が高く10.025%だ。内訳は市民税が6%、県民税が4.025%となっている。市町村では名古屋市が減税で税率を下げ、兵庫県豊岡市が増税で税率を上げている。
政令指定都市は「市民税と県民税の配分」が違う
話を複雑にして申し訳ないが、平成30年(2018年)から政令指定都市(地方自治法では「指定都市」)20市は市民税と県民税の税率の比率を6対4から8対2に変更した。従来の市民税の税率が6%から8%、道府県民税の税率が4%から2%となっている。
宮城県仙台市は市民税が8%、県民税が2%、埼玉県さいたま市も市民税が8%、県民税が2%といった感じだ。以下の20市の人は市民税と県民税の比率が基本8対2なので注意しよう。指定都市移行順に大阪市、名古屋市、京都市、横浜市、神戸市、北九州市、札幌市、川崎市、福岡市、広島市、仙台市、千葉市、さいたま市、静岡市、堺市、新潟市、浜松市、岡山市、相模原市、熊本市が対象だ。
例外は先ほど説明した横浜市と名古屋市。横浜市は市民税が8%、県民税が2.025%で計10.025%、名古屋市は市民税が0.3%低いので市民税が7.7%、県民税が2%で計9.7%となっている。
「調整控除」は住民税の分かりにくさの象徴=負の遺産
住民税は市民税(所得割・均等割)と県民税(所得割・均等割)を合算したものが納税額となる……のだが、「調整控除」という理解しづらい計算が残されている。住民税の分かりにくさの象徴と言えるのが調整控除だ。筆者の名古屋市の「市民税・県民税 課税証明書」の調整控除の項目にはよく分からない計算式が書かれている。

調整控除とは何か。時は平成19年(2007年)にさかのぼる。この年、所得税(国税)の税率を下げ、住民税(地方税)の税率を上げ、国から地方へ税源移譲が行われた。ザックリ言うと、当時は(今も?)国がやや金持ち、地方が貧乏で国から地方へお小遣い(交付金)を渡していた。そこで国の税収(所得税)を減らして、地方の税収(住民税)を増やせば、地方はお小遣いをもらわなくてもいいよね的な考えで税源が国から地方へ移譲された。
具体的には、税率の見直しが行われ、平成19年1月から所得税が減り、平成19年6月から住民税が増えた。これにより3兆円の税源が国から地方へ移譲されたらしい。
この際に面倒なことが起こった。それまで所得税の税率10%、住民税の税率5%の部分が、平成19年から逆の所得税5%、住民税10%(一律)になった。前述のように所得税より住民税の控除が少ないため納税額が増えてしまう(=増税)。これを解消するために調整控除なるものが施行され、結果として18年経った今も負の遺産として面倒な計算が必要とされている。
では、実際に源泉徴収票を見ながら住民税の所得割額から計算してみよう。こと細かな計算は不要という人は「均等割額」の説明までジャンプしていただきたい。
「所得割」を源泉徴収票から計算してみよう
所得割を計算してみよう。会社員の人は、ご自身が12月か1月に受け取った「令和6年分 給与所得の源泉徴収票」と、6月の給与明細と一緒に受け取った「令和7年度 給与所得等に係る市民税・県民税・森林環境税 特別徴収税額の決定通知書」を用意して、照らし合わせて計算すると理解も深まるし、ピタッと計算が合うと快感が得られるだろう。
源泉徴収票の例は、1月に掲載した『例年と違うよ! 定額減税が行われた令和6年分「源泉徴収票」の見方図解で説明』で事例とした河野一太郎さんの源泉徴収票を使用する。
事例の源泉徴収票は東京都千代田区となっているが、千代田区の令和7年度の通知書のフォーマットが入手できなかったので、住民税の通知書の記入例は国立市のフォーマットを使用したい。表記が特別区民税ではなく市民税になるが、それ以外は特に差はない。
「年収」と「所得」は、源泉徴収票も住民税通知書も同じ金額
