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第437回:Android 3.0の魅力はどこにあるのか? auから登場した「MOTOROLA XOOM Wi-Fi TB11M」


 auからAndroid3.0搭載タブレット端末「MOTOROLA XOOM Wi-Fi TB11M」が発売された。「次は」、「今年は」という言葉もよく聞かれ、今後の普及が見込まれるタブレット端末だが、Android3.0を搭載した注目製品を実際に使ってみた。

「注目」のタブレット向け新UI

 タブレット向けとして位置づけられ、従来とは異なる刷新されたUIが採用されたAndroid 3.0。このOSが搭載された端末が登場してきた意味は、確かに大きいのかもしれない。XOOMを実際に使ってみると、そう感じさせられる。

auから発売された「MOTOROLA XOOM Wi-Fi TB11M」

 現状は、まだ対応アプリが少ないうえ、UIの違いに戸惑うことも多く、ハードウェアの性能も完全に引き出せているようには思えないが、少なくとも目新しさは感じることができる。

 今後、タブレットが広い層のユーザーに普及してくれば話は別だが、現状、タブレット端末、しかもAndroid 3.0搭載タブレット端末の購入層は、間違いなく、先進的なユーザー層だ。この層のユーザーは、すでにスマートフォンでAndroid2.xを体験している可能性が高いことを考えると、サイズの違いこそあれ、同じ2.x系のOSを搭載したタブレット端末に新鮮な魅力を感じることは期待できない。

 まずは、この先進層がターゲットになるならば、処理速度や3Dといった技術的な要素はもちろんだが、新しい体験ができないことには、高い費用を支払ってまで、手を伸ばしてもらうことは難しいと言えるだろう。そういった意味では、良し悪しはともかく、従来の2.xから一段飛ばしをしたような印象のAndroid 3.0のUIのインパクトはそれなりにある。

 個人的には、このUIに込められたユーザビリティ的な、もしくは技術的な裏付けが見えにくく、単純な「目新しさ」しか感じられないのが残念なのだが、これは使い込んでいくうちに理解できることなのかもしれない。

 どことなく、XPのシンプルなUIがVistaのAeroに切り替わったときのような雰囲気を感じるが、斬新なUIが単に目新しいだけのものでなくなることを期待したいところだ。

ユーザーインターフェイスが一新されたAndroid 3.0。タブレットという形態と高性能なハードウェアに特化した改良が加えられている

 

10.1インチの大画面タブレット

 では、実際に製品を見ていこう。本製品はMotorola Mobility製となる10.1インチ(1280×800)の液晶を搭載したタブレット端末だ。プロセッサにNVIDAのTegra2(1GHz/デュアルコア)を搭載し、タブレット向けのOSとなるAndroid 3.0を搭載する。

 同様のプラットフォームを採用するタブレットはNTTドコモから発売されたLGのOptimus Pad(8.9インチ)などもあるが、今回、auから発売されたのは3Gには対応しないWi-Fiモデル(IEEE802.11n/b/g)となっている。

 10.1インチということで、本体サイズは幅249×高さ167×厚さ12.9mmと大きめで、重量も700gとなっている。大きさとしては現行のiPadとほぼ同サイズと考えて差し支えないだろう。

「MOTOROLA XOOM Wi-Fi TB11M」正面 GalaxyTab、iPad、XOOMの比較
「MOTOROLA XOOM Wi-Fi TB11M」側面 「MOTOROLA XOOM Wi-Fi TB11M」背面

 

 このため、片手で長時間持つとジワジワと手に負担を感じるが、持ち運ぶのにはまったく苦労しない。Wi-Fiモデルということもあり、外で使うというよりは、家庭内での利用が主になると思われるので、モビリティよりも、画面の見やすさなどを重視した端末だ。

 最大の特長は、冒頭でも触れたAndroid 3.0が搭載されている点だろう。グラフィカルな効果が採用された新しいUIが搭載されており、ホーム画面を左右にフリックするAndroidではおなじみの画面切替操作で、内側から眺めた箱が回転するような3D効果を体験できたり、ホーム画面にガジェットなどを追加する画面で「すぅっ」とズームアウトするような効果を味わうことができる。

