第134回:外出先のPCへメールで映像配信できる
日本デジタル家電の「ロクラクIIリミテッド・スーパー」
日本デジタル家電から、HDDレコーダの新製品「ロクラクIIリミテッド・スーパー」が登場した。従来機種からネットワーク機能が大幅に強化され、メールを使ったビデオ転送機能やインターネットを利用した映像配信サービス「ロクラクチャンネル」に対応している。今回は、メールを使ったビデオ転送機能を中心に、その機能を検証してみよう。
●メールを使うという斬新なアイディア
ロクラクIIリミテッド・スーパー |
家庭で録画したテレビ番組を外出先で楽しみたい。そんなニーズに応えるために新たに登場したのが、日本デジタル家電の「ロクラクIIリミテッド・スーパー(以下ロクラク)」だ。基本的には従来機種のHDDを300GBに拡張したモデルだが、ネットワーク関連の機能が大幅に強化されており、「ビデオメール」や「ロクラクチャンネル」といった新機能が追加されている(ロクラクIIのベータ版ファームでサポートされていたネットワーク機能は搭載されていない)。
このうち、「ロクラクチャンネル」は、インターネット経由でのビデオ配信機能だが、現状はまだサービスが開始されていない。このため、今回はビデオメールを中心にレポートしていく。
ビデオメールは、リモートで映像を楽しむための機能だ。家庭で録画した映像を外出先で楽しむというスタイルは、ソニーのVAIOシリーズに登載されている「VAIO Media」など、いくつかの製品でも実現されているが、そのほとんどはストリーミング配信となっている。一方、ロクラクに搭載されているビデオメールは、その名の通り、メールを使った配信方式だ。
具体的には、ロクラクのメニュー画面から録画した映像を選択し、サブメニューから「ビデオメール」を選択する。その後、送信先のメールアドレスと映像の画質を選択すると、選択した映像を外出先のPCなどにメールで送信できるというわけだ。映像配信にメールを使うというのは、これまでになかった斬新なアイディアだろう。
背面。D端子やUSB 2.0ポート、イーサネットポートのほか、増設用の拡張端子を搭載 | 付属のリモコンは従来のロクラクシリーズと同じデザイン |
ロクラク本体で録画した映像をメールで送信。外出先などのPCにインストールした専用アプリケーション「ソフトウェアロクラク」で受信できる |
●「メールで映像送信」の仕組み
正直なところ、この仕組みを初めて聞いた時は、「メールでビデオ!?」とかなり驚かされた。しかし、一見、不可能なようにも思えるこの機能も、ロクラクではうまく解決されている。
まず問題になるのは、その容量だろう。ロクラクでは、テレビ番組を標準画質で6Mbps、高画質で9Mbps、長時間で3MbpsのMPEG-2で録画する仕様となっている。このため、標準画質でテレビ番組を録画した場合、30分番組でも1.5GB弱、2時間番組ともなれば4~5GB程度のファイルサイズになってしまう。普通に考えれば、これをメールで送れば、あっという間にメールボックスがパンクしてしまうことになる(※編集部注:製品版では、1Mbpsまたは2MbpsのVBRで録画できる「ビデオメール」設定が追加される予定です)。
このため、ロクラクでは、映像を分割して送信するという仕様を採用する。ロクラク側で送信する映像は、2MB弱のファイルへと分割され、宛先のメールアドレスに送信される。これを製品に同梱されている専用の管理ソフト「ソフトウェアロクラク」を利用(外出先のPCにインストール)して受信し、結合して再生可能な映像ファイルにするという仕組みだ(同社が特許出願済み)。
ロクラクで送られたメールをメールソフトで受信したところ。映像がファイルとして添付され、本文に送受信用の情報が記載されている。なお、メールソフトでビデオメールを受信するとソフトウェアロクラクでの受信に失敗するため、通常は受信しないように注意 |
もちろん、分割したとしても、ファイルのトータル容量を考えれば、メールボックスがパンクしてしまう可能性があるが、このあたりもうまく考えられている。ポイントは受信にソフトウェアロクラクを利用するという点だ。ビデオメールはロクラク本体から一方的に送られるのではなく、ソフトウェアロクラクと連携しながら送られる。
具体的な仕組みは公開されていないが、受信状況を監視していると、メールを受信後、必ずソフトウェアロクラクからもメールを送信していることが確認できる。つまり、ロクラクからのメールを受信したら、その受信確認をソフトウェアロクラクから返信するというプロセスを繰り返すことで、徐々に映像ファイルを転送しているわけだ。ソフトウェアロクラクからの返信がなければ、ロクラクからはメールが送信されないため、メールボックスにメールがあふれかえり、パンクしてしまうような事態も避けられる。なかなかうまく考えられた仕組みだ。
試しに、筆者が普段利用しているメールアドレス(WebArenaのレンタルサーバーのメールアドレス)やYahoo! JAPANのメールアドレスなど、いくつかのメールアドレスで利用してみたが、どのアドレスの場合でも問題なく利用することができた。ビデオメールの利用に関しては、メールボックスの空き容量が30MBという条件が設定されているが、一般的なメールアドレスであれば問題ないようだ。
●メールを利用するメリット・デメリット