所得割額の計算式に沿って源泉徴収票と住民税の通知書を見比べながら確認していこう。

①行目の式は、収入から給与所得控除を引き、所得を計算する式。給与所得控除は以下の表の計算式で求められる。この計算式は、基礎控除の改正とともに住民税は令和3年から(所得税は令和2年から)改正されている。

年収650万円の河野一太郎さんの給与所得控除の額は174万円(=650万円×20%+44万円)。給与所得控除後の金額(=給与所得)は476万円(=650万円-174万円)、源泉徴収票のブルーの部分だ。同じ金額が住民税の通知書にも記載されている。会社以外に所得がなければ、給与所得と同額が右下の総所得金額①に記載される。
ご自身の源泉徴収票を見ながら「支払金額は638万2000円だから、給与所得控除後は……」などと計算すると、源泉徴収票、住民税通知書に書かれた額と微妙に差異が発生した人がいるはずだ。
年収660万円未満の人の給与所得控除後の金額の算出は「令和6年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」という速算表を使用してほしい。表の638万2000円の部分を見てみよう。
年収638万円以上638万4000円未満の人の給与所得控除後の金額は466万4000円となっていて、年収が638万1000円でも638万2000円でも一律466万4000円となる。これが微妙な差異の原因だ。そろばんの時代には、1円単位の細かな計算をするより速算表の方が便利だったと思われ、その時代のルールが今も続いている。
ご自身の源泉徴収票を正確に計算したい人は、この速算表で確認していただく方法が1つ。もう1つは国税庁の給与所得控除のページの下段にある給与収入から所得を計算するサービスだ。これなら年収の金額が1円単位まで細かくなっていても、サクッと所得が計算できる。
「所得控除」は所得税と住民税で控除額に差があり、要注意
②行目の式[給与所得-各種所得控除=課税所得]は、各種所得控除の金額から計算しよう。前述のとおり住民税の控除額は所得税より少ないので、控除額の計算を間違わないように要注意だ。計算が面倒な生命保険料控除は特に注意したい。
生命保険の控除は、平成23年(2011年)以前に契約した保険が「旧制度」、平成24年(2012年)以降に契約した保険が「新制度」となっている。さらに旧制度は「一般生命保険」(医療保険を含む)と「個人年金保険」の2種類、新制度は「一般生命保険」「個人年金保険」に「介護医療保険」を加えた3種類で、新旧合わせて5種類に分類されている。

計算式は以下の表を参照。上段が所得税、下段が住民税となっている。年末調整で計算して記入したときのことを思い出していただきたい。それぞれの控除額も上限額も住民税の控除は減ることになる。

いざ計算しようとして「生命保険、いくら払ってた?」と思った人は、源泉徴収票を確認しよう。摘要欄の下に記載されているのが生命保険料の支払い額。事例では旧生命保険が12万円、介護医療保険が7万5000円、旧個人年金保険が12万となっている。
所得税の控除はそれぞれ5万円、3万8750円、5万円で3つの控除額の合計は13万8750円だが、摘要欄の上の生命保険料の控除額には合計上限額の12万円と記載されている。生命保険料の控除額の左側は社会保険料控除(厚生年金、健康保険など)、右側は地震保険料控除だ。
住民税通知書は、所得控除の左列に社会保険料96万円(所得税と同額)、生命保険料控除はいずれも上限額の3万5000円、2万8000円、3万5000円で合計9万8000円だが、合計上限額の7万円となっている。