 ハードウェアの性能向上が大きいと思われるが、こういった効果を多用しても、動作がスムーズで、操作感は悪くないのは好印象だ。

ホームの移動やガジェットの追加などで、凝った効果が採用されているが、動き自体はスムーズ

 ただ、これがユーザーフレンドリーかというと、決してそうでもない。Android 2.xの操作に慣れてしまったからかもしれないが、ステータスバーが上に見当たらなかったり、ホームやメニュ−、戻るなどのよく使うキーを探してしまったりと、操作に戸惑うことも少なくない。

 もちろん、慣れの問題なのだが、ホームやメニューなどのキーの表示を抽象化しすぎている印象もあり、はじめて使うユーザーでも迷わず使えるかというと、若干、疑問を感じざるを得ない。

 例えが適切かどうかわからないが、自動車メーカーが新型車を発表する前にコンセプトモデルなどをショーで展示する場合がある。これは、実用性よりもデザインやイメージを伝えるためのものだが、どことなくAndroid 3.0は、このコンセプトモデルのように思えてならない。

 ユーザービリティを考慮すると、UIは泥臭くなることがあるのだが、デザインを優先しすぎて、この泥臭さが完全に排除されているように思える。もっと言えば、無機的すぎて、親しみが感じられない。果たして、このUIにはじめて触れた人が、直感に頼るだけで、どこまで適切な操作ができるのか? これは大きな疑問だ。

 唯一、右上に「アプリ」とカタカナを記載したデザイン的な勇気は認めるが、タブレットという端末の用途を考えると、もう少し、広い層が使うことを考えた配慮があっても良さそうに思えてならない。

 

ゲームで活かされるハードウェアスペック

 一方、ハードウェアについては、今後の可能性を垣間見ることが出来た。そもそも、この端末は速い。動作もスムーズだし、アプリを多数起動しても問題が発生するようなこともない。おかげで、ストレスなく利用することができる。この点での満足度は高い。

 ただ、デュアルコア、Tegra2というスペックで考えると、これだけでは物足りない。そこで注目されるのがゲームだ。

 Android 2.x系のゲームも大画面でプレイできるうえ、動作もスムーズだが、「NVIDIA TEGRA ZONE」というアプリ経由で、Tegra2に最適化されたHD版のゲームをダウンロードすることができる。

NVIDIA TEGRA ZONE。Tegra2の性能を活かしたゲームが紹介されている

 

有料のゲーム「SamuraiII:Vengeance」。グラフィックが美しく、動作もなめらかで、確かにゲームの完成度は高い iPadなどにも提供されているFruit NinjaのTegra2版。ゲーム内容は同じで、スムーズさも大差ないため、何が違うのかわからなかったが、飛んでくるフルーツをよくみると光源処理がなされているように見える

 

 当初は、カジュアルゲームしかダウンロードできず、その品質も、iPad版などに比べて光源処理がなされている程度で、スピードなどはほとんど同じ。あまりメリットが感じられなかったのだが、最近になってようやくいくつかのゲームが追加された。

 海外製なので独特の世界観のゲームではあるのだが、これまでのAndroid端末向けのカジュアルゲームと異なる凝ったグラフィック、スムーズな動作が実現されており、やり応えのある仕上がりとなっている。

 タブレットの画面で本気でゲームをプレイしたのがはじめてということもあり、画面をスライドやタップする操作感に慣れず、目と画面の距離、画面の大きさの関係もあるのかもしれないが、3D的な視点で画面の中を主人公がグリグリ動き回るゲームをプレイすると、あっという間に酔ってしまったが、正直、ここまでゲームが動くことは驚きだ。

