第438回:SATA 6Gbps/USB 3.0対応高速NAS 新機能も追加されたQNAP「Turbo NAS TS-459 ProII」
QNAPから、Turbo NASシリーズの新製品「Turbo NAS TS-459 ProII」が発売された。SATA 6Gbps/USB 3.0など最新のインターフェイスに対応し、ファイル共有やバックアップ時のパフォーマンスが向上したのが特徴だ。その実力を検証してみた。
●実用性にこだわった機能拡張を実施
QNAPから新しく登場したTurbo NAS TS-459 ProIIは、「実用性」への強いこだわりが見えるNASと言えそうだ。
SATA 6GbpsやUSB 3.0に対応した「Turbo NAS TS-459 ProII」。USB 3.0 HDDへの高速バックアップなど、実用性を重視した改善がなされている |
見た目は従来モデルからほとんど変わりないが、内蔵用HDDでのSATA 6Gbpsのサポート、バックアップ用などに利用できる外付けUSB 3.0 HDDののサポート、1/2GBのメモリを装着することでの最大3GBまでのメモリ増設への対応など、内部のハードウェアが改良されている。
CPUは従来モデルと同じ1.8GHzのAtom D525だが、これにより、ファイル共有やバックアップのパフォーマンスが向上している。搭載されるファームウェアも最新の3.4にアップデートされ、リアルタイムリモートレプリケーションやRAID10のサポート、サブフォルダへのアクセス権設定など、使い勝手もかなり向上している。
型番の変化としては、従来の「Turbo NAS TS-459 Pro+」から「Turbo NAS TS-459 ProII」と、「+」が「II」に変わっただけだが、その改善点は、普段の運用を考慮した非常に実用性の高いものとなっているのが特徴だ。
●フロントとリアに1つずつ追加されたUSB 3.0ポート
では、実機を見ていこう。外観の違いは従来製品とほとんどなく、購入時に見分けるのが大変そうだが、唯一の違いとなるのが、フロントとリアのUSBポートだ。
本体正面 | 本体背面 |
フロントと背面に1つずつUSB 3.0ポートを搭載 |
前述したとおり、新たにUSB 3.0をサポートしており、フロントのUSBポートが従来のUSB 2.0からUSB 3.0に変更され、リアについてはUSB2.0ポートは従来製品と同じく4ポートのままで、新たにUSB 3.0ポートが1つ追加されている。
USB 3.0のサポートは最近のNASのトレンドの1つとなっているが、これは地味ながら非常に実用性が高い機能だ。
USB HDDは、NASのバックアップや特定のデータの取り出しといった用途で利用することがあるが、USB 2.0の場合、パフォーマンスが低く、大量のデータを保存するのに時間がかかり過ぎてしまうことがある。これに対して、USB 3.0の場合、パフォーマンスの大幅な向上によって、ファイルのコピーやバックアップが非常に快適だ。
実際、どれくらいの違いがあるのかを試してみたのが以下の画面だ。アイ・オー・データ機器のUSB 3.0対応外付けHDD「HDCA-UT1.0K」を利用し、USB 2.0ポートに接続した場合と、USB 3.0ポートに接続した場合で、どれくらいパフォーマンスに差があるのかをネットワーク上のクライアント(Core2Duo P8600/RAM8GB/OCZ Vertex 120GB)からCrystalDiskMark3.0.1aを利用して計測してみた。
この4月に発売したアイ・オー・データ機器のUSB 3.0対応外付けHDD「HDCA-UT1.0K」。縦置き、横置きの両方に対応。ユーザーはYouTubeとニコニコ動画の動画を保存できるソフト「チューブとニコニコ、録り放題2 Selection」などを無料ダウンロードして利用できる |
USB2.0(左)とUSB3.0(右)の比較。書き込みで大きな差があることがわかる |
リードの値が70MB/sを越えており、おそらくキャッシュの影響があると考えられるが、ライトに関しては、USB 2.0が33MB/s前後のところ、USB3.0ではシーケンシャルで約3倍の96MB/s、512Kランダムで約2倍の62MB/sと、大きな差が現れている。
この差は、実際の運用で大きな違いとなって現れる。以下のグラフは、TS-459 ProIIのバックアップ機能を利用し、66GBのファイルが保存されている共有フォルダーをUSB HDDにバックアップしたときの所用時間だ。
USB 3.0では約16分でバックアップが完了しているが、USB 2.0では約43分もかかっている。わずか66GBのデータで、これほどの差が出るのだから、TB級のデータのバックアップでは、その違いは無視できないものとなるだろう。
TS-459 ProIIのバックアップ機能を利用し、66GBのファイルが保存されている共有フォルダーをUSB接続の外付けHDDにバックアップした際の所用時間 |
複数ファイルからなる66GBのデータをUSBハードディスクにバックアップした結果。USB 3.0ならデータ量が多くなっても、バックアップに時間がかからずに済む