地震保険料控除は、所得税では5万円が上限で支払った保険料の全額、住民税では2万5000円が上限で支払った保険料の半額となり、地震保険料の控除額は5000円と記載されている。
控除の最後は人的控除。源泉徴収票は「控除対象配偶者の有無等」の「有」に〇があり、右側の控除額が38万円となっている。
その右側は「特定」(特定扶養親族)が1となっているので、ほぼ大学生の子どもが1人いる。老人の3枠は、真ん中の1は70歳以上の老人扶養親族が1人いることを表し、左側の「内」に1とあるのは老人扶養親族のうち、同居老親が1人いることを表している。
老人の右側のその他の欄は高校生や成人など一般の扶養親族の人数で、この事例では0人。右端の「16歳未満扶養親族の数」は16歳未満の子どもの人数で、控除の対象とならない。所得税では特定扶養親族は63万円、同居老親は58万円となるが、源泉徴収票には金額の記載がなく不親切だ。
住民税通知書も右側の「控配」は控除対象配偶者の意味で、「*」があるのは、控除対象となる配偶者がいることを表している。さらに右側の扶養親族該当区分は、「特定」「同老」「老人」「16歳未満」は源泉徴収票と同じ内容を表している。控除額は配偶者が33万円、扶養は特定扶養親族の45万円と同居老親の45万円を合計して90万円と記載されている。基礎控除は令和3年分から10万円増えたので43万円となっている。
河野さんの事例の所得税と住民税の控除額の差を確認しておこう。支払った全額が控除となる社会保険料控除(96万円)だけ同額で、それ以外は軒並み控除が減り、合計額は269万5000円となった。所得税の控除額の合計が316万円なので、46万5000円も控除が減ることになる。もし住民税の控除額が所得税と差がなければ、税率10%分の4万6500円も住民税は減る(減税)。

①行目の式で計算した所得の476万円から控除額の合計の269万5000円を引くと、課税標準所得の206万5000円が算出され、②行目の式が完成する。住民税通知書では中央の最上段、課税標準の総所得③に記載されている。この事例は切りのいい数値となっているが、端数が出た場合1000円未満は切り捨てとなる。
負の遺産、超~分かりにくい「調整控除額」を計算する
税源移譲の負の遺産、住民税の分かりにくさの象徴、読者も説明する筆者も“ウンザリ”する調整控除額を計算してみよう。まずは国立市の市民税・都民税決定通知書の裏面に記載された説明書きを見てみよう。
見た瞬間にスルーしたくなるのは筆者だけだろうか。筆者はINTERNET Watchの読者は読解力が高いと思っている。読解力に自信がある人はこの調整控除の説明書きを読んで理解していただきたい。
同じ調整控除だが、次の名古屋市の個人事業主向けの市民税・県民税 課税明細書は計算の元となる金額と計算式と結果が記載されていてやや親切な印象だ。こちらをベースに河野一太郎さんの調整控除額を計算してみたい。

通知書の課税標準の総所得③に記載された金額が課税所得金額の[A]。人的控除の差額は基礎控除5万円、配偶者控除5万円、扶養控除(特定)18万円、扶養控除(同居老親)13万円で、計41万円が[B]となる
・課税所得金額 A =206万5000円
・人的控除の差額 B =41万円
[A]が200万円を超えているので計算式は以下のとおり。
B-(A-200万円)=C
※計算結果が5万円未満のときは一律5万円
C×5%=調整控除額
41万円-(206万5000円-200万円)=34万5000円
34万5000円×5%=1万7250円
市民税と県民税が6対4の自治体なら、調整控除額の市民税分は1万350円、県民税分は6900円となる。
市民税・県民税の「所得割額」を計算しよう
難解な調整控除額が算出できたら所得割のゴールは目の前だ。Excel不要、電卓で十分な簡単な計算をするだけだ(Excelが楽だけど)。計算式は、以下の図の③となる。

