第315回:テレビでYouTubeの動画が見られる
パナソニックの新型テレビ「VIERA TH-42PZR900」



 パナソニックのテレビブランド「VIERAシリーズ」にYouTube対応のモデルが登場した。製品自体はすでに発売されていたが、ファームウェアのアップデートによってYouTube対応機能が追加された。早速、その使い心地をチェックしてみよう。





ハイエンドモデルの高付加価値化

 HDDやBD搭載の録画機能、アクトビラなどの映像配信サービス対応、DLNAによるホームネットワーク機能など、今やテレビは「付加価値の時代」と言って良いほど実に多機能な製品が多くなってきた。

 一般的な家庭に設置するのに適した37~46インチクラスの価格が落ち着き、画質に関してもあまり差がなくなりつつあるだけに、製品としての差異化のポイントを付加機能に模索しているような印象だ。特にハイエンドモデルはこの傾向が強く、今後もさまざまな機能が追加されていくことが予想される。

 そんな中、パナソニックから発売されたのが同社の「VIERA」シリーズのプラズマテレビ最上位モデルとなる「PZR900シリーズ」だ。発売は9月なので、新製品といったほとではないが、9月30日にファームウェアのバージョンアップが実施され、当初から予定されていたYouTube対応機能が新たに追加されることとなった。

 PZR900シリーズは、もともとネットワーク機能が豊富で、LAN経由での同社製レコーダー「DIGA」の映像再生、ドアホンやネットワークカメラへの対応、アクトビラのHD配信サービス「アクトビラビデオ・フル」への対応などが図られているが、今回のアップデートによってYouTube動画の再生にも対応したことになる。

 とは言え、このYouTube機能は米国で販売されている同社製のプラズマテレビには、すでに搭載されており、この機能を日本版VIERAにも追加した形だ。





テレビでネット」の一機能として提供

 使い方は簡単だ。テレビの視聴中にリモコンの「メニュー」ボタンを押すと、画面下に「おまかせニュース」や「番組ナビ」などの機能を表す6個のアイコンが表示される。この中から、「テレビでネット」を選択する。


VIERA PZR900シリーズのリモコン。「テレビでネット」を起動するには「メニュー」ボタンを利用する
画面下に表示されたアイコンから「テレビでネット」を選択

 この「テレビでネット」というのは、文字通り、インターネットを利用したテレビ向けサービスをまとめたものだ。今後、サービスが追加されていくのかどうかは定かでないが、現状は「アクトビラ」と「YouTube」が登録されており、ここからネット系の機能を手軽に利用することができるようになっている。

 というわけで、リモコンの方向ボタンを利用して「YouTube」のアイコンを選ぶと、ビューワーと呼んで良いのだろうか、同社向けのテレビに最適化されたインターフェイスでYouTubeの画面が表示される。


テレビでネットのトップ画面。現在はアクトビラとYouTubeを利用可能

 VIERAでは、YouTubeのコンテンツを2つのレベルに分けて表示する仕組みになっており、標準の状態では、ブラウザを利用して未ログイン状態でYouTubeにアクセスした時のホーム画面と同じ「おすすめ動画」の視聴が可能となっている。

 カテゴリを選択すると、実際の動画一覧が表示されるので、サムネイルや再生回数、評価などの情報を参考に見たい動画を選択すると、画面右側のウィンドウに動画が再生される。

 一時停止や早送りなどのコントロールは画面上のボタンを選択する必要があり、残念ながらリモコン上の「一時停止」、「再生」ボタンなどの操作はできないが、動画自体はスムーズに再生され、なかなか楽しむことができる。


YouTubeのメニュー画面。標準では「おすすめ動画」の再生が可能
YouTubeの画面。専用UIを利用した表示となる。

 本製品が発表された当初、ネット上の評判などを見る限り、画質の悪いYouTubeを大画面のテレビでは見る気になれないというものが大半で、筆者自身もそう考えていたが、実際に見てみると画質に関してはさほど違和感がない。

 もちろん、全画面表示にすると、16:9に引き延ばされた比率に違和感を感じるし、画質は確かに高いとは言えない。しかし、左側に動画一覧、右側にプレビューウィンドウという標準の操作画面で見ている限りは悪くはない印象だ。


全画面表示は画質の荒さが目立つち、比率の違和感もある

 なぜかと考えてみたところ、どうやら画面サイズと見ている場所の距離の関係で、PCのディスプレイでYouTubeを見ているときと感覚が近いのだ。

 42インチの画面を数メートル離れて見ているときのYouTubeの画面と、数十cmの距離で見ている20インチ強のPCディスプレイに表示されたYouTubeの画面は、ほぼ同じに感じる。

 このため、確かに画質は荒いものの、それは普段見ているYouTubeとほぼ同じで、大画面だからと言って、ことさらに画質の荒さが強調されるということがないのだ。これは意外な発見だった。





ログインすることでより多くのコンテンツを再生可能

 前述したように、VIERAのYouTube機能は標準ではおすすめ動画が再生できるようになっているが、さらに多くのコンテンツを楽しむこともできる。

 YouTube機能のトップページからログインを選択すると、インターネット上のYouTubeサイトで普段利用しているアカウントを利用してログインできる。すると、検索などの機能が利用できるようになり、米国サイトも含めたほぼすべてのYouTubeコンテンツを再生できるようになる。

 ほぼすべてと記述したのには理由があり、年齢制限がかけられたコンテンツはVIERA上では表示されないようになっている。ただし、これ以外のコンテンツに関しては、著作権上問題がありそうだと判断できるようなものでも検索して再生できた。このあたりは、的確にフィルタするのは難しいこともあり、善し悪しの判断が難しいところだろう。


ログインすることでほぼすべての動画を再生可能検索も利用できるので見たい動画を手軽に探せる

 なお、ログインして利用する場合は、PC上で登録したお気に入りやチャンネルなどをVIERAからも参照できるようになっている。

 VIERAでは携帯電話ライクな文字入力機能が搭載されているため、検索なども慣れていればさほど苦ではなさそうだが、やはり入力に時間はかかる。場合によってはPC側で検索、登録しておき、それを再生するという方が手軽だろう。

 もちろん、ログインしている場合、自分で投稿した動画を再生することもできる。画質や時間などの制限はあるが、ホームビデオなどを保管しておいて、たまに見るという使い方もできそうだ。


PCで登録したお気に入りやチャンネル、自分で投稿した動画も参照可能




目玉ではないがあれば便利なYouTube機能

 以上、パナソニックのVIERA PZR900シリーズに搭載されたYouTube機能を利用してみたが、見る番組がなくて暇な時などに、ちょっとした息抜きとして短い動画を楽しめるのは悪くない。

 目の肥えた人にとってはYouTubeの画質に絶えられない可能性もあるが、そもそもYouTubeの動画はじっくり見るようなものではないので、十分視聴に耐えうるレベルだと感じた。YouTubeが見たいから、という理由でテレビを買うことはないにしても、あれば便利な機能であることは間違いないだろう。

 なお、VIERAにはブラウザ機能も搭載されているため、試しにニコニコ動画にもアクセスしてみたが、残念ながら動画を再生することはできなかった。テレビでネット上のコンテンツをシームレスに楽しめるようになるには、まだもう少し時間がかかりそうだ。


関連情報

2008/10/21 11:06


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。