趣味のインターネット地図ウォッチ

第176回

ランドサット8号の観測データを受信して即時公開するサイト ほか

ランドサット8号の観測データを受信して即時公開するサイト

 独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)の地質調査総合センター・情報技術研究部門は、米国の人工衛星「ランドサット8号」の地球観測データをウェブ上で即時公開するサービス「Landsat-8 日本受信・即時公開サイト」を提供開始した。ランドサット8号は日本上空を毎日通過する人工衛星で、日本全体を16日周期で巡回する。今回公開したのは、撮像されたデータを直接受信した上で画像処理を行い、短時間で公開するシステムで、ランドサット8号を運用する米国地質調査所(USGS)との国際協力契約により可能となったという。

Landsat-8 日本受信・即時公開サイト (C) GEO Grid/AIST

 データの受信は熊本県にある東海大学宇宙情報センターの5mパラボラアンテナを利用。受信した画像データは高速ネットワーク回線を経由して産総研つくばセンターに送信される。同センターにて画像処理システムにより10~20シーンが並列処理された後、ウェブ上に公開される。衛星からデータ受信開始後、公開までにかかる時間は1時間半程度で、データ受信からウェブ公開までのすべての処理は自動化されている。

データ受信から公開までの流れ
撮像地域 (C) GEO Grid/AIST

 撮像地域は南北170km、東西185kmの四角で1シーンごとに区切られており、日本全体では86シーンとなる。優先度が3段階に分かれているが、日本のほとんどの地域が、雲の有無にかかわらずほぼ確実に取得する「優先度1」となっている。優先度1以外のシーンについては、雲がかかっている場合は基本的に取得しない設定になっている。

 受信データの空間分解能は可視光線領域・近赤外線領域で15~30m、熱赤外線領域で100mと、これまで無料で提供されていたデータに比べて高くなった。産総研の発表によると、15~30mの空間分解能があると、河川の汚濁状態や農地の情報を判読することが可能なため、災害や作物の生育状態も推測できるという。16日ごとに同一地点を観測するため、防災や環境監視、農林水産業、さらに観光などの分野にも利用が期待される。

 ウェブ上では過去16日間の日本上空の観測データを誰でも無料で閲覧することが可能だ。トップページに最新画像が表示されるほか、上部メニューから「データ検索&ダウンロード」を選ぶことにより、観測日時や雲の量の多さを指定して必要なデータを検索できる。将来的には、複数の衛星観測データを横断的に検索可能とする予定だ。

データ検索&ダウンロード (C) GEO Grid/AIST

 検索方法は、「Begin Position」で開始年月日を指定し、「End Position」で終了年月日を指定。さらに「Cloud Cover」で画像中の雲量の上限値を指定する。次に「BBox」にチェックを入れると地図上で範囲を指定できるようになるので、調べたいエリアをマウスドラッグで指定する。最後に「Search」ボタンをクリックすると、該当エリアが含まれる衛星画像が表示される。

調べたいエリアを指定 (C) GEO Grid/AIST
検索結果を表示 (C) GEO Grid/AIST

 検索にヒットした画像は、KMLファイルまたはtar.gz形式のファイルで出力できる。KMLファイルをGoogle Earthで開けば、Google Earthの空中写真上に画像を見られる。単にウェブ上で閲覧できるだけでなく、他のアプリケーションで使えるようデータ出力できるので、さまざまな使い方が可能だ。

出力した画像データをGoogle Earth上で表示 (C) GEO Grid/AIST

 このサービスを使えば、例えば「これから行こうと思っている山には、どれくらい雪が積もっているのか」といったことについて、過去16日以内に観測された最新データを得られる。研究やビジネス、防災用途のほか、趣味として眺めているだけでも面白い。データ受信から公開までにかかる時間が約90分間というのは、今の段階でもかなり画期的なことではあるが、今後、ネットワークやコンピューターの処理能力が向上すれば、さらなる時間短縮も期待できる。衛星画像が好きな人には見逃せないサービスと言えるだろう。

11月27日に観測された富士山周辺の様子 (C) GEO Grid/AIST

徳島県がGISシステム公開、防災情報など表示、施設情報の汎用ファイル出力も

 徳島県は、統合型ウェブGIS(地理情報システム)「徳島県総合地図提供システム」を公開した。同サイトはデジタル地図の上に防災情報や公共施設の位置などを表示できるサービス。背景地図は地理院地図が提供する基盤地図情報やOpenStreetMap(オープンストリートマップ)、Google マップの3種類から選択可能で、基盤地図情報は通常のタイプのほか、モノトーン、白地図、彩色、オルソ画像から選択可能。Google マップも通常地図に加えて衛星および衛星&道路から選択できる。