住民税通知書の記入欄に合わせて市民税6%、都民税4%で計算してみよう。
課税所得(課税標準額)×税率=所得割
市民税所得割 206万5000円×6%=12万3900円 上段④
県民税所得割 206万5000円×4%=8万2600円 下段④
所得割-税額控除額(調整控除)=所得割額
市民税所得割額 12万3900円
-税額控除額(調整控除) -1万350円(上段⑤)
=所得割額 =11万3550円→11万3500円(100円未満切り捨て 上段⑥)
都民税所得割額 8万2600円
-税額控除額(調整控除) -6900円(下段⑤)
=所得割額 =7万5700円(100円未満切り捨て 下段⑥)
所得割額の合計 11万3500円 上段⑥+7万5700円 下段⑥
=18万9200円
この結果を住民税通知書で確認してみよう。右端の税額欄の上段④~⑥が市民税、すぐ下の④~⑥が都民税(内容、金額が異なる欄に同じ番号を振る理由は不明)で、市民税の上段④は課税所得に6%、上段⑤は前項で算出した調整控除額の1万350円、④-⑤が市民税の⑥所得割額となる。同様に下段④は課税所得に4%、下段⑤は前項で算出した調整控除額の6900円、④-⑤が都民税の⑥所得割額となる。ご自身の住民税通知書でもピターッと合っただろうか。
県独自の超過課税で差がある「均等割額」
均等割額は地域差があるので、まずは河野一太郎さんの事例にある東京都で確認してみよう。均等割額は特別区民税分が3000円、都民税分が1000円で計4000円が基本だ。この額は所得100万円の人も1億円の人も同額だ。令和5年(2023年)度まで10年間は、これに東日本大震災の「復興特別税」が区民税・都民税に500円ずつ上乗せされていた。
他の地域も見てみよう。埼玉県さいたま市は市民税が3000円、県民税が1000円で計4000円と同額。千葉県千葉市も同額の4000円だ。
では、神奈川県横浜市は……。市民税3900円、県民税が1300円で合計5200円と、1200円割高だ。
市民税は、ベースとなる3000円に「横浜みどり税」の900円が上乗せされ3900円となっている。神奈川県の県民税の均等割は、ベースとなる1000円に「水源環境保全税」の名目で300円を県独自で上乗せし1300円となっている。県民税と市民税で計1200円が、千代田区や千葉市、さいたま市よりも増税となっている。
横浜市独自の横浜みどり税や神奈川県独自の水源環境保全税など、自治体が独自に行う課税を「超過課税」という。47都道府県で均等割額に超過課税を上乗せしているのは37団体(府県)。超過課税がないのは北海道、青森県、東京都、埼玉県、千葉県、新潟県、福井県、徳島県、香川県、沖縄県の10都道県だけというのが現状だ。超過課税の金額は500円前後が多く、先ほど紹介した横浜市(1200円)や宮城県(みやぎ環境税1200円)など、1000円を超える自治体もある。所得割額の税率に超過課税を課しているのは、都道府県では神奈川県のみだ。
市町村で均等割額に超過課税を課しているのは横浜市と神戸市の2市。神戸市は「認知症 神戸モデル」として400円を上乗せし「認知症の早期受診を推進するための診断助成制度」「認知症の方が外出時などで事故に遭われた場合に救済する事故救済制度」などの財源としている。所得割額の税率に超過課税を課しているのは兵庫県豊岡市のみだ。
均等割額が安いのは名古屋市の2800円。市民税の均等割額は200円減税されているが、愛知県の県民税に超過課税の「あいち森と緑づくり税」500円が上乗せされているので差引プラス300円となり、超過課税のない10道府県よりは高い。

住民税の高い/安い自治体は?
