まずはBIGLOBEから登場! 新LTEモバイルルーター NECアクセステクニカ「Aterm MR01LN」


 NECビッグローブがNTTドコモの3G/FOMAエリア対応MVNOサービス「BIGLOBE LTE」の提供を開始した。同社ならではのデイタイムプランで、高速なLTEサービスをリーズナブルに利用できることに加え、NECアクセステクニカ製の新モバイルルーター「Aterm MR01LN」が提供されるのが特徴だ。MR01LNの実力を中心に実際にサービスを使ってみた。

BIGLOBE LTE開始

 「BIGLOBE LTE」は、NTTドコモのXi、およびFOMAエリアで利用可能なMVNO型の通信サービスだ。NECビッグローブは、これまでにもFOMAエリア対応の3G MVNOサービスを提供していたが、今回のサービスで、下り37.5Mbps(一部エリア75Mbps)、登り12.5Mbps(一部エリア25Mbps)の高速な通信にも対応したことになる。

 最大の特長は、利用時間を2時~20時までに制限する一方で、利用料金を月額3770円(BIGLOBE非会員は別途210円のBIGLOBE接続コース契約が必要)に押さえた「デイタイムプラン」がLTE向けにも用意される点(24ヶ月の自動更新で更新月以外の契約解除時は解除料9975円が必要)。24時間利用可能なスタンダードプランの月額4770円に比べて、1000円ほど安くサービスの利用が可能となっている。

 本家となるNTTドコモのXi向けデータプランの場合、月額料金は「Xiデータプランフラットにねん」で5985円(スタートキャンペーン2適用で4935円。さらにプロバイダ使用料別途必要)、データ量が3GBまでとなる「Xiデータプランライトにねん」で4935円となることを考えても、スタンダードプランでも十分に競争力のあるサービスと言っていいだろう。

 デイタイムプランを利用する場合は、利用時間に注意する必要があるが、2時~20時までとなっているため、外出時に仕事の通信手段として利用するような場合は、ほぼ時間を気にせず利用できる。

 出張などの際に宿泊先で夜間に利用したいという場合は、20時までという点がネックになる可能性もあるが、最近ではホテルなどでインターネットが利用できる環境が整っているため、宿泊時はあまり気にする必要がなさそうだ。あくまでも、「モバイル」という外出先での利用シーンを想定して、2時~20時という時間が自分の用途や生活パターンに合っているかどうかを検討すべきだろう。


連続通信時間5時間54分でスマホ充電もOK

 このように、高速かつ利用エリアの広いXiサービスを比較的リーズナブルに利用できるBIGLOBE LTEだが、もう1つ注目したいのが、モバイルルーターとしてNECアクセステクニカ製の「Aterm MR01LN」が提供される点だ。

 BILOBE LTEは、自分で端末を用意する場合、UIMカード(UIMカード/microUIMカード選択)のみの利用でも契約可能だが、契約と同時にモバイルルーターを購入することも可能となっており、その1機種として「Aterm MR01LN」が提供されている。

NECアクセステクニカのLTEモバイルルーター「Aterm MR01LN」

 このAterm MR01LNは、2012年8月現在、一般の家電量販店などでは市販されておらず、BIGLOBE LTEの契約のみで入手可能となっているが(参考価格3万4800円、月額980円のアシストパック月額加算料を24カ月支払うと特典価格0円となる)、LTE対応のモバイルルーターとして高い完成度を誇る注目の製品だ。

 具体的にどの点が注目かというと、バッテリーだ。MR01LNには、内蔵型の3280mAhのリチウムポリマー電池が搭載されている。このバッテリーはモバイルルーターとしては、かなりの大容量で、以下のように、LTEに対応したモバイルルーターの中でもトップの容量となっている。

【仕様比較】
高さ
(mm)