徳島県総合地図提供システム
防災・減災マップ(Google マップ)
防災・減災マップ(基盤地図)
OpenStreetMap

 地図上に表示できるデータは、防災・減災マップ(津波浸水想定、標高調査マップ、震度分布図、液状化危険度分布図など)、洪水浸水想定区域図(河川の浸水想定区域図)、都市計画マップ(用途地域、都市計画道路など)、 学校位置情報(小学校、中学校、高等学校など)、ユニバーサルデザインマップの5種類。これらのマップは単独で表示できるだけでなく、複数のマップを選んで組み合わせられる。例えば洪水浸水想定区域図を表示させた状態で学校の位置を表示させれば、洪水浸水が想定される範囲にどの学校が位置しているかを調べられる。各レイヤーは透過度の調整も可能だ。

津波浸水想定
震度分布図
液状化危険度分布図
津波浸水想定と小学校の位置、小学校区の3項目を重ねて表示

 これらの情報の中で特に興味深いのが「都市計画マップ」だ。例えば「都市計画道路」を見ると、計画されている道路が地図上に実線で示されるので、どのようにつながるのかを具体的に思い描ける。防災情報などほかのデータと組み合わせて表示することにより、新たな発見につながる可能性がある。

 また、施設情報として、公共施設だけでなく、コンビニや大規模小売店、飲食店などの民間経営の店が収録されているのも便利だ。地図上に表示されたアイコンをクリックするとウィンドウがポップアップし、住所や電話番号を調べられる。

 さらに、学校の位置や標高調査マップについてはCSVやKMLなどの汎用ファイル形式で出力することも可能だ。このような機能はオープンデータの流れに沿ったものであり、一般ユーザーとしては歓迎だが、まだ出力可能なデータが一部に限られている点は残念。出力可能なデータのさらなる充実を期待したい。

都市計画道路
コンビニの位置情報
データ出力画面
出力したデータはGoogle Earthなどほかのアプリケーションで利用可能

 このほか、地図上に点や線、図形や円などを描くことができる作図機能や、距離や面積の計測ツールも搭載。また、KMLファイルやGPXファイルを読み込んで表示する機能も搭載する。複数のデータを自由に重ねられる点や、まだ一部データに限られてはいるものの、データを汎用ファイルに出力できる体制が整っている点など、自治体のGISサイトとしてはかなり使いやすく、今後どのように進化していくか実に楽しみだ。

作図機能

前方車両認識+ARナビ+ドラレコ+ゲーム、4機能搭載のiPhoneアプリ「DriveMate+NAVI」

 株式会社カーメイトは、iPhoneのカメラで前方車両を認識し、映像を解析するアプリ「DriveMate+NAVI」を提供開始した。App Storeからダウンロード可能で、価格は年間1000円。ただし12月末までにダウンロードした場合、1年目の年間使用料金が50%オフとなる。

DriveMate+NAVI

 DriveMate+NAVIは前方車両認識機能とARナビゲーション、ドライブレコーダー、コミュニティゲームの4機能を搭載したアプリ。

 前方車両認識機能では、前方車両の映像を解析することで、走行中にスピードに応じた適正な車間距離が取れているかを判定し、3色でAR表示する。危険な距離であることを示す赤色になるとアラートを発してドライバーに知らせる、また、信号が赤から青へ切り替わった時に前方車両が発進したことを知らせる機能も搭載する。

 ARナビゲーションでは、目的地までのルート検索を行った上で、進行方向をARで表示する。案内地点が近付くと、ARマーカーが案内を強調し、画面右に地図を表示させることも可能だ。ナビゲーション機能については、株式会社ゼンリンデータコムが提供する「いつもNAVI」のプラットフォームと、株式会社ゼンリンの地図を使用している。検索方法は、フリーワード検索や住所検索、電話番号検索、ジャンルでの絞り込みなどで行える。

画面右に地図を表示可能
検索画面
ルート検索条件
地図上で目的地を設定可能

 ドライブレコーダー機能は、単体のドライブレコーダーと同様、衝撃を受けた際に前後10秒間を自動的に録画する機能で、手動でも画面上のビデオマークをタップすることにより録画できる。録画したデータは、地図上で撮影位置を確認しながら後で再生できる。

 コミュニティゲーム機能は、ユーザー同士が競える「D+ゲーム」というプラットフォームに参加できる。走行した移動距離を競う「移動距離ランキング」と、全国のナンバープレート107枚を、運輸支局管轄エリアに入ることで自動的に収集する「ナンバープレートコレクション」という位置情報ゲームに参加することが可能だ。

