第128回:インターネットラジオとMP3ネットワーク再生に対応
サン電子のネットワークオーディオプレーヤー「BiBio wGate」
サン電子から、ネットワークオーディオプレーヤー「BiBio wGate(INR3000)」が発売された。従来のインターネットラジオの再生に対応した製品からデザインが一新され、さらにネットワーク経由でのMP3再生にも対応したのが特徴だ。その使い心地を検証してみよう。
●お手頃な価格に
BiBio wGate |
従来モデルのBiBio(INR1000)が発売されたとき、「インターネットラジオが手軽に聴ける点は面白いが、もう1万円安ければ……」と感じていたが(※編集部注:INR1000発表時の店頭販売価格は3万円半ばと発表されていた)、今回の新型BiBio wGateは同社のダイレクト販売で24,800円と、かなりお手頃な価格で登場してきた。
価格が安くなった分、従来機で搭載されていたスピーカーやメモリースティックスロット、USB端子などが省略されているが、個人的には今回の新機種の方がシンプルで好印象だ。既存のオーディオシステムに接続して利用するというスタイルの方が実用的なうえ、利用シーンの幅も広い。「さらに5,000円安くして、1万円台で買えるようにならないか?」などと、さらなるわがままも言いたくなるところだが、これ以上、安くすると機能面が犠牲になる可能性もあるので、このあたりが良い落としどころなのだろう。
いきなり価格の話題から入ってしまったが、BiBio wGateは、基本的にはインターネットラジオの再生端末だ。背面のネットワーク端子(10BASE-T)を利用して、インターネット環境に接続するだけで、手軽にインターネットラジオを楽しめるようになっている。
通常、インターネットラジオを楽しむには、Windows Media PlayerやRealPlayer、Winampなどのソフトウェアを利用し、PC上で再生するのが一般的だが、PCという限られた環境でしか利用できないため、あまり一般的とは言えなかった。その点、BiBio wGateであれば、既存のオーディオシステムなどと組み合わせて、リビングなどのPCの存在しない環境でも手軽にインターネットラジオを楽しむことが可能になっている。
標準では、サン電子が提供するWebサーバーのHTMLコンテンツに記述されている放送局(LIVE365やSHOUTcast、SANTAC MENUなど)を聴くことができるが、このほか放送局のURLをプリセット登録することで、手動で放送局を追加することもできる。お気に入りの放送局があるという場合は、このような使い方をするといいだろう。インターネットラジオという、これまであまり一般的ではなかったメディアを普及させようという面白い発想の製品と言える。
LIVE365やSHOUTcastなどの有名な放送局があらかじめ登録されており、手軽に楽しむことができる | URLを手動登録することで、好みの放送局を追加することも可能(最大10局)。標準メニューに好みの放送局が登録されていないときは、この機能を利用すると便利だ |
●ネットワーク経由でのMP3再生にも対応
もちろん、インターネットラジオが聴けるだけでは、それほど欲しいと思うユーザーは少ないかもしれないが、BiBio wGateでは、「wGate」という名の通り、インターネットラジオに加えてネットワーク経由でのMP3再生にも新たに対応している。
仕組みは単純だ。最近では、ネットワーク経由での映像や音楽、静止画の再生にUPnP AVやDLNA v1.0のような仕組みが利用される傾向にあるが、BiBio wGateではファイル共有システムを利用している。言わば、他のPCに保存されているMP3ファイルを再生するのとまったく同じ方法だ。
具体的な使い方を紹介しよう。まずは、BiBio wGateをネットワークに接続する。BiBio wGateは標準でDHCPによるIPアドレスの取得に対応しているので、ルータのLANポートやハブのポートに接続するだけでかまわない。なお、BiBio wGateの背面にはCFスロットも用意されており、ここに無線LANカードを装着することで無線LAN(IEEE 802.11b)での利用も可能だ。テストしたところ、バッファローの「WLI-CF-S11G」との組み合わせで問題なく利用できた。リビングなどに設置する場合は、無線LANの方が便利だろう。
有線の場合、DHCPによってIPアドレスを自動的に取得できるため、特別な設定は不要。ネットワークに接続するだけで利用できる | バッファローのWLI-CF-S11(IEEE 802.11b)など、CFタイプの無線LANカードを利用することで無線LAN環境でも利用できる |
続いて、PCやNASでMP3ファイルが保存されているフォルダを「共有」に設定する。この際、注意すべきなのはセキュリティの設定だ。共有フォルダに適切なアクセス権が設定されていないと、場合によってはBiBio wGateからアクセスできない(フォルダ情報の取得に失敗する)。家庭での利用であれば、「everyone」に読み取りの権限を与えておけばいいが、他のユーザーにそのフォルダを参照されたくない場合は、特定のユーザーのみに読み取りの許可を与えておこう。
