趣味のインターネット地図ウォッチ
第84回:Googleマップで作る、全国鉄道路線のマイ“完乗”マップ
パソ鉄の旅~デジタル地図に残す自分だけの鉄道記~(インプレスジャパン発行、1575円) 【PR】Amazon.co.jpで購入 |
その昔、国鉄が「いい旅チャレンジ20,000km」というキャンペーンを展開したことがあった。路線の始発駅と終着駅で駅名票が入った自分の写真を撮影して事務局に送付すると、路線の踏破認証シールが送られてくるというもので、全国の国鉄路線の“完乗(完全乗車)”を目指そうという趣旨だ。
インターネットや携帯電話が普及した最近では、乗りつぶしの記録を管理するサイト「乗りつぶしオンライン~鉄道旅行の、足あと残そう~」や、携帯電話の位置情報ゲーム「全駅制覇!駅コレクション」などが登場しており、鉄道ファンの“完乗”に対する思いは依然として根強いものがある。
このような乗りつぶしの記録を管理する方法としては、インターネットの地図サイトを使って旅行記を作る手もある。「Googleマップ」のマイマップ機能(以下、マイマップ)なら、地図上に乗車した路線を描くだけでなく、写真や動画なども貼り付けられるし、作成した旅行記をほかの人に公開することもできる。
実はこのたび、マイマップによる鉄道旅行記の作成を提案する本を執筆した。タイトルは「パソ鉄の旅~デジタル地図に残す自分だけの鉄道記~」(インプレスジャパン発行、1575円)で、本日発売となる。そこで今回はこの本の宣伝も兼ねて、インターネット上で作成する“デジタル鉄道記”を想定したGoogleマップやGPSツールの活用法を紹介したい。
●トラベルライター横見浩彦さんとアイドルの伊藤桃さんが“わ鐵”の旅
何を隠そう、この本はトラベルライターの横見浩彦さんが監修している。横見さんといえば全国のJRと私鉄の全駅下車を達成した方で、まさに“完乗”を極めた人だ。鉄道記を作るにあたって、冒頭で横見さんに実際に鉄道の旅をガイドしていただいた。さらに横見さんとペアを組んで旅人となったのは、鉄道アイドルとして人気の伊藤桃さん。2人が向かったのは群馬県と栃木県をまたがって走る「わたらせ渓谷鐵道」、通称“わ鐵”だ。この“わ鐵”のおすすめの駅舎や旧線・廃線跡、名物の駅弁、銅山観光など沿線の見どころを案内していただき、旅行記の素材を集めた。
今回のロケが行われたのは2月の半ばだが、寒い日が続く中、この日は奇跡的に暖かくなり、しっかり防寒してきた横見さんも暑くてジャケットを脱いでしまうほど。2人ともそれほどハイテク機器に詳しいわけではないが、桃さんは写真撮影が好きなこともあり、事前の打ち合わせでも旅行記作りについて興味を示していた。当日も、GPSロガーやGPS内蔵のビデオカメラ(ソニーの「HDR-CX500V」)などをもの珍しそうに見て、ときには自分で操作する場面も見られた。撮影にはカメラマンも同行したが、それとは別に2人とも自分のデジタルカメラで思い思いに撮影を楽しんでいた。
晴れ渡った青い空の下、取材や撮影は順調に進んだが、立ち寄るところが多く、終点の間藤駅ではさすがに2人とも疲れた様子。ただ、レンタサイクルなどを使って効率よく回ったりして、予定通りスケジュールをこなせた。間藤駅を出発するころには日も暮れて、“わ鐵”の名物である夜のライトアップを見ながら取材チームは帰路についた。この旅の模様は2人の会話形式で本書にまとめてある。
“わ鐵”に乗って旅する2人様子を会話形式でレポート。GPSロガーなどのツールも右端に紹介されている |
本書では、この“わ鐵”の旅で得られた素材をもとに作成例を示しながら、デジタル鉄道記の作り方を解説している。マイマップで鉄道路線上にルートを描いてテキストや写真を貼り付ける方法、「Picasaウェブアルバム」に静止画をアップロードして貼り付けたり、YouTubeを利用して動画や音声を公開し、マイマップに貼り付けたりする方法などだ。
しかし、INTERNET Watchをお読みのみなさんなら、このあたりの部分はすでにおなじみだろうから、ここではGPSロガーの活用法について詳しく紹介したい。
●GPSログをもとに、最高速度や駅の停車時間も確認可能
GPSロガーといえば登山やサイクリングなどアウトドアで使う人が多かったが、最近は価格が下がっていることもあり、鉄道旅行をはじめとした一般の旅行にも使う人が増えてきた。
今回、本書で紹介しているGPSロガーは、メインで使用した台湾HOLUX社の「M-241」のほか、国内ブランドのおすすめ商品としてユピテルの「ATLAS ASG-1」とソニーの「GPS-CS3K」。こうしたGPSロガーでは、軌跡ログを取ってPCに取り込んで管理したり、デジカメ写真と連携することが可能だ。
