第133回:信頼性を重視した容量1TBのNAS
バッファローの「TeraStation HD-H1.0TGL/R5」
バッファローの「TeraStation HD-H1.0TGL/R5」は、250GBのHDDを4台搭載することで、1TBもの容量を実現したNASだ。高価格ではあるが、ギガビットイーサネットやRAIDへの対応など、価格に見合うだけの機能を備えている。早速、その実力を検証してみた。
●確固たる信頼性を手に入れたNAS
TeraStation HD-H1.0TGL/R5 |
「手軽で便利だが、万が一、障害が発生したときのことを考えると……。」筆者もそうだが、NASを利用している、もしくは利用を検討しているユーザーにとって、最も心配なのは、その信頼性だろう。万が一、ハードディスクが故障すれば、一瞬のうちに大切なデータが失われることになる。
もちろん、最近のNASはバックアップ機能を備えている上、ハードウェアの信頼性も決して低くはない。しかしながら、ユーザーに“絶対的”な安心感を与えるとまでは言い難いだろう。
そんな中、昨年11月にバッファローから発表されたのが、今回、取り上げる「TeraStation HD-H1.0TGL/R5」だ。250GBのハードディスクを4台搭載することで、合計1TBという途方もない容量を実現している。1TBという、あまり馴染みのない単位を見せつけられると、さすがに強烈なインパクトを感じるところだ。
しかしながら、本製品で注目すべきは、容量よりも複数台のハードディスクを搭載している点だ。単に複数台のハードディスクを採用しているだけではない。これらを利用して、RAID1/5といった構成が可能なため、一部のドライブが破損してもデータを復元できる冗長性が確保されているのだ。これまでの手軽さに加えて、安心感をユーザーに与えられる点がこの製品の特徴だろう。
タバコの箱とサイズ比較 | 背面 |
●RAID5構成で使えるようになるまでに4時間
とは言え、標準ではRAID1や5は構成されていない。購入時の設定は、「スパニングモード」での動作となっており、本体に内蔵されている4台のハードディスクが、まとめて1TBのドライブとして設定されている。このほか、disk1~4までの個別のドライブとして設定する「標準モード」なども利用可能だが、せっかく本製品を利用するのであれば、RAID1または5で利用したいところだ。【お詫びと訂正】
初出時、購入時の設定を「標準モード」としておりましたが、正しくはスパニングモードです。お詫びして訂正いたします。
購入時の設定はすべてのハードディスクを1台として利用するスパニングモードとなるが、信頼性を重視するならRAID1、またはRIAD5への変更したいところだ | 4台のハードディスクを個別のドライブとして設定された「標準モード」としても利用可能 |
標準モードからRAID5に変更するには、付属のユーティリティか、Webベースの設定画面を利用する。RAID設定でモードに「RAID5」を選択し、4台搭載されているハードディスクをすべて選択すれば、設定は完了だ。これで、データがパリティ付きで4台のハードディスクに分散して書き込まれ、万が一、ハードディスクに障害が発生したとしても交換することで復旧できるようになる。
ただし、データのエラーを検出する「パリティ」の書き込みが必要になるため、RAID5構成の場合、利用可能な容量は1TBではなく750GBになる(パリティに1台分の容量を利用する)。
RAIDの構成は、付属のユーティリティ、もしくは設定画面から可能。RAID1/5が選択可能で、構成に利用するハードディスクも選択できる |
設定自体はさほど難しくないのだが、構成変更後に行なわれるディスクのチェックは非常に長い時間がかかった。正確には計測できなかったのだが、試した限りでは3時間半~4時間近くの時間を要した。初回のみなので、ガマンするしかないのだが、数時間となるとさすがに待ちくたびれてしまった。
RAIDの構成が完了すれば、あとは普通に利用するだけだ。共有フォルダを作成し、必要に応じてアクセス権を設定すれば、ネットワーク上のクライアントから何の問題もなく利用できる。そもそもRAIDは障害時に備えての設定なので、問題なく動作している分には、ユーザーは特に何も意識する必要はないのも当然だろう。
なお、今回はRAID5で利用したが、このほか、ハードディスクを1ドライブとして構成するスパニングモード、ハードディスクを2台ずつ構成するRAID1(ミラーリング)も利用可能だ。
●速度も十分に実用的
気になる速度だが、これも大きな問題はなかった。ギガビットイーサネットに対応し、さらにJumbo Frameもサポートされているため、速度的な不満を感じなかった。試しに、標準モードとRAIDモード、さらにJumbpFrameのON/OFFでどれくらいの速度差ががるのかをFTPによる転送(TeraStationでFTPモードをONに設定)で検証してみたのが以下の表だ。
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FTPファイル転送の測定結果 |
まずは、JumboFrameのON/OFFだが、これは明らかにONの方が高速だ。さすがに倍とまではいかないものの、ONの方が1.4~1.8倍ほど高速な値となった(今回は全機器を7Kに設定)。JumboFrameが利用可能な環境であるならば、無条件にONに設定しておくべきだろう。
続いて、標準モードとRAID5の比較だが、RAID5を構成するとさすがにPUT(書き込み)の速度が低下する傾向にあった。同様のテストをWindowsのファイルコピーでも実施してみたが、こちらも読み込みはほぼ同等ながら、書き込みはやはりRAID5の方が遅くなった。RAID5の仕組み上、致し方ないところだと思われる。
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Windowsファイルコピーの測定結果 |
ただし、書き込むファイルのサイズが小さければ、この差も実際にはほとんど気にならない。むしろ、これくらいの差しかないのであれば、積極的にRAID5を利用しようという気にもなった。
●欲を言えばきりがないが……
このように、TeraStation HD-H1.0TGL/R5は、手軽さと、信頼性を兼ね備えた本当の意味で実用的なNASであると言える。機能的にもLinkStationシリーズに登載されていた機能はもちろんのこと、UPSとの連携なども可能になっている。個人ユーザー向けとしては、テレビ録画などの用途を考えても(USB接続のチューナーで録画も対応する予定)、多少、贅沢すぎる印象はあるが、SOHOや小規模オフィスでのファイル共有には極めて良い選択肢と言える。価格が高いと感じるならば、先日発表された640GBモデル「HD-H0.6TGL/R5」という選択もあるだろう。
ただ、ここまで来ると、もっと欲を言いたくなる。せっかくRAID5に対応しているのだから、もう少し、ハードディスクの交換を簡単にできないものだろうか? 本体からハードディスクを取り出すには、ネジを開け、本体カバーを外し、さらに内部のベイを取り外すなど、極めて手間がかかる。ホットスワップとまでは言わないものの、前面のカバーが開いて、ドライバーレスでハードディスクが交換できるくらいの工夫が欲しいところだ。
また、ビジネスシーンでの利用を想定すると、ウイルス対策ができるようになってくれればと切実に感じるところだ。有料のオプションサービスでもかまわないので、本体でウィルス対策ソフトを実行できるようにし、保存されたファイルの安全性を確保できるようになれば理想的だろう。
また、管理面の工夫ももう少し欲しいと感じた。Webページからの設定も手軽で良いのだが、ユーザー情報や設定のバックアップや一括登録ができるようになると、メンテナンスももっと楽になるはずだ。欲を言い出せばきりがないのだが、クオータ、Windows Server 2003のシャドーコピーのような機能(いわゆるごみ箱のTrashbox機能は利用可能)などなど、もっと機能が欲しくなってしまう。
もちろん、現状でも価格を考えれば、十分すぎるほどの機能だと思うが、無理を承知でさらなる機能アップを望みたいところだ。
関連情報
2005/2/1 11:00
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