〇〇市は住民税が高い……と聞いたことのある人がいるだろう。若い頃に住民税の話をする人は少ないので、年齢を重ねるとこのような都市伝説を耳にする機会がある。上記のように都道府県ごとの超過課税を課しているのは37府県。最も増税額が多いのは宮城県で1200円。増税をしていない(税金の安い)東京都と比べると月額100円の増税だ。読者の中には「えっ、その程度の差」と感じた人もいるだろう。
市町村で増税をしているのは横浜市、兵庫県の神戸市と豊岡市、減税をしているのは名古屋市。全国的に見れば、ごく一部だ。住民税の地域差に関してはこちらの記事『住民税が高い/安い自治体はどこ? 差額はいくら? 2024年版 最新ランキング全47都道府県+4市を比較してみた』で詳しく説明しているので参考にしていただきたい。
「均等割額」の計算は簡単
では、河野一太郎さんの均等割額を計算して住民税の納税額を完結させよう。千代田区の均等割額は特別区民税が3000円、都民税が1000円だ。前項で算出した所得割額に加算すると特別区民税・都民税が確定。2024年(令和6年)から増税された森林環境税(国税)の1000円を加えると住民税の納税額となる。ご自身の住む自治体の市民税・県民税の均等割額の金額さえ分かれば足すだけなので計算は簡単だ。
特別区民税 11万3500円+3000円=11万6500円
都民税 7万5700円+1000円=7万6700円
特別区民税+都民税+森林環境税=住民税 11万6500円+7万6700円+1000円=19万4200円
東京都も千代田区も超過課税はない。前述した超過課税のない10の都道県は所得割の税率も均等割額も同じなので、千代田区と納税額は同じとなる。超過課税のない10都道県に引っ越しても河野一太郎さんの住民税は同じだ。
3.「ふるさと納税」を確認する~実は複雑な計算が必要
SNSで「住民税 通知書 ふるさと納税」を検索すると、多くの人が「ふるさと納税」の結果を住民税の通知書で確認していることが分かる。かなりの人が「分からない」「2000円+数円、この数円の誤差は?」と、ふるさと納税の確認の難しさを感じているようだ。
ふるさと納税をされた人は、受け取った住民税決定通知書で正しく減税されたか確認できる。だが、そもそも住民税は難解で、「所得税との控除額の差」「ほとんどの国民が理解できない調整控除」など複雑化されている。申し訳ないが、ふるさと納税は調整控除より複雑な計算が必要で簡単に理解できない。
ふるさと納税した額から、2000円を引いた金額に近い額が差し引かれていたら、多少の差額は気にしないのが一番だと思うが、どうしても計算してみたい人向けに計算方法を紹介しよう。
河野一太郎さんがふるさと納税で1万2000円を寄附したとしよう。一般的には返礼品を受け取り、寄附額から2000円を引いた1万円の税金が減税される。ここではワンストップ特例制度を利用した例を紹介しよう。以下の通知書の画像の青文字で示した箇所が、ふるさと納税による変更部分だ。
結果として納税額は19万4200円から18万4100円へ1万100円減っている。概ね1万円の減税となった。
「100円多いんですけど」「備考欄の市民税と都民税が1円ずつ多いのはなぜ」と疑問に思った人がいるだろう。実際にSNSなどでも数十円多いといったコメントを目にすることがある。
細かなところはスルーでよいと思うが、実は複雑な計算の過程をここではザックリと紹介しよう。まず寄附金税額控除の市民税は基本分の控除額が600円、特例分が5094円、申告特例控除額が307円で合計6001円となる。都民税は基本分の控除額が400円、特例分が3396円、申告特例控除額が205円で合計4001円となる。それぞれの額が備考欄に記載される。自治体によって合計額を記載することもある。
元々の市民税の所得割額の式は課税標準額の6%から調整控除(=税額控除)を引いていた。元々の額は
12万3900円-1万350円=11万3500円(100円未満切捨)
これに6001円の寄附金税額控除を調整控除に足すと1万6351円となるので