例えば、M-241の付属ソフト「ezTour」でPCにログを読み込むと、Google Map APIによる地図上に軌跡として表示される。「軌跡エディタ」機能によって、マウスドラッグで修正したり、削除・分割・結合などの編集も可能だ。KMLファイルに変換し、マイマップや「Google Earth」にインポートして表示することもできる。
さらに、ezTourでは速度と高度のグラフも表示できるため、各地点の列車の速度や各駅の停車時間などもわかって面白い。
「ezTour」での軌跡表示 |
速度と高度のグラフ表示 |
GPSロガーについては、電車の車内で果たしてうまくログを取れるのかと不安に思う人もいるかもしれないが、実際に使ってみると十分使えることがわかる。乗車する前に頭上が開けた場所で衛星をしっかり捕捉させておけば、あとは車内でカバンなどにぶら下げておいても良質なログが取れる。それだけ最近のGPSロガーの性能は高くなっているのだ。もちろん窓に近い場所に置いたほうが精度は高くなるので、取材のときはできるだけ窓際に置くようにした。そうすることで、この取材時のログもかなりきれいなものが得られた。
さすがにトンネルや地下鉄では衛星を捕捉できないのでログは取れないし、誤差が出て鉄道ルートにうまく重ならないこともあるが、ezTourやマイマップ上で軌跡を手軽に修正できるので問題ない。軌跡ログを活用すれば乗車したルートを地図上に描くのも半自動でできるので手間が省けるし、“乗りつぶし”の管理には最適といえる。
●GPSログを活用して、デジカメ写真にジオタグを付加
ezTourにデジタルカメラで撮影した写真を読み込むと、各写真の撮影時刻の情報とGPSログとをマッチング(同期)させ、それぞれの写真のExifデータに撮影場所の位置情報(ジオタグ)を付加することが可能だ。
さらにジオタグ付きの写真をPicasaウェブアルバムにアップロードすると、撮影場所をプロットした地図が自動的に生成される。これをKMLファイルに書き出してマイマップにインポートすれば、アップロードした写真を地図上から参照できるようになる。
なお、ソニーのGPS-CS3Kにはメモリーカードスロットがあり、デジカメ写真を保存したメモリーカードを差し込むことで、PCを使わずに写真にジオタグを付加することが可能だ。
デジカメ写真を「ezTour」に読み込んでジオタグを付加することが可能 |
デジカメ写真に付加された位置情報(ジオタグ) |
ジオタグ付きの写真を「Picasaウェブアルバム」にアップロードすると、撮影場所をプロットした地図を自動生成 |
KMLファイルを「Googleマップ」にインポートすることで、地図上から参照可能に |
●廃線や未成線、構想線も“乗りつぶし”可能!?
GPSロガーは、何も実際に乗車した路線を記録するだけにとどまらない。
例えば、デジタル鉄道記を盛り上げるためのアイデアとして提案したいのは、“廃線めぐり”の旅を地図上で表現することだ。本書のロケでは、かつて茨城県を走っていた「筑波鉄道」の廃線跡を実際にめぐり、GPSロガーで軌跡ログを取ったり、プラットホームの跡を撮影したりした。
取材時には、JR土浦駅の近くでレンタサイクルを借りて、現在はサイクリングコースとなっている廃線跡をたどった。コースは水戸線の岩瀬駅まで約40km続くが、今回はほぼ中間地点にある筑波駅跡までを往復した。レンタサイクルのサドルが柔らかめで、乗っているうちに尻が痛くなり、体力的にはかなりきつい取材となったが、開けた場所ということもありGPSのログもきれいに取れた。現実にはもう乗車することがかなわない路線の軌跡も、地図上に再現することができるわけだ。
そうなると今度は、現実にはまだ存在しない未成線や構想線などをマイマップ上に描くというアイデアも出てくる。フリーのダイヤグラム作成ソフト「OuDia」を使用して自作の時刻表を作成して地図上に貼り付けたりすれば、よりリアルになるだろう。
本書を執筆してみて、Googleマップのマイマップというのは鉄道旅行の記録をまとめるツールとして、かなり使えることがわかった。冒頭で“乗りつぶし”の管理について触れたが、それはあくまでもデジタル鉄道記の活用法の一例に過ぎない。マイマップやGPSロガーの使い方を身に付ければ、鉄道趣味に大いに役立つはずだし、これらのテクニックは鉄道旅行だけでなく登山やふつうの旅行にも使えるだろう。
筑波鉄道の廃線跡を「Google Earth」に表示 |
線路の簡略図を意味する「配線図」を作成し、マイマップに貼り付けるのも面白い。表計算ソフトを使って配線図を描き、画像にする際のコツも紹介している |
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2010/4/22 06:00
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