山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿
微博でステマ? 政府主導キーワードのホットワード化目立つ ほか
~2013年2月
(2013/3/19 06:00)
本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。
微博でステマ? 政府主導キーワードのホットワード化が目立つように
新政治体制で汚職なき清き政治をアピールする中国は、「食事は無駄に残さず、きれいに食べよう」とアピール。現在、人々の情報伝播に一役買っているマイクロブログ「微博(Weibo)」においても、「きれいさっぱり皿の上の食事を食べきる」という「光盤行動(光盤は本来光ディスクという意味)」という言葉が駆け巡った。環境改善から「低炭」関係の単語もホットワードとなることがあった。また、近年突如登場した、習近平氏の日々を追い、近くから氏の写真を撮り配信していく「学習粉絲団」なるアカウントもしばしばホットワードに。
ここ最近、特に中国政府が訴えたりアピールしたりするキーワードのホットワード化が目立つ。微博上のステルスマーケティングが、誰の目にもわかるほど露骨になってきている印象を受ける。この3月にも、フォロワーを多数抱える台湾の芸能人「何閏東」氏が同氏の微博上でつぶやく内容に加え、「(テレビで報道する)だいたい8:20につぶやく」という依頼内容まで誤って書いてしまったことから、同時刻に同じような内容をつぶやいた有名人のリストが作られるなど、ネット民から官制ステルスマーケティングだと批判を受けた。
モバイルが浸透する中、SMSの利用率が初の減少
中国政府の情報産業省に相当する工業和信息化部(工信部)が2月に発表した1月の通信業統計では、はじめてSMSの通信量が前年同月比で減少した(10.0%減)。
同資料ではモバイルインターネット利用数が前年同期比で約1.5倍(53.8%増)となっていていること、3G利用者がこの1年で1億ユーザーを突破したことに加え、マイクロブログ「微博(Weibo)」や、LINE(中国語は「連我」)や微信(WeChat)などの新メッセージングサービスの利用者増加で相乗効果が現れているとした。
工業和信息化部が同月発表したモバイルについてのホワイトペーパー「移動互聯網白皮書2012」によれば、スマートフォンの年間出荷台数は2億5800万台だという。
中国の新年を祝う春節(旧正月)は今年は2月10日となったが、今年はスマートフォンと、微博や微信やQRコードを利用したあけおめメッセージのやりとりが行われ(「微拝年」という言葉がつくられた)、SMSの利用の減少が明確に感じられた。
ブロードバンド、4Mプラン利用家庭が半分以上に。3Gは5インチスマホが無料に。
工業和信息化部(工信部)はブロードバンドについての利用状況を発表。去年1年でFTTH契約者数が4900万増えて9400万に。またADSLについても4M以上のプラン利用者は全利用者の63%が利用しているという。また公衆無線LANスポットについても、130万地点に昨年新たに設置したとした。
また3G契約者数は年末の段階で1億を突破したが、今年はさらに1億契約者を増やすことを目標としている。ここ1年でのスマートフォン新規加入をけん引したのは、数字的にキリのよい「大画面4インチディスプレイ」「デュアルコア 1GHz CPU」のスマートフォンを、キャリア契約で無料でもらえるという動きであった。
2月にW-CDMA方式の3Gサービスを展開する中国聯通(China Unicom)は、「大画面5インチディスプレイ」「クアッドコア」「21M(HSPA+)」を同社の通信プラン契約で無料で提供するキャンペーンを開始。今年はキャリア各社は、このキーワードのスマートフォンで新規ユーザーを開拓していくことだろう。
少なからずネット利用者「ネットショッピング強迫症」に。変なグッズにもニーズ。
サイト「民意中国網」とヤフー中国が共同でオンラインショッピングについてのアンケート調査を実施。回答数は1937人で、70年代生まれ(70後)が33.3%、80年代生まれ(80後)が40.2%、90年代生まれ(90後)が7.8%。その中でオンラインショッピングについて、52.7%が常に利用し、28.0%が時々利用し、14.6%が少ない頻度だが利用すると回答した。また71.4%が身近に「オンラインショッピング強迫症(網購強迫症)」の人とを何人か知っているとし、36.3%の人がオンラインショッピング強迫症の人が少なからずいると回答、23.5%は自身がオンラインショッピング強迫症であるとした。
オンラインショッピング強迫症とは、オンラインショッピングをすること自体が娯楽となっていて、常に淘宝網などのオンラインショッピングサイトを眺めては何か不要なものまで買ってしまう現象を指す。
オンラインショッピングの魅力や必要以上に買ってしまう原因についての回答は、多い順い「値段が安い上に各種キャンペーンを行っている(73.0%)」「リアルショップに行く手間が省けて短時間に沢山の買い物ができる(68.8%)」「売っているモノの種類が多く、変なモノもよく売っている(58.9%)」となっており、価格の安さ、手間が省けること、豊富な商品から選べるなどの利便性が買い物依存症を引き起こしているようだ。