12万3900円-1万6351円=10万7549円→10万7500円(100円未満切捨)
市民税の減税額は6000円となった。
次は都民税。元々の都民税の所得割額の式は課税標準額の4%から調整控除(=税額控除)を引いていた。元々の額は
8万2600円-6900円=7万5700円(100円未満切り捨て)
これに4001円の寄附金税額控除を調整控除に足すと1万901円となるので
8万2600円-1万901円=7万1699円→7万1600円(100円未満切り捨て)
都民税の減税額は4100円となった。100円の差異は4001円の1円と100円未満切り捨てによるもののようだ。
個人事業主やワンストップ特例制度に該当しない人が確定申告をした場合はさらに複雑となる。こちらもザックリ説明すると、1万2000円の寄附をすると確定申告で1万円が所得控除に加算される。例えば税率が10%の人なら1万円の10.021%(復興特別税含む)=1000円強が所得税から差し引かれる。残りの9000円弱、例えば8980円が市民税、県民税それぞれから税額控除され、約1万円の減税となる。
4.あなたの住民税・ふるさと納税の上限額をサクッと計算!〔住民税額シミュレーションツール〕
「住民税額シミュレーションツール」で約半年前に納税額が分かる
所得割、調整控除、均等割と難解な住民税の納税額を、サクッと計算してくれるサービスがある。名称は各自治体で「住民税額シミュレーションシステム」「税額試算コーナー」などさまざま。全国で195の自治体が導入している(筆者調べ)。このサービスではご自身の住民税額の試算に加え、ふるさと納税の上限額も算出できるので、年収の変化が少ない人はふるさと納税に役立てていただきたい。
『保育料、国保、ふるさと納税のために「今すぐ住民税額を知りたい」を可能にするサービスが便利』で195の自治体のシミュレーションサイトのリンクを紹介している。同記事では、自分の住む自治体に「住民税額シミュレーションツール」がないときの対処法なども説明しているので参考にしていただきたい。
5.住民税はいつから納める? パートやアルバイトは?〔住民税の注意点〕
住民税の納税時期、「普通徴収」と「特別徴収」
サラリーマンの住民税は12分割され毎月の給与から天引きされる。個人事業主は1年分の住民税をまとめて1回で納税するか、4回に分けで納税する。後者の自分で納税する方法を「普通徴収」、前者の給与から天引きされる方法を「特別徴収」という。サラリーマン向けの住民税の通知書の名称が「給与所得等に係る市民税・都民税 特別徴収 税額の決定通知書」となっているのはこのためだ。
サラリーマンの毎月の給与から天引きされている所得税と住民税に、1年以上の時差があるのをご存じだろうか。所得税はその月の給与から社会保険料などを差し引き、“みなし”で天引きされている(源泉徴収)。要するに1月分の所得税はその月に納税、それを毎月繰り返し、12月の給与で年収が確定するので、生命保険料控除などを反映、年末調整で正しい税額に調整して1年間の納税が完了する。
その結果をまとめたものが「源泉徴収票」だ。源泉徴収票は社員本人と税務署、そして住民票を置く地方自治体に送られ、その自治体の税率・均等割により住民税の額が決定し、6月から翌年5月まで天引きされている。具体的には、昨年(2024年)の1月~12月に所得税を納税し、住民税は今年(2025年)の6月~来年(2026年)の5月に納税をすることになる。
住民税の「時間差攻撃」に注意
ずっと同じ会社に勤めていると所得税と住民税の時差があることに気付かないが、退職すると1年遅れの住民税を納税することになり、「えっ住民税20万円!」などと驚くケースは珍しくない。例えば12月に退職すると、前年分残り5カ月+その年分12カ月で計17カ月分を、退職後に納めることになる。退職を考えている人は住民税の時間差攻撃に注意しよう。
