第105回:エニーミュージック徹底解剖 その1
音楽をダウンロードして楽しむ



 ケンウッド、パイオニア、シャープ、ソニーの4社が中心となって設立したエニーミュージックが、5月20日からサービスを開始した。専用のオーディオ機器を使い、インターネット経由で音楽を配信するサービスだ。果たしてどのようなサービスなのか? シャープの「SD-AN1-S」を利用して、実際に体験してみた。





身近になりはじめた音楽配信サービス

 今年に入ってから、音楽配信サービスが盛り上がりを見せ始めてきた。今回紹介するエニーミュージックもそうだが、同じく5月20日からエキサイトが音楽配信サービスを開始するなど、音楽配信関連のニュースがちらほらと目立つようになってきている。インターネット経由での音楽配信は、これまでにも行なわれていたサービスだが、それがより身近なものになってきたという印象だ。

 では、エニーミュージックの実際のサービス内容は一体、どのようなものなのだろうか? そう言われると、いまひとつピンと来ないユーザーも多いことだろう。インターネットから音楽をダウンロードするというところまでは理解できても、実際にどうやって購入するのか? それによってどんなメリットがあるのか? というところまではなかなかつかみにくい。

 そこで今回は、シャープから発売されたエニーミュージック用のオーディオ機器「SD-AN1-S」を利用して、実際にエニーミュージックの世界を体験してみることにした。エニーミュージックの登場で、音楽はより身近なものになるのであろうか?





エニーミュージックとは

エニーミュージックのサービスイメージ(画面はサービス発表時のもの)

 まずは、エニーミュージックのサービス内容についておさらいしておこうエニーミュージックは前述の通り、専用のオーディオ機器を利用してインターネット上から音楽をダウンロード購入することができる音楽配信サービスだ。

 と言っても、エニーミュージック自体が直接音楽を配信するわけではない。エニーミュージックは、ポータル、顧客、課金管理などを提供するサービスだ。実際の音楽配信はレベルゲートが運営する「mora」を利用するほか、オーディオ機器も協賛するオーディオメーカーから発売される。

 要するに、これまでインターネット上でPC向けに行なわれていた音楽配信サービスをオーディオ機器向けに展開するためのプラットフォーム(基盤)を提供するのがエニーミュージックというわけだ。





ディスプレイ、LANポートを装備した対応機器

シャープ製のエニーミュージック対応機器「SD-AN1-S」。ディスプレイは別売

 では、実際にエニーミュージックを利用するには、どうすればいいのだろうか? これには大きく分けて2つのステップが必要になる。ひとつは専用のオーディオ機器を購入すること、そしてもうひとつはエニーミュージックのサービスに加入することだ。

 まずは、オーディオ機器だが、現在発売されているエニーミュージック対応製品は全部で4機種存在する。詳細はエニーミュージックのサイトで紹介されているが、ケンウッド、パイオニア、シャープ、ソニー製の4製品だ。

 いずれの製品でも目を引くのは、本体、スピーカー、リモコンという一般的なミニコンポと同様の構成に加え、液晶ディスプレイが付属(機種によってはオプション)している点だろう。エニーミュージックではインターネット上から音楽をダウンロードできるのだが、そのポータルサイトを表示したり、再生中の音楽情報などを表示するために、何らかの表示デバイスが必要になる。このために使われるのが液晶ディスプレイだ。

 なお、液晶ディスプレイは必須な訳ではない。本体と液晶ディスプレイはビデオ入力端子で接続されているので、家庭用のテレビなどで代用することも可能だ。液晶ディスプレイがあることで、ストリーミング配信などでミュージッククリップが見られるのか? 音楽DVDが再生できるのか? などと期待したくなるところだが、残念ながらどちらもできなかった。

 インターネットとの接続には、ADSLやFTTHなどのブロードバンド回線を利用する。エニーミュージック対応機器には、背面にLANポートが用意されているので、これをルータなどに接続すればインターネットに接続できるわけだ。エニーミュージックの利用に最低限必要な帯域は280kbps(試聴時)ということなので、Ethernet接続タイプの無線LANアダプタを利用すれば、無線LAN環境などでも十分に利用可能だ。

 いずれにせよ、本体にスピーカーと液晶ディスプレイ、FM/AM用アンテナ、LANケーブルさえ接続すれば、機器のセットアップは完了する。なお、どの製品を見てもデザインが似ていることからもわかる通り、仕様上の違いは多少あるものの、どの機器も基本的な機能や設定方法は同じものと考えて差し支えない。


SD-AN1-Sの操作部分本体前面にCDトレイとメモリースティックスロット




オンラインサインアップでエニーミュージックに登録

 機器のセットアップが完了したら、すぐにオーディオ機器として利用可能だ。CDを再生したり、FM/AM放送を楽しむことができる。ただし、エニーミュージックのサービスは、これだけでは利用できない。前述したように、エニーミュージックへの利用登録が必要になる。