そのほかの理由としては、「支付宝(Alipay)などの現金以外の電子マネーなどで支払うから、際限なく利用してしまう(46.8%)」「ホワイトワーカーは日々プレッシャーが大きく、息抜きとしてオンラインショッピングをするしかない(32.1%)」「趣味を持っていないので時間があるときはオンラインショッピングをするしかない(30.1%)」「サイト上に広告がありすぎて、間違えてクリックしてしまい、その勢いで買ってしまう(26.8%)」などが挙げられた。
実際、「淘宝網(TAOBAO)」をはじめとしたオンラインショッピングサイトには面白くも無駄なモノが沢山ある半面、リアルショップは、無難な品揃えのブランドショップや家電量販店などの大型店舗か、変わった商品を置いてはいるけれど個人商店やコンビニ程度の小店舗なので数多く置けないといった店のどちらかしかない。筆者自身も欲しいモノを買おうとしたら、リアル店舗では欲しい商品を探すのはあまりに見つからず大変なのでネットで購入するクチだ。
こうした調査からも、現在の中国では、生活必需品だけでなく、東急ハンズやヴィレッジヴァンガードで扱っているような、こだわりの製品や変わった商品の需要もあることがわかる。
モテない男女が話題に
モテない人を意味する〓絲(〓は尸(しかばね)に吊。)という近年できた人気の造語がある。中国のインターネット利用者は40歳未満がほとんどなので、この単語の話題が出ると盛り上がりやすいが、特に2月はこの言葉に関係する話題がネット上で話題となった。
中国で最有力の出会い・結婚サービスプラットフォームを提供するサイト「世紀佳縁」は、昨年末に結婚事情に関する「2012-2013年中国男女婚恋観調研報告」を発表。
交際相手に望む最低収入について省ごとにアンケートしたもので、「18歳以上の中国人で未婚は2億4900万人」「平均結婚年齢は男性は26.7歳で女性は24.9歳」「結婚前の同居は男性は86%が望んでいるのに対し女性は36%しか望んでいない」「主婦になりたくない女性は39%」といった結果が報告されている。
この報告の、相手に臨む収入についてのデータを2月になって新華網がピックアップしてニュースにしたことから話題となり、様々なサイトで転載され広まった。
その情報とは、多くの地域で女性がパートナー候補となる男性に望む月収が5000元(7万円以上)であり、北京上海深センでは男性に月収7000元(約10万円)~1万元(15万円弱)を求めているというもの。一方男性はというと、男女共働きが当たり前の中国で、男性は女性に高所得を求めず、女性が求める月収の半分以下の平均月収程度の給料をパートナー候補に求める結果となった。男女ともに90後(1990年代生まれ)、80後(1980年代生まれ)、70後(1970年代生まれ)と年齢が上がるほど、相手に求める年収は高いものとなっている。そのインパクトから、「恋愛起歩価(恋愛がはじめられる価格)」という言葉ができたほどだ。
また、旧暦の中国では2月に新年の祭りとなる春節があり、年越しの季節に当たるためか、「2013年〓絲新基準」、すなわちモテない男、モテない女新基準というブログ記事が出て、各所に転載された。モテない男の基準は「持ち物が安っぽい、田舎くさい」「低所得」といったお金にまつわることが多いが、モテない女は「ファッションに疎い、気にしない」という女子力がらみのものが多かった。
いずれの話題においても、ネットでは、これではモテたくてもモテようがない、という声があがっていた。
ネットゲーム依存症対策に政府が乗り出す
中国政府の各部門は、政府主導でネットゲーム依存症対策の研究対策に取り組む「未成年人網絡遊戯成〓綜合防治工程工作方案(〓はやまいだれに隠)」を発表。
外国の研究結果も参考にしながら、ネットカフェやネットゲームのコントロール、回復プログラムなどさまざまな角度から研究するという。過去にもネットカフェやネットゲームの管理や、ネットゲーム依存症から回復する施設は存在していたが、横の連携も使った総合的な研究はなかった。
ふたたび動画サイト「優酷(YOUKU)」が配信許可なき動画を配信し提訴される
動画サイトでトップシェアの優酷(YOUKU)が、再び許可なき動画コンテンツの配信で、別の動画サイトから訴えられた。訴えたのは元々老舗のダウンロードサイトで、現動画サイトの迅雷(Xunlei)。問題となったのは映画タイトルなど13タイトル。版権無きコンテンツの配信もあれば、合意した契約以外での配信を勝手に行ったコンテンツの配信もある。
1タイトルにつき5~25万元の損害が発生したとして、総額100万元弱の損害賠償請求をした。ただ優酷は「まだ様子見」とのこと、「実際は優酷(YOUKU)は数百タイトルについて違反を犯している」と語る迅雷は、裁判の行方次第で「さらに1000万元以上の損害賠償請求をする」ということだ。
優酷は去年、業界第2位の土豆網(TUDOU)と突然合併し、それまでの優酷と土豆とのコンテンツ獲得がための版権バブルに終止符を打った。その後動画サイトは適正価格で動画の版権を買うだろうと予想されていた。