このようにメールを利用するメリットは、汎用的なプロトコルが利用できる点にあるだろう。メールの送受信ができればいいだけなので、ファイアウォールの有無や設定に一切関係なく利用できる。筆者は、個人的にSoftEtherやPPTPによるVPNで自宅にアクセスして、自宅のPCで録画した映像を再生できるようにしているが、環境によってはファイアウォールにプロトコルが遮断され使えないことも少なからずある。このような心配がないのは大きなメリットだ。家庭内で利用する場合でも、メールの設定だけすれば、ほかに特別な設定は必要ない。
また、メールによる通信であるため、リアルタイム性が問われない点もメリットと言える。たとえば、ビデオメールを受信中にソフトウェアロクラクを終了させたり、OSをスタンバイ、再起動したとしても、再びソフトウェアロクラクを起動すれば、受信を再開できる。ただし、テストしたところ、1時間ほど中断すると、タイムアウトによって強制的に受信が中断されてしまった。数時間の中断に耐えられるようになれば、外出先でこまめに受信するといった使い方も可能になるだけに、この点は少々残念だ。
一方、デメリットはメールの受信に膨大な時間がかかるという点だ。ロクラクではビデオメールで送信する映像の品質を「録画画質」、「TV電話」、「音声中心」の3種類から選択することができるが、標準画質で録画した30分番組の場合、送信に必要なメール数は録画画質で850通前後、音声中心でも150通前後にもなってしまう。
しかも、前述したように、ロクラクではソフトウェアロクラクと連携しながらメールを送信するため、1通の送信に長い時間が必要になる。このため、30分番組の場合であっても、すべてのメールを送信し終えるまでに数十時間もの時間がかかってしまうことになる。試しに、Bフレッツ・ニューファミリー回線で標準画質の30分番組を録画画質で送信しようとしたところ、20時間ほどの時間がかるとの終了予定時間が表示されため、さすがに送信をあきらめた(※編集部注:製品版では送信速度の向上も図られる予定です)。
標準画質で録画した35分番組の場合、録画画質で送信すると合計846通のメールに分割される。すべてのメールを送信するまでにかかる時間も20時間と強烈だ |
もちろん、ビデオメールを受信しながら、ソフトウェアロクラクで映像を再生することもできるが、この場合、再生できる時間は、再生開始時に受信したファイルまでに限られる。基本的には、すべてのビデオメールを受信してから再生する必要があるだろう。
このほか、同時に送信できるビデオメールが1通に限られる点、ビデオメールに利用するメールアドレスは、ロクラク本体、ソフトウェアロクラク共に専用のものを用意しなければならない点にも注意が必要だ。普段利用しているメールアドレスを利用すると、ビデオメール以外のメールもロクラクやソフトウェアロクラクが受信してしまう上、メールソフトなどでビデオメールを受信してしまうと、メールのやり取りがうまくできなくなり、受信に失敗してしまう。
●相手に映像を送ってもらう必要がある
このようにビデオメールで送信された映像ファイルは、自動的に結合され、ソフトウェアロクラクから参照し、手軽に再生できる。
品質に関しては、設定画面で「録画画質」を指定した場合、6Mbps前後(標準画質)のビットレートでは問題がないが、「音声中心」で送信した場合、映像は0.5秒間に1コマしか表示されないため、かなり見づらかった。品質と容量のバランスを考えると、「TV電話」が実用的だが、これも動きの速い映像では見づらくなる印象だ。なお、「TV電話」と「音声中心」はロクラクで再エンコードしてから転送するため、転送開始まで時間がかかるのにも注意が必要だ。
映像の品質は送信時に指定可能。「録画画質」以外は再エンコード後の送信となる。音声中心では紙芝居のような映像しか再生できないため、最低でもTV電話品質での送信を推奨したいところだ |
ちなみに、ビデオメールは、ロクラクとソフトロクラクの間でのほか、ロクラク本体同士でも利用できる。著作権の問題があるので、さすがに友人のロクラクに録画したテレビ番組を送るという使い方はできないが、単身赴任などで家を長く離れているサラリーマンが、自分で撮影したデジタルビデオカメラなどの映像をロクラクに取り込み、自宅のロクラクに送るといった使い方もできるだろう。
このように、手軽な半面、いくつかのデメリットもあるロクラクのビデオメールだが、難点は映像を送ってもらう必要があるところだ。ソフトウェアロクラクで外出先などでビデオメールを受信するには、家にあるロクラク本体でビデオメールを送信するという操作をしなければならない。つまり、家にいる家族などにお願いして、メールを送ってもらわなければ使えないわけだ。
USBによる接続も可能なため、外出前にPCに映像を転送しておくという使い方もできるが、どうせならリモートからすべての操作が完結する方が好ましい。特に、一人暮らしのユーザーなどを考えると、ソフトウェアロクラク側から、ロクラクにある映像ファイルを送信するようにリクエストできるようにしてほしいところだ。
また、ビデオメールなどのような他にはない機能があるとはいえ、価格もいささか高い印象だ(標準価格168,000円)。4月に、もうひとつの注目機能となるロクラクチャンネルによる映像配信(映画などの有料コンテンツをロクラクに映像をダウンロード可能)が開始される予定だが、この機能でどこまでロクラクならではの魅力をアピールできるかが見どころと言えそうだ。
関連情報
2005/2/8 11:53
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