全国のナンバープレートを収集

 前方車両認識機能は「DriveMate SafetyCam」、ドライブレコーダー機能は「DriveMate Rec」および「DriveMate Rec mini」、ナンバープレートコレクションは「DriveMate KingKong」と、これらの機能はすでにカーメイトがリリース済みのアプリが提供している機能と同じで、DriveMate+NAVIはさまざまなアプリの機能を集約してまとめたアプリと言える。今まではアプリごとに分かれていたため、複数のアプリを同時に利用することは難しかったが、1つのアプリとなったことにより、さまざまな機能をこのアプリ1つで同時に使える。

 特に前方車両認識機能については、高級カーナビなどで採用されることが多くなってきたが、スマートフォン向けカーナビアプリに搭載される例は珍しい。ARによるルート案内は普通のナビアプリの案内表示とは異なるので好みが分かれるところだが、ナビのエンジンには、既存のナビアプリである「いつもNAVI」が使われているので信頼性は高い。ドライブレコーダーなど特定機能に特化して使う場合は料金が気になるが、4機能を使い倒す気であればお得感はあると思う。

地図上でコースを作成してタイム計測、自転車愛好家向けiPhoneアプリ「CycleTT」

 株式会社ゼンリンデータコムは、自転車愛好家向けiPhoneアプリ「CycleTT(サイクル・ティティ)」を提供開始した。App Storeから無料でダウンロードできる。

起動画面
メインメニュー
コース作成メニュー

 CycleTTはいわゆるナビアプリではなく、事前に地図上でコースを作成・登録し、そのルートに沿ってタイムを計測するアプリだ。ルートは地図上に経由地を指定することで作成できる。コースに沿って地図上をタップすると、その前にタップした地点からのルートが道路に沿って自動的につないで表示されるので、ゴール地点までタップを繰り返して作成する。

 また、KMLやGPX形式のファイルをメール経由で読み込んで、その軌跡をコースとして登録することも可能だ。地図をタップしてコースを作成する場合、道路上でしか経路を作成することはできず、サイクリングロードや河川敷の道など自動車が通行できない道はルートを作成できない場合があるが、実際に走行してコースを記録したり、KMLやGPXファイルを読み込んだりすれば、道路以外の地点にもコースを作成できる。

地図上をタップしてコースを作成
コースの高低差も表示可能
iPhoneにKMLやGPXファイルをメールで送付することでコースを取り込める
コース登録の際は「山岳」「平地」などコースタイプを選択可能

 作成したコースは投稿してほかのユーザーと共有することが可能だ。さらに、自分が作成したコースやほかのユーザーが登録したコースのトップタイムを目標にして走れる「トライ機能」も搭載しており、走行中は経過時間や最高速度、走行距離、平均速度などさまざまなデータを見られる。各コースのトップランカーには、アプリ内のアイテムとして、総合・山岳・平地などコースタイプ別ジャージが付与される。

 本バージョンでは、投稿したコースを削除する機能がない点など、未完成な部分も見られるが、UIがシンプルで分かりやすく、コース作成も簡単に行えるなど魅力的な点も少なくない。サイクリスト向けの手軽なコース共有アプリとして、トレーニングへのモチベーション維持のツールとして活用できる。

トライするコースを選択
スタート画面
開始地点の近くに行くとカウントダウン開始
カウントダウン画面
信号などで一時停止したときはタイム計測も一時中止できる

ドライブ中の風景が未来世界になるiPhone向けARゲームアプリ「漫画ドライブ」

 ゼンリンデータコムはこのほかにも、位置情報を活用したアプリとして、iPhone向けARドライブゲーム「漫画ドライブ」の提供も開始した。漫画ドライブは、GPS情報などから車の速度や加速度、方向などを検出して、自動車の進行方向に連動してARでゲームを楽しめる同乗者向けのアプリだ。現実の映像と未来世界のAR映像が切り替わりながらゲームが進行し、未来の地球を世界一周するという内容となっている。AR映像には擬音が随所に表示されて、まるで漫画のような映像を楽しめる。

 ステージクリアごとに運転評価がランクで表示されて、ランクごとにゲーム内ゴールドを獲得することが可能で、稼いだゴールドで新しいマシンなどに交換できる。ゲーム中はiPhoneをクレードルなどに固定する必要はなく、端末をさまざまな方向に向けると、それに応じてARが連動して表示される。ゲーム進行中の画面をTwitterやFacebookに投稿できるほか、GameCenterと連動してほかのユーザーとスコアを競うことも可能。見慣れた町並みの風景が未来世界となる映像はインパクト大だ。

画面上に擬音が表示
警告画面
ステージクリア

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。