個人事業主の場合は、前年分の所得を2月~3月で確定申告し、所得税・消費税の1年分を納税。続いて6月に住民税の通知を受け取り、6月に全額を納税するか、6月・8月・10月・1月に分けて納税するかを自分で選択する。これに加え、家持ちクルマ持ちの人は固定資産税・自動車税と納税が連続する春は税金ラッシュとなるので厳しい。
新卒で入社すると前年の所得がないので住民税は天引きされない。2年目の6月に初めて住民税が天引きされるので、6月の給与明細を見て突然手取りが少なくなったと驚かないでいただきたい。
住民税はいくらまで非課税? パートやアルバイトは注意しよう
2024年(令和6年)まで所得税は年収が103万円以下であれば、パートやアルバイトは基礎控除の48万円と給与所得控除の55万円が引かれ、課税所得が0円となり非課税だった。昨年の衆議院選挙で与党が過半数割れし、野党の提案を取り入れることで、長年問題となっていた「103万円の壁」は、内容は複雑だが2025年(令和7年)から緩和されることとなった。
住民税は2026年(令和8年)から改正される。なので今回の住民税は従来どおりだ。住民税が非課税となる上限額は所得税と異なる。例えば東京都千代田区や神奈川県横浜市は所得100万円まで住民税は非課税。学生がバイトで100万1円の年収があった場合、住民税は課税対象となり、均等割額は千代田区なら4000円、横浜市なら5200円を納税しなければならない。「1時間短く勤務していたら非課税だったのに」となるかもしれないので、パートやアルバイトの人は要注意だ
住民税は、年収100万円(パート・アルバイトなら所得45万円)以下なら均等割・所得割とも非課税となるという情報が多いが、この額は自治体ごとに差があるので注意しよう。
例えば同じ埼玉県内でも、さいたま市は100万円(所得45万円)、熊谷市は96万5000円(所得41万5000円)、秩父市は93万円(所得38万円)以下なら住民税は非課税となる。自治体のサイトを探してみると、97万円(所得42万円)以下、98万円(所得43万円)以下など、均等割が非課税となる上限額はさまざま。全国約1700の自治体の中にはさらに上限額が異なる自治体があるかもしれない。
来年からこの上限額(=対象は今年、2025年の年収)は引き上げられる。横浜市、名古屋市など100万円を110万円に引き上げる旨をすでに公表している自治体もある。住民税ゼロ円を狙う人は地元自治体のサイトで確認するか、記載がない場合は電話などで確認しよう。
6.最後に
今年、2025年(令和7年)の住民税は大きな変更はなかったが、2026年~2028年(令和8年~10年)の住民税は変更が予定されている。早々に確定した学生バイトの所得上限(103万円の壁)の大幅緩和(特定親族特別控除)は、所得税は今年から始まっていて、今年の所得から算出する来年の住民税にも反映される。特定親族特別控除の詳細はこちらの記事を参考にしていただきたい。
所得税における「103万円の壁」に風穴が開いた。これに伴い、住民税非課税の上限額も100万円→110万円と変更されることとなった。103万円の壁に変化をもたらしたのは、昨秋の衆議院選挙で与党が過半数割れし、“手取りを増やす”をキャッチフレーズに103万円の壁を178万円にする公約を謳った国民民主党が議席を伸ばしたことが大きい。
自民、公明、国民民主の3党の幹事長は「年収103万円の壁を令和7年から178万円の実現を目指す」ことで合意したにもかかわらず、続いて行われた3党の税制調査会長による協議で、与党は手のひらを返すように123万円を主張。103万円の壁は動いたが、手取りは増えないこととなり、ハシゴを外された印象だ。
昨年から住民税に増税された“使い道の怪しい”森林環境税。フリーランス増税とも揶揄されるインボイス制度。防衛費の増加のための防衛特別税(未確定)、子育て支援の財源を医療保険に上乗せする(未確定)ステルス増税など、数年前まで与党は増税やりたい放題な印象すらあったが、昨今、与党と野党各党が税制や年金制度で協議することが増え、筆者としては正しい方向に進んでいると思っている。