これまで、USB HDDを利用したバックアップは、正直なところ遅すぎて実用性に欠ける印象があったが、ようやく、これで実際に使える環境になったと言える。手軽なバックアップ手段として、USB 3.0が使えるメリットは非常に大きいと言えそうだ。
なお、こちらも冒頭で触れた通り、内蔵HDDのインターフェイスもSATA IIIの6Gbpsに対応している。これにより、内蔵HDD上の共有フォルダーへのアクセスもシーケンシャルリードで80MB/s前後、シーケンシャルライトで100MB/s越えと、非常に高速だ。もともとパフォーマンスに定評がある製品だが、通常の利用でも高いパフォーマンスが得られるのは大きな魅力だ。
内蔵HDDD(ST31000524AS×4、RAID5)上の共有フォルダーへのアクセス |
●地味に便利なサブフォルダのアクセス権設定機能
このように、ハードウェア性能が向上したTS-459 ProIIだが、同時に最新のファームウェア3.4の搭載によってソフトウェア面の機能強化も図られている。
【ファームウェア3.4の強化点】
・リアルタイムのリモートレプリケーション
- リモートNAS/FTPサーバー/外部ストレージにリアルタイムでデータを保存
- 遠隔オフィスでのデータ同期やリアルタムバックアップが可能。
・RAID10のサポート
- RAID1とRAID0を組み合わせることで冗長性とパフォーマンス向上を実現できるRAID10を新たにサポート
・サブフォルダのアクセス許可
- サブフォルダに対して、ユーザーやグループごとのアクセス許可を設定可能
・クラウドストレージバックアップ
- Amazon S3、ElephantDriveへのオンラインバックアップ対応
・MyCloudNASリモートアクセス
- ルーターの自動ポートマッピングとDDNS設定、外部からのアクセス中継
- サービスの提供
・Download Station V2
- BitTorrent/FTP/HTTPダウンロードでのセッション数増加とGUI変更
- RSSダウンロードや複数URLのタスク処理
・Wi-Fiサポート
- USBアダプタを装着することでNASをワイヤレスで設置可能
・VLANサポート
- VLANによって仮想ネットワークでNASの利用者を区別することなどが可能
ファームウェア3.4で強化されたのは、主に上記のような点となるが(このほかの強化点はhttp://www.qnap.com/fw_v34/参照)、個人的に注目したいのはサブフォルダのアクセス許可だ。
従来のファームウェアでは、ユーザーやグループごとのアクセス権を共有フォルダごとにしか設定できなかったが、今回の新バージョンでは、その配下のサブフォルダごとに設定できるようになっている。
ファームウェア3.4では、共有フォルダ内のアクセス権設定を、サブフォルダごとに設定可能になった |
これにより、例えば「User」フォルダを作成し、その配下にユーザーごとの専用フォルダを作成したり、特定のプロジェクト用の共有フォルダの中に、社内向けと社外向けの共有フォルダを作成するといった使い方ができるようになった。
ファイルサーバとしては当たり前のような機能であるのだが、これができるようになったのは非常に大きい。ファイルサーバーから移行する場合でも、従来と同じフォルダ構成で済むうえ、ユーザーの使い方も変えなくて済むだろう。
このほか、MyCloudNASリモートアクセスもなかなか好印象だ。外部からのリモートアクセス機能は、従来バージョンでも提供されていたが、今回の製品ではUPnPによるルーターの自動構成に対応しているうえ、ドメイン名もそのまま取得できるため、設定が非常に楽になっている。全体的な使いやすさが、大きく向上している印象だ。
なお、無線LANのサポートについては、対応するUSBアダプタが手元になかったため、今回はテストできていない。対応製品は、QNAP社の互換性情報サイトから参照できるが、パフォーマンスが重視されるNASを無線LANで接続するメリットはあまりない。設置場所にどうしても有線LANを敷設できないという場合のみ利用を検討するといいだろう。
外部からのアクセスもウィザードやUPnPの利用により手軽にできるようになった | MyCloudNASを利用することで、外出先からのアクセスも手軽にできるようになった |
●正当進化したNAS
以上、QNAPの最新NAS「Turbo NAS TS-459 ProII」を実際に使ってみたが、熟成した製品になったという印象だ。
QNAPのNASは、パフォーマンスの高さとアドインによる拡張性の高さが1つの特徴であったが、今回のハードウェア、ソフトウェアの進化によって、実際の利用シーンで本当に便利だと思える機能がしっかりと強化されている。おそらくユーザーの声をしっかりととらえ、製品開発に活かしている結果だろう。
NASは、Droboの国内上陸やWindows Server 2008R2ベースの小規模向けサーバーOSの登場などによって、その競争が激化しつつある。そういった中で見ても、今回の製品は安定感のある仕上がりになっている。企業やハイエンドユーザーが安心して使える1台と言って良いだろう。
関連情報
2011/4/26 06:00
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