第316回:ニンテンドーDS用回線を隔離できる機能も搭載
DS/Wii用の「ニンテンドーWi-Fiネットワークアダプタ」
任天堂から、DSやWiiをワイヤレスで接続するための無線LANルータ「ニンテンドーWi-Fiネットワークアダプタ」が発売された。コンパクトで手軽にゲーム機を接続できるのがメリットだが、PC用としても十分に利用できる実力を持った製品だ。
●コンパクトながら必要十分な性能
ニンテンドーWi-Fiネットワークアダプタ |
DSやWiiをインターネットにつないで、対戦や各種オンラインサービスを楽しんでみたい。そう考えている人にうってつけの製品が発売された。任天堂が販売する同社純正の無線LANルータ「ニンテンドーWi-Fiネットワークアダプタ」だ。
発売と言っても、現時点では家電量販点やゲームショップなどの店頭での取扱はなく、オンラインでのみ購入が可能だが、Wiiにならった白ベースの筐体、カラーで比較的丁寧に解説された取扱説明書が付属するなど、純正ならではの魅力を備えた製品だ。
製品としては、IEEE 802.11b/gに準拠した無線LANルータで、10BASE-T/100BASE-TXに対応したWAN、LANポートを1つずつ搭載。無線LAN設定をボタンを押すだけで手軽に行うことができるバッファローの無線LAN設定システム「AOSS」をサポート。WAN側の回線を判断してルータ/ブリッジモードを切り替える「自動モード切替」にも対応する。
もちろん、Wiiに加えて、WEPしかサポートしないDSを接続することが想定されているため、2種類のSSIDごとに異なるセキュリティレベルを設定できる「マルチセキュリティ」機能も搭載。SSID間のネットワークを隔離できる機能も搭載する。
IEEE 802.11n対応が進んでいる最近の無線LANルータと比べると、最大54Mbpsという速度こそ若干見劣りするものの、機能面では最新機種に見劣りしない充実ぶりだ。
同様の製品としては、バッファローから発売されているほぼ同サイズのゲーム用無線LANアクセスポイント「Wi-Fi Gamers(WCA-G)」が存在するが、これと比較した場合、液晶画面こそないものの、PC接続用のLANポートが搭載され、マルチセキュリティ機能を搭載するなど充実している。
機能的には、市販されているIEEE 802.11b/g準拠の無線LANルータとほぼ同等と考えてよく、これで5800円という価格はなかなかお買い得な製品とも言えそうだ。
本体 | 背面。LANポートが灰色、WANポートが青色に色分けされており、マニュアルの説明と対応している |
本体上部にAOSSボタン | LANケーブルと電源アダプタを同梱 |
●AOSSで簡単接続。SSID間を隔離する機能も搭載
さて、実際に使ってみた印象としては、確かに手軽で便利だが、実際に使う上ではいくつか注意したい点もあった。
使い方は簡単で、箱から取り出した後、背面の「インターネットコネクタ(WANポート)」を既存のルータやハブに接続。電源ケーブルをつなぐと、起動時に回線が自動的に判別され、数分で稼働状態となる。
このとき、本体前面のLEDの1つ(上方)が赤く点灯しているのが最初の注意点だ。この赤いLEDは、暗号化なしで無線通信していることを示している。本製品は標準では無線LANの暗号化が設定されていないのだ。
このため、セキュリティ設定なしでゲーム機などを接続できたからといって、そのまま使っていると第三者の不正侵入を許してしまうことになる。赤いLEDが点灯したままの状態で利用し続けることは絶対に避けた方が良いだろう。
起動直後の状態。上のLEDが赤で表示され、暗号化がされていないことを示している。この状態のまま使い続けるのは避けよう | 出荷時状態の設定画面。「暗号化なし」に設定されている |
ではどうするかというと、AOSSの設定を行えばよい。たとえば、「ニンテンドーWi-Fiコネクション」対応のDSソフトを準備し、ゲームの設定画面からAOSSでの接続を実行する。すると、本体側にWPA-PSK(AES)の暗号化が設定されたSSIDと、WEPの暗号化が設定されたSSIDの2つが自動的に生成される。
すでにWEPについては脆弱性の問題が大きな話題となってはいるが、少なくとも、誰もがアクセスできるフリーの状態で無線LANを放置することは無くなる。買ってつないだら、すぐにAOSSを設定。これを必ず実行して、LEDが青の状態で使って欲しい。
また、本機にはWEP側(サブSSID)とAES側(メインSSID)の通信を遮断する「サブSSID隔離機能」が搭載されており、これを利用することでWEP接続した端末から別のSSIDで接続している端末のネットワークへのアクセスを防ぐことができる。脆弱性が指摘されているWEPだが、これを使えば少なくとも家庭内への侵入は防げる、というわけだ。