参議院選挙が近付き、「消費税を5%に」「食料品の消費税ゼロ」「2万円の給付金」など減税や給付の話題を耳にする。計算をしてみよう。独身で飲食、交通費、電気代、服代、サブスク代……などで月に8万円強、年間で税別100万円の支出をすると消費税は10万円ほどとなる(自炊派の軽減税率は無視、家賃に消費税はかからない)。税率10%が5%になると年間5万円、月4000円チョットの減税となる。軽減税率の食料品の消費税がゼロになると、自炊比率が高い人は減税効果が大きい。コンビニ弁当は対象となるが牛丼チェーンの外食は対象外。食料品が月に税別4万円なら月に3200円、年に3万8400円の減税となる。付け加えると、年間1000万円を支出し、100万円の消費税が50万円になる人は大きな減税となる。消費税の減税は、高額所得者ほど得をすることとなる。
独身サラリーマンが月に3000~4000円の減税、ないよりマシだが生活が激変するとは思わない。2万円の給付金がマイナンバーカードと紐付けた銀行口座に数日で振り込まれたら、筆者は“オォ~初体験”と思うが、それで何か散財する気もない。筆者としてはどれも不要。そもそも税収の上振れって、予測が間違っていたのではと勘ぐりたくなる。
筆者はお金は小さくばら撒くより、集めて大きくしたほうが使い勝手が良いと思っている。今年ニュースとなった下水道管の老朽化による陥没事故。国土交通省によると2022年度(令和4年度)の下水道管に起因する道路陥没の件数は2625件。水道管、橋などインフラの老朽化は待ったなし、予測より多かった税収はインフラ整備に使うべきだと思う。
ウクライナや中東では、「数百機のドローン攻撃があり、数百機を打ち落とした」と報じられている。日本が数百機のドローン攻撃を受けた場合、いったい何機を打ち落とせるのか。北にも西にも不安な国が存在しているので、防衛費の増額も必要な気がする。
今月4日、厚生労働省が発表した人口動態統計によると、2024年の出生数が68万6061人で初めて70万人を下回った。1人の女性が生涯に生む見込みの子どもの数を表す「合計特殊出生率」は1.15。統計がある1947年以降で過去最低となった。少子化は加速度的に進んでいる。
国立社会保障・人口問題研究所の中位推計(平均的なシナリオ)は2024年の推計出生数は75万5000人、低位推計(最悪なシナリオ)は2024年の推計出生数は66万8000人。実数(68万6061人)は最悪なシナリオに近い数だ。平均的なシナリオで出生数が68万人になるのは2039年、推計より15年も前倒しで少子化が進んでいる。税収の予測は上振れ、出生数の予測は下振れ。やはり予測が間違っていたのではと勘ぐりたくなる。
現在行われている少子化対策は、方向性が間違っていると思わざるをえない。例えば子ども3人世帯の大学の授業料・入学金の支援制度。現在、大学生の子がいて3人を扶養していれば恩恵はある。ただし、第1子が就職すると第2子、第3子が大学生でも扶養人数が2人となり対象外となる。
では、これから子作りをする人は、第1子が18歳となる十数年後に大学が無償化になるという理由で3人目を生もうと思うだろうか。そもそも十数年後、この制度は継続されているだろうか。
筆者は日本の最大の課題は少子化と言い続けている。筆者が望むのは「結婚した方が得」「子ども増えるほど生活が楽になる」社会の実現。例えば婚姻届を提出して1年後に100万円、5年後に500万円を給付(=結婚した方が得)。子ども手当を1人目は月額3万円、2人目は月額6万円(計9万円)、3人目以降は月額10万円(3人なら19万円)を給付(=子ども増えるほど生活が楽になる)するぐらいインパクトのある改革が必用だと思う。出産後の子育て支援も重要だが、現状は子育てに比重が偏っていて、結婚、出産に対する支援が手薄な印象だ。上振れした税収は、目先の人気取りでばら撒くより、こうした課題の解決に役立てて欲しい。
※「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。関連記事インデックス『サラリーマンと個人事業主の“税金の話”まとめ』よりご参照ください。