PCやNAS側の設定が完了したら、BiBio wGateに共有フォルダを登録する。設定はBiBio wGateの前面にあるディスプレイとボタン類でも可能だが、通常はPCからネットワーク経由で行なった方が簡単だろう。PCでブラウザを起動し、URLに「http://bibio2/」を指定すると、設定画面を表示できる。「Server」の項目を選んで、先ほど設定したPC、もしくはNASのコンピュータ名、共有名、IPアドレス、アクセスの際に利用するアカウントを登録しておこう。なお、BiBio wGateに登録できる共有フォルダは最大で3つまでとなっている。
PC側で共有設定にしたフォルダをBiBio wGateに登録することで、PCやNAS上のMP3ファイルをネットワーク経由で再生できる |
ここまでの設定ができれば、実際にBiBio wGateから共有フォルダへアクセスが可能になり、MP3ファイルを再生できる。トップメニューから、前面のボタンを操作すると、「\\コンピュータ名\共有名」が表示されるので、これを選択するとフォルダ内のMP3ファイルが再生される。なお、共有フォルダにサブフォルダが存在する場合は、再生したいMP3ファイルが存在するサブフォルダを選択してから、再生するという手順になる。
前面のボタンを操作し、PC上の共有フォルダを指定するとMP3ファイルを再生できる |
実際に使ってみた印象としては、どちらかというとPCとの組み合わせよりも、NASとの組み合わせが便利だと感じた。NASであれば、誰もがアクセス可能な共有フォルダがはじめから設定されているので、PCのような共有設定の手順が必要ない。また、PCの共有フォルダは、PCが起動していないと利用できないが、常時起動しているNASであれば常にBiBio wGateからMP3ファイルにアクセスできる。BiBio wGateをより便利に使うなら、NASを追加するのもいいかもしれない。また、1月に発売が予定されている20GB HDD搭載の「BiBio JukeBox」を購入する手もあるだろう。
なお、BiBio wGateにはリモコンが付属していないが、赤外線ポートを搭載しているため、市販の学習リモコンなどの利用が可能だ(携帯電話用のiアプリも提供されている)。本体前面のボタン操作は決して快適とは言えないので、リモコンの利用をおすすめしたいところだ。
●全体的な完成度は高いが、改善点も
このように、インターネットラジオの再生に加えて、MP3のネットワーク再生も可能なBiBio wGateだが、全体的には良くできているものの、いくつか気になる点もある。
ひとつは、MP3の再生がフォルダ単位に限られる点だ。このため、アルバムごとにMP3が保存されている場合は、別のアルバムの曲を聴くために、わざわざフォルダを移動しなければならない。もちろん、聴きたいMP3ファイルをフォルダにまとめておくという方法もあるが、できればプレイリストに対応して欲しい。
また、MP3だけでなく、WMAやAACの再生にも対応して欲しいところだ。Windows Media Player9以前やiTunesで取り込んだ音楽など、WMAやAACの資産を多く抱えているユーザーも少なくない。これらを再生できないのは残念だ。
無線LANは前述の通り、CFスロットに無線LANカードを装着することでIEEE 802.11b環境でも利用できるのだが、WEPの設定がASCII入力にしか対応していない。筆者のように16進数でWEPキーを設定している場合は、ネットワーク全体の変更が必要になってしまう。できれば16進数での登録も対応を望みたいところだ。
なお、当初は、MP3再生の仕組みにファイル共有ではなく、UPnP AVやDLNAを使うべきだと考えていたのが、実際に使ってみると、どちらが優れていると判断するのは現時点では、難しいことがわかった。というのも、前述の通りBiBiO wGateはNASでの利用が適していると思われる製品だが、現状のNASはファイル共有以外では利用できないからだ。実質的な利用シーンを考えれば、現状はこの方法がベストと考えて差し支えないだろう。
ただし、UPnP AV/DLNA準拠であれば、以下の2点でメリットがあると考えられる。
- コンテンツの場所を意識する必要がない
現状のBiBio wGateのファイル共有方式では、PCの登録や共有フォルダの登録作業が必要となる上、再生時にもファイルが保存されているフォルダを意識する必要がある。UPnP AVであれば、これを意識する必要がなくなり、端末側の設定が不要になる。 - 将来的な発展が期待できる
DVD&HDDレコーダなどのUPnP AV/DLNA対応が進みつつあることを考えると、 将来的に、これらの機器をBiBioのストレージとして使える可能性が高い。
以上のように、いくつか改善して欲しい点はあるものの、全体的には良くできた製品だと思う。ネットワークオーディオプレーヤーという名の通り、インターネットラジオやネットワーク経由でのMP3再生など、さまざまな音楽をネットワーク経由で楽しむのに最適だろう。
関連情報
2004/12/14 11:05
-ページの先頭へ-