(mm)
厚さ
(mm)
重量
(g)
バッテリー
容量
(mAh)
連続通信時間
(FOMA/LTE)
AtermMR01LN74117161503280約8時間/約6時間
BF-01D68108231931880約5.5時間/約4時間
L-09C1226415.91562700約8時間/約6時間
L-04D906212.6891650約5時間/約4時間

 ただし、サイズはその分大きく、握ると手に余る感覚があるうえ、ポケットに入れるには存在感が若干気になる。とは言え、BF-01Dに比べても、若干大きい程度で、厚さは7mmほど薄く、重量も43gも軽い。これでBF-01Dよりも1400mAhもバッテリー容量が大きいのだから、むしろ優秀と言っても良さそうだ。

サイズが大きく、若干、手に余る印象auのHTC Jと並べてみた。幅や高さがスマートフォンよりも一回り大きい印象

 気になる連続通信時間だが、カタログスペック上の値は、3Gで約8時間、LTEで約6時間となっている。バッテリー容量が大きいわりに連続通信時間がL-09Cと同等になっている点が気になるところだが、待機時間はL-09Cの210時間に比べて、AtermMR01LNはスタンバイ時約250時間、スリープ時約30時間と、バッテリー容量分のアドバンテージは確保していると言える。

 ちなみに、実際の通信時間だが、いつものようにPCから連続でHTTP GETとPINGを実行するテストを実施してみたところ、7:54の測定開始から13:48の測定終了まで、約5時間54分の連続通信を確認できた(Xi時)。ほぼカタログスペック通りの連続通信時間だ。

 残念ながら、以前に本コラムでL-09Cをレポートした際は、筆者宅がXiのエリア外であったため、3G通信時で連続7時間21分というデータしか手元に残っていないのだが、Aterm MR01LNがL-09Cと同等、もしくはそれ以上の連続通信時間を備えていることは確実と言えそうだ。

 現状のLTEは、スマートフォンもそうだが、バッテリー消費の激しさが1つの課題になっている。「速くて快適、あとはバッテリーさえ持てば……」と考えている人も少なくないと思われるが、今回のAterm MR01LNは、このような市場のニーズをうまく汲み取った製品と言ってよさそうだ。

 なお、本製品には、USB給電機能も搭載されており、内蔵バッテリーの電力をスマートフォンなどの充電にも活用することができる。USB給電を利用するには、本体の電源がOFFまたはスタンバイであること、付属の白色のUSBケーブルを利用すること、本体の電池残量が半分以上あること(半分以下になると自動的に給電停止)の3点が条件となるが、これによりAterm MR01LNをいざというときのモバイルバッテリーとしても利用することが可能だ。

付属のUSBケーブル(白い方)を利用することでスマートフォンへの充電も可能

 実際にテストしてみたところ、さすがにiPadは「充電していません」と表示されてしまったが、iPhone4、GALAXY Noteなどを充電することができた。前述したように、本体の電池残量が半分以下になると給電が自動的に停止されるため、Aterm MR01LNの通信である程度バッテリーを消費してしまっていると、「いざ」というときでも給電できない可能性があるが、外部バッテリーとしても活用できることを考えると、常に持ち歩くモチベーションにもつながるだろう。


賢い節電機能

 また、節電機能も優秀だ。WiMAX向けのAtermWMシリーズでも同様の機能が搭載されているが、一定時間、通信がないと(初期設定10分)スリープモードへと自動的に移行するようになっている。

 スリープモードに移行すると、前面のLEDが5秒間隔でゆっくりと点滅し、3G/LTE通信が切断される。この状態で最大30時間の待機ができることは前述した通りだが、スリープ中でも無線LANはいつでも接続を受け付けられるように待機した状態となっており、PCやスマートフォンからSSIDを指定して再度接続することで自動的にWAN側の回線が復活し、本体を一切操作しなくても通信が可能になる。