セキュリティ面では大変に便利な機能だが、残念なことに本機能は標準で有効に設定されておらず、管理画面にアクセスして自分で設定する必要がある。WEPの脆弱性が指摘される中、隔離したとしても踏み台にされる可能性は残るものの、せっかくの機能だけにこれは標準で有効にして欲しかったところだ。
本体上部にボタンを装備。AOSSを利用することで簡単に接続できる | AOSSで一旦接続すればLEDが青になる。設定画面で確認するときちんと暗号化が設定されていることがわかる |
●PC、PSPも問題なく接続可能
もちろん、DSだけでなくWiiも接続可能だ。設定画面からAOSSを実行すれば、AES暗号が設定されたSSIDへ自動的に接続できる。Wiiの場合はニンテンドーDSとは異なりWPAやWPA2も対応するため、より強固なセキュリティ設定が可能だ。
他社製のゲーム機も問題なく接続可能で、PSPやPS3もAOSS設定で利用できた。ただし、PSPの場合は本体側にセキュリティ設定を自動判別する機能を搭載していないため、AOSS接続の場合は必ずWEP設定でつながってしまう。より高いセキュリティを維持するためには手動でAESを設定することをお勧めする。
Wiiも設定画面でAOSSを選択することで簡単に接続可能 |
PSPの接続も問題ない。ただし、こちらもDSと同じくWEPで接続される |
一方、PCで接続する場合は、バッファローのクライアントマネージャを利用することで同様にボタン設定での接続が可能となる。今回、富士通のLOOX R70(11nドラフト対応のAtheros AR5008X内蔵)でテストしてみたところ、Windows Vista用のクライアントマネージャVを利用することで、問題なく接続できた。
バッファローのサイトからダウンロードできるクライアントマネージャを利用することでPCからもAOSSでの接続が可能 |
無線LANルータには、ルーターモードで「192.168.11.1」、ブリッジモードで「192.168.11.100」、LAN上にDHCPサーバが存在する場合は配布されたIPアドレス(ルータ側で確認)が割り当てられるので、これらを利用して有線接続したPCから設定画面を参照すれば、暗号キーなどを確認できる。
とは言え、AOSSを実行済みの場合、暗号キーは大変に長いものになり、とても手動で入力できるようなものではない。コピー&ペーストするのも手だが、クライアントマネージャをインストールしてAOSSを実行した方が後々も楽だろう。
なお、ここでも注意点がある。設定画面を表示する際のパスワードも標準では設定されていないのだ。設定画面を表示しなくても利用できる製品のためについ忘れがちだが、これも忘れずに設定しておこう。
設定画面を参照すれば、手動での接続も可能。ただし、暗号キーが長いのでクライアントマネージャを使った方が手軽 |
●パフォーマンスは低め。低価格かつ充実した機能がポイント
最後にパフォーマンスについてだが、木造3階建ての筆者宅にて実測した値が以下のグラフだ。
近距離でも20Mbpsを切る値となるため、IEEE 802.11b/gに準拠した他の製品と比較するとパフォーマンスについては期待しない方が良いだろう。おそらく、さほど通信速度が要求されないゲーム機での利用ということから、アンテナ配置などよりも、コンパクトさが優先された結果ではないかと想像できる。
ただし、通信の安定性としては悪くなく、1階に本体を設置した状態で3階でPCを利用してもWebブラウジングなどを問題なく実行できた。これなら、リビングなどに本体を設置しておくことで、家中のどこでもゲーム機から無線LANを利用できそうだ。
以上、実際に「ニンテンドーWi-Fiネットワークアダプタ」を試してみたが、この機能、この性能で5800円なら、手軽なゲーム機やPC接続用としては、かなりお買い得感が高い。マルチセキュリティ機能によるSSIDの隔離機能も搭載しているため、ニンテンドーDSをインターネットにつなぎたいがWEPには不安が残る、というユーザーの対策にもなるだろう。
ただし、このSSID隔離機能をオンにするには設定画面にアクセスしなければならなかったり、本体の管理画面パスワードも実際に管理画面にアクセスしなければ設定できないという点に不満は残る。PCを使わず設定できるだけに、こうした管理画面にアクセスせずにこれら機能を利用できるようにして欲しかったところだ。
とは言え、手軽で低価格な割に機能が充実しているため、これから無線LANを始めたいと考えている人に勧めできる製品だろう。できれば購入した後にもサブSSID隔離機能や管理画面のパスワード設定を忘れずに行って欲しい。
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2008/10/28 11:09
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