Skype対応のタッチパネルテレビ電話
ASUSTeK「Videophone Touch AiGuru SV1T」


 海外に住む家族や友人などとの会話に広く利用されている「Skype」。そんなSkypeを手軽に使えるのがASUSTekから販売されている「AiGuru SV1T」だ。PCレスでビデオチャットを楽しめる同製品を実際に使ってみた。

必要な人にとっては待望の製品

ASUSのタッチパネル搭載Skype端末「AiGuru SV1T」。ビデオチャットを手軽に楽しむことができる。実売価格は3万円前後

 インターネット上に数あるサービスの中でも、「Skype」はちょっと特殊な存在だ。

 インターネット上のサービスであれば、どのようなサービスでも、人によってある程度の利用頻度の差があるものだが、Skypeに関しては、この差が極端に大きい。

 おそらく、ほとんどの人が「かつては使っていた」、もしくは「何度か使ったことがある」といったところだろうが、人によっては「無くては困る」という人も存在する。具体的には、海外に家族や友人などが住んでいる人たちが、そうだ。

 手軽になったとは言え、料金を考えると海外に住んでいる家族や友人に手軽に電話をかけることはできない。しかし、Skypeを利用すれば、音声だけでなく、映像を見ながらのビデオチャットを手軽に、しかも無料で楽しめるというわけだ。

 そんなSkypeをより手軽に使えるようになるのが、今回紹介するASUSTeKの「AiGuru SV1T」だ。据え置き型のSkype対応端末で、まさにビデオチャットをするための機器となっている。Skypeへの依存度が高い人、もしくはこれからSkypeを使うことを検討している人にとっては、まさに待望の製品だ。

タッチパネル搭載でバッテリーでも駆動可能

 AiGuru SV1Tは、まさにテレビ電話といったイメージのデザインを採用した据え置き型のSkype端末だ。

 Skype用の機器というと、国内ではPC向けのハンドセットなどが一般的で、単体で動作する専用端末も音声通話用の製品が主だったが、本製品は、前面に800×480ドットの解像度を持つ7インチのTFTディスプレイと30万画素のCMOSカメラ(640×480)が搭載されており、カメラで撮影した映像を見ながら会話を楽しめる端末となっている。

正面側面
背面シルバーグレイとパールホワイトの2色がラインナップされる

 また、液晶ディスプレイはタッチセンサーを搭載しており、画面上を指で触れることで各種操作が可能となっており、画面上に表示されたコンタクトリストから通話したい相手を選んで通話したり、音量調節やビデオ表示のオン/オフなどの各種設定もタッチ操作でできるようになっている。

 ネットワークに接続するためのインターフェイスは10BASE-T/100BASE-TXの有線LANが1ポート搭載されているほか、本体にIEEE802.11b/g準拠の無線LANが内蔵されており、ワイヤレス環境でも利用可能。

背面にLANポートを搭載。マイク、ヘッドホン端子、電源に加えてUSB端子も搭載されるが、ここはふさがれている

 しかもバッテリーも内蔵されており、無線LANと組み合わせれば、最長で約20分の連続通話も完全なワイヤレスで楽しむことが可能だ。価格が3万円前後とかなり高価なので逆に不足部分があっては困るのだが、機能的には非常に充実したSkype端末という印象だ。

良くできたセットアップ

 実際に使ってみた感想としては、なかなか良くできている印象だ。まず、セットアップが手軽にできる。

 はじめて起動すると、ネットワークやSkyepのID設定などの初期設定が必要になるのだが、インターネット接続に利用する回線や設定が自動的に判断されるようになっている。

 たとえば、本体背面に有線LANを接続した場合、起動時に有線LANが認識されDCHPでIPアドレスが取得できればそのまま接続、できなければPPPoE接続設定と、LANケーブルの接続の有無やその後の状態によって自動的に設定画面が表示される。

 もちろん、有線LANを接続せずに起動すれば、無線LANでの設定が自動的に開始され、近くにあるアクセスポイントの一覧から接続先を選択するだけで設定が可能だ。

セットアップはとてもカンタン。電源オン後、まずは言語を選ぶネットワークの種類が自動判別される。無線LANの場合はアクセスポイントを自動検索
ソフトキーボードをタッチして暗号キーを入力すれば接続完了SkypeのIDを登録すればすぐに利用可能となる