節電機能が充実しているのもAtermシリーズならではの特長。自動スリープは本体操作なしにスマートフォンなどから再接続が可能で使い勝手がいい本体のディスプレイ。小型で消費電力を抑えつつ、普段は消灯でさらに消費電力を抑える

 もちろん、本体前面のディスプレイも省電力に配慮されている。そもそも、Atermシリーズのモバイルルーターで、ディスプレイが搭載された機種は、MR01LNが初となるが、サイズ自体が小さく、電源投入後しばらくすると自動的に消灯するようになっている。

 このほか、設定画面で「無線LANスリープ機能」を有効に設定すると、付属のPC接続用(黒)USBケーブルを本体に接続し、USB経由でPCから通信できるようにした際に、自動的に無線LANを無効にすることで、消費電力を抑えることも可能になっている。

無線LANスリープ機能を有効にすると、USB接続時に無線LANを停止する

 バッテリーの消耗を押さえるために、電池残量70%までで充電を押さえるロングライフ充電機能なども搭載されており、非常によく作り込まれている。

 今回のAterm MR01LNは、一見、「思い切って容量の大きなバッテリーを搭載してしまえ」という単純な設計をしたように思えるかもしれないが、実際にはバッテリー容量を大きくしつつも、そのバッテリーをうまく給電に活用したり、余計な電力を消費しないように工夫されている点に感心させられる。それも、ユーザーの利便性を損なうことなく、賢く節電しているのだから、文句のつけようもない。


Android向けアプリも提供

 このほか、特徴的な機能としては、Android向けのアプリも提供される点だろう。「Aterm Mobile Tool」と呼ばれるアプリをインストールすると、スマートフォンなどの画面上でAterm MR01LNのバッテリー残量を確認したり、ファームウェアをアップデートすることができる。

Android向けのアプリからバッテリー残量やLTE/無線LANの切り替えが可能

 また、Aterm MR01LNには、無線LAN接続機能が搭載されており、自宅の無線LANや公衆無線LANなどを登録しておくことで、LTE以外に、WAN側の通信に利用することができる。HOTSPOTおよびBBモバイルポイントに関しては、プリセットで設定項目が用意されているので、ユーザー名やパスワードなど最低限の設定をするだけですぐに利用可能だ。

 標準では3G/LTE回線を優先的に利用する設定になっているが、公衆無線LANを優先的に利用する設定に変更することも可能なうえ、前述したスマートフォン向けのアプリを利用して手動でLTEと公衆無線LANを切り替えて利用することもできる。

接続先として公衆無線LANも登録可能。3G/LTEで通信できないときに自動的に接続できる

 microSDカードスロットも搭載しており、簡単なファイル共有用に利用することもできる。さらに、別売りのクレードルを利用して、充電だけでなく、有線LAN接続にも対応可能だ。このような多機能さ、そして使いやすさは、国産モバイルルーターならではの特長と言えそうだ。

 以上、BIGLOBE LTEで提供が開始されたAterm MR01LNを実際に使ってみたが、LTE向けのモバイルルーターとしては、かなり完成度の高い製品と言える。唯一の欠点は、サイズだが、大容量バッテリーを考えれば、ここは割り切ることができそうだ。

 季節的な影響もあるかもしれないが、若干、動作中の本体温度が高くなりがちだったが、それによって動作が不安定になるような状況は見られなかったので、あまり気にする必要はないだろう。

 なお、Aterm MR01LNについては、製品発表時に、「BIGLOBEを第一弾として、今後ISPをはじめ、NTTドコモが提供するデータ通信エリアを利用したモバイル通信サービスに対応したMVNOに拡販していく」とアナウンスされている。現状、BIGLOBE LTEでしか利用できないが、大手ISPなどでは、今後取り扱いが開始される可能性がある。すぐに利用したい場合はBIGLOBEに申し込むことになるが、他に利用したいIPSがあって、ある程度待てるのであれば、まずは利用したいISPなどに問い合わせてみるといいかもしれない。



関連情報



2012/8/28 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。