 利用登録は、オーディオ機器本体から行なう。、リモコンの「ANY MUSIC」ボタンを押してAnyMusicのポータルサイトにアクセスすると、利用登録の画面がディスプレイに表示されるので、ここに必要な情報を入力していく。エニーミュージックの料金は登録手数料315円で、月額基本料金が315円だ。


エニーミュージックへの登録は機器から行なう。ディスプレイを見ながらリモコンで個人情報を登録する

 利用登録に必要な情報は、住所、氏名、電話番号、生年月日、メールアドレスなどの個人情報、課金のためのクレジットカード情報、そしてエニーミュージックを利用するためのユーザーID、パスワードなどだ。入力する項目が多く、しかもリモコンで入力しなければならないので、初期登録にはそれなりに時間がかかる。また、CDショップでCDをオンラインを購入したい場合はHMVへの登録も必要だ。

 登録が完了すれば、すぐにエニーミュージックが利用可能だ。ポータルサイトにアクセスすると、「ニューリリース」や「邦楽ランキング」、「人気アーティスト・ピックアップ」など、メニューが表示され、好みの方法で音楽を検索することができる。一部の音楽は試聴も可能となっており、リモコンでタイトルにフォーカスを合わせると30秒ほどの試聴も可能だ(サビの部分)。「CMで気になっていたあの音楽を聴きたい……」、などといった場合に、目的の曲を探すのに便利だろう。


エニーミュージックのポータルサイト。おすすめのジャケットなどが表示され、グラフィカルで使いやすいニューリリースやランキングなど、さまざまな方法で好みの音楽を探し出せる。曲によっては30秒程度試聴できる




音楽の購入から再生まで

 実際のダウンロード方法は至って簡単だ。たとえば、邦楽ランキングから音楽を購入する場合、まずはリストから曲を試聴する。その後、詳細情報などを見て、目的の曲であった場合は、そのまま「購入へ」というボタンを押し、購入の操作をする。操作といっても、利用規約に同意し、「購入する」というボタンを押すだけだ。これで、選択した曲がインターネットからダウンロードされ、オーディオ機器のハードディスクに保存される。


リストから購入したい曲を選び、「購入する」ボタンを押せば、自動的に音楽がHDDにダウンロードされる。決済は、利用登録のときに登録したクレジットカードで行なわれるHMVへの登録もしておけば、CDをオンラインで購入することもできる

 気になる価格だが、1曲あたり210円程度だ。曲によって価格に違いがあるようだが、ランキングなどに登録されている最新シングルは、ほぼ210円という価格設定だった。1曲あたりの価格としては妥当なところだろうか。なお、ダウンロードした音楽のコーデックはATRAC3で、ビットレートは132kbpsとなる。

 もちろん、再生も簡単だ。リモコンの「HDD」というボタンを押すと、ファンクションがHDDに切り替わり、HDDに保存されている音楽が自動的に再生される。ダウンロードしたファイルは「DLフォルダ」という名前のフォルダに格納されているので、リモコンで階層をたどり、ファイルを選択すれば目的の曲を再生できるというわけだ。もちろん、ダウンロードした楽曲をフォルダごとに分類もできる。


HDDにファンクションを切り替えることで音楽を再生可能。ダウンロードした音楽は「DLフォルダ」に保存されている

 音質も気にならないレベルだった。スピーカーなどにこだわるようなオーディオマニアであれば、気になるのかもしれないが、筆者のような音質にあまりこだわらないユーザーにとっては、CDと変らないという印象で聞くことができた。そもそも音質にこだわるようなユーザーは、こういった音楽配信サービス自体を使わないかもしれない。





ライトユーザー向けのサービスか?

 以上、今回は初期設定と音楽のダウンロード、再生について紹介した。はじめは相当な音楽好きのユーザー向きのサービスというイメージだったが、実際に利用してみてその印象は大きく変わった。

 もちろん、音楽のダウンロードやオンラインでのCD購入などを利用して、ヘビーに音楽を楽しむという人にも向いているのだが、「CMで耳にしたあの曲をもっと聴きたい」などという時に手軽に1曲だけ購入できたり、CDショップに足を運ぶ面倒もないため、どちらかといえば普段CDをあまり購入しないようなユーザーでも手軽に音楽を楽しめるようになっていると感じた。基本料や1曲あたりの料金もそれほど高くはない。エニーミュージックというサービス自体は、なかなか面白いものだと実感できた。

 ただし、サービスではなく、機器の完成度となると、多少疑問を持つ点があることも事実だ。次回は、このあたりについて紹介していくことにしよう。


関連情報

2004/6/15 11:44


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。