 なので、これを体験すると、なるほど次世代のタブレットと言われる理由と、これまでのタブレットではなく、こちらを選んだメリットも見えてくる。

 しかしながら、もしも、Android 3.0搭載タブレットのキラーコンテンツがリッチなゲームであるならば、製品としての対抗はPSPやNintendo 3DSのようなゲーム機ということになる。となると、いくらパワフルでも、6万円を越える価格は、コンシューマー向けゲーム機としては高すぎる。また、ゲーム自体も、現在はブラウザ上で動作するカジュアルなものが主流で、必ずしもリッチな表現は求められていない。

 なので、これはあくまでもオマケに過ぎない。このハードウェアは確かにスゴイが、逆に言うと、現状はゲームに魅力を感じないユーザー層には、その魅力が伝わりにくいのも事実だ。

アプリがどこまで出てくるか

 では、XOOMに限らず、Android 3.0搭載タブレットを購入するメリットはどこにあるのだろうか? 新しいUIとゲーム以外では、いくつかのアプリが使いやすくなっているのがメリットと言える。

 たとえば、Gmailはタブレット用のUIとなっており、左側にラベルの一覧が表示されるようになった。これは地味だが、非常に便利だ。同様に、カレンダーもミニカレンダーを表示しながら週間表示で予定を確認できたり、ブラウザもタブやアドレスバーが常に表示され非常に使いやすくなっている(YoutubeもUIが変更されているが、これは凝ってはいるものの、使いやすいとは個人的には思えない)。

 こういった点は、これまでのタブレット端末などに比べると、大きなアドバンテージと言える。

左側にラベルが表示され管理しやすくなったGmail タブやアドレスバーなどが使いやすくなったブラウザ

 

カレンダーもミニカレンダー+週間表示などで見やすい 3Dマップやストリートビューなどもスムーズだし、見やすい

 

 しかしながら、よくよく考えてみると、アプリの使い勝手を上げたいなら、2.x系でもそういった見やすいレイアウトのアプリが提供されれば済む話だ。実際、Twitterのアプリなどは、サードパーティによってさまざまな工夫がなされたアプリがたくさんある。

 また、AppleのiPadなどは、最初からそのアプローチでiPhoneとの差異化を図っている。iPadはiPhoneと基本的なUI部分は共通だ。しかしながら、アプリ側で違いを明確に打ち出すことで、iPadならではの使い方というのをきちんと提案している。

 ハードウェアもUIも違うが用途はほぼ一緒。ハードウェアとUIはほぼ同じだが用途は異なる。この視点でタブレットスマートフォンを対比してみるのも面白そうだ。

 とは言え、これはAndroid 3.0ならではと言えるアプリがほとんど存在しない現時点で話に過ぎない。今後、Andoroid 3.0でしか使えないアプリ、Andoroid 3.0だからこそできることが増えてくれば、2.x系とは異なるハードウェアとUIが活きてくる。そこに期待したいところだ。

ユーザーのニーズにどこまで応えられるか?

 以上、auから発売されたAndroid 3.0搭載タブレット「XOOM」を使ってみたが、これほど評価を下しにくい端末というのも珍しい。こういった用途に使うならXOOMであると、一定の使い方を提案したいところだが、コレといった提案が思いつかない。

 そもそもタブレット端末のニーズはどこにあるのだろうか? 第3のデバイスなどと言われることもあるが、その実態は、スマートフォンの拡張、PCの代わり、高い年齢層向けのIT端末、電子書籍やメディアビューワーなどと、あまりハッキリしない。

 もちろん、多様である、万能であると言ってしまうこともできるのだが、裏を返せば、ユーザーのニーズがどこにあるのかが、まだ手探りということであり、もっと言えば、ユーザー側も何に使いたいかが自分自身でわからない状況だ。

 しくみを用意して自由に使ってもらい、その中でニーズを探りながら、進化させていくWebサービス的な「モノヅクリ」というのも理解できなくはないが、日本人のユーザー層、特に広いユーザー層への普及を狙うなら、ある程度の方向性と具体的な利用スタイルを示さないと、受けられれにくい製品になってしまう。Android 3.0搭載タブレットの課題があるとすれば、この点と言えるだろう。


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2011/4/19 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