 残念ながらWPSなど無線LANのボタン設定機能には対応していないため、暗号キーを手動で入力しなければならないが、回線種別や接続方法などの設定がすべて自動的に行われるのには感心した。

 ちなみに、回線の自動判断は設定後にも有効で、たとえば有線LANで設定後、持ち運ぶために、LANケーブルを取り外すと、自動的に回線環境が変更されたことが検知され、無線LANの設定画面が表示される。

 この手の製品の場合、たいていの場合、使い始める前の設定に手間取ったり、回線環境の変更時に設定に困ることが多いのだが、本製品の場合、設定に関してはあまり苦労しない。ファイアウォールがある特殊な環境でもない限り、ルーターの設定なども不要だ。これなら初心者でもさほど苦労せずに使えるだろう。

有線LANを取り外すと、ネットワークの変更が検知され、設定し直すかどうかを選択可能。無線LAN接続などにすぐに変更できる

通話もカンタンで音声もクリア

 通話のしかたもカンタンだ。画面上に「通話発信」、「コンタクト」、「履歴」などの大きなアイコンが表示されるので、これを指でタッチ、もしくは前面の方向ボタンや決定ボタンを使って操作することができる。

 Skyepを利用したことがあり、コンタクトリストに相手が登録されている場合は、そのまま相手をタッチすれば通話を開始できる。もちろん、コンタクトリストに新たに相手を登録したり、検索機能を使って相手を探すことも可能だ。

 実際に通話してみたところ、音声はかなりクリアな印象だ。2台の端末を用意し、片方を光ファイバーを利用した回線に無線LANで接続、もう片方を有線LANで同じく光ファイバーに接続して利用してみたが、相手の声がはっきりと聞こえ、こちらの声もクリアに相手に伝わっていた。

 また、WiMAX用の無線LANルーター(NECアクセステクニカのAterm WR3300R)を利用してビデオチャットをしてみたが、この場合もクリアな音声での通話ができた。

【動画(Flash)】実際のビデオチャットの様子

 Skypeの場合、回線環境やネットワークの影響もあるが、どちらかというとPCのマイクやスピーカーの調整が音声品質を左右することが多い。事前に音声レベルのチューニングをしっかりとしておかないと音声が聞こえにくかったり、相手に伝わらないことがよくあるのだが、本製品はあらかじめこのレベルが調整済みとなっているため、こういった点にほとんど苦労しない。

 ビデオに関しても、なかなか悪くない印象だ。カメラが30万画素なので、美しい映像とは言えないが、相手の表情などもきちんと確認できるうえ、動きのある映像もスムーズに表示される。映像の品質に関しては、求めればそれこそキリがないが、テレビ電話的な使い方をする上では、必要十分な品質だ。

 なお、本製品ではSkpe会議通話への参加、Skype Out(加入電話や携帯電話への通話)、オンライン番号(050番号を利用した着信)、ボイスメールなどのSkypeの各種機能にも対応している。

 試しにSkype Outで携帯電話に通話してみたが、こちらの音声品質にも問題はなかった。個人的には、クレジットの購入などのSkyepの契約設定が端末から直接できないのが残念だが、ここまでできると固定電話の代わりとしても十分に利用できそうだ。

SkypeOutやオンライン番号、ボイスチャットなどにも対応している

仕事用として検討するのも悪くない

 このように、ASUSTeKのSkype端末「AiGuru SV1T」は、手軽さ、品質ともに、なかなか完成度が高い製品と言える。冒頭で紹介したように、海外に住む家族や友人との会話に便利だが、Skype会議通話ができることなどを考えると、ちょっとした打ち合わなどの仕事用の使い方もなかなか便利そうだ。

 PCの場合、PCが起動し、かつSkypeが起動していないと使えないが、この端末なら常に起動し、Skypeでの通話を待ち受けることができるので、確実な連絡手段としての存在意義も見えてくる。

 ただし、唯一の欠点は価格だ。3万円前後という価格は、気軽に買えるものではないので、明確なメリットが見えないと手を出しにくい。海外との通話、在宅ワークでの連絡・打ち合わせ手段など、必要なシーンがはっきりとしている場合はおすすめできる製品だが、決して万人向けのものではないだろう。


関連情報

2